中小企業の動向(2015 年新春号)

情報メモ No.26-124
中小企業の動向(2015 年新春号)
~『中小企業月次景況観測』 Quarterly Overview ~
2015 年 1 月 16 日
[
内
調査部[担当:高島 Tel:03-3246-9370]
容 ]
1 景況感 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.1 全般
1.2 業種別
1.3 回答別企業数、他機関調査
2 売上高 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
3 販売価格・仕入価格
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
4 採算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.1 採算状況
4.2 営業利益率、経常利益計画
5 金融環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
5.1
資金繰り
5.2
金融機関貸出態度、中小企業向け貸出
5
9
6 生産設備・設備投資 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11
7 雇用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12
8 消費税率引き上げ後の景況判断と雇用状況について・・
13
『中小企業月次景況観測』景況判断指数の推移
山
60
山
06/3
51.5
好転 55
谷
山 谷
07/3
50.4
13/10
50.8
14/3
53.5
50
悪化
45
14/12
46.7
40
35
11/4
36.1
30
09/1
24.8
25
20
04/09
05/1
06/1
07/1
08/1
09/1
10/1
(注)シャドーは景気後退期を示す
11/1
12/1
13/1
14/1
(年/月)
本資料は『中小企業月次景況観測』(2014 年 12 月調査)を中心に、最近の中小企業の動向をまとめたもので
す。項目によっては、官公庁や他機関の調査・統計資料も用いています。『中小企業月次景況観測』調査方法
の詳細等は、毎月の公表資料をご参照ください。
【ご注意】本資料は情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の決定につ
きましては、お客様ご自身の判断でなされますようお願い致します。文中の情報は信頼できると思われる各種資料・
データに基づいて作成しております。
-0-
中小企業の動向(2015 年新春号)
1 景況感
1.1
全般
○ 『中小企業月次景況観測』における 2014 年 12 月の景況判断指数は 46.7 となり、11 月
(47.7)から 1.0 ポイント低下。消費税率引き上げにより、景況判断指数は一時落ち込んだ後
持ち直しの動きが続いていたが、ここにきてもたつきが見られる。
急激な円安進行に伴う仕入価格の上昇や、非製造業における顕著な人手不足などが、景況
感持ち直しの動きを阻害している。
○ 先行き 2015 年 1 月(予測)は 47.3 と、12 月対比 0.6 ポイントの上昇となる見込みである。前
月より上昇する見込みであるものの、11 月、12 月に引き続き 50 を割り込む予測となっており、
先行きの見方は依然慎重である。
○ 以上から、2014 年 12 月の調査結果は「中小企業の景況感、改善にもたつき」とした。
(図表 1-1) 「中小企業月次景況観測」 景況判断指数の推移(全産業)
00/11~02/1
山
55
好転
山
12/4~12/11
08/2~09/3
山
山
谷
山
谷
14/3
53.5
山谷
50
上段:11月
下段:12月
45
47.7
↓
悪化
46.7
40
01/11
38.8
35
11/4
36.1
30
25
09/1
24.8
20
00/1
01/1
02/1
03/1
04/1
05/1
06/1
07/1
08/1
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
(年/月)
(注) 1:景況判断指数が 50 を上回っていれば企業の景況感が前月に比べ「好転」したことを表し、50 を下回っていれば
