炭酸ガス充填不要な炭酸ガス含有食品の製造法について (日本缶詰協会 第 62 回技術大会 2013 年) 阿部全朗 1) 阿久津光紹 1) 1)青葉化成株式会社 長田隆 2) 山本聡一 2) 2)トーアス株式会社 [目的] 炭酸飲料は、その刺激や爽快感から、広く親しまれており、炭酸ガスに対する嗜好性は高いと考えら れる。しかしながら、飲料以外の容器詰製品で、炭酸ガスを含有している食品は普及していない。一般 的に炭酸飲料は、炭酸ガスと飲料をインラインで特殊なミキサーで混合する方法、炭酸ガス雰囲気下で 飲料を噴霧、薄膜化して炭酸ガスを吸収させる方法で製造されるが、ここに例えば果実のような固形物 を加えることは難しい。また、容器に固形物を加えたのち、圧力下で炭酸溶液を充填する方法も考えら れるが、衝突エネルギーによる泡立ちや、充填機を特殊に作成必要があることから、固形物に炭酸ガス を含有させた食品を製造することは困難である。 そこで、本研究では、一般的な缶詰製造ラインで調製可能な、炭酸ガス含有食品の製造方法の開発を 行った。炭酸塩を炭酸ガス源とし、充填中に発泡せず、且つ加熱殺菌中に発泡し、固形物に炭酸ガスを 含有させる条件を検討した。また、加熱殺菌中の、容器内温度および圧力を調べ、脱気条件および殺菌 条件の検討を行った。 [方法] 各種炭酸塩と酸味料を組み合わせ、水に溶解させてから発泡が始まるまでの時間を調べた。次に、炭 酸塩の添加量からガスボリューム(GV)を計算し、果物を対象に炭酸ガスを含有させた場合の最適な刺 激が得られる GV の範囲を調べた。そして、一般的な食品用の缶とレトルト殺菌機を使用し、昇温時の 容器内圧力変化を調べ、脱気条件と加圧条件を求めた。 [結果・考察] 各種炭酸塩と酸味料を検討した結果、25℃の水に溶解後、1時間発泡しない組み合わせを導き出し た。このことは、充填中にタンク内で発泡せず、製造に十分耐えうると考えられた。また、固形物に含 有させる炭酸ガスの GV を検討した結果、GV1.0 が炭酸の刺激を感じられる最低限の値であり、GV1.5 以上ではかなり強く感じられた。GV1.2 が適度な刺激であると考えられた。炭酸飲料においては、低い GV であると考えられるが、固形物は不溶性の領域があるため、炭酸ガスが局在し、強く感じられるので はないかと考えられた。GV1.2 の条件で、真空度-60kPa で巻締し、レトルト殺菌機で85℃まで昇温し た時、缶内圧力は 300kPA となった。この圧力と等しい雰囲気圧力下で殺菌することにより、容器が破 裂することなく、炭酸ガスを含有した果物の缶詰を調製することができた。この方法を用いれば、果物 でなくとも、炭酸ガスを含有した様々な食品を製造することが可能であると考えられる。
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