2 . 2 . 脈動と波浪 1 1 〔文献〕 (1) 坂田勝茂:脈動の研究(第 3報) 験震時報 1 1( 1 9 4 1 ),5 1 8 5 2 9 . (2) 鷺坂清信ほか 5名:台風による地盤脈動の調査,中央気象台秘密気象報告 6( 1 9 4 3 ) . (3) 川瀬三郎ほか 2名:脈動の研究(台北における脈動),験震時報 1 2( 1 9 4 2 ),75~SO. (4) 波多正二:新潟における脈動について,験震時報 1 6( 1 9 5 2 ),95~ 1 0 2 . (5) B e r n a r d :C.R .A e a d . Sci .P a r i s,2 0 5,1 6 3 . (6 " ) 樺沢 実:台風とうねりの関係について,研究時報 1 N o .7 . (7) 坂 田 勝 茂 L o c .c i t . 2 . 2脈動と波浪 井上宇胤帯広野卓蔵州村井五郎州持 ~ 1 . はしがき ft h eO r i g i no fMicroseisms": ( P h il .Trans. Longuet-H i g g i n sは,その論文,“A Theoryo Roy. S o c : LOll d o n,S e r .A 2 4 3,1 9 5 0 )の中で, H 反動は大洋上の表面波の干渉に起因する定常波に / 2であること よって起されるものであり,また,脈動の周期はそれらと関連した海洋波の周期の 1 を示した. かれは,また,干渉波の生ずる適当な条件は,低気圧中心付近で、起りうる,あるいは, 多分海岸 からの反射波があって干渉放を生ずるであろうという乙とを示唆した. この理論を確かめるため,われわれは, 1 9 5 2年 3月 1 6日から 1 0月 3 1日までの期間,東京の脈 動と東京の南方ゃく 60kmの城ケ島における波浪とを比較調査してみた. 脈動の振幅と周期の多くはワィーへ Jレト地震計 (V=100 ,T=5.0sx) の N S成分から 1時 間 ごとに読みとった. それらは18時のタイムマ{クの前後 5分間に得られた五つの卓越波列中の最大 , 波についての平均である.読みとり振幅は振動倍率で割って地面の変位に直した. 波浪の振幅と周 期は倍率 13 0 1 / 4 0,記録紙速度 5 . 5mm/minの圧力型波浪計の連続記録から 1時間ごとに海洋課 ", 0分間の最高波であり,周期は 10 分 において読みとったものである.波浪振幅もまた正時をはさむ 1 間の平均値である.かくして得られた結果によって,この調査の全期間にわたって, F i g .1,F i g .. 2 . のごときグラフを描いた ( F j g .1,F i g . 2はその一部で他は別項に集録しである). われわれはこ れらのグラフを基としてそれらの周期と振幅とを研究じた. S2 . 周 期 脈動の周期と波浪の 1 / 2周期とは, Fjg.1 で見られるように大変良く一致した.そじてこの二つ の周期間の関係は時にはいくらかのずれはあったけれども, なり良く保持されていた. 地震課長 気象研究所地震研究部長(当時地震課) 時骨北海道大学(当時地震課) 持 州 -11 ー われわれの調査した期間についてはか 時 1巻 報 2 J . lU 冊 験 震 1 2 , 、一./ し 仏、 v d c . ハ 1 0 門I A R ./ 6 2 0 / 7 。 2 1 1 9 5 2 c m 3 0 O MAR 2 2 F i g .1 . M i c r o s e i s m s .a t 'Tokyoa . 、 ndsurfa t] o g a s h i m a . EWES-芝 υ r切 。 :. s ~ ぺJ CJ n ' - e ! " ' : 1 勺 診 . JU t5 SEPT 1 2 1 9 5 2 1 3 / 4 。 1 7 1 5 , 、 ・ . ‘ ' ‘ 2 2 23 F i g .2 . D i t t o . showingnoagreemento fp e r i o d sbetweens w e l land' w i c r o s e i s m s . - 12- 。 , 1 3 2 . 2 . 脈動と波浪 しかし両者の差は, N l J 7 E R F ; 伊 7 り C u r v e s o f SWELLS , d M I C R O S E I 5 門5 -つれ, P e r i o d 40 脈動の振幅の減ずるに NU門B E R より大きくなるように思われる. 