学 位 記 番 号 第 6024 号 学位

氏
名
学 位 の 種 類
学 位 記 番 号
学位授与年月日
学位授与の要件
学 位 論 文 名
論文審査委員
津田 昌宏
博士( 医学 )
第 6024 号
平成 26 年 3 月 24 日
学位規則第4条第 1 項
Poor Glycemic Control is a Major Factor in the Overestimation of
Glomerular Filtration Rate in Diabetic Patients
(糖尿病患者における糸球体濾過率の過大評価の主要因は
血糖コントロール不良である)
主 査 稲葉 雅章 教授
副 査 三木 隆己 教授
論
文
内
副 査 岩尾
容
の
要
洋 教授
旨
【目的】
糖 尿 病 性 患 者 に お い て 、 推 算 糸 球 体 濾 過 率 ( e G F R )が 腎 機 能 を 過 大 評 価 す る 。 糖 尿
病 性 腎 症 に お い て 、 eG F R が 腎 機 能 を 過 大 評 価 す る 要 因 を 検 討 し 、 e G F R の 補 正 式 を
作成した。
【対象】
糖 尿 病 患 者 40 例 ( 年 齢 6 4 . 8 ± 9 .5 歳 、 男 性 1 6名 、 女 性 2 4名 ) 及 び 非 糖 尿 病 4 0例 ( 年 齢
4 8 . 3 ± 1 5 . 8歳 、 男 性 19 名 、 女 性 2 1 名 )。
【方法】
真 の 腎 機 能 を イ ヌ リ ン ク リ ア ラ ン ス ( C i n )で 評 価 し た 。 C i n と e GF R の 相 関 関 係 、 一 致
率 を 求 め た 。 C i n と e G FR の 比 率 ( e G F R /C i n )に よ り 乖 離 度 を 求 め 、 各 要 因 と の 相 関 関
係 を 検 討 し た 。e G F R / C i n 及 び H b A 1 cの 一 次 関 数 よ り 、e G F R の H b A 1 c に よ る 補 正 式 を 作
成した。
【結果】
糖 尿 病 患 者 と 非 糖 尿 病 患 者 で 比 較 す る と C i n は 有 意 差 を 認 め な か っ た が ( p= 0 . 2 8 6 6 ) 、
e G F R は 糖 尿 病 患 者 で 有 意 に 高 値 で あ っ た ( p< 0 . 0 0 0 1 ) 。 C i n と e G F R は 糖 尿 病 患 者
( r = 0 . 6 8 6 , p <0 . 0 0 0 1 ) )及 び 非 糖 尿 病 患 者 ( r =0 . 9 3 0 , p < 0 . 00 0 1 ) で 強 い 相 関 関 係 を 認
め た が 、 糖 尿 病 患 者 で 分 布 が ば ら つ く 傾 向 に あ り 、 一 致 率 も 低 か っ た (糖 尿 病 患
者 : 0 . 6 6 9 , 非 糖 尿 病 患 者 : 0 . 8 4 7) 。 e G F R/ C i n は H b A 1 c と 強 い 相 関 関 係 を 示 し
( p < 0 . 0 0 0 1 ; eG F R / C i n = 0 .4 2 8 + 0 . 0 85 × H b A 1 c)、 年 齢 、 性 別 、 B M I、 平 均 血 圧 を 独立変数
として加えた重回帰分析モデルにおいても、HbA1cが強い独立した関連を認めた。e G F R / C i n と H b A 1 c
の 相 関 関 係 か ら 、 H b A1 c に よ る 補 正 e G FR ( C in = e G F R / ( 0 . 42 8 + 0 . 0 8 5 × H b A 1 c )) を 作 成
し た 。H b A 1 c に よ る 補 正 式 に よ り 、C i n と の 一 致 率 は 改 善 し た ( 糖 尿 病 : 0 . 76 8 , 非 糖 尿
病 :0.938)。
【結論】
糖 尿 病 患 者 で は 血 糖 コ ン ト ロ ー ル が 悪 化 す る と eGFRは 腎 機 能 を 過 大 評 価 す る 。 糖
尿 病 性 腎 症 に お け る 腎 機 能 評 価 の 精 度 を 上 げ る た め 、H b A 1 c に よ る 補 正 eG F R の 式 を
提唱する。
論 文
審
査
の
結
果 の
要 旨
糖尿病性腎症による腎代替え療法の導入患者数は増加の一途を辿っており、糖尿病性腎症の早期
診断及び厳格な血糖コントロールが求められている。糖尿病性腎症の診断には微量アルブミン尿と
