水素結合錯体形成を介した 8‐ニトログアノシンに対する 共有結合捕捉

第 24 回福岡シンポジウム Poster 発表要旨
水素結合錯体形成を介した 8‐ニトログアノシンに対する
共有結合捕捉分子の開発
Efficient Covalent Capture of 8-Nitroguanosine via a Multiple
Hydrogen-Bonded Complex
渕
靖史、佐々木
茂貴(九大院薬)
8-ニトログアノシン (8-nitroG) は、酸化ストレスである活性窒素種によってグアノシン (dG) が
酸化され生成し、酸化ストレス指標の分子マーカーとなっている。また誘導体の 8-nitro-cGMP は生
体中でチオール基と付加体を形成する「S-グアニル化反応」が見出され、細胞内シグナル伝達物質
としての機能について近年注目を集めている。そこで本研究では 8-nitroG をターゲットとし、共有
結合的に捕捉する分子プローブを開発することを最終的な目的とした。
当研究室では、dG に対して高い結合親和性を有する Urea-G-clamp を開発した 1)。本研究では
8-nitroG と dG の 7 位が同一構造であることに着目し、Urea-G-clamp の末端にチオール基を導入し
た分子 “nitroG-Grasp”を設計した (Fig 1.)。この分子は 8-nitroG を水素結合認識し、分子近接効
果により捕捉反応を促進することを期待した。反応点への距離を検討するために、チオールまでの
炭素鎖 C2、C3、C4 リンカー体を合成した。合成した nitroG-Grasp 誘導体と 8-nitroG を用いて有機
溶媒中で反応を検討した結果、アセトニトリル溶液中にトリエチルアミンを加えることによって反
応開始することを見出した。反応を HPLC で追跡した結果、C3 体では反応開始わずか 20 分後にほ
ぼ原料消失することが確認された。同じ反応条件下で C2、C3、C4 体の反応性を比較したところ、
反応性は C3 > C2 > C4 となった (Fig 2.)。またコントロールとして、8-nitroG を認識する部位をも
たないチオールとの反応を追跡した結果、非常に反応性が低いことが示された。これらの結果より
nitroG-Grasp は、水素結合錯体形成を介して効率的に 8-nitroG を捕捉することを見出した。また反
応速度を UV-Vis 測定によって算出して速度論的に解析した結果、C3-nitroG-Grasp による捕捉反応
はエンタルピー的及びエントロピー的に有利であることが示された 2)。
Fig1. Molecular design of nitroG-Grasp
Fig 2. Comparison of nitroG-Grasp reactivity
<参考文献>
1)Li, Z.; Nakagawa, O.; Koga, Y.; Taniguchi, Y.; Sasaki, S. Bioorg. Med. Chem. 2010, 18,
3992–3998.
2)Fuchi, Y.; Sasaki, S. Org. Lett., 2014, in press
発表者紹介
氏名
渕
靖史(ふち
所属
九州大学大学院
やすふみ)
薬学府
創薬科学専攻
学年
博士後期課程 3 年
研究室
生物有機合成化学分野
佐々木研究室