国際比較のための構成概念を用いた ソーシャルメディア利用の実証研究 2014年9月21日(日) 社会情報学会2014年学会大会 本條晴一郎 NTTドコモモバイル社会研究所・客員研究員 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター・客員研究員 1 本報告のゴール • LINEが高コンテクストコミュニケーションと相性が良 いことを実証すること。 • 上記を含め、主要なソーシャルメディアが、それぞれ どのような人びとに利用されているかを仮説検証の 形で定量的に記述すること。 • どのソーシャルメディアを選択するかに加え、複数 のソーシャルメディアを利用していることがちがいを 生むことを示唆すること。 2 目次 ■目的 背景 ソーシャルメディア利用の規定因 研究課題 可視化のメリット ■先行研究と研究課題・仮説 ネット・リテラシー 文化的自己観 信頼 コンテクスト度 分析対象とするソーシャルメディア FacebookとLINEの特徴 研究課題と仮説 ■方法と結果 調査概要 サンプル特性 利用中のソーシャルメディア 質問項目 因子の抽出 構成概念一覧 性別によるちがい(t検定) ■研究1 研究1:各ソーシャルメディアの特徴 FB利用者と離脱者の比較 mixi利用者と離脱者の比較 Twitter利用者と離脱者の比較 LINE利用者と離脱者の比較 各ソーシャルメディアの利用者・離脱者比較のまとめ ■研究2 研究2:FB・LINE比較 FB・LINE比較:ネット操作力 FB・LINE比較:ネット操作力 FB・LINE比較:ネット・コミュニケーション力 FB・LINE比較:ネット懐疑志向 FB・LINE比較:相互独立的自己観 FB・LINE比較:相互協調的自己観 FB・LINE比較:一般的信頼 FB・LINE比較:パーソナルな信頼 FB・LINE比較:コンテクスト度 仮説検証の結果 複数ソーシャルメディア利用による交互作用効果は? ■結果とまとめ 結果 まとめと課題 参考文献 ■付録 パターン行列 削除項目一覧 3 目的 4 背景 現在、多様な人々がインターネットを利用している。 インターネット上では様々なサービスが提供されており、 利用者はそのうちの複数を利用する。 ソーシャルメディアに限っても、多種多様な生活者に対し て様々なソーシャルメディアが提供されている状況であ る。 どのようなユーザーがどのソーシャルメディアを利用する 傾向にあるかは自明な問題ではない。 5 ソーシャルメディア利用の規定因 • ユーザーの個別的特徴 • メディア特性(アーキテクチャなど) • 普及の歴史的経緯 6 研究課題 ユーザーの多様性×ソーシャルメディアの多様性 の関係を可視化したい。 ユーザーの多様性を、複数のメディアの利用実態ととも に定量的に測定することが必要。 ユーザーの多様性:国際比較のための構成概念に注目。 ソーシャルメディアの多様性:代表的なサービスに注目。 研究課題:ソーシャルメディアの選択・使い分けは、ネッ ト・リテラシーやコミュニケーションに対する態度とどのよ うに関係しているか。 7 可視化のメリット インターネット上でどこにどのような人がいるかわかる。 – 研究の調査対象を考えやすい。 – マーケティングのセグメンテーションを考えやすい。 リリースしたサービスがどこで流行りうるか、etc. 8 先行研究と研究課題・仮説 9 国際比較のための尺度 ネット・リテラシー(3因子) ネット操作力、ネット・コミュニケーション力、ネット懐 疑志向 文化的自己観(2因子) 相互独立的自己観、相互協調的自己観 信頼(2因子) 一般的信頼、パーソナルな信頼 コンテクスト度 10 ネット・リテラシー • 西川 et al.(2003) ネット操作力、ネット・コミュニケーション力、ネット懐疑 志向の3つの尺度を開発。 mixiを対象とした国内調査結果:離脱者は利用者に比 べてネット・コミュニケーション力が有意に低い。 Facebookを対象とした日本・米国・韓国の比較調査結 果:離脱者は利用者に比べて3つのネット・リテラシー が全て低い。 異なるソーシャルメディア利用の比較は研究スコープ 外。 11 文化的自己観(1/2) • Markus and Kitayama (1991) 相互独立的自己観: 自己は他者や周囲の出来事とは区別された独立した 存在。 自身の利益や目的が追求される。 欧米文化で優勢。 相互協調的自己観: 社会関係が重視される。 自己は他者や周囲の出来事と結びついた存在。 東アジア文化で優勢。 12 文化的自己観(2/2) • Choi and Gordon(2004) 文化的自己観を尺度化。 • 西川 et al. (2003) 相互協調的自己観のみをネット・リテラシーとともに測定。 ソーシャルメディア利用・離脱に関わる有意差なし。 13 信頼 • 山岸(1998) 一般的信頼:人間一般あるいは他者一般への信頼性 の高さ。 パーソナルな信頼:親しい相手に対する人間関係的な 信頼性の高さ。 • 藤原・木村(2009) 信頼を上記2つを混在させたものとして定義。 安心の尺度を信頼とは独立に定義。 結果:他者を信頼しつつ安心を強く求める人びとがSNS 利用に親和性がある。 