北海道草地研究会報 23:75-79( 1 9 8 9 ) 泥炭草地に j示ける客土層厚不斉ーによる不等沈下 伊藤憲治・菊地 緒 晃二(天北農試〉 - E司 泥炭草地における不等沈下は,草地の植生を維持するうえで,大きなマイナス要因になっている。その ため,不等沈下の発生防止やその修復は,泥炭草地の生産性を維持,向上するうえで重要な問題である。 泥炭地の不等沈下を招く原因として,排水に起因するもの,客土荷重によるもの,抜根によるものなど いくつか明らかにされている。今回,筆者らは,客土層厚の不斉ーが原因で生じる不等沈下を確認したの で報告する口 方 法 調査場所:浜頓別町頓別泥炭地 調査方法:草地の不等沈下発生部分における土壌断面調査 調査項目:土壌断面,容積重,三相分布,貫入抵抗,透水係数 結果および考察 泥炭草地において客土層厚が不斉一のため不等沈下が発生していると考えられる草地を選定し,その実 態調査を行った。調査方法としては,草地毎に基準点を設け,それぞれに直線を引いてレベル測量をした。 0 年目の高位泥炭からなる採草地 その結果を示したのが図 -1である。なお,調査した草地は,造成後約 1 である。図の黒い部分が沈下している部分で,その大きさは,幅が 51 0 m,深さが 1 0 15 c mであった。 r~ øtØ!~勿初予ルタ1'71I71/ðIÍ初功初ガ~'r , t \~d初iJl/ /111/11グ照宮~í ( f jl77i( 6 m 0 11ム m¥ 1 i [ 7 f 1 7 7 7 i T I I l I lT I f f I 7 7 / 1 1 7 7 / 初 か1 / / l l l l / 仰 み 川i ← cm l F 物qm 均 戸 可 グ ' / / . バ//pmTm ヤ i ( I m i i 7 T l / m / 7 i 7 / m川 市 川 町 一 1 →│ .70 80 / 1 , IF坊でが巧物勾ηï~刀??グ脚色'11.仰7々77和?山寸ナヘ ニ~ l~タ妨汚物初初防防初切開閉初押初方//初!fm'n1 2 Z1 ) .i 釜 LlJZ7;勿初fZf慨が物Zケl_mI17/(7叩 7mTl7T!1l7lIllì!~.í 、 、J 図 1 頓別泥炭地における不等沈下の発生状況 -75- J .Hokkaido Grassl .S c i . 23:75-79( 1 9 8 9 ) 次に, この不等沈下の原因が,客土不斉一によるものか否かを明らかにするために,図 1について, ラ ンダムに 2 0ケ所の不等沈下部を選んで試坑を堀り,客土層厚と沈下の深さの関係の調査を行った。その結 果を図 2に示した。この図から,客土の量は,非沈下部(凸部〉で厚く,沈下部(凹部)で薄く,本地区 の高位泥炭草地で発生している不等沈下は,客土層厚の不斉一によるものと判断した。 l j i J 議 鼠 ヌ 私 語 表3 5 f 所高7771 タア必~ 1 ; ; i i s タ/以似クc c g ; 隠 滅 瓦 双: ピィー事例NJ. w ! ; j号務所務務芳移譲努務 8 J j漆 崎 禰 幽 議f - l おふ議 :r万~~/;;:;:;;: 1;;州~: i / / 7 l / ; i μ川 m f J 合計 図 2 不等沈下部における土壌断面の状況 次に,図 1の草地の一部を取り上げ,沈下部と非沈下部の理学性のちがいを明らかにするための調査を 1 m,深さ 5 0 仰の土壌試坑を行い,その断面について各種調査を行った。図 行った。調査は,長さ 1 3は , その土壌断面の状況である。 図 3 客土層厚不斉によって発生した不等沈下部及びその周辺部の土壌断面図 図に示すように,地表面が盛り上がっている凸部では,客土が厚く, く,置土状態になっていた。一方,地表面が沈下している凹部では -76ー しかも,泥炭土の混入がみられな 客土が薄く,泥炭土に客土の小塊が 北海道草地研究会報 23:75-79( 19 8 9 ) 混在していた。両者の高低差は 1 Q1 5 e m 程度であり,このことから,沈下の深さは ,1 O1 5 c mということ になる。 なお,泥炭層に挟在する火山灰層が置土状態の部分で下方に湾曲していることからみて, この部分では 客土が,泥炭層に大きな荷重を加えていることが伺われた。 。10 。 /" / t 十 2 0 oi o o l o -t-,--,--,-r 0 ー0 一1 一0 一ー一一一一一- 一一ー 2 0 i q七-=_lf-J L斗 _J七 I " 土 層 kg/c I o:小コーン使用〉 貫入抵抗 C 、 " ~ -~ ~ ~\A二ユャー- ,1 I 一 半J ーヘーーー一卜 1 0 p _ι E与一二_¥.一一一二一斗ート 20 の 深 3 0 30 40 5 0 6 0-iーーーーーーーーーーーー一ーーーーー 図 4 客土層厚不斉によって発生した不等沈下及びその周辺部における 円錐貫入抵抗の垂直分布 先ず,沈下部と非沈下部の貫入抵抗について検討した。