前月に比べ「悪化」したことを表す。
2:網掛けは景気後退期を示す。
(資料)商工中金「中小企業月次景況観測」
-1-
中小企業の動向(2015 年新春号)
1.2 業種別
○ 2014 年 12 月の景況判断指数を業種別にみると、製造業は 46.1(11 月 47.4)と、前月から
1.3 ポイント低下。非製造業は 47.2(11 月 47.8)と、前月から 0.6 ポイント低下。先行き 2015
年 1 月(予測)は、製造業が 45.8(12 月対比▲0.3 ポイント)、非製造業が 48.5(同+1.3 ポ
イント)を見込む。
○ 2014 年 12 月の景況判断指数を個別業種で見ると、4 業種が上昇、10 業種が低下、1 業種
が横ばいとなった。⑧電気機械、⑮サービスのうち情報通信、飲食店・宿泊の指数が、50
超となった。
○ 製造業のうち、「金属製品」は生産調整が続く自動車関連の受注が減少し、採算が大幅に
悪化。また「木材・木製品」は輸入木材価格の上昇により、需要は減っていても値上げに踏
み切らざるを得ないとの声が聞かれた。一方「電気機械」は、製造業の中で唯一 50 超となっ
た。人手不足や光熱費の高止まり等により、省力設備への投資ニーズが出始めている。
○ 「卸売」は前月時点の予測を大幅に下回った。繊維卸や木材卸を中心に、急激な円安の進
行により採算悪化が続く。一方、軽油価格の下落を追い風とした「トラック運送」、年末年始
の外食機会の増加や、訪日外国人需要を取り込んだ「飲食店・宿泊」が前月に引き続き堅
調である。
(図表 1-2-1) 「中小企業月次景況観測」 製造業・非製造業の景況判断指数の推移
好転
6
55
14/3
53.5
非製造業550社
14/3
53.6
上段:11月
下段:12月
50
非製造業
47.8
悪化
↓
45
47.2
製造業
40
47.4
01/9
40.4
35
01/12
35.8
↓
11/4
36.2
製造業450社
09/1
29.4
30
46.1
11/4
36.0
25
20
2004年9月以降
1000社ベースに正式移行
09/2
19.0
(年/月)
15
00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1
4
4
4
3
4
(注)、(資料)ともに、図表 1-1 に同じ。
-2-
中小企業の動向(2015 年新春号)
(図表 1-2-2) 景況判断指数の推移
全産業
1000社
製造業計
450社
非製造業計
550社
(製造業)
1 繊 維
50社
2 木材・木製品
50社
3 印 刷
50社
4 化 学
50社
5 鉄 鋼
50社
6 金属製品
50社
7 一般機械
50社
8 電気機械
50社
9 輸送用機械
50社
(非製造業)
10 建 設
50社
11 卸 売
100社
12 小 売
100社
13 不動産
50社
14 トラック運送
50社
15 サービス
200社
情報通信
50社
飲食店・宿泊
50社
その他のサービス
100社
2014/7
48.7
[ 49.6 ]
47.8
[ 49.2 ]
49.4
[ 49.8 ]
8
47.7
[ 48.7 ]
46.7
[ 46.7 ]
48.5
[ 50.3 ]
9
47.6
[ 50.6 ]
48.0
[ 50.1 ]
47.3
[ 50.9 ]
10
47.4
[ 50.1 ]
47.1
[ 50.8 ]
47.5
[ 49.5 ]
11
47.7
[ 48.6 ]
47.4
[ 47.7 ]
47.8
[ 49.3 ]
12
46.7
[ 48.6 ]
46.1
[ 47.0 ]
47.2
[ 49.9 ]
47
49
43
44
42
47
48
51
51
52
44
43
51
52
51
54
53
51
48
48
43
44
42
43
46
47
52
51
42
40
51
49
47
53
49
45
49
50
42
48
45
49
46
48
51
49
43
49
50
51
51
53
55
54
45
48
45
48
46
50
46
50
47
54
44
53
51
50
51
51
49
53
43
43
48
46
51
48
45
46
49
49
48
51
47
47
48
50
48
49
44
42
43
49
50
45
44
48
45
50
42
45
46
47
53
49
48
48
[
[
[
[
[
[
[
[
