Ⅰ 研究主題 B問題に対応できる学力の育成 ~国語科における言語活動を生かした「活用型授業」づくりを通して~ Ⅱ 主題設定の理由 今後、ますます知識基盤社会及びグローバル化が進行すると予測されている。この知識基盤社 会とは、社会を支える基盤として、情報や知識、技術の重要性が増す社会である。そのような社 会では、知識を身に付けるだけでなく、それを活用しながらよりよく生きていく力が一層重要と なってくる。また、グローバル化においては、異なる文化との共存や国際協力の必要性が増大し てくる。 そのため、現代の児童生徒には、確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和を重視する「生き る力」を育むことが一層求められるようになった。その中でも、このような社会においては自己 責任を果たし、他者と切磋琢磨しつつ一定の役割を果たすために、基礎的・基本的な知識・技能 の習得や、それらを活用して課題を見い出し、解決するための思考力・判断力・表現力等が特に 重要視されている。このような観点から、学習指導要領にも「思考力・判断力・表現力等の育成」 が改訂の要点の1つとして示されている。 我が国の児童生徒の実態について、OECD の PISA 調査等の各種調査結果から、「思考力・判断 力・表現力等を問う読解力や記述式問題、知識・技能を活用する問題に課題があること」がこれ までも指摘されてきた。また、平成 25 年度の全国学力・学習状況調査では、「話し手の意図を捉 えながら聞き、適切に助言すること」「必要な内容を適切に引用したり、複数の内容を関連付け たりしながら自分の考えを書くこと」「文章等の読み方の違いを捉えること」が課題として挙げ られている。本県においても、小学校6年生の国語科B問題の平均正答率は、これまで全国平均 をわずかに下回る状況が続いており、本年度も全国平均を約1%下回る結果となった。このよう な現状を受け、第二次宮崎県教育振興基本計画における施策の目標Ⅱ「生きる基盤を育む教育の 推進」の施策2「確かな学力を育む教育の推進」において、「活用する力」を高める授業改善の 重要性が指摘されている。 そこで、本研究では、思考力・判断力・表現力を育成する活用型授業を実践しながら、B問題 に対応できる力の育成を目指すことにした。 理論研究においては、まず、B問題に関して課題が見られる原因について調べるために、教師 の指導と児童の実態に着目し、それぞれに関する意識調査を行う。そして、過去のB問題の分析 を通して、必要とされる思考力・判断力・表現力を構成する具体的な要素を明確にする。 実践研究においては、まず、これらの要素を位置付けた単元及び1単位時間の授業の流れを整 理する。次に、言語活動の工夫を手立てとして、活用型授業の在り方を究明する。情報を収集・ 整理したり、理由を明確にして自分の考えを表現したりする等の言語活動を単元を通して実践す ることで、それぞれの要素に係る力を育成し、思考力・判断力・表現力が身に付いた児童を育成 したい。 なお、育成していく力が、単に国語の能力やB問題解決に限定したものではなく、他教科でも 生かされ、さらには、これからの社会で必要な「生きる力」へとつながっていくことを念頭に置 いた研究を進めていきたい。 2-1 Ⅲ 研究目標 思考力・判断力・表現力を構成する要素の明確化と、それらに係る力を育成するための活用型 授業の実践を通して、これからの社会に必要な思考力・判断力・表現力を身に付けた児童の育成 を図る。 Ⅳ 研究仮説 国語科において、B問題解決のために必要な思考力・判断力・表現力を構成する要素を明確に し、それらを単元指導計画や学習指導過程に位置付けるとともに、それぞれの要素に係る力を活 用型授業の言語活動を通して育成すれば、思考力・判断力・表現力を身に付けた児童が育つであ ろう。 Ⅴ 研究計画 月 研究内容 研究事項 4 ○ 研究の方向性 ○ 研究主題・副題の設定 5 ○ 理論研究 ○ B問題の分析 ○ 研究内容の決定 ○ 必要とされる力の明確化 ○ 実態調査の実施及び分析 ○ 活用型授業の実践に関する実態調査アンケー 備 考 トの実施及び分析 6 ○ 7 ○ 8 ○ ○ 9 ○ ○ 10 ○ ○ ○ 言語活動を生かした活用型授業づくりの工夫 ○ 検証授業Ⅰの教材研究、学習指導案作成、検討 ○ 検証内容の分析と考察 都城市立 ○ 研究内容の修正 沖水小学校 ○ グループ協議会での発表内容の整理 グループ協議会 ○ グループ協議会での中間発表 検証授業Ⅱの構想・準備 ○ グループ協議会を受けての修正 検証授業Ⅱの実施 ○ 検証授業Ⅱの教材研究、学習指導案作成、検討 