2014年10月11日幾何学概論2(藤岡敦担当)授業資料 1 §3. 微分方程式 微分方程式は自然現象や社会現象ばかりではなく, 曲線や曲面のような幾何学的対象を記述す る際にも現れる. 微分方程式に現れる未知関数は多変数や行列値でもよいが, 簡単のため, 未知 関数は実数値とし, 1 変数の微分方程式, すなわち常微分方程式を考えることにする. また, 関数 は連続あるいはある程度微分可能であるとし, 定義域についてははっきり述べないことにする. t, x1 , x2 , . . . , xn+1 の関数 F (t, x1 , x2 , . . . , xn+1 ) があたえられているとき, 未知関数 x(t) に対する 関係式 ( ) dx dn x F t, x, , . . . , n = 0 dt dt を常微分方程式または単に微分方程式という. このとき, n を階数という. また, n 回微分可能な t の関数 x(t) が上の式をみたすとき, x(t) を解という. 微分方程式は dx = f (t, x) dt と表されるとき, 正規形であるという. 正規形の微分方程式の中でも具体的に解くことのできる, すなわち解を求めることのできる例 を幾つか挙げよう. 例 (変数分離形) 正規形の微分方程式 dx = f (t)g(x) dt は変数分離形であるという. 右辺の f (t) は t のみの関数, g(x) は x のみの関数である. g(x) ̸= 0 とすると, 1 dx = f (t). g(x) dt 両辺を t で積分すると, 左辺に置換積分法を用いると, ∫ 1 dx dt = g(x) dt ∫ dx = g(x) ∫ f (t)dt. ∫ f (t)dt が得られる. g(x0 ) = 0 をみたす定数 x0 が存在するときは, 定数関数 x(t) = x0 も上の微分方程式の解となる. 例 微分方程式 dx = tx dt は変数分離形である. x ̸= 0 とすると, ∫ dx = x ∫ tdt. よって, 1 log |x(t)| = t2 + C 2 (C ∈ R). すなわち, 1 2 x(t) = ±eC e 2 t . §3. 微分方程式 2 ±eC を改めて C とおくと, C ̸= 0 で, 1 2 x(t) = Ce 2 t . これは C = 0 のときも解である. 例 (同次形) 正規形の微分方程式 (x) dx =f dt t は同次形であるという. まず, x t y= とおくと, x = ty. よって, f (y) = dx dt =y+t したがって, dy . dt dy f (y) − y = . dt t これは変数分離形である. 例 微分方程式 dx x = + dt t √ は同次形である. よって, y= x2 +1 t2 x t とおくと, √ y + y2 + 1 − y dy = dt t √ 2 y +1 = t だから, ∫ √ すなわち, dy y2 +1 ∫ = dt . t ( ) √ log y + y 2 + 1 = log |t| + C だから, y+ √ y 2 + 1 = ±eC t. (C ∈ R) §3. 微分方程式 3 ±eC を改めて C とおくと, C ̸= 0 で, y+ 更に, √ y 2 + 1 = Ct. (1) y 2 − (y 2 + 1) √ = Ct. y − y2 + 1 すなわち, y− √ y2 + 1 = − (1), (2) より, 1 . Ct (2) ( ) 1 Ct − . Ct 1 y= 2 したがって, 1 x(t) = 2 ( ) 1 2 Ct − . C 例 (線形) 正規形の微分方程式 dx = f (t)x + g(t) dt は線形であるという. 上の微分方程式を変形すると, e− ∫ f (t)dt dx dt すなわち, ∫ f (t)dt f (t)x = e− ∫ f (t)dt g(t). ∫ d ( − ∫ f (t)dt ) e x = e− f (t)dt g(t). dt よって, ∫ x(t) = e 例 − e− (∫ f (t)dt e − ∫ ) f (t)dt (C ∈ R). g(t)dt + C 微分方程式 dx =x+t dt は線形である. C ∈ R とすると, 解は ∫ x(t) = e (∫ dt − e ∫ ) dt tdt + C (∫ ) t −t =e e tdt + C ( ) ∫ t −t −t = e −e t + e dt + C ( ) = et −e−t t − e−t + C = −t − 1 + Cet . §3. 