様式8の1の1 別紙1 論 文 の 内 容 の 要 旨 専攻名 システム創成工学 氏 名 大塚 崇光 (2,000字程度とし,1行43文字で記入) 紫外光より短波長の領域である波長 40-200 nm の領域は真空紫外,波長 5-40 nm の領域は極端紫外 (EUV: Extreme Ultraviolet),波長 5 nm 以下 (光子エネルギー 250 eV 以上) から硬 X 線までの領域は軟 X 線と呼ばれている.EUV や軟 X 線は波長 が短いと同時に,光子エネルギーが大きいことから,微細加工や吸収線を使った材料 科学,生体科学への応用が期待されている.この領域の光源としては加速器を用いた X 線自由電子レーザー,X 線レーザー,高次高調波 などがあるが,大型施設であるこ とや装置が複雑であることから,実用光源としては問題がある.一方でプラズマ光源 は小型で簡便であることから,高出力化が達成されれば実用光源となる可能性がある. これまでに次世代リソグラフィー光源として錫 (Sn) プラズマを用いる波長 13.5 nm の プ ラ ズ マ 光 源 が 研 究 さ れ , プ ラ ズ マ 光 源 の 有 用 性 が 示 さ れ た . Sn プ ラ ズ マ か ら の 発光は 4d-4f,4p-4d 及び 4d-5p 遷移による数十万もの共鳴線が波長 13.5 nm 近傍に 集 中 し た 擬 似 連 続 ス ペ ク ト ル (unresolved transition array: UTA) と な る こ と に よ り , 強 い 発 光 を 有 す る こ と が 光 源 と し て 期 待 さ れ て い る 理 由 の 一 つ で あ る . こ の UTA の ピーク波長は原子番号に依存し短波長化することが明らかにされており,より大きな 原子番号の元素を用いることにより,さらに短い波長領域に光源を実現できる可能性 が指摘されている. 本 論 文 で は 以 上 の こ と を 背 景 と し て 行 わ れ た 高 原 子 番 号 プ ラ ズ マ を 用 い る 極 端 紫 外 及び軟 X 線光源に関する研究の結果をまとめている. 第一章では,EUV 光源及び軟 X 線光源の研究背景,本研究の意義を述べている. 第 二 章 で は , 本 研 究 を 理 解 す る に あ た り 重 要 と な る レ ー ザ ー 生 成 プ ラ ズ マ の 物 理 過 程及びプラズマ中での原子過程について述べている. 第三章では本研究で用いられた個々の実験装置について述べている. 第 四 章 で は , Gd( ガ ド リ ニ ウ ム ) プ ラ ズ マ を 吸 収 体 に 用 い た 吸 収 分 光 実 験 の 観 測 結 果 及 び 考 察 に つ い て 述 べ て い る . Gd の 低 価 数 イ オ ン は 波 長 8 nm 近 傍 に 4d 巨 大 共 鳴を持つことが先行研究により指摘されており,本研究では二つのレーザー生成プラ ズマを用いる実験手法 (Dual laser plasma: DLP) により,Gd の吸収スペクトルを観測 した.観測された吸収スペクトルは波長 8 nm のみならず,Gd の放射波長である 6.x nm 帯 ま で 広 が っ て お り , 実 用 光 源 開 発 に お い て は こ の 吸 収 の 効 果 を 抑 制 す る こ と が 重要である事を示した. 第 五 章 , 第 六 章 及 び 第 七 章 で は , Bi( ビ ス マ ス ) プ ラ ズ マ か ら の 放 射 ス ペ ク ト ル 観 測 実 験 , 二 重 パ ル ス 照 射 実 験 及 び Bi プ ラ ズ マ を 吸 収 体 に 用 い た 吸 収 分 光 実 験 に つ い て 述 べ て い る . Bi プ ラ ズ マ か ら 波 長 約 4 nm に お い て 4d-4f 遷 移 に 起 因 す る UTA 放射が観測された.しかなしながら理論計算により予測された 4p-4d 遷移による波長 約 3 nm の強い発光は,二重パル照射実験においても観測されなかった.吸収分光実 験では DLP 法により波長 2-25 nm の吸収スペクトルを観測し,理論計算との比較検 討を行い吸収断面積や 4f-nd (6 ≦ n ≦ 10) などの吸収線を同定した. 第八章ではこれまで得られた結果、特に本研究により明らかにされた Gd プラズマ の吸収特性や Bi の放射及び吸収特性は,実用光源開発において非常に重要な知見で ある.
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