都城市立 全体協議会発表準備 ○ 検証内容の分析と考察 沖水小学校 ○ 全体協議会での発表内容の整理 検証授業Ⅰの構想・準備 検証授業Ⅰの実施 理論の再構築 グループ協議会準備 11 ○ 研究のまとめ ○ 研究報告書の作成 12 ○ 全体協議会 ○ 全体協議会での中間発表 ○ 研究のまとめ ○ 研究報告書の作成 1 ○ 研究のまとめ ○ 研究発表会での発表内容の整理 2 ○ 研究のまとめ ○ パネル作成 3 ○ 研究発表会 ○ 研究のまとめと反省 2-2 Ⅵ 研究構想 2-3 Ⅶ 研究の実際 1 理論研究 (1) 基本的な考え方 ア 研究主題「B問題に対応できる学力の育成」について 学力について、文部科学省は次のことを3つの重要な要素として示している。 ○ 基礎的・基本的な知識・技能 ○ 知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等 ○ 主体的に学習に取り組む態度 (引用文献:学校教育法第 30 条の第2項) 本研究では、3つの学力の要素の中でも「知識・技能を活用して課題を解決するために 必要な思考力・判断力・表現力等」に着目し、焦点化を図りながら研究を進めることにし た。また、この学力が、国語科におけるB問題解決に限定したものではなく、他教科でも 生かされ、さらには、これからの社会で必要な「生きる力」へとつながっていくものであ ることを念頭に置いている。 イ 副題「国語科における言語活動を生かした『活用型授業』づくりを通して」について 言語活動を生かした活用型授業については、次の3つの視点で整理をした。 ○ B問題解決時の思考展開に即した指導計画に基づいて行う。 ○ B問題解決時の思考展開に即した言語活動を効果的に位置付ける。 ○ 言語活動を通して、思考力・判断力・表現力を育成する。 この活用型授業の実践を通して、「B問題に対応できる学力」の育成を目指す。国語科 に焦点をあてた理由は、国語科が言語に関する能力を育成する中核的な役割を担っており、 そこで培った能力が、全ての教科等における言語活動の充実に生かされるからである。 (2) 実態分析 ア 全国学力・学習状況調査の結果概要 平成25年度実施された全国学力・学習状況調査の国語科B問題の全国における課題を まとめると、おおよそ次のようになる。 ○ 話し手の意図を捉えながら聞き、適切に助言すること ○ 目的や意図に応じ、必要な内容を適切に引用したり、複数の内容を関連付けたりし ながら自分の考えを書くこと ○ それぞれの本や文章の読み方の違いを捉えること (引用文献:文部科学省 国立教育政策研究所「平成 25 年度全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」) 本校においても、「目的や意図に応じて必要な内容を適切に引用して書く」の出題での 正答率が 17.7 %、無解答率が 15.8 %、「複数の内容を関連付けながら自分の意見を書く」 の出題での正答率が 17.1 %、無解答率 18.4 %であり、それぞれに大きな課題が見られた。 さらに、「2つの推薦文を読み、推薦している理由や対象を捉える」という出題でも、正 答率が 50 %を下回る結果であった。 イ 意識調査 国語科のB問題において、これらの課題が見られる原因について調べるために、教師の 指導と児童の実態に着目し、それぞれに関する意識調査を行った。(調査対象:所属校の 教師 35 名、第6学年児童 39 名) 調査内容は、11 項目あり、3項目が基礎・基本に関すること、残りの8項目が活用の学 習に関することである。教師に対しては、「~について指導をしていますか」、児童に対し ては、「~ができますか(していますか)」という尋ね方をしている。それにより、B問題 の特徴である活用に関する指導の実態を把握するとともに、児童の実態(意識調査に基づ く)と比較することで、B問題の成績が不振であることと学習指導及び児童の意識との関 係を探ることにした。 結果は、【図1】のとおりである。 【図1】 2-4 ※ 【図1】 教師の指導と児童の実態に関する意識調査の結果 質問事項は、教師の立場のものを明記。児童の場合は「できている(している)」という 立場で回答していると捉える。 例…①の場合「順序よく話したり、先生や友達の話を、何が言いたいかを考えながら聞くことができる。」 主に基礎・基本に関する項目 0% 十分できる・できる ① ② ③ 50% あまりできない・できない 87% 13% 順序よく話したり、話の中心に気を付けて聞い たりする力を身に付けさせる指導を実践している。 