微分方程式 4 問題 3 1. 次の (1)∼(3) の微分方程式を解け. dx (1) = x2 sin t. dt dx x2 x (2) = 2 + − 1. dt t t 2t dx (3) = x + 2t. dt 1 + t2 2. α ∈ R, α ̸= 0, 1 とする. 正規形の微分方程式 dx = f (t)x + g(t)xα dt を Bernoulli の微分方程式という. (1) y = x1−α とおくことにより, 上の微分方程式を線形微分方程式に帰着させよ. (2) Bernoulli の微分方程式 dx 1 et = x+ 2 dt 3 3x を解け. 3. 正規形の微分方程式 dx = f (t)x2 + g(t)x + h(t) dt を Riccati の微分方程式という. x0 を上の微分方程式の 1 つの解とする. y = x − x0 とおく ことにより, 上の微分方程式を Bernoulli の微分方程式に帰着させよ. 4. 2 階の微分方程式 は線形であるという. y = 着させよ. d2 x dx + f (t) + g(t)x = 0 2 dt dt x′ とおくことにより, 上の微分方程式を Riccati の微分方程式に帰 x §3. 微分方程式 5 問題 3 の解答 1. (1) x ̸= 0 とすると, ∫ ∫ dx = x2 sin tdt. よって, − 1 = − cos t + C x(t) (C ∈ R). すなわち, x(t) = 1 cos t − C また, x(t) = 0 も解. (2) まず, y= x t とおくと, dy y2 + y − 1 − y = dt t y2 − 1 = t y2 = ̸ 1, すなわち x ̸= ±t とすると, ∫ ∫ dy dt = 2 y −1 t だから, 1 2 ∫ ( すなわち, 1 1 − y−1 y+1 ) dy = log |t| + C (C ∈ R). y − 1 1 = log |t| + C log 2 y + 1 だから, y−1 = ±e2C t2 . y+1 ±e2C を改めて C とおくと, C = ̸ 0 で, y= 1 + Ct2 . 1 − Ct2 よって, x(t) = t また, x(t) = ±t も解. (3) C ∈ R とすると, ∫ x(t) = e 2t dt 1+t2 (∫ 1 + Ct2 . 1 − Ct2 − e (∫ =e log(1+t2 ) ∫ 2t dt 1+t2 ) 2tdt + C ) e − log(1+t2 ) 2tdt + C (∫ ) 2t 2 = (1 + t ) dt + C 1 + t2 { } = (1 + t2 ) log(1 + t2 ) + C . §3. 微分方程式 6 2. (1) y = x1−α とおくと, dy dx = (1 − α)x−α dt dt −α = (1 − α)x (f (t)x + g(t)xα ) = (1 − α)f (t)x1−α + (1 − α)g(t). よって, dy = (1 − α)f (t)y + (1 − α)g(t). dt これは y に関する線形微分方程式. (2) y = x3 とおくと, dy = y + et . dt よって, C ∈ R とすると, (∫ ) ∫ ∫ dt − dt t y=e e e dt + C ) (∫ t −t t =e e e dt + C = et (t + C). したがって, { }1 x(t) = et (t + C) 3 . 3. x = y + x0 を代入すると, dy dx0 + = f (t)(y + x0 )2 + g(t)(y + x0 ) + h(t). dt dt よって, ( ) dy dx0 2 2 = f (t)y + (2f (t)x0 + g(t))y + f (t)x0 + g(t)x0 + h(t) − . dt dt x0 は解だから, dy = (2f (t)x0 + g(t))y + f (t)y 2 . dt これは y に関する Bernoulli の微分方程式. 4. y を微分すると, dy x′′ x − (x′ )2 = dt x2 1 = (−f (t)x′ − g(t)x) − y 2 x = −f (t)y − g(t) − y 2 . よって, dy = −y 2 − f (t)y − g(t). dt これは y に関する Riccatti の微分方程式.
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