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
56
[ 52 ]
47.5
[ 50.0 ]
45.0
[ 48.0 ]
51
[ 50 ]
48
[ 49 ]
50.8
[ 50.3 ]
51
[ 53 ]
52
[ 53 ]
50.0
[ 47.5 ]
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
51
[ 51 ]
44.5
[ 50.0 ]
45.0
[ 48.0 ]
48
[ 51 ]
49
[ 48 ]
51.8
[ 51.8 ]
52
[ 51 ]
59
[ 56 ]
48.0
[ 50.0 ]
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
49
[ 50 ]
43.5
[ 53.0 ]
44.0
[ 47.5 ]
51
[ 52 ]
48
[ 52 ]
49.3
[ 51.3 ]
52
[ 55 ]
46
[ 49 ]
49.5
[ 50.5 ]
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
50
[ 50 ]
46.0
[ 49.0 ]
45.0
[ 49.5 ]
51
[ 51 ]
46
[ 50 ]
48.5
[ 49.3 ]
50
[ 49 ]
44
[ 47 ]
50.0
[ 50.5 ]
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
]
[
47
[ 48 ]
45.5
[ 47.0 ]
43.5
[ 48.0 ]
51
[ 52 ]
51
[ 51 ]
49.8
[ 50.3 ]
47
[ 51 ]
52
[ 50 ]
50.0
[ 50.0 ]
前月差 2015/1予測
▲ 1.0
47.3
▲ 1.3
45.8
▲ 0.6
48.5
+ 1.0
45
▲ 5.0
37
▲ 1.0
44
▲ 1.0
44
▲ 4.0
46
▲ 6.0
46
▲ 1.0
48
+ 5.0
51
0.0
51
+ 2.0
50
▲ 2.0
48.0
▲ 1.5
44.0
▲ 2.0
51
▲ 1.0
48
+ 0.2
50.0
+ 5.0
52
0.0
52
]
]
]
]
]
]
]
]
]
49
[ 49 ]
43.5
[ 49.5 ]
42.0
[ 46.0 ]
49
[ 50 ]
50
[ 51 ]
50.0
[ 52.0 ]
52
[ 54 ]
52
[ 55 ]
48.0
[ 49.5 ]
▲ 2.0
(注) 1.(図表 1-1 に同じ)
2.「予測」は調査月の翌月の景況判断を表す。
3.[ ]内の数値は、当該月の前月調査時点における予測値。
(資料)商工中金「中小企業月次景況観測」
-3-
中小企業の動向(2015 年新春号)
48.0
1.3 回答別企業数、他機関調査
○ 景況判断指数を構成する「好転」、「不変」、「悪化」の回答企業数をみると、2014 年 12 月は
1,000 社のうち 43 社が「好転」(前月差▲4 社)、109 社が「悪化」(前月差+15 社)と回答し
た。2015 年 1 月(予測)は、「好転」38 社(同▲5 社)、「悪化」93 社(同▲16 社)。
○ 『景気ウォッチャー調査』(2014 年 12 月調査、毎月)で景況感をみると、現状判断 DI は 45.2 とな
り、前月から 3.7 ポイント上昇し、5 か月ぶりの上昇となった。2~3 ヵ月先の景気の先行きに対
する先行き判断 DI は 46.7 と、前月から 2.7 ポイント上昇し、7 か月ぶりの上昇となった。
現状判断 DI(企業動向関連)は 46.6 と、前月から 2.0 ポイント上昇。先行き判断 DI(企業動
向関連)は 49.3 と前月から 3.2 ポイント上昇。9 月に 50 を下回って以降、横ばいを示す 50
を 4 ヵ月連続で下回った。内閣府はこの調査結果について、「景気は、このところ回復に弱さ
がみられる。先行きについては、物価上昇への懸念等が引き続きみられるものの、経済対策
や燃料価格低下への期待等がみられる」とまとめている。
(図表 1-3-1) 「中小企業月次景況観測」 好転、不変、悪化企業数の推移
(社) 1000
900
800
700
不変回答企業数
600
500
400
好転回答企業数
悪化回答企業数
300
200
100
0
05/1