教師 分かったことや考えたことを、自分の言葉で書 く力を身に付けさせる指導を実践している。 教師 83% 17% 児童 85% 15% 内容の中心をとらえて読む力を身に付けさせる 指導を実践している。 教師 74% 児童 26% 77% 23% 72% 児童 28% 教師 82% 肯定的回答(十分できる・できる)の割合の平均 100% 児童 77% 主に活用に関する項目 0% 十分できる・できる ④ 課題解決するために、必要な情報をとらえさせ る指導を実践している。 教師 ⑤ 文章や資料を比較・関連付けながら、共通点や相 違点を考えさせる指導を実践している。 教師 ⑥ 資料から課題解決に必要な情報を選択させる指導 を実践している。 教師 50% 100% あまりできない・できない 教師 ⑩ 自分の意見を、相手に分かるように伝える指導を 実践している。 教師 ⑪ グループや全体での話合いを通して、一人一人が 学びを得ることのできる指導を実践している。 教師 30% 70% 33% 67% 14% 86% 79% 21% 73% 41% 児童 児童 肯定的回答(十分できる・できる)の割合の平均 2-5 31% 69% 児童 児童 47% 53% 児童 ⑨ 自分の意見に対し、なぜそう思うかなどの理由や 根拠を明らかにさせる指導を実践している。 23% 77% 児童 教師 27% 73% 児童 ⑧ 分かったことに対して、自分はどう思うかを考え させる指導を実践している。 21% 79% 児童 ⑦ 字数を指定して、要約させる指導を実践している。 教師 43% 57% 27% 59% 69% 31% 41% 59% 63% 85% 教師 63% 37% 15% 児童 69% ウ 意識調査の考察 <教師の結果から> 基礎・基本に関する項目では、肯定的な回答が約8割であるのに対し、活用に関する項 目では、肯定的な回答が全体的に低くなっており、約4割の教師が、活用に関する指導が 十分でないと認識していることが分かる。 特に、著しく低かった項目が、 「④情報を読み取らせること」 「⑥情報を選択させること」 「⑦情報を整理させること」である。その中でも、「⑦情報を整理させること」は、字数 を指定して要約させているという項目に対し、肯定的な回答が 30 %であり、指導が十分で ない様子が伺える。 一方、「⑨理由を考えること」については、教師の意識が、児童の意識を大きく上回る 結果となった。理由を問う指導の重要性はこれまでも言われており、教師もそれを意識し て指導していることが伺える。しかし、6割の児童は理由を考えることを苦手と回答して いる。理由や根拠を求める指導について、その在り方を見直す必要があると考える。 <児童の結果から> 児童も教師と同様に、活用に関する項目での肯定的な回答が低い結果となった。 特に、著しく低かった項目が、「⑨理由を考えること」である。この傾向は、本年度の 全国学力・学習状況調査B問題の「必要な内容を引用したり、関連付けたりして自分の考 えを書く」という項目においても、課題として見られた。指導改善を通して、根拠を明ら かにして理由を書く力を身に付けさせることが重要であると考える。 また、「⑦情報を整理させること」は、教師が指導不足と考えているにも関わらず、「で きる・十分できる」と考えている児童は、教師の指導に対する意識を大きく上回っており、 児童が文章を適切に要約しているかを十分に検証していく必要がある。 (3) 必要とされる力の明確化 ア B問題解決に必要な思考力・判断力・表現力 前述した結果より、B問題に対応できる学力を育成するためには、これまで不十分と捉 えられてきた活用に関する指導を充実させることが重要である。そこで、まず思考力・判 断力・表現力の捉え方を明確にする必要があると考え、次のように整理した。 思考力 判断力 表現力 問題を解決するために、情報やこれまでの経験、知識等を関連付けて、論理的に考える力 必要な情報の選択や、関連付けにおいて、その適性について考え判断する力 思考・判断したことを言語化して伝え合い、よりよい考えに高める力 なお、思考の過程では判断力が働き、判断の過程では思考力が働くという考え方から、 思考力・判断力・表現力のそれぞれの関係については、【図2】のように、相互に働き合 【図2】 うものとして、一体的に捉えるようにした。 【図2】 思考力・判断力・表現力の相互関係 2-6 イ 思考力・判断力・表現力を構成する要素 さらに、思考力・判断力・表現力を身に付けさせるための言語活動を進めていくには、そ の中身をより具体化、細分化していく必要がある。そこで、思考力・判断力・表現力を構成 する要素について研究を進めた。 