景気動向指数(DI)

景気動向指数(DI)
専修大学
経済統計学・経済の世界
作間逸雄
2006.7.7『日本経済新聞』
DIとは。
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DIは景気に敏感な複数の経済指標を選定し,そ
のうち上昇(拡張)を示している指標の割合を示
すものであり、景気局面の判断、予測と景気転
換点(景気の山・谷)の判定に用いる。先行・一
致・遅行の3指数がある。
DI=Diffusion Index (“diffusion”は、拡散、普
及、波及)
経済の様々な局面に景気が波及してゆくイメー
ジを数字(指数)にしている。二次統計である。
DIの作成方法
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採用系列の各月の値を3ヵ月前の値と比較して、
増加した時には+を、保合いの時には0を、減
少した時には-をつける。それを表にしたものが
「変化方向表」である。
その上で,先行,一致,遅行の各系列群ごとに,
採用系列数に占める拡張系列数(+の数)の割
合(%)をDIとする。
DI=拡張系列数/採用系列数×100(%)
(保合い(0)の場合は0.5としてカウントする)
DIの見方(1)
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DIには,景気に対し先行して動く先行指数,ほ
ぼ一致して動く一致指数,遅れて動く遅行指数
の3本の指数がある。
先行指数は,一般的に,一致指数に数ヵ月先行
することから,景気の動きを予知し,遅行指数は
一致指数に半年から1年遅行することから景気
の転換点や局面の確認に利用する。
Leading Index Coincident Index Lagging
Index
DIの見方(2)
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原理的には、DIが50%ラインを下から上に切る直前の月
が景気の谷,上から下に切る直前の月が景気の山に対応
あくまで、目安。大半の部門に景気変動が
する。
波及している(したがってDIが100%あるい
は0%に近い)ことを確認することが必要と
山
されている。
50%ライン
谷
変化方向表を作成する
3月
4月
5月
7月
符号の判定
系列(1)
99.5 99.8 100.5 100.3 +
系列(2)
逆サイクル
4.2
4.5
4.4
4.2
4.1
0
系列(3)
114
117
120
119
+
系列(4)
120
121
110
107
-
系列(5)
100
101
102
拡張系列数
/採用系列数
P62.5=2.5/4
採用系列一覧
L 先行系列 C 一致系列 Lg 遅行系列
•
L1 最終需要財在庫率指数(逆)
•
L2 鉱工業生産財在庫率指数(逆)
•
L3 新規求人数(除学卒)
•
L4 実質機械受注(船舶・電力を除く民需)
•
L5 新設住宅着工床面積
•
L6 耐久消費財出荷指数
•
L7 消費者態度指数
•
L8 日経商品指数(42種総合)
•
L9 長短金利差
•
L10 東証株価指数
•
L11 投資環境指数(製造業)
•
L12 中小企業売上げ見通しD.I.
•
C1 生産指数(鉱工業)
•
C2 鉱工業生産財出荷指数
•
C3 大口電力使用量
•
C4 稼働率指数(製造業)
•
C5 所定外労働時間指数(製造業)
•
C6 投資財出荷指数(除輸送機械)
•
C7 商業販売額(小売業)
•
C8 商業販売額(卸売業)
•
C9 営業利益(全産業)
•
C10 中小企業売上高(製造業)
•
C11 有効求人倍率(除学卒)
•
Lg1 第3次産業活動指数(対事業所サービス業)
•
Lg2 常用雇用指数(製造業)
•
Lg3 実質法人企業設備投資(全産業)
東証株価指数
大口電力使用量
完全失業率(逆)
DIの見方(3)
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景気拡大又は後退の期間が極めて短い場合は,景気拡
大又は後退と考えることは適当でない。
DIは、景気変動の大きさやテンポ(量感)を示すものでは
ない。
そのために、CI(Composite Index)もある。これは経済
指標の量的な動きを合成した指標であり,主として景気
変動の大きさやテンポ(量感)を測定するとされている。
基準年次を100とした指数である。
GDP統計とちがい、経済の変動をメカニズムとして捉え
るための統計ではない。
DIのグラフ(一致指数)
