ベクトル解析 演習問題 2 2014 年度前期 工学部・未来科学部 2 年 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) ※レポートを提出したい人は、以下の注意点を守って提出して下さい。 (ⅰ) 必ず分かるところに学籍番号、学科、氏名を書いて下さい。 (ⅱ) A4 の紙を用いて、複数枚になる場合はホチキスや針無しステープラーで綴じて下さい。 (ⅲ) 提出期限は 次回の講義の開始前迄 とします。 問題 2-1. 以下の平面ベクトル場の様子を xy 平面内に図示しなさい。 ( (1) A(x, y) = y ) . −x ( ) x (2) A(x, y) = . y ( ) 0 (3) A(x, y) = . −x2 問題 2-2. xyz 空間上のスカラー場 f (x, y, z) = exy−z を考える。 2 方向の方向微分係数 ∂f (x0 , y0 , z0 ) を定義に (1) 点 (x0 , y0 , z0 ) に於けるベクトル v = −1 ∂v 1 従って計算しなさい。 ∂f f (x0 + 2∆t, y0 − ∆t, z0 + ∆t) − f (x0 , y0 , z0 ) (x0 , y0 , z0 ) = lim を計算する際 ∆t→0 ∂v ∆t 2 に、(∆t) の部分は無視してしまって良い) (ヒント: (2) 偏微分係数 fx (x0 , y0 , z0 ), fy (x0 , y0 , z0 ), fz (x0 , y0 , z0 ) を計算し、実際に fx (x0 , y0 , z0 ) ∂f (x0 , y0 , z0 ) = fy (x0 , y0 , z0 ) · v ∂v fz (x0 , y0 , z0 ) が成立していることを確かめなさい。 ※ (x0 , y0 , z0 ) という、座標が文字となっている点の表記が分かりにくい人は、(x0 , y0 , z0 ) = (1, 2, 3) など、具体的な点の座標の場合に計算しても構いません。 1 【略解】 問題 2-1. 以下の図では、点 (x, y) に対応するベクトル場 A(x, y) を、A(x, y) の中点が点 (x, y) に重なる 様に描いています。 ( (1) A(x, y) = y ) −x . ( ) x (2) A(x, y) = . y 2 ( (3) A(x, y) = 0 −x2 ) . 【解説】 ベクトル場の図示の問題。ベクトル場を定義する式を見てもいまいちどのようなも のか実感が湧かない場合には、このように座標平面上の代表的な点で対応するベクトルを描い てみると、ベクトル場を視覚的に捉えることが出来て理解が深まるでしょう。 但し、ベクトル場を図示する際に、精確に描こうとすると (特にベクトルの大きさをきちん と測って描こうとすると) あっという間に図がぐちゃぐちゃになってしまいます。そのため、 このような図示はあくまでベクトル場の理解を助けるための「視覚的なイメージ図」として割 り切って考えることも大切です。 概ね出来は良好でしたが、例えば (3) で「横向き」の矢印を描いている等 x 成分と y 成分 が逆のベクトルを描いてしまっている人や、そもそもベクトル場の図示の仕方があまりよく分 かっていない人もちらほら見受けられました。間違えた人は、例えば教科書の練習問題 3.1 等 をやってベクトル場の図示の仕方に慣れましょう。 3 問題 2-2. (1) 方向微分係数の定義から、 x0 x0 y0 + ∆tv − f y0 z0 z0 ∂f (x0 , y0 , z0 ) = lim ∆t→0 ∂v ∆t f (x0 + 2∆t, y0 − ∆t, z0 + ∆t) − f (x0 , y0 , z0 ) = lim ∆t→0 ∆t (x0 +2∆t)(y0 −∆t)−(z0 +∆t) e − ex0 y0 −z0 = lim ∆t→0 ∆t x0 y0 −z0 (−x0 +2y0 −1)∆t −2(∆t)2 e e e − ex0 y0 −z0 = lim ∆t→0 ∆t (−x0 +2y0 −1)∆t 2 e −1 = ex0 y0 −z0 lim (e−2(∆t) の項を無視した) ∆t→0 ∆t (−x0 + 2y0 − 1)(e(−x0 +2y0 −1)∆t − 1) = ex0 y0 −z0 lim ∆t→0 (−x0 + 2y0 − 1)∆t x0 y0 −z0 = (−x0 + 2y0 − 1)e . eh − 1 = 1 を用いた。 h→0 h 最後の等号では h = −x0 + 2y0 − 1 とおいて極限公式 lim (2) 各偏微分係数を計算すると fx (x0 , y0 , z0 ) = y0 ex0 y0 −z0 fy (x0 , y0 , z0 ) = x0 ex0 y0 −z0 fz (x0 , y0 , z0 ) = −ex0 y0 −z0 となる。したがって fx (x0 , y0 , z0 ) fy (x0 , y0 , z0 ) · v = y0 ex0 y0 −z0 · 2 + x0 ex0 y0 −z0 · (−1) + (−ex0 y0 −z0 ) · 1 fz (x0 , y0 , x0 ) = (−x0 + 2y0 − 1)ex0 y0 −z0 = ∂f (x0 , y0 , z0 ) ∂v 【解説】 スカラー場の方向微分の練習問題。方向微分に関してはかなり駆け足で説明してしま いましたので、また後日 (スカラー場,ベクトル場の微分演算を学ぶ際に) 改めて解説します。 一般に方向微分の計算は、定義通りに行おうとすると色々と技術的な極限計算を行う必要が あり、そんなに簡単なものではありません。一方で、スカラー場の偏微分の計算はそれほど難 しくない場合が多いので、公式 fx (x0 , y0 , z0 ) ∂f (x0 , y0 , z0 ) = fy (x0 , y0 , z0 ) · v ∂v fz (x0 , y0 , z0 ) を使えば多くの場合に簡単に方向微分が計算出来ます。(1) と (2) の計算をじっくり比較し て、この公式の有用性を噛み締めましょう。 4 やはり説明が駆け足になってしまったためそもそも手をつけていない人も多かったですが、 一方で完全正解の人も少なくありませんでした。お見事です。この問題に関しては、ベクトル 場、スカラー場の微分演算を講義で扱った後で類題をまた演習問題として出題しますので、分 からなかった人もひとまず保留にして勉強を進めて、また方向微分が出てきたら復習する、と いう方針で大丈夫だと思います。 気になったのは (2) で偏微分の計算自体を間違えている人が少なからずいたことでした。偏 微分はベクトル解析を学ぶ上では避けて通れない演算です。慣れてしまえば決して難しいもの ではありませんので、偏微分の計算に自信が無い人は今のうちに「微分積分学および演習Ⅱ」 の内容を簡単に復習しておくことをお薦めします。 5
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