06/1
07/1
08/1
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
(年/月)
(注)網掛けは景気後退期を示す。 (資料)商工中金「中小企業月次景況観測」
(図表 1-3-2) 内閣府「景気ウォッチャー」の各判断 DI の推移
60
60
50
50
40
40
30
30
20
現状判断DI
先行き判断DI
20
(年/月)
10
00/01 02/01 04/01 06/01 08/01 10/01 12/01 14/01
現状判断DI(企業動向関連)
(年/月)
先行き判断DI(企業動向関連)
10
00/01 02/01 04/01 06/01 08/01 10/01 12/01 14/01
(資料)内閣府「景気ウォッチャー調査」
景気ウォッチャー調査では、景気の現状、または、景気の先行きに対する 5 段階の判断に点数を与え、これら
を各回答区分の構成比(%)に乗じて、DIを算出している。50 が景気の分岐点を示す。
-4-
中小企業の動向(2015 年新春号)
2
売上高
○ 『中小企業月次景況観測』における 2014 年 11 月の売上高(建設・不動産を除く 900 社(以下
同))は前年同月比+0.6%(10 月同+3.5%)。先行きは、12 月(見込み)同+1.0%、1 月(予
測)同▲0.2%。売上高は、13 年 7 月以降 17 ヵ月連続で増加している。なお 1 月については、
前年が駆け込み需要により売上水準が高くなっていることから、マイナスとなる予測。売上水準
の推移(ピークである 2008 年 4 月を 100 とする)をみると、11 月は 92 となった。以降見込みと
予測を基に足伸ばしをすると、12 月 94、1 月 95 となり、水準は小幅に上昇する見通し。
○ 業種別に 11 月の売上高をみると、製造業は同+0.7%となり 17 ヵ月連続の増加。非製造業は
同+0.6%と、15 ヵ月連続の増加。
(図表 2-1) 「中小企業月次景況観測」 売上高(前年同月比、%)の推移
1
00/11~02/1
山
山
谷
谷
10
04/3
+5.8
5
上段 : 10月
下段 :11月
12/4~12/11
08/2~09/3
山谷
10/6
+9.4
07/4
+5.6
+3.5
↓
+0.6
00/6,8,12
+2.9
0
900社
(除く、建設、不動産)
-5
01/12
▲7.6
-10
-15
09/5,6
▲19.7
-20
00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1
(年/月)
(注)網掛けは景気後退期を示す。
(資料)商工中金「中小企業月次景況観測」
(図表 2-2) 「中小企業月次景況観測」 売上水準の推移
00/11~02/1
山
谷
100
08/2~09/3
山
12/4~12/11
谷
全産業(除く、建設、不動産)
山谷
上段: 10月
下段:11月
ピーク
08/4
100
95
90
94
↓
92
85
80
ボトム
09/6
79
75
70
00/6 01/6 02/6 03/6 04/6 05/6 06/6 07/6 08/6 09/6 10/6 11/6 12/6 13/6 14/06
個々の企業の売上規模の違いを排除した上で、ピーク時点(2008 年 4 月)を 100 として指数化した参考値。これによって各
調査対象企業の売上のピークと比較した平均的な水準を示している。(注)、(資料)ともに、図表 2-1 に同じ。
-5-
中小企業の動向(2015 年新春号)
3
販売価格・仕入価格
○ 『中小企業月次景況観測』における 2014 年 12 月の販売価格 DI(前月比「上昇」-「下落」)は
▲0.9 と、「下落」超に転じた。業種別にみると、製造業は▲1.1 と「下落」超幅が拡大し、非製
造業は▲0.7 と「下落」超に転じた。
○ 2014 年 12 月の仕入価格 DI(前月比「上昇」-「下落」)は+14.4 と、「上昇」超幅が拡大。製造業
は+20.4 と「上昇」超幅が拡大し、非製造業は+9.5 と「上昇」超幅が縮小した。
原油下落の影響から、トラック運送をはじめとした業種で仕入価格 DI が下落。それを受け
全産業の仕入価格 DI の上昇が一服していた。しかし足元で見ると円安の影響を受けやすい
繊維、木材・木製品において仕入価格 DI の上昇が加速しており、全産業の仕入価格 DI も
