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2 次方程式の解と判別式
数学 II・B 授業ノート
http://mhidet.web.fc2.com/text/
1 2 次方程式の解
既に知っている通り,2 次方程式
ax2 + bx + c = 0
の解は,
−b ±
√
b2 − 4ac
2a
2
である.複素数の範囲まで拡張すると,b − 4ac が負の場合でも平方根を求めることができるから,実数を係数
とするすべての 2 次方程式は複素数の範囲で常に解を持つ.
x=
• 2x2 + 3x + 5 = 0 の解を求めてみよう.
−3 ±
√
32 − 4 · 2 · 5
√2 · 2
−3 ± −31
=
4√
−3 ± 31i
=
4
x=
一般に,方程式の解の一つが複素数であるとき,それと共役な複素数も解に持つ.
2 2 次方程式の解の判別
今後,断りのない限り,方程式の係数はすべて実数とし,方程式の解は複素数の範囲で考えるものとする.
方程式の解のうち,実数であるものを実数解,虚数であるものを虚数解であるという.
√
−b ± b2 − 4ac
2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 の解は,x =
だから,解の種類は根号の中の b2 − 4ac の符号で決
2a
まる.この b2 − 4ac のことを 2 次方程式の判別式といい,通常,D で表す.また,判別式の符号により,解の種
類は次のように分類できる.
✓
✏
a ̸= 0 として,2 次方程式 ax + bx + c = 0 の解とその判別式 D = b − 4ac について,
2
2
1. D > 0 ⇐⇒ 異なる 2 つの実数解を持つ
2. D = 0 ⇐⇒ 重解を持つ
3. D < 0 ⇐⇒ 異なる 2 つの虚数解を持つ
なお,重解も実数であるから,
「D ≧ 0 ⇐⇒ 実数解を持つ」も成り立つ.
✒
✑
2
′
′2
′2
なお,2 次方程式 ax + 2b x + c√= 0 において,D = 4(b − ac) となるから,判別式は D/4 = b − ac を用い
−b′ ± b′ 2 − ac
である.
ることが多い.また,解は
a
1
• 2 次方程式 x2 − mx + 1 = 0 の解を判別してみよう.
判別式を D とすると,D = m2 − 4 · 1 · 1 = m2 − 4 = (m + 2)(m − 2) である.したがって,方程
式の解は次のようになる.
m < −2, 2 < m のとき,異なる 2 つの実数解を持つ.
m = ±2 のとき,重解を持つ.
−2 < m < 2 のとき,異なる 2 つの虚数解を持つ.
3 2 次方程式の解と係数の関係
2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 の 2 つの解をそれぞれ,
√
−b + b2 − 4ac
α=
,
2a
β=
−b −
√
b2 − 4ac
2a
とする.このとき,2 つの解の和と積は次のようになる.
√
√
−b + b2 − 4ac −b − b2 − 4ac
+
α+β =
2a
2a
b
=−
a √
√
−b + b2 − 4ac −b − b2 − 4ac
·
αβ =
2a
2a
b2 − (b2 − 4ac)
=
4a2
c
=
a
すなわち,次の 2 次方程式の解と係数の関係が成り立つ.
✓
✏
a ̸== 0 として,2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 の 2 つの解を α,β とする.このとき,
b
α+β =− ,
a
✒
また,
αβ =
c
a
(
c
b
ax + bx + c = a x + x +
a
a
2
✑
)
2
= a{x2 − (α + β)x + αβ}
= a(x − α)(x − β)
となる. したがって,2 次式の因数分解について,次のことが成り立つ.
✓
✏
2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 の 2 つの解を α,β とすると,
ax2 + bx + c = a(x − α)(x − β)
と因数分解される.
✒
✑
• x2 + 2x + 3 を複素数の範囲で因数分解してみよう.
x2 + 2x + 3 = 0 とすると,解は
x = −1 ±
√
12 − 1 · 3 = 1 ±
2
√
2i
であるから,x2 + 2x + 3 を複素数の範囲で因数分解すると,
√
√
x2 + 2x + 3 = {x − (−1 + 2i)}{x − (−1 − 2i)}
√
√
= (x + 1 − 2i)(x + 1 + 2i)
となる.
さらに,
a(x − α)(x − β) = ax2 − a(α + β)x + aαβ = 0
であるから,
x2 − (α + β)x + αβ = 0
の解は x = α,
✓
β であるから,次のことも成り立つ.
✏
2 数 α,β を解に持つ 2 次方程式の 1 つは,
x2 − (α + β)x + αβ = 0
✒
✑
• −2 + i と −2 − i を解に持つ 2 次方程式を考えよう.
(−2 + i) + (−2 − i) = −4,
(−2 + i)(−2 − i) = (−2)2 − i2 = 4 + 1 = 5
だから,求める 2 次方程式の 1 つは
x2 + 4x + 5 = 0
である.
一般に 2 つの実数 α,β について,
α > 0 かつ β > 0 ⇐⇒ α + β > 0,
αβ > 0
α < 0 かつ β < 0 ⇐⇒ α + β < 0,
αβ > 0
αとβ が異符号 ⇐⇒ αβ < 0
が成り立つ.したがって,2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 が異なる 2 つの実数解を持つとき,その解を α,β とすれ
ば,次のことが成り立っている.
αとβ が異なる 2 つの正の実数解である ⇐⇒ b2 − 4ac > 0 で,
α + β > 0 かつ αβ > 0
αとβ が異なる 2 つの負の実数解である ⇐⇒ b2 − 4ac > 0 で,
α + β < 0 かつ αβ > 0
αとβ が異符号の実数解 ⇐⇒ αβ < 0
なお,α と β が異符号の実数解であるとき,
c
< 0 だから,ac < 0 で,必ず b2 − 4ac > 0 になる.
a
4 演習問題
1. 次の 2 次方程式を解け.
(a) 9x2 + 4 = 0
(b) 4x2 − 5x + 2 = 0
3
(c) x2 −
√
3x + 2 = 0
(d) 3x2 − 6x + 5 = 0
(e)
x+1
x2 + 3
=
2
3
2. 次の 2 次方程式の解の種類を判別せよ.
√
(a) 2x2 + 2 6x + 3 = 0
(b) 3x2 − x + 2 = 0
3. m を定数として,2 次方程式 x2 + (m + 1)x + m2 = 0 が異なる 2 つの虚数解を持つとき,m の値の範囲を
求めよ.
4. 2 次方程式 x2 + 2x + 3 = 0 の 2 つの解を α,β とするとき,次のものを求めよ.
(a) α2 + β 2
(b) α3 + β 3
5. m を定数として,方程式 x2 + (m − 1)x + 2 = 0 において,2 つの解の差が 1 であるとき,m の値を求めよ.
また,2 つの解も求めよ.
6. 次の式を複素数の範囲で因数分解せよ.
(a) x2 + 4x − 3
(b) 2x2 + 3x + 2
7. 次の 2 数を解とする 2 次方程式を作れ.
(a) 3,
−5
(b) 2 + 3i,
2 − 3i
8. 2 つの解の和が 5,積が 7 である 2 次方程式を 1 つ作れ.
9. x2 + 2x + 5 = 0 の 2 つの解を α,β とするとき,α − 1,β − 1 を解とする 2 次方程式を 1 つ作れ.
10. 2 次方程式 x2 + 2(3m − 1)x + 9m2 − 4 = 0 が異なる 2 つの正の解を持つような定数 m の値の範囲を求めよ.
4