14 コンテクスト度(1/3) • Hall (1977) 高コンテクスト文化: 背後にあるコンテクストを共有しコミュニケーション があうんの呼吸で成立する。 明示的に伝達されるメッセージに最少の情報しか 含まれないコミュニケーションがなされる。 認識が共有されていることが前提となり、メッセージ そのものだけからは意味が解釈できない。 非言語コミュニケーションが優勢になる。 例:日本、韓国。 15 コンテクスト度(2/3) 低コンテクスト文化: 全ての意図を明示的に伝達することが求められる。 言葉によって意味を明確に表した上で行われるコ ミュニケーションが行われる。 相手と認識が事前に共有されておらず,伝達する メッセージのなかに情報を盛り込む必要がある。 例:米国。 • Ohashi(2000) コンテクストの高低を尺度化。 16 コンテクスト度(3/3) • Richardson and Smith (2007) 社会的地位が上のものに対するコミュニケーションの メディア選択にコンテクストの高低がどのように影響を 与えるかを調査。 結果:対面、電話、e‐mail、ファックス、手紙の選択にお いて、コンテクスト度の影響は見出されない。 ソーシャルメディア利用にどのように影響するかは研 究スコープ外。 17 分析対象とするソーシャルメディア 日本で利用されている主たるソーシャルメディアを対 象とする。 • • • • Facebook mixi Twitter LINE 特にFacebookとLINEを比較する。 18 FacebookとLINEの特徴 • Facebook 米国発。 幅広い人びととの交流が念頭に置かれている。 実名で幅広い人びとに自分の活動をアピールできる。 • LINE 日本(韓国)発。 おたがいに電話番号を知っている程度の近しい相手と の交流に主眼が置かれている。 スマートフォンに特化してデザイン。 ハイコンテクスト文化のアラブ諸国で初期に普及。 19 研究課題と仮説(1/2) 研究課題・仮説 研究課題1 ネット・リテラシーを要求するソーシャルメディアと要求しないソーシャルメディアの区別を探る H1-1a LINEの利用者は離脱者に比べて、ネット操作力の平均値に有意な差がない H1-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、ネット・コミュニケーション力の平均値に有意な差がない H1-1c LINEの利用者は離脱者に比べて、ネット懐疑志向の平均値に有意な差がない H1-2a Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、ネット操作力の平均値が有意に高い H1-2b Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、ネット・コミュニケーション力の平均値が有意に高い H1-2c Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、ネット懐疑志向の平均値が有意に高い 研究課題2 文化的自己観を調べることで、他者とのコミュニケーションのためのソーシャルメディアと自分をアピールするための ソーシャルメディアの区別を探る H2-1a Facebookの利用者は離脱者に比べて、相互独立的自己観の平均値が有意に高い H2-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、相互協調的自己観の平均値が有意に高い H2-2a Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、相互独立的自己観の平均値が有意に高い H2-2b LINEの利用者はFacebookの利用者に比べて、相互協調的自己観の平均値が有意に高い 20 研究課題と仮説(2/2) 研究課題・仮説 研究課題3 信頼に関する尺度を調べることで、一般的な相手とのコミュニケーションのためのソーシャルメディアと仲間内のコミュニ ケーションのためのソーシャルメディアの区別を探る H3-1a Facebookの利用者は離脱者に比べて、一般的信頼の平均値が有意に高い H3-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、パーソナルな信頼の平均値が有意に高い H3-2a Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、一般的信頼の平均値が有意に高い H3-2b LINEの利用者はFacebookの利用者に比べて、パーソナルな信頼の平均値が有意に高い 研究課題4 コンテクスト度を調べることで、高コンテクストコミュニケーションに向いたソーシャルメディアと低コンテクストコミュニ ケーションに向いたソーシャルメディアの区別を探る H4-1a Facebookの利用者は離脱者に比べて、コンテクスト度の平均値が有意に低い H4-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、コンテクスト度の平均値が有意に高い H4-2 LINEの利用者はFacebookの利用者に比べて、コンテクスト度の平均値が有意に高い 