差 の 大 きい場合の一例は F i g :2f こ見られるように, 9 1 0 0 月1 8 2 0日に起っている. 上記の差の理由を明らかにするために, 3 0 われ われは,脈動ならびに波浪について, 9月 2 0日 2 C 5 0 1 3時までの 4時間内で種々な周期 の 9時から : 、 札 哩 別に孤立波列の発生数を数えた / 0 はマインカ地震計 ,V ='100, T=10s e c . を使用 4.‘ 6 作r i o d i nS e c, 内川 2 した). lu , AU o (脈動について かくして得られた発生のひん度分布は Fjg.3 に示した.すなわち,各卓越周期のまぎいだには, F i g . 3 2:1 な る 関 係 が 良 く 保 た れ て い る こ よ が わ か る.このことから理論は, この場合にもまた適 Fig.2 応されるとし、し、うるであろう. それで に示された二つの周期の明白な差は, 越振幅が長周期成分のものであり, 波浪の卓 一方,脈動 のそれが短周期成分のものであるとし、う事実に よって明らかにされる. L o n g u e t -H i g g i n s の理論,すなわち,脈動の 、振幅は,周期の二乗に逆比例するということは, この現象を本質的に説明しているようである." ところで, Fjg.1に見られる三つの発達した 脈動活動は,すべて Fig.4に示された A コー F i g . ' ;4 スに沿って太平洋を通過した低気圧に起因して いる.他方, Fjg.2に問題とされている脈動は高気圧が,本州ならびにその付近をおおって,低気 圧が日本から遠く離れたフィリピン諸島に位置し, 日本の南海岸に沿って激浪を送ってくるとき生 じたものである.〆 S3 . 振 幅 一般に脈弱jの振幅は低気,圧あるいは寒冷前線などが沿岸近く通過したとき, 波浪のそれと平行に 変化する.しかし,脈動嵐の山は必ずしもうねりのそれと同じときに起るとは限らたい. これらの ピークの時間間隔は時によって異なるそして脈動は時に先んじたり遅会したりする.、われわれは, この問題をここで取り扱わないで,これらの山の振幅の比率だけにとどめる.それで低気圧, ある いは寒冷前線などの通過によって生じた脈動と,それに対応する波浪の最大振幅は F i g .1,F i g .2 '-13- 時 報 2 1巻 J J I J 冊 験 震 1 4 などのグラフから読みとった.そして,前者を縦 H . 3 f ' Jτ、d H E一 A一 B z q ) む﹀ { 凶 ロ コ ヒt 号 世 同計 軸に後者を横軸にプロット Lた.たとえば, 3月 1 6日から 5月1 0日の期間をプロットしたものは, F i g . 5 'のようになった. F i g .5はプロットされ た点がおおよそ二つの線に沿って集まったこと を示している. そして,それによって, ⑨5 沿って集まる場合は一般に低気圧が, 上線に A コ{ス (Aタイプ)に沿って通過 Lたときに生じたもの・ であり,下線に沿って集まる場合は, 波浪がそ の他の天気状態によって著しく高められたとき nn ト有山内E ωEmozuE → │ │ }40 5 0 i g .5 に生じたものであることが注目される. F 5 0 c m に見られるように, O一一→ W A V EH E 'f ; . H Ta tJ O G AS H I M A A R . 1 6 -門A Y1 0,1 9 5 2 . 門 とは, J F i g . 5 二つの点群に分離されたこ 城ケ島の地理的位置の影響によって生じ ているとし、う懸念がある. なぜなら, A あるい は E タイプの低気圧が日本本土の東方太平洋上 を通過するとき, は発達する,のであるが, 芸 。 c 抗 運 ト5 0 、~-I ~ 主 ↑ 。 一 一 → (Fig.4参照) 城ケ島に直接には到達しない. ・F・ 。 〆 〆 a ・〆 J d継 〆3 1 v j f ?~<Yíl それで, この分離が生じたかもしれないという m J I〆 J~開拓 そのとき低気圧に付随 して発生した波浪は半島にかくれて位置する ' 1 , ' . 盟 房総半島を離れたのちに脈動 e 6 70 耳 切 5 ?~lqO ・ 仲間 WAV f .HE 1GHT . tC f l O S HJ .M A R . 1 6 M A Y1 0, 1 9 5 2 懸念がある. そこで, 城ケ島の波浪を房総半島東海岸にあ る銚子のそれと比較してみた.比較に際じては, F i g . 