小幅に上昇している。
(図表 3-1) 「中小企業月次景況観測」 販売価格・仕入価格DIの推移
①販売価格・②仕入価格=「上昇」-「下落」の企業割合(%)
40
山
12/4~12/11
08/2~09/3
00/11~02/1
谷
山
谷
上段:11月
下段:12月
山 谷
35
08/7
+41.8
30
②仕入価格
+13.9
↓
+1 4.4
25
20
②仕入価格
15
08/6
+7.6
10
01/12
▲6.7
5
①販売価格
+0.2
↓
▲0 .9
0
-5
①販売価格
-10
-15
09/4
▲17.6
-20
00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1
(年/月)
5
(注)、(資料)ともに、図表
2-1 に同じ。
参考(図表 3-2) 消費者物価指数と国内企業物価指数の推移
5 (前年比%)
4
3
消費者物価指数
(前年比%)
10
総合
8
コア
6
4
2
2
1
0
0
-2
-4
-1
-6
-2
-3
00/01 02/01 04/01 06/01 08/01 10/01 12/01 14/01
国内企業物価指数
-8
-10
00/01 02/01 04/01 06/01 08/01 10/01 12/01 14/01
(注)消費者物価指数のコアとは、生鮮食品を除く総合。消費者物価指数、国内企業物価指数とも 2010 年基準。
消費者物価指数、国内企業物価指数は 2014 年 11 月まで。
(資料)総務省「消費者物価指数」、日本銀行「国内企業物価指数」
-6-
中小企業の動向(2015 年新春号)
4
採算
4.1 採算状況
○ 『中小企業月次景況観測』における 2014 年 12 月の採算状況 DI(前月比「好転」-「悪化」)は
▲8.6 となり、前月から「悪化」超幅が拡大した。業種別では、製造業は▲11.3 と「悪化」超幅
が拡大、非製造業は▲6.4 と「悪化」超幅が縮小した。製造業では、「金属製品」で生産調整
が続く自動車関連の受注減少により、採算が大幅に悪化。
○ 日本政策金融公庫総合研究所の『中小企業景況調査』(2014 年 12 月調査、毎月)によると、中小
企業の利益額DI(「増加」-「減少」、季節調整値)は▲3.1 と、前月(3.5 )から 6.6 ポイント低下し
た。最終需要分野別にみると、衣生活関連や家電関連、食生活関連などで低下している。
(図表 4-1-1) 「中小企業月次景況観測」 採算状況DIの推移
5
上段:11月
下段:12月
0
-5
-10
04/3
▲2.2
-15
③採算状況
▲6.9
↓
▲8 .6
③採算状況
-20
-25
-30
09/2
▲35.1
-35
-40
③採算状況=「好転」-「悪化」の企業割合(%)
00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1
(年/月)
(注)、(資料)ともに、図表 2-1 に同じ。
(図表 4-1-2) 「中小企業景況調査」 利益額DIの推移
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
00/01
02/01
04/01
06/01
08/01
10/01
12/01
14/01
(注)「増加」-「減少」企業割合、季節調整値。
(資料)日本政策金融公庫総合研究所「中小企業景況調査」
-7-
中小企業の動向(2015 年新春号)
4.2
営業利益率、経常利益計画
○ 『法人企業統計季報』の売上高営業利益率(中小企業、4 四半期後方移動平均)をみると、企業の
業績回復により改善傾向にあるが、足元ではやや一服感が見られる。
○
『日銀短観』(2014 年 12 月調査、四半期)における、2014 年度の経常利益計画(修正計画)は、全
規模・全産業は前年度比▲0.3%となった。中小企業・全産業は同▲3.7%。大企業、中堅企
業、中小企業の全産業で当初計画よりも上方修正された。
2014 年度の修正計画を規模別・業種別にみると、大企業・製造業は前年度比+0.4%、同・
非製造業は同+2.7%。中小企業・製造業は同+4.2%、同・非製造業は同▲6.4%。事業計
画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)は、2014 年度 103.36 円/ドルと、13
年度(99.17 円/ドル)から 4 円程度、円安を見込んでいる。