21 方法と結果 22 調査概要 調査方法:Webアンケート調査 調査対象者:SNS利用経験者(Facebook、mixi、Twitter、 LINEのいずれかひとつ以上を現在か過去に利用したこ とのあるユーザ) サンプル数:1608(回収サンプル数:20001、対象サンプ ル数:11620(58.1%)) 割付条件:「総務省統計局平成22年度国勢調査結果」 に基づいた人口構成比(北海道、東北、関東、中部、近 畿、中国、四国、九州・沖縄の8地域×男女×10代、20 代、30代、40代、50代、60代以上) 調査会社:マクロミル 23 調査期間:2014年1月29日~30日 サンプル特性 年齢 12才〜19才 20才〜24才 25才〜29才 30才〜34才 35才〜39才 40才〜44才 男性 89 70 93 66 119 74 女性 87 62 117 79 110 82 計 176 132 210 145 229 156 45才〜49才 50才〜54才 55才〜59才 60才以上 70 71 55 111 58 66 48 81 128 137 103 192 計 818 790 1608 各ソーシャルメディアの利用割合(n=1608) 利用者 FB mixi Twitter LINE 離脱者 50.8% 27.2% 非利用者 10.4% 28.0% 45.4% 55.7% 38.8% 44.7% 11.3% 43.3% 2.6% 41.7% 24 利用中のソーシャルメディア 18.0% 16.0% 16.0% 14.0% 12.0% 10.0% 10.6% 9.4% 9.1% 9.3% 8.0% 8.0% 6.6% 6.5% 6.3% 6.0% 4.0% 2.0% 3.7% 3.7% 2.4% 1.8% 2.2% 1.9% 2.3% 0.0% 25 質問項目 ネット・リテラシー:10項目(ネット操作力4項目、ネット コミュニケーション力3項目、ネット懐疑志向3項目) 文化的自己観:6項目(相互独立的自己観3項目、相 互協調的自己観が3項目) 信頼:10項目(一般的信頼6項目、パーソナルな信頼4 項目) コンテクスト度:14項目 全40項目、7件法のリッカート尺度 26 因子の抽出 探索的因子分析(最尤法、プロマックス回転) 削除項目: 因子負荷量が0.40未満の項目 共通性が0.30未満の項目 複数の因子に0.40以上の負荷量を持つ項目 クロンバックの信頼性係数αが0.70未満になる項目 コンテクスト度を想定した項目が6項目削除対象。 事前の想定通りに8因子が抽出。 27 構成概念一覧(1/2) 構成概念 ネット操作力 ネット・コミュニケーション力 ネット懐疑志向 相互独立的自己観 相互協調的自己観 項目 平均値 標準偏差 NL1 自分はインターネットを使うことに精通している 4.48 1.32 NL2 自分はインターネットで情報を探すことに関して知識が深いと思う 4.47 1.30 NL3 インターネットで必要な情報を探すことができる 5.25 1.06 NL4 インターネット情報の真意が判断できる 4.37 1.17 NL5 インターネットで、新しい知り合いを作ることができる 3.44 1.60 NL6 インターネットで、見知らぬ人とのコミュニケーションを持つようにしている 2.99 1.63 NL7 インターネットで、積極的にコミュニケーションを行うことができる 3.24 1.59 NL8 概して、インターネットの情報は、それに関連する危険性の本当の姿を表せていない 4.68 1.15 NL9 インターネットで伝えられるメッセージは、現実を表していない 4.24 1.03 NL10 ほとんどのネット情報で示されることは、現実的ではない 3.98 1.01 CSC1 私は他の人と違う、個性的な行動をする 4.29 1.23 CSC2 独立心を持つことは私には大切なことである 4.69 1.20 CSC3 私は多くの点で他の人たちとは違い、個性的であるのが好きだ 4.34 1.24 CSC4 私にとって幸せとは自分の属するグループの皆が幸せだということだ 4.22 1.22 CSC5 私は皆といるときは、誰かの気を悪くしないよう発言に気をつける 4.61 1.18 CSC6 私は皆の期待に沿うように振舞うほうだ 4.33 1.15 信頼性α 0.86 0.92 0.77 0.80 0.71 28 構成概念一覧(2/2) 構成概念 一般的信頼 パーソナルな信頼 コンテクスト度 項目 平均値 標準偏差 GT1 ほとんどの人は基本的に正直である 4.01 1.29 GT2 ほとんどの人は信頼できる 3.80 1.29 GT3 ほとんどの人は基本的に善良で親切である 4.03 1.28 GT4 ほとんどの人は他人を信頼している 3.82 1.24 GT5 私は、人を信頼するほうである 4.28 1.33 GT6 たいていの人は人から信頼された場合、同じように相手を信頼する 4.50 1.22 PT1 知らない人よりも、知った人のほうがずっと信頼できる 4.96 1.17 PT2 何をするにつけ、知らない人とするよりも、よく知った人とするほうが安心できる 5.07 1.15 PT3 