(Srl-xCax) S: Cu, F 薄膜蛍光体の作製と発光特性に関する研究

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(Srl-xCax) S:Cu,F 薄膜蛍光体の作製と発光特性に関する
研究
江原, 摩美
静岡大学大学院電子科学研究科研究報告. 27, p. 158-160
2006-03-11
http://hdl.handle.net/10297/1191
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氏名 。(本 籍)
江
原
摩
学位 の 種 類
博
士
(工
学位 記番 号
工博 甲第
学位授与の日付
平成 17年 .3月 24日
学位授与の要件
研究科。
専攻の名称
学位規程第 5条 第 1項 該当
美
学)
270
電子科学研究科
(神 奈 川県)
号
電子応用工学
学位論文題目 (Srl_Ж C≒ )S:Cu,F薄 膜蛍光体 の作製 と発光特性 に関する研
究
論文審査委員
‐
(委 員長
)
教 授
天
明 二 郎
教 授
下 平 美 文
教 授
中 本 正 幸
教 授
中 西 洋一郎
論
文
内
容
の
要
旨
現在、情報 デイス プレイの中心 は、 ブラウン管 か ら液晶へ と替 わ りつつあるが、 さらにその液晶
の欠点を解決す る次世代 デイス プレイとして、エ レク トロル ミネッセンスディス プレイ (ELD)が あ
る。ELDの 残 された課題 は、表示 のフルカラー化 である。現在、それは実現 しつつあるが、 フィル
ター レスで RGB発 光が得 られ、かつ単純 な構造 の材料 が望 まれてい る。
そ うい った点で (Srl_xCax)S:Cu,F固 容体蛍光体 は有望な材料 であ る。SrSと casの 組成比 を変化 さ
せて固溶体 を作 る ことで、Srs:cuの 478nmか らCas:cuの 413nmま で青色発光波長 を変化 で きる こ
とが知 られてい る。 さらに、発光中心 を ceに す ると緑色、Euに す ると赤色 の発光が得 られる。そ
のため、単一母体 でフイルター レスのフルカラー ELデ イス プ レイを実現 で きる可能性 がある。EL
素子へ の応用には蛍光体 の詳細 な解析 が必要であるため、本研究では EL素 子 の作製 とともに、蛍光
体 と薄膜 にお ける基礎研究 をお こなった。
蛍光体 の XRD測 定の結果か ら、面間隔距離 は混合比 に対 してリニアに変化 してお り、活性炭雰囲
気 中900° Cで 3時 間焼成す るこ とによ り、概 ね混合比通 りに固溶 した固溶体蛍光体 が得 られる こ と
がわか った。PL測 定 の結果か ら、casの 混合比 の増加 とともに、発光 ピー ク位置 は短波長側 にシフ
トし、474nmか ら417nmま での青色領域 で、発光 ピー ク位 置が変化す ることが確認 された。低温 に
おけるHJJ定 の結果 か らは、長波長成分 が Cas:Cuに 由来す るもの と、2つ 以上会合 した Cu+発 光
中心 に由来す るもの との 2種 あることが示唆 された。数種類 のスペ ク トルの成分 は、 ピー ク位置が
459,510,540,560nmの 少 な くとも4つ 存在す ることがわか った。
薄膜の XRDの 測定 の結果か ら、電子 ビーム蒸着 で作製 した薄膜 においても、面間隔距離 は混合比
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に対 してリニアに変化 してお り、概ね混合比通 りに固溶 した固溶体薄膜が得 られることがわかった。
PL測 定 の結果 では、Casの 混合比 の増加 とともに、発光 ピーク位置 は短波長側 にシフ トす る傾向が
あ つた。ただ し、Casの 混合比力洵∼50%ま での範囲では、 ピー ク位置 は近接 してお り、位置が逆転
す ることもあった。薄膜 の結晶性 と発光特性 は RTAに よ り向上 した。薄膜 の組成分析 の結果か ら、
Ar気 流中の RTA後 は薄膜中の硫黄が減少す ることがわかった。H2S気 流中の RTAを お こな うこと
によ り、薄膜中の硫黄 の減少 は解消 された。 しか しH2S気 流中において900° Cで 7分 以上 のアニー
ルをお こな うと、長波長成分 の強度が増加 した。薄膜が硫黄過剰 になると、2つ 以上会合 した Cu・ 発
光 中心 の形成 が進 み、長波長成分 の強度 が増加す る ことが示唆 された。 また、Srs:Cu,F薄 膜 と
(Sb.5CaO.5)S:Cu,F薄 膜 の比較 では、 (S恥 .5C匈 。
5)S:Cu,F薄 膜 のほ うに、2つ 以上会合 した Cu+発 光中
心が多 く存在す ることが示唆 された。約31011mと 約260nmで 励起 した場合、31011mで 励起す るほ う
が青色成分 の強度が増加す ることがわかった。薄膜 において も発光中心 は 4つ 以上存在 す ることが