共に推 算 糸 球 体 濾 過 量 ( e G F R )が広く使用されている。eGFRは、2008年に736例のイヌリンク
リアランス(C i n ) を元にした血清クレアチニンによる、日本人の糸球体濾過量推算式である。しか
し、糖 尿 病 性 腎 症 に お い て e G FR が 腎 機 能 を 過 大 評 価 す る こ と で eG F R 高 値 で 透 析 導
入 を 必 要 と す る 症 例 が 存 在 す る 。糖 尿 病 性 腎 症 で の e G FR に よ る 腎 機 能 過 大 評 価 の
要因について詳細に検討した報告はなく、一定の見解も得られていない。
本研究は、糖 尿 病 性 腎 症 に お い て 、 e GF R が 腎 機 能 を 過 大 評 価 す る 要 因 を 検 討 し 、
さ ら に 過 大 評 価 を 克 服 す る た め の 補 正 式 を 作 成 す る こ と 目的とした。対象は入院加療
中の糖 尿 病 患 者 4 0 例 (年 齢 6 4 . 8± 9 . 5 歳 、男 性 1 6 名 、女 性 2 4名 ) 及 び 非 糖 尿 病 40 例 ( 年
齢 4 8 . 3 ± 1 5 .8 歳 、 男 性 1 9 名 、 女 性 2 1 名 ) であり、真 の 腎 機 能 を C i n で 評 価 し た 。 C i n
と e G F R と の 間 で 相 関 関 係 、 一 致 率 を 求 め た 。 ま た 、 eG F R が 腎 機 能 を 過 大 評 価 す る
要 因 を 検 討 す る た め C i n と e G F R の 比 率 ( e GFR / C i n )に よ り 乖 離 度 を 求 め 、 各 要 因 と
の 相 関 関 係 を 検 討 し た 。 e G F R /C i n 及 び ヘ モ グ ロ ビ ン A 1 c( H b A 1 c )の 一 次 関 数 よ り 、
e G F R の H b A 1 cに よ る 補 正 式 を 作 成 し た 。 糖 尿 病 患 者 と 非 糖 尿 病 患 者 で 比 較 す る と
C i n は 有 意 差 を 認 め な か っ た ( p = 0. 2 8 6 6 ) が 、e G F R は 糖 尿 病 患 者 で 有 意 に 高 値 で あ っ
た ( p < 0 . 0 0 0 1) 。 C i n と e GF R は 糖 尿 病 患 者 ( r=0 . 6 8 6 , P < 0 .0 0 0 1 ) ) 及 び 非 糖 尿 病 患 者
( r = 0 . 9 3 0 , p <0 . 0 0 0 1 )で 強 い 相 関 関 係 を 認 め た が 、糖 尿 病 患 者 で ば ら つ く 傾 向 に あ
り 、 一 致 率 も 糖 尿 病 患 者 で 低 か っ た (糖 尿 病 患 者 : 0 . 6 69 , 非 糖 尿 病 患 者 : 0. 8 4 7 ) 。
e G F R / C i n は H b A 1c と 強 い 相 関 関 係 ( p < 0 . 0 0 01; e G F R / C i n = 0 . 4 28 + 0 . 0 8 5 × H b A 1 c )を 示
し た 。 年 齢 、 性 別 、 bo d y m a s s i n d e x 、 平 均 血 圧 を 独立変数として加えた重回帰分析モ
デルにおいてもHbA1cが強い独立した関連を認めたことより、血糖コントロール不良がeGFRによる
腎機能過大評価の独立した要因であることがことが示唆された。この結果を踏まえ、血糖コントロ
ール悪化によるeGFRの過大評価を補正するため、e GF R / C i n と H b A 1 cの 相 関 関 係 式 を 用 い 、
H b A 1 c に よ る 補 正 e G F R( C i n = e G FR / ( 0 . 4 28 + 0 .0 8 5 × H b A 1 c )) を 作 成 し た 。 H b A1 c に よ
る 補 正 式 に よ り 、 C i n と の 一 致 率 ( D M : 0 . 7 68, n o n D M : 0 . 9 38 ) は 改 善 し た 。
以上より、本研究は、糖尿病性腎症において、血糖コントロールの悪化により、eGFRが腎機能
を過大評価することを臨床的に初めて明らかにした。また、HnA1CによるeGFRの補正式がC i n との一
致率を改善させることから、今後の病態・治療予防の観点から補正式の有用性が期待される。よっ
て、本研究は博士(医学)の学位を授与されるに値するものと判定された。