一般に、長くつきあっている人は、必要なときに助けてくれることが多い 4.82 1.23 PT4 私が信頼する人間は、長くつきあってきた相手である 4.92 1.24 HLC1 伝えたいことを全部言葉にしなくても、聞く側は話す側の意図がわかるはずだ 3.68 1.31 HLC4 話す側の意図は、厳密に説明しなくても、誤解されることはまずない 3.06 1.28 HLC5 人は、行間を読むことで、発言の意味を理解できるはずだ 3.96 1.17 HLC7 話す側は、自分の真意が聞く側に伝わると期待してよい 3.42 1.21 HLC8 人は、言葉にされなくても多くのことを理解できる 3.83 1.27 HLC9 言葉が少ないほうが、たいていよりよい理解につながる 3.37 1.22 HLC11 誤解が生じる原因は、話す側の不明瞭な話し方というより、聞く側の推察力不足であることが多い 3.89 1.13 HLC12 言葉が少ないほうが、より多くの情報が伝わる 3.25 1.26 信頼性α 0.91 0.87 0.87 29 性別によるちがい(t検定) 男性 女性 (n = 818) (n = 790) 平均 平均 ネット操作力 4.82 4.46 ネット・コミュニケーション力 3.43 3.01 ネット懐疑志向 4.30 4.29 相互独立的自己観 4.55 4.32 相互協調的自己観 4.31 4.47 一般的信頼 4.00 4.14 パーソナルな信頼 4.82 5.07 コンテクスト度 3.69 3.42 + p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001 ネット操作力 ネット・コミュニケーション力 相互独立的自己観 コンテクスト度 は男性が有意に高い。 t値 7.14 *** 5.67 *** 0.30 4.51 *** -3.52 *** -2.66 ** -5.06 *** 6.00 *** 相互協調的自己観 一般的信頼 パーソナルな信頼 は女性が有意に高い。 30 研究1 31 研究1:各ソーシャルメディアの特徴 各ソーシャルメディアの利用者と離脱者の特徴をt検 定によって比較する。 32 FB利用者と離脱者の比較 利用者 (n = 817) 離脱者 (n = 167) 平均 平均 t値 ネット操作力 4.78 4.63 1.67 + ネット・コミュニケーション力 3.52 2.89 4.85 *** ネット懐疑志向 4.37 4.27 1.23 相互独立的自己観 4.53 4.44 1.03 相互協調的自己観 4.43 4.39 0.43 一般的信頼 4.15 3.86 3.12 ** パーソナルな信頼 5.00 4.84 1.85 + コンテクスト度 3.62 3.44 2.21 * + p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001 33 mixi利用者と離脱者の比較 利用者 (n = 438) 離脱者 (n = 451) 平均 平均 t値 ネット操作力 4.76 4.70 0.88 ネット・コミュニケーション力 3.71 3.21 5.15 *** ネット懐疑志向 4.30 4.36 -0.97 相互独立的自己観 4.50 4.48 0.19 相互協調的自己観 4.43 4.49 -0.92 一般的信頼 4.04 4.07 -0.41 パーソナルな信頼 4.97 5.02 -0.69 コンテクスト度 3.55 3.50 0.87 + p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001 34 Twitter利用者と離脱者の比較 利用者 (n = 730) 離脱者 (n = 182) 平均 平均 t値 ネット操作力 4.83 4.67 1.92 + ネット・コミュニケーション力 3.66 3.01 5.43 *** ネット懐疑志向 4.33 4.37 -0.57 相互独立的自己観 4.53 4.47 0.69 相互協調的自己観 4.44 4.52 -0.99 一般的信頼 4.05 3.98 0.69 パーソナルな信頼 4.97 4.97 -0.02 コンテクスト度 3.60 3.53 1.01 + p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001 35 LINE利用者と離脱者の比較 利用者 (n = 896) 離脱者 (n = 42) 平均 平均 t値 ネット操作力 4.72 4.53 1.31 ネット・コミュニケーション力 3.31 3.02 1.10 ネット懐疑志向 4.35 4.15 1.37 相互独立的自己観 4.44 4.49 -0.31 相互協調的自己観 4.50 4.68 -1.50 一般的信頼 4.12 3.77 2.51 * パーソナルな信頼 5.04 4.79 1.56 コンテクスト度 3.67 3.31 2.90 ** + p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001 36 各ソーシャルメディアの 利用者・離脱者比較のまとめ • FB、Twitterはネット操作力が求められている。 • LINEのみネット・コミュニケーション力が求められて いない。 • LINEはネット・リテラシーが求められていない。 • FB、LINE利用者は一般的信頼が高い。 • FB利用者のみパーソナルな信頼が利用継続と関係 している。 • FB、LINE利用者はコンテクスト度が高い。 37 研究2 38 研究2:FB・LINE比較 二次元配置の分散分析によってFB利用者と非利用者、 LINE利用者と非利用者を比較する。 対象サンプルはFBとLINEのいずれかの利用者とする。 FB非利用者かつLINE非利用者が含まれないので交互 作用効果は算出できない。 上記非利用者はTwitter、mixiの少なくとも一方の利 用者となるので代表性および解釈が困難。 39 FB・LINE比較:ネット操作力 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 4.89 4.63 1.01 1.00 466 351 4.54 1.04 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 15.50 15.49 13.20 13.24 1284.80 1.03 1313.50 .01, *** p < .001 F値 14.99 *** 12.82 *** FB利用者、LINE利用者ともに非利用者に比べ てネット操作力が有意に高い。 40 FB・LINE比較:ネットコミュニケーション力 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 3.60 3.42 1.54 1.35 466 351 3.00 1.54 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 77.30 77.33 6.90 6.90 2761.20 2.22 2845.40 .01, *** p < .001 F値 34.84 *** 3.11 + FB利用者、LINE利用者ともに非利用者に 比べてネットコミュニケーション力が有意に 高い。 41 FB・LINE比較:ネット懐疑志向 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 4.39 4.34 0.91 0.83 466 351 4.31 0.89 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 0.90 0.90 0.60 0.58 969.40 0.78 970.90 .01, *** p < .001 F値 1.15 0.74 FB利用者、LINE利用者ともに非利用者と ネット懐疑志向に有意な差はない。 42 FB・LINE比較:相互独立的自己観 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 4.51 4.56 1.07 0.98 466 351 4.37 1.05 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 7.60 7.56 0.40 0.37 1341.10 1.08 1349.10 .01, *** p < .001 F値 7.01 ** 0.34 FB利用者は非利用者に比べて相互独立的 自己観が有意に高い。 43 FB・LINE比較:相互協調的自己観 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 4.58 4.24 0.94 0.91 466 351 4.42 0.97 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 0.00 0.02 22.10 22.07 1114.30 0.90 1136.40 .01, *** p < .001 F値 0.03 24.63 *** LINE利用者は非利用者に比べて相互協調的 自己観が有意に高い。 44 FB・LINE比較:一般的信頼 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 4.19 4.10 1.10 0.96 466 351 4.05 1.09 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 2.60 2.55 1.70 1.72 1392.30 1.12 1396.60 .01, *** p < .001 F値 2.28 1.54 FB利用者、LINE利用者ともに非利用者と 一般的信頼に有意な差はない。 45 FB・LINE比較:パーソナルな信頼 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 5.10 4.86 1.09 0.92 466 351 4.97 1.04 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 0.30 0.28 11.50 11.46 1313.90 1.06 1325.70 .01, *** p < .001 F値 0.27 10.85 ** LINE利用者は非利用者に比べてパーソナ ルな信頼が有意に高い。 