(図表 4-2-1) 「法人企業統計季報」 売上高営業利益率の推移(中小企業、4 四半期後方移動平均)
5
(%)
全産業
製造業
4
非製造業
3
2
1
0
-1
00/03
02/03
04/03
06/03
08/03
10/03
12/03
14/03
(注)資本金 0.1 億円以上 1 億円未満。2014 年 7-9 月期まで、4 四半期後方移動平均。
(資料)財務省「法人企業統計季報」
(図表 4-2-2) 日本銀行「短観」 経常利益計画(前年度比)
経常利益計画 ( %)
年度
2013
2014
(実績)
(計画)
前年度比
大企業
全産業
製造業
非製造業
中堅企業
全産業
製造業
非製造業
中小企業
全産業
製造業
非製造業
全規模
全産業
製造業
非製造業
35.0
48.7
24.6
14.2
25.4
9.0
19.7
15.3
21.3
28.4
40.9
20.8
修正率
前年度比
-
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
1.6
0.4
2.7
4.9
3.3
5.8
3.7
4.2
6.4
0.3
0.3
0.8
修正率
4.7
2.6
6.7
2.5
5.1
1.2
1.7
3.2
1.1
3.8
3.0
4.5
経常利益計画の推移
[中小企業(全産業)、前年度比)
(%)
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
-35
-40
7.2
1.7
19.7
11.1
1.0
7.1
-3.7
-0.1
-4.9
-5.3
2009年度
2011年度
2013年度
当初
計画
期中①
期中②
2010年度
2012年度
2014年度
期中③
実績
見込み
(12月)
(翌3月) (翌6月)
【修正計画】
(3月)
(6月)
(9月)
実績
※修正率は前回調査からのもの。
(注)大企業は資本金 10 億円以上、中小企業は資本金 0.2 億円以上 1 億円未満。修正率は、前回調査対比。
(資料)日本銀行「短観」
-8-
中小企業の動向(2015 年新春号)
5
金融環境
5.1
資金繰り
○ 『中小企業月次景況観測』における 2014 年 12 月の資金繰り DI(前月比「好転」-「悪化」)は
▲1.4 となり、前月から「悪化」超幅が縮小した。消費税率引き上げ後振れを伴いつつも、資
金繰り DI はほぼ横ばいの推移。
○ 『日銀短観』(2014 年 12 月調査、四半期)によると、中小企業の資金繰り判断 DI(「楽である」-「苦し
い」)は+2 となり、前回調査(+2)から横ばい。
○ 日本政策金融公庫総合研究所の『中小企業景況調査』(2014 年 12 月調査、毎月)によると、中小
企業の資金繰り DI(「余裕」-「窮屈」、季節調整値)は▲0.4 と、前月(1.2)から低下した。
(図表 5-1-1)「中小企業月次景況観測」 資金繰りDIの推移
5
05/10,06/4 +0.8
0
-5
上段:11月
下段:12月
-10
④資金繰り
-15
④資金繰り
-20
▲1.8
↓
▲1.4
-25
09/2
▲20.0
-30
-35
-40
④資金繰り=「好転」-「悪化」の企業割合(%)
00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1
(年/月)
(注)、(資料)ともに、図表 2-1 に同じ。
(図表 5-1-2) 「日銀短観」資金繰り判断 DI
30
(図表 5-1-3)「中小企業景況調査」資金繰り DI
大企業
20
10
0
-10
-20
中小企業
-30
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
(年/四半期)
(注)大企業・中小企業の定義は図表 4-2-2 に同じ。
(資料)日本銀行「短観」
(資料)日本政策金融公庫総合研究所「中小企業景況調査」
-9-
中小企業の動向(2015 年新春号)
5.2
金融機関貸出態度、中小企業向け貸出
○ 『日銀短観』(2014 年 12 月調査、四半期)における、金融機関の貸出態度判断 DI(中小企業)(「緩
い」-「厳しい」)は+12 と、前回調査(+12)から横ばい。
○ 日本政策金融公庫総合研究所の『中小企業景況調査』(2014 年 12 月調査、毎月)によると、金融