わかった。
素子 の場合、Srs:Cu,Fを 発光層 に用 いたものか らは、47伽 皿 前後 にピークを持つ輝度31cd/m2、 色
度座標 (0.16,0.23)の 青色 の発光が得 られたが、それ以外 の固溶体あるい は CaS:cu,Fか らは、470111n
よ りも短波長 の青色発光 を得 ることはで きなか った。SrS:Cu,Fを 発光層 に用 いた素子が最 も高輝度
であ り、それ以外 の固溶体 あるいは CaS:cu,Fを 用 いた素子 は輝度 も伸 びなか ったd
(Srl_xCax)S:Cu,Fを 用 い た
EL素 子 において、短波長 の青色発光が得 られに くい原 因は、 この薄
膜中に、緑色領域 に発光 ピークをもつ発光中心が形成 されやすいことにある。 また、励起波長のエネ
ルギーの違いによって も、青色成分 の強度が増加 した り減少 した りす るのも素子 の発光波長 を制御 し
に くい要因のひとつである。EL素 子 を発光 させる際 に発光層 に与 えられるエ ネルギーは、緑色成分
を強める26伽 血 (4.8eV)付 近 にあることが実験結果 よ り示唆 された。32511m(3.8eV)付 近 のエ ネルギー
を発光層に与えることができれば、青色成分の増加や、より短波長の青色発光を得られるであろうこ
とも示唆された。
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論
文 審 査 結 果
の 要
旨
現在、情報 デイスプ レイは、ブラウン管から各種 デイス プレイヘ替わ りつつあるが、その中で、次
世代デイス プ レイとして、エ レク トロル ミネッセン トディス プレイ (ELD)が ある。近年、ELDの フ
ルカラー化が実現 しつつあるが、 フィルター レスで RGB発 光が得 られ、かつ単純 な組成 の材料が望
まれている。その観点 で、 (srl_xCas:cu,F固 溶体蛍光体 は Srs:cuの 478111nか ら Cas:cuの 41311m
まで青色域 を変化 させることができるので有望 な材料 である。さらに、発光中心をceに す ると緑色、
Euに す ると赤色 の発光が得 られる。従 つて、単一母体 でフルカラー ELデ イス プレイを実現 で きる
可能性がある。本研究ではこのような ELデ イス プレイの実現 を目指 して、蛍光体 と薄膜 における基
礎研究 を行 った。
蛍光体 の構造特性 の評価 から、活性炭雰囲気中900° Cで 3時 間焼成す ることによ り、概ね混合比通
りに固溶 した蛍光体が得 られることがわかった。 また、PL浪 J定 の結果か ら、casの 混合比 の増加 と
ともに、発光 ピー ク位置 は47411mか ら417111nま での青色領域 で、発光 ピー ク位置が変化す るこ と
が確認 された。低温 にお けるPL淑 1定 の結果か らは、長波長成分が Cas:cuに 由来す るもの と、 2つ
以上会合 した Cu+発 光中心 に由来す るものとの 2種 あるこ とが示唆 された。
薄膜蛍光体 の構造特性 の評価 から、蒸着 し、熱処理 した薄膜 において も、概ね混合比通 りに固溶 し
た薄膜が得 られることが示 された。一方、Casの 混合比 の増加 とともに、発光 は短波長側 にシフ ト
したが、casの 混合比力洵 ∼50%の 範囲では、 ピーク位置 は近接 していた。薄膜 の組成分析 の結果か
ら、Ar■ 1%H2S気 流中の熱処理 によ り、化学量論組成が改善 された。 しか し、薄膜が硫黄過剰 になる
と、複数個 の会合 した Cu+発 光中心 の形成が進 み、長波長成分 の強度が増加す ることが示 された。
薄膜
EL素 子 の場合、Srs:Cu,Fを 発光層 に用 い た ものか らは、470 nm前 後 に ピー クを持 つ輝
度31 cd/m2、 色度座標 (0。 16,0.23)の 青色 の発光 が得 られたが、それ以外 の固溶体や Cas:Cu,Fか
らは、470 nmよ り短波長の青色発光 を得 ることはで きなかった。(Srl_xCaS:Cu,FEL素 子 において、
短波長の青色発光が得 られに くい原因は、Cu+会 合中心 の存在 にあると思 われる。EL素 子 を励起す
る際 に発光層 に与 えられるエ ネルギーは、緑色成分 を強める26011m(4.8eV)付 近にあることが実験結
果 よ り示唆 された。325 11nl(3.8eV)付 近のエ ネルギーを発光層 に与 えることがで きれば、青色成分 の
増加や、 よ り短波長 の青色発光を得 られる可能性が示唆 された。
以上、本研究 の成果 は (Srl_xCax)S同 一母体 によるフルカラー薄膜 ELデ イス プレイの形成 に有益
な指針 を与 えるものであ り、工学上の寄与 は大 きい。 よって本論文 は博士 (工 学)を 授与す るに十分な
内容 を有す ると認 める。
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