46 FB・LINE比較:コンテクスト度 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 3.70 3.50 0.93 0.80 466 351 3.63 0.95 430 0 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 残差 1244 全体 1246 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 0.10 0.10 8.00 8.01 1015.20 0.82 1023.30 .01, *** p < .001 F値 0.13 9.82 ** LINE利用者は非利用者に比べてコンテク スト度が有意に高い。 47 仮説検証の結果(1/2) 研究課題・仮説 研究課題1 結果 ネット・リテラシーを要求するソーシャルメディアと要求しないソーシャルメディアの区別を探る H1-1a LINEの利用者は離脱者に比べて、ネット操作力の平均値に有意な差がない 支持 H1-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、ネット・コミュニケーション力の平均値に有意な差がない 支持 H1-1c LINEの利用者は離脱者に比べて、ネット懐疑志向の平均値に有意な差がない 支持 H1-2a Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、ネット操作力の平均値が有意に高い 棄却 H1-2b Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、ネット・コミュニケーション力の平均値が有意に高い 棄却 H1-2c Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、ネット懐疑志向の平均値が有意に高い 棄却 研究課題2 文化的自己観を調べることで、他者とのコミュニケーションのためのソーシャルメディアと自分をアピール するためのソーシャルメディアの区別を探る H2-1a Facebookの利用者は離脱者に比べて、相互独立的自己観の平均値が有意に高い 棄却 H2-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、相互協調的自己観の平均値が有意に高い 棄却 H2-2a Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、相互独立的自己観の平均値が有意に高い 支持 H2-2b LINEの利用者はFacebookの利用者に比べて、相互協調的自己観の平均値が有意に高い 支持 48 仮説検証の結果(2/2) 研究課題・仮説 研究課題3 結果 信頼に関する尺度を調べることで、一般的な相手とのコミュニケーションのためのソーシャルメディアと仲 間内のコミュニケーションのためのソーシャルメディアの区別を探る H3-1a Facebookの利用者は離脱者に比べて、一般的信頼の平均値が有意に高い 支持 H3-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、パーソナルな信頼の平均値が有意に高い 棄却 H3-2a Facebookの利用者はLINEの利用者に比べて、一般的信頼の平均値が有意に高い 棄却 H3-2b LINEの利用者はFacebookの利用者に比べて、パーソナルな信頼の平均値が有意に高い 支持 研究課題4 コンテクスト度を調べることで、高コンテクストコミュニケーションに向いたソーシャルメディアと低コンテクス トコミュニケーションに向いたソーシャルメディアの区別を探る H4-1a Facebookの利用者は離脱者に比べて、コンテクスト度の平均値が有意に低い 棄却 H4-1b LINEの利用者は離脱者に比べて、コンテクスト度の平均値が有意に高い 支持 H4-2 LINEの利用者はFacebookの利用者に比べて、コンテクスト度の平均値が有意に高い 支持 49 複数ソーシャルメディア利用による 交互作用効果は? FB・LINE比較:ネット操作力 平均値・標準偏差 利用 FB 非利用 平均 標準偏差 n 平均 標準偏差 n LINE 利用 非利用 4.89 4.63 1.01 1.00 466 351 4.54 4.47 1.04 0.97 430 361 分散分析表 要因 自由度 FB利用 1 LINE利用 1 交互作用 1 残差 1604 全体 1607 + p < .10, * p < .05, ** p < 平方和 平均平方 28.30 28.28 10.60 10.57 3.60 3.57 1623.10 1.01 1665.60 .01, *** p < .001 F値 27.94 *** 10.44 ** 3.52 + 今回の調査対象者全体に対して二次元配置の分散 分析を行ったところ、ネット操作力のみ交互作用が 観察された(※前述のように代表性はあやしい)。 →複数メディア利用によるちがいが存在し得る。 