図 4は,図 3のV印で示した A--Gの各部分の 土壌貫入抵抗を測定した結果である。貫入抵抗は,客土層厚の厚い非沈下部で大きく,薄い沈下部で小さ 5 2 5仰のほぼ一定の深 く,客土層の厚さに対応した値を示していた。また,貫入抵抗の最大値は,深さ 1 さにみられた。 また,図 5は,図 3の囲印で示した部位,即ち,非沈下部の置土状態の Aと B,および沈下部の混合状 態の CとDの部分における土壌の容積重,三相分布,透水係数を測定した結果である。 ' では,乾土重で 1 5 5 . 容積重は,置土状態の部位で大きな値を示していた。とくに,客土層の厚い Aの a 6[}と著しく大きな値を示していた。これに対し,客土層が薄く,泥炭土との混合状態の部位では,乾土 重が 35 . 7} [-43 .2[}と著しく小さな値であった。 三相分布については,固相率が,置土状態の部位では大きく,混合状態の部位では小さな値を示してい '部位が最も大きな固相率を示していた。一方,液相率は,客土量の少ない混合状態の た。とくに, Aの a 不等沈下部で大きく,表層で 6 6 . 27 0 . 9%を示し,湿潤な土壌状態にあることが伺がわれた。 透水係数は,固相率の大きい部位ほど小さな値を示し,とくに, Aのイの部位が最も小さな値を示して いた。 したがって,土層 Aのどの部位においては,土壌が,大きな荷重によって圧密されて緊密化しているこ とが伺われた。 -77ー 19 8 9 ) J .Hokkaido Grassl .S c i . 23:75-79( 令一一一置土状態一一ーラ A 容積量 o B 1 0 0 2 0 0 0 1 0 0 D 0100 2 0 0 0100 2 0 0 (g/lOO C C) 出L J U E 3 E 1 i ぶ 渋 川n I\\~\\礼i ト ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 11 ト~\λWI 国青とは a 9.34x10-5 5.41x10-5 5.83x10-4 2.58x10-3 C 6.07x10-4 4.96x10-3 1 .91x10-3 2.24x1 0-3 5.83x1 0-3 2.23x1 0-3 4.38xl0-3 , 透水係数 a a'bpu 三相分布 5 0 混 合 状 態 一一一一歩 C 1 0 0 2 0 0 日 。 ← 一 一 ド以\\~I ドにく¥¥¥11 "\\\\\\~I 恥ふ¥ミ¥刊│ I7 原土 ~乾土→ 由州│ l↑ ↑ ↑ 固液気 相相相 ( K/20C ) 0 図 5 客土層厚不斉によって発生した不等沈下及びその周辺部 における,土壌の容積重,三相分布及び透水係数 以上の調査結果から 客土層厚の不斉一な草地で 見られる不等沈下は, 図 6のような機作によって発 生するものと推察された。 ① 先ず,泥炭地に客土の搬入が行われる。搬入さ ② 冬越し れる時期は,地耐力との関係で主に冬季に行われ る 。 ② 客土は,翌年の工事再開時まで圃場に堆積され る。そのため,堆積部分は,客土の重みによって 沈下する。 ③ 堆積された客土は,排土板によって圃場全体に 水平に拡散されるため,客土の厚い部分と薄い部 分が出来, その結果として,客土層厚の不斉ーが 生じる。 ④ 客土層厚が不斉一の状態で,撹はん耕起が行わ れる。耕起深は ,1 5 c m位で行われるため,客土の 厚い部分では,撹はんが泥炭層まで達しないので, 耕土層には泥炭が混入されず,下部の客土層は圧 密を受けて緊密化している。一方, 客土の薄い部 -78- 図 6 客土層厚不斉一による不等沈下の 発生機作(模式図) 北海道草地研究会報 23:75-79( 19 8 9 ) 分では,泥炭と客土とが混合され,膨軟となり,密度が小さい。 ⑤草地の経年化とともに,客土の薄いところは,農作業機の圧密や泥炭の分解などによって土層容積の 減少がみられ,その結果として沈下が生ずる。 まとめ 泥炭地を草地にするにあたって,客土は,地耐力の向上や土壌養分保持力を高めるのに大きな効果があ る。しかし,客土層厚の不斉一な草地造成が行われた場合は,不等沈下の発生を招き,植生悪化の原因に なる。本研究は, この泥炭草地の客土の効果を十分に発揮させるために,圃場における客土層厚の均一性 を高めるために更に細心の注意が必要であることを示唆しているものと考える。 すなわち,工事上やむを得ない場合もあると思われるが,客土の不均一化を防止するために,搬入した 客土をできるだけ広げて置くとか,あるいは,堆積後,直ちに散布出来るようにするための工法や時期の 検討が必要と考える。なお,本報告のように既に不等沈下が発生している草地については,不陸均らし工 法を中心とした修復改善対策が有効と考える。 -79ー
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