機関の貸出態度 DI(「緩和」-「厳しい」)は 39.8 と前月(37.6) から上昇。高い水準でおおむね
横ばいの推移が続いている。
○ 国内銀行の中小企業向け貸出は、2014 年 10 月は、171.4 兆円で前年同月比+2.0%。
都市銀行は 2013 年 7 月以降増加が続くものの、伸び率は縮小傾向。一方、地方銀行・地
方銀行Ⅱの伸び率は緩やかに加速している。
(図表 5-2-1)「日銀短観」貸出態度判断 DI
(図表 5-2-2)「中小企業景況調査」貸出態度 DI
40
大企業
30
20
10
0
-10
中小企業
-20
-30
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
(年/四半期)
(注)大企業・中小企業の定義は図表 4-2-2 に同じ。
(資料)日本銀行「短観」
(資料)日本政策金融公庫総合研究所「中小企業景況調査」
(図表 5-2-3) 中小企業向け銀行貸出残高前年比(末残)
(前年比%)
6
4
2
0
-2
地方銀行Ⅱ
地方銀行
都市銀行
国内銀行
-4
-6
-8
08/01
09/01
10/01
11/01
12/01
13/01
14/01
(月次:~14年10月)
(資料)日本銀行
(注)国内銀行は、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、その他(信託銀行 4 行、埼玉りそな銀行、新生銀行、あおぞら銀
行)。中小企業は法定中小企業。
(資料)日本銀行「預金・現金・貸出金」
- 10 -
中小企業の動向(2015 年新春号)
6
生産設備・設備投資
○ 『中小企業月次景況観測』における 2014 年 12 月の生産設備 DI(「不足」-「過剰」)は▲2.0 と
前月から「過剰」超幅が拡大した。
○ 『法人企業統計季報』によると、2014 年 7-9 月期の中小企業の設備投資実績(金融業、保険
業を除く)は、全産業で前年同期比+8.6%と 6 四半期連続して増加した。製造業は同 7.1%と
2014 年 4-6 月期の同▲12.1%からプラスに転じた。非製造業は同+9.1%と 6 四半期連続
の増加が続いている。
○ 『日銀短観』(2014 年 12 月調査、四半期)における、2014 年度の設備投資計画(12 月修正計画)
は、全規模・全産業は前年度比+5.5%、中小企業・全産業は同▲6.7%となった。中小企業
の設備投資計画は、前回調査よりも上方に修正されており、底堅さが見られる。
(図表 6-1) 「中小企業月次景況観測」 生産設備DIの推移
15
10
06/3,8,07/3
+4.2
⑥生産設備
5
0
⑥生産設備
-5
▲1.4
↓
▲2 .0
-10
-15
-20
-25
-30
⑥生産設備=「不足」-「過剰」の企業割合(%)
⑥生産設備は該当業種のみ
09/4
▲32.4
-35
(年/月)
00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1
(注)、(資料)ともに、図表 2-1 に同じ。
(図表 6-2)設備投資(前年比)の推移
(図表 6-3)設備投資計画の推移
設備投資計画(含む土地投資額)
100
80
(%)
年度
2013
(実績)
全産業
製造業
非製造業
60
大企業
修正率
-
前年度比
8.9
11.4
修正率
0.2
-1.8
非製造業
全産業
製造業
4.4
3.6
-3.6
-
7.6
5.2
19.6
1.3
0.1
0.3
中小企業
非製造業
全産業
製造業
8.0
21.0
13.9
-
-2.6
-6.7
7.9
-0.1
7.1
9.6
全規模
非製造業
全産業
製造業
24.5
5.6
0.5
-
-13.2
5.5
12.2
5.8
1.2
0.3
非製造業
8.2
-
2.2
1.7
20
-20
-40
前年度比
2.5
-1.4
中堅企業
40
0
全産業
製造業
(%)
2014
(1 2 月 修正計画)
-60
00/03 02/03 04/03 06/03 08/03 10/03 12/03 14/03
※修正率は前回調査からのもの。
(注)資本金 1,000 万円以上 1 億円未満で中小企業を定義。 (注)(資料)ともに、図表 4-2-2 に同じ。
2014 年 7-9 月期まで。
図表 6-2 とは中小企業の定義が違うので注意。
(資料)財務省「法人企業統計季報」
- 11 -
中小企業の動向(2015 年新春号)