50 結果とまとめ 51 結果 • LINEが高コンテクストコミュニケーションと相性が良 いことを実証した。 • 主要なソーシャルメディアがそれぞれ、どのような 人々に利用されているかを仮説検証の形で定量的 に記述した。 • 複数のソーシャルメディアを利用していることによる 交互作用効果の存在を示唆した。 52 まとめと課題 • 国際比較のための構成概念はソーシャルメディアの 分類に有効である。 • 各ソーシャルメディアにおける具体的な行動との対 応付け および • 複数メディアの利用者の特徴の抽出 は今後の課題としたい。 53 参考文献 • • • • • • • • Choi, Yung Kyun, and Gordon E. Miracle (2004): “The effectiveness of comparative advertising in Korea and the United States: A cross‐cultural and individual‐level analysis.” Journal of Advertising 33.4, pp.75‐87. 藤原正弘,木村忠正 (2009):「インターネット利用行動と一般的信頼・不確実性回 避との関係」日本社会情報学会学会誌,第20号,pp.43‐55。 Hall, Edward T. (1977): Beyond culture, New York: Anchor Books. Markus, Hazel R., and Shinobu Kitayama (1991): “Culture and the self: Implications for cognition, emotion, and motivation.” Psychological Review 98.2, pp.224‐253. 西川英彦,岸谷和広,水越康介,金雲鎬 (2013):『ネット・リテラシー』白桃書房。 Ohashi, Rie. (2000): High/Low‐context Communication: Conceptualization and Scale Development, Diss. Michigan State University. Richardson, Rieko Maruta, and Smith, Sandi W. (2007): “The influence of high/low‐ context culture and power distance on choice of communication media: Students’ media choice to communicate with Professors in Japan and America”, International Journal of Intercultural Relations, 31(4), pp.479–501. 山岸俊男 (1998):『信頼の構造』東京大学出版会。 54 付録 55 パターン行列 I II III IV V VI VII VIII GT3 ほとんどの人は基本的に善良で親切である 項目 0.94 -0.01 -0.03 0.03 -0.02 -0.01 0.00 -0.02 GT2 ほとんどの人は信頼できる 0.94 0.01 -0.06 0.01 0.00 -0.01 -0.01 -0.04 GT4 ほとんどの人は他人を信頼している 0.87 0.06 -0.06 0.03 0.01 -0.03 0.00 0.01 GT1 ほとんどの人は基本的に正直である 0.83 0.03 -0.05 0.01 -0.03 0.01 -0.04 -0.04 GT5 私は、人を信頼するほうである 0.64 -0.05 0.07 -0.03 0.02 -0.01 0.02 0.07 GT6 たいていの人は人から信頼された場合、同じように相手を信頼する 0.48 -0.02 0.33 -0.04 -0.02 0.04 0.04 -0.02 HLC4 話す側の意図は、厳密に説明しなくても、誤解されることはまずない 0.05 0.79 -0.10 -0.02 0.04 -0.02 -0.03 -0.02 HLC7 話す側は、自分の真意が聞く側に伝わると期待してよい 0.01 0.77 0.07 0.01 -0.02 -0.03 -0.03 -0.03 HLC9 言葉が少ないほうが、たいていよりよい理解につながる 0.02 0.76 -0.07 -0.03 0.00 0.00 0.09 -0.02 HLC12 言葉が少ないほうが、より多くの情報が伝わる 0.03 0.71 -0.10 -0.04 0.06 0.00 0.06 -0.03 HLC1 伝えたいことを全部言葉にしなくても、聞く側は話す側の意図がわかるはずだ -0.04 0.65 0.05 0.08 -0.05 0.03 -0.04 0.00 HLC8 人は、言葉にされなくても多くのことを理解できる 0.00 0.60 0.10 0.05 -0.05 -0.01 -0.03 0.09 HLC5 人は、行間を読むことで、発言の意味を理解できるはずだ -0.04 0.57 0.13 