6 各天気状態に最犬の顧慮を払った. 銚子のデー グーは表面波が正しく表わされなし?が, その強さをあらまし判断するのに有効であるような普通の 検潮記録から得た結果を Fig~ 6に示した.それによって銚子における波浪が常に城ケ島におけるそ れよりもはるかに活発であることは注目される. F i g . 6の破線は同じような状態のもとで予測され るこか所の波浪振幅の関係を表わしている.それは A タイプ低気圧がそのコース中をだいたい γ 定した強さで通過するときのような,ほとんどにかよった天気状態である場合を参考にして措いた. i g .5でみられるように二つの線に分離しうる. 破線に沿ってならべられた多くの点は F たとえば, F i g .6の点 2 0と 2 7は銚子においてはあまり高くないうねりを生じさせる低気圧に起 因しており, それは F ig.5で上の線に沿って現れている. 一方, " Fi g .6において先の点 2 0と 2 7 4と 3 1とは,持続する南風に起因しており下の線に沿って見られる. の近くに示された点 1 寒冷前線に起因する脈動に関しては,比較的小規模で‘あるにかかわらず点 2 2,2 3,2 5は明らかに -14- 15 2 . 2 : 脈動と波浪 上の線に属しており,一方,点 1 7,3 5は下の線に属 Lている. 実際, これら二つの寒冷前線のグ i g ;5 のおのおのの線に属する低気圧に伴って生じた.このゆえに寒冷前線の純然たる ル{フ.は, F 影響を,低気圧のそれから分離することはむずかしししたがって,この調査から寒冷前線に関す る脈動に決定的結論を与えることは大変困難なことである. Fig.5の下の線に属する Aダイプの点 1 6と 3 4は太平洋岸に沿って東に向かつて通過し,けっきよくは房総半島沖合で衰えて消えてしまった低気圧と対応していることがわかゥた.このことは銚 F i g . . 6参照)発達しないという事実と一致する.他方において,点 7v こ 子の波浪が,この場合には ( ようて表わされる銚子の波浪は点 6のそれより大きいが(両者とも上の線に属しているように思わ れる),しかし,それによって起された脈動の振幅の大きさは全く逆である.この事実に L り,房総 半島の影響もあるが,波浪と脈動の振幅比は二種類あると考えることは妥当であろう.下の線は海 岸近くの波浪によって起された脈動を表わしているようであるとし、うのは,持続する南風に起因して いる点を含むからである.他方において,おもに A および E 型の低気圧を含む上の線は,日本本土 を離れて東方海上を通過する低気圧の,中心近くの波浪によって起される脈動を表わしているよう である,すで、に述べた A タイプの点 1 6,3 4がなぜ下の線に含まれたかの理由は,顕著な脈動を起 6 させる低気圧の中心域があまりに陸に近く通過したために,波の干渉を発達させなかったという事 実にあるようである.上の線に属する‘他の低気圧の場合において,東京の脈動が最大振幅に達した のは,常に房総半島を離れて通過した後で、あったことは注目せられる. 東京で脈動が来る方向は,その場合場合に応じ東海岸からであり,また,南海岸からでもある. 2 F i g .5の二つの線は ,A =O.14a2; A=O.43a としづ公式によって表わしうる.ここで ,A および G はそれぞれ脈動の振幅 ( μ ),および波浪の振幅 ( c m ) である. Longuet-H i g g i n sの理論で,A は 2 j T 2に比例するとあるがゆえに,われわれは a2 j T 2を横軸に ,Aを縦軸 ハーモニヌク波の場合に a i g .5 と同様な図形‘ にとった新しいダイヤグラムに, Fig.5で用いた点をプロットした.それで、 F 2 =2.0 α2 j T 2,A=O.25a j T 2で表わされる二直線によっ が得られた(図省略).それは二つの点群が A てほとんど表わされることを示している.前者は後者より 8倍大きい.脈動が発生する場所はこか 吟味から曜からしく思われる. 所あるということは上述の l 件onguet-Higginsがすでに示唆したよう に,一つは太平洋岸に沿った海底で、あり,他は低気,圧中心付近の海底である. 終りにあたり,城ケ島の波浪デ{グ{を貸与された中野博士,ならびに宇野木氏に感謝の意を表 します. - 1 5一 、
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