7
雇用
○ 『中小企業月次景況観測』における 2014 年 12 月の雇用状況 DI(「不足」-「過剰」)は+12.8
となり、バブル崩壊後、最も「不足」超幅が拡大した。業種別に見ると、製造業で+5.1、非製
造業で+19.1 となった。個別業種で見ても全業種で「不足」超となっており、特に「建設」、
「小売」、「サービス」の中でも「飲食店・宿泊」で人手不足を懸念する声が多く聞かれる。
○ 『景気ウォッチャー調査』(2014 年 12 月調査、毎月)の雇用関連DI(現状判断)は 49.0 と前月
(47.6)から上昇した。
○ 日本政策金融公庫総合研究所の『中小企業景況調査』(2014 年 12 月調査、毎月)によると、製造
業の従業員判断DI(「不足」-「過剰」、季節調整値)は 4.8 と前月(7.2)から低下した。業種別にみ
ると、繊維品製造業や出版・印刷業、金属製品製造業などで低下している。
(図表 7-1)「中小企業月次景況観測」 雇用状況DIの推移
15
14/12 +12.8
10
5
⑦雇用状況
⑦雇用状況
+12.3
↓
+12.8
0
-5
-10
-15
-20
-25
09/4
▲22.2
-30 ⑦雇用状況=「不足」-「過剰」の企業割合(%
(年/月)
-35
00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1
(注)、(資料)ともに、図表 2-1 に同じ。
(図表 7-2)雇用関連DIの推移
(図表 7-3)従業員判断DI(製造業)の推移
80
20
70
60
10
50
0
40
-10
30
-20
20
-30
10
-40
0
00/01 02/01 04/01 06/01 08/01 10/01 12/01 14/01
(資料)内閣府「景気ウォッチャー調査」
-50
00/01
02/01
04/01
06/01
08/01
10/01
12/01
14/01
(注)調査対象は製造業のみ。
(資料)日本政策金融公庫総合研究所「中小企業景況調査」
- 12 -
中小企業の動向(2015 年新春号)
8
消費税率引き上げ後の景況判断と雇用状況について
2012 年末から、政府の経済対策の効果や企業収益の改善により、景気は緩やかな回復基調
を辿った。しかし消費税率引き上げ後は、一部の業種で反動減が長引いたこともあり、景況感の回
復に後ずれが見られる。
本項では、個別業種毎に、消費税率引き上げ後の景況判断と雇用判断を確認する(図表 8-1)。
横軸に 2014 年 4~12 月の景況判断指数の平均値を、縦軸に同時期の雇用判断 DI をとり、両者
を比較している。グラフ右側に位置する業種は、景況感を「好転」とする企業、グラフ上側に位置す
る業種は、雇用状況を「不足」とする業種である。
グラフの通り、一部の業種を除いて両者の間には概ね相関が見られる。ただし、景況感が好転
と悪化の境目である 50 前後に位置する業種では雇用状況にばらつきがあり、景況判断指数の平
均値が同じ「飲食店・宿泊」と「電気機械」で、雇用状況 DI の平均値は 42 の差が見られた。
グラフ右上に位置する業種としては、飲食店・宿泊、建設、情報通信など非製造業が多い傾向
が見られる。左上に位置する小売は、消費税率引き上げ後の反動減の影響を強く受け、同じよう
な雇用状況 DI のトラック運送や情報通信と比較して、景気判断が弱く留まっている。一方グラフ左
下に位置する業種としては、木材・木製品、金属製品など製造業が多い傾向が見られる。これらの
業種は、消費税率引き上げ後の反動減や急激な円安進行などの影響を受け、景況感が弱く留ま
っており、また雇用状況 DI の不足超幅も弱く留まっている。
(図表 8-1) 個別業種の景況判断指数の分布
悪化
38
40
消費税率引き上げ後の景気判断
42
44
46
好転
48
50
52
54
45
景況判断指数(2014年4月~2014年12月平均値)
不
足
飲食店・宿泊
35
建設
25
小売
トラック運送
情報通信
その他サービス
15
全産業(1000社)
印刷
繊維
金属製品 卸売 化学
一般機械
輸送用機械
不動産
鉄鋼
消
費
税
率
引
き
上
げ
後
の
雇
用
状
況
5
木材・木製品
電気機械
-5
過
剰
雇用状況DI(2014年4月~2014年12月平均値)
-15
(資料)商工中金「中小企業月次景況観測」
- 13 -
中小企業の動向(2015 年新春号)