0.04 -0.02 0.03 0.01 0.09 HLC11 誤解が生じる原因は、話す側の不明瞭な話し方というより、聞く側の推察力不足であることが多い -0.05 0.50 0.06 0.02 0.03 0.08 0.06 -0.03 PT2 何をするにつけ、知らない人とするよりも、よく知った人とするほうが安心できる -0.10 -0.05 0.92 -0.03 -0.01 -0.04 -0.04 -0.03 PT1 知らない人よりも、知った人のほうがずっと信頼できる -0.01 -0.01 0.88 -0.05 -0.02 -0.01 -0.04 -0.06 -0.03 PT4 私が信頼する人間は、長くつきあってきた相手である -0.02 0.00 0.76 -0.04 0.02 -0.03 -0.01 PT3 一般に、長くつきあっている人は、必要なときに助けてくれることが多い 0.02 0.01 0.75 -0.07 0.03 -0.01 0.03 0.03 NL2 自分はインターネットで情報を探すことに関して知識が深いと思う 0.04 -0.01 -0.12 0.98 -0.03 -0.01 -0.04 0.04 NL1 自分はインターネットを使うことに精通している 0.01 0.02 -0.08 0.90 0.01 -0.01 -0.03 -0.01 NL3 インターネットで必要な情報を探すことができる -0.04 -0.13 0.19 0.64 -0.06 0.00 0.06 0.04 NL4 インターネット情報の真意が判断できる 0.04 0.06 0.07 0.57 0.12 0.02 0.00 -0.08 NL6 インターネットで、見知らぬ人とのコミュニケーションを持つようにしている -0.02 0.04 -0.02 -0.06 0.93 -0.01 -0.04 0.01 NL5 インターネットで、新しい知り合いを作ることができる -0.01 -0.02 0.01 0.01 0.89 -0.01 -0.01 0.00 NL7 インターネットで、積極的にコミュニケーションを行うことができる 0.00 0.03 0.01 0.03 0.83 0.01 0.00 -0.01 CSC3 私は多くの点で他の人たちとは違い、個性的であるのが好きだ -0.01 0.00 -0.06 -0.01 -0.01 0.93 -0.04 -0.03 CSC1 私は他の人と違う、個性的な行動をする -0.04 0.02 -0.01 0.00 0.01 0.78 -0.01 -0.08 CSC2 独立心を持つことは私には大切なことである -0.01 -0.09 0.04 -0.01 -0.03 0.63 0.05 0.03 NL9 インターネットで伝えられるメッセージは、現実を表していない -0.02 0.02 -0.03 -0.03 -0.05 -0.01 0.94 -0.03 NL10 ほとんどのネット情報で示されることは、現実的ではない 0.01 0.11 -0.09 -0.07 0.01 -0.05 0.79 -0.01 NL8 概して、インターネットの情報は、それに関連する危険性の本当の姿を表せていない -0.02 -0.16 0.08 0.10 0.05 0.01 0.54 0.04 CSC6 私は皆の期待に沿うように振舞うほうだ -0.02 -0.02 -0.11 0.04 0.00 -0.06 -0.03 0.91 CSC5 私は皆といるときは、誰かの気を悪くしないよう発言に気をつける -0.10 -0.02 0.08 -0.01 -0.01 -0.01 -0.01 0.73 CSC4 私にとって幸せとは自分の属するグループの皆が幸せだということだ 0.18 0.00 0.01 -0.03 0.07 0.15 0.01 0.41 因子間相関 I II III IV V VI VII VIII I — 0.24 0.40 0.07 0.07 0.08 0.11 0.32 — 0.02 0.23 0.40 0.22 0.15 0.24 — 0.29 0.04 0.24 0.20 0.52 — 0.41 0.38 0.25 0.23 — 0.31 0.21 0.16 — 0.28 0.36 — 0.26 II III IV V VI VII VIII — 56 削除項目一覧 削除項目 平均値 標準偏差 HLC2 話す側は言いたいことを正確に説明しない限り、聞く側に真意が伝わると期待すべきでない 3.09 1.12 HLC3 聞く側は話す側のしゃべり方からその人の意図を読み取るべきだ 4.43 1.09 HLC6 はっきりと言葉にされない意図は、たいてい文脈から推測できる 4.09 1.12 HLC10 発言がなされた前後の文脈は、発言そのものと同じくらい、あるいはそれ以上に、多くの情報を含んでいる 4.48 1.07 HLC13 言葉にしないほうが、より理解されやすい考えもある 3.85 1.28 HLC14 発言の意味は、使われた言葉そのものよりも、前後の文脈を見るほうが分かりやすいことが多い 4.17 1.03 57
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