景気基準日付(1)
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内閣府経済社会総合研究所では,景気循環の
局面判断や各循環における経済活動の比較な
どのため,主要経済指標の中心的な転換点で
ある景気基準日付(山・谷)を設定している。
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景気基準日付は,一致DIの各採用系列から作
られるヒストリカルDIに基づき,景気動向指数研
究会での議論を経た後,経済社会総合研究所
長が設定する。
景気基準日付(2)
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このヒストリカルDIは,個々のDI採用系列ごとに山
と谷を設定し(これを特殊循環日付という),谷から
山にいたる期間はすべて上昇(プラス),山から谷
にいたる期間はすべて下降(マイナス)として,DI
を算出したものである。個々の系列の月々の不規
則な動きをならして変化方向を決めているため,
それから計算されるヒストリカルDIは比較的滑ら
かで,景気の基調的な動きを反映したものとなる。
一致指数の採用系列から作成したヒストリカルDI
が50%ラインを下から上に切る直前の月が景気
の谷,上から下に切る直前の月が景気の山に対
応する。
景 気 基 準 日 付
期
谷
第1循環
間
山
谷
昭和26年6月
昭和26年10月
4ヵ月
拡張
後退
全循
環
第2循環
昭和26年10月
昭和29年1月
昭和29年11月
27ヵ月 10ヵ月
37ヵ月
第3循環
昭和29年11月
昭和32年6月
昭和33年6月
31ヵ月 12ヵ月
43ヵ月 神武
第4循環
昭和33年6月
昭和36年12月 昭和37年10月
42ヵ月 10ヵ月
52ヵ月 岩戸
第5循環
昭和37年10月
昭和39年10月 昭和40年10月
24ヵ月 12ヵ月
36ヵ月
第6循環
昭和40年10月
昭和45年7月
昭和46年12月
57ヵ月 17ヵ月
74ヵ月 いざ
第7循環
昭和46年12月
昭和48年11月
昭和50年3月
23ヵ月 16ヵ月
39ヵ月 列島
第8循環
昭和50年3月
昭和52年1月
昭和52年10月
22ヵ月 9ヵ月
31ヵ月
第9循環
昭和52年10月
昭和55年2月
昭和58年2月
28ヵ月 36ヵ月
64ヵ月
第10循環 昭和58年2月
昭和60年6月
昭和61年11月
28ヵ月 17ヵ月
45ヵ月
第11循環
平成3年2月
平成5年10月
51ヵ月 32ヵ月
83ヵ月 バブ
第12循環 平成5年10月
平成9年5月
平成11年1月
43ヵ月 20ヵ月
63ヵ月
第13循環 平成11年1月
平成12年11月
平成14年1月
22ヵ月 14ヵ月
36ヵ月
昭和61年11月
オリ
もうひとつのDI(「日銀短観」)(1)
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「日銀短観」(「企業短期経済観測調査」)は、景気動向
に関する重要な(1次)統計。
景気動向指数が月次であるのに対し、短観は3ヶ月ごと。
民間企業の景況感や設備投資計画、収益状況、雇用人
員などを企業の判断や計画(・意図)そのものを直接アン
ケート調査している。
景況や雇用人員について、現状とともに、先行きの判断
も「良い・悪い」「過剰・不足」といった選択肢から企業が
回答する。
短観のDI(2)
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業況判断指
数(DI)は、
景況感が
「良い」と答
えた企業の
割合から
「悪い」と答
えた割合を
引いた値。
大企業
製造業
非製造業
中堅企業 製造業
非製造業
中小企業 製造業
非製造業
全規模
製造業
非製造業
今回
先行き
(前回比) (今回比)
21(1)
22(1)
20(2)
13(1)
4(1)
21(1)
13(0)
6(2)
7(0)
7(0)
▲6(3)
12(0)
2(0)
▲9(▲3)
12(0)
1(▲1)
移動平均
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多くの季節調整法の基本
にある考え方。
中心化4項移動平均を計
算してみよう。
1
1,080,389,015
2
585,157,482
3
670,709,177
4
563,126,053
5
1,023,090,966
6
553,813,112
7
663,028,079
8
561,129,947