実際に全国学力調査のB問題を解き、問題の趣旨を基に、領域ごとに問題解決段階での 思考の働き方を分類した。以下に示すのは、B問題において顕著に見られる問題の趣旨で ある。 <話すこと・聞くこと> ○ 話し手の意図を捉えながら聞き、意見と理由をまとめる。 ○ 互いの考えの共通点と相違点を考え、司会の役割を果たしながら計画的に話し合う。 <書くこと> ○ 目的や意図に応じ、必要な内容を適切に引用して書く。 ○ 目的や意図に応じ、複数の内容を関係付けながら、自分の考えを具体的に書く。 ○ 目的や意図に応じ、書く事柄を整理する。 <読むこと> ○ 目的に応じ、雑誌や読んだ記事の特徴を捉える。 ○ 資料を比べて読み、互いの考えを交流することで、優れた叙述を多面的に捉える。 ○ 物語を読んで思ったことや考えたことを、理由を明確にしてまとめる。 ○ 目的や意図に応じ、必要な情報を関連付けて読み、理由を明確にして説明する。 問題解決をする段階での思考の働き方を類型化すると、およそ次のように分類される。 話し手の意図を捉える、特徴を捉える→文章の内容や資料などの情報を正確に解釈する。 関連付ける、共通点と相違点を考える→自他の考えや情報を比較したり、関連付けたりする。 引用する、書く事柄を整理する→目的に応じて、事柄や内容を収集し、整理する。 意見と理由をまとめる→理由を明らかにして、自分の意見を考える。 計画的に話し合う、互いの考えを交流する→自分の考えや思いを互いに伝え合う。 また、国立教育政策研究所が、平成 19 ~ 22 年度の4年間の調査結果を分析し,成果と 課題をまとめた「全国学力・学習状況調査の4年間の調査結果から今後の取組が期待され る内容のまとめ」によると、国語科における3領域1事項の課題(正答率が概ね 70 %以下) は次のようになる。 ○ 司会の役割を果たしたり、立場や根拠を明確にしたりして話し合うこと。【話すこと・聞くこと】 ○ 調べて分かった事実に対する自分の考えを、理由や根拠を明確にして書くこと。【書くこと】 →理由を明らかにして、自分の意見を考える。 ○ 物語に登場する人物についての描写や心情、人物相互の関係を捉えること。【読むこと】 →解釈する。 ○ 目的に応じて必要となる情報を取り出し、/それらを関連付けて読むこと。【読むこと】 →収集し、整理する/比較したり、関連付けたりする ○ 複数の内容を含む文を分析的・総合的に理解すること。【言語事項】 →解釈する。 このように、過去4年間の調査で見られる課題は、類型化した問題解決時の思考の働き 方とおおよそ対応していることが分かる。そこで、問題解決時の思考の働き方を視点とし て、それらを要素化し、それぞれの要素に係る力を身に付けさせることが、思考力・判断 力・表現力の育成と全国学力・学習状況調査に見られる課題の解決につながると考えた。 要素化した思考の働き方は、次の5つである。 2-7 【表1】5つの要素 要 素 内 容 解釈 ○ ○ 文章や図などの情報の内容を読み取り、理解する。 文章などの要点や、説明文の主旨、物語の主題を、 「比較・ 関連付け」 や「収集・整理」等を通して理解する。 比較・関連付け ○ 自他の考えや情報を比較したり、関連付けたりしながら、共通点や 相違点を考える。 収集・整理 ○ ○ 目的に応じて情報を取り出す。 事柄や内容を整理してまとめる。 意見・理由付け ○ 情報を読み取り、理由や根拠を明らかにしながら、自分の考えをもつ。 表現 考えや思いを、根拠を明確にして伝えたり、聞いたりする。 ○ 思考力・判断力・表現力と同様に、5つの要素についても、それぞれが独立するもので はなく、互いに関連し合いながら働いていると捉えた。 この5つの要素を基本として、単元構成や1単位時間の指導計画を考えた。その指導計 画に位置付けられた言語活動を工夫することにより、5つの要素に係る力を育成する。5 つの要素に係る力とは、【図3 図3】のように各要素の内容を学習する上で必要なものと捉え 図3 る。そして、単元を通して、それらの5つの要素に係る力をバランスよく育成することが、 思考力・判断力・表現力の育成につながると考えた。 【図3】5つの要素に係る力の育成 ウ B問題解決時の思考展開 B問題に対応できる学力を身に付けるために、重要なポイントとして捉えているのがB 問題解決時の思考展開である。B問題解決時の思考展開とは、【図4】に示すように、B 【図4】 問題における課題解決の過程で行われる思考の働き方について、その流れを5つの要素を 基に表したものである。 2-8 【図4】B問題解決時の思考展開の例(平成 【図4】B問題解決時の思考展開の例(平成 21 年度全国学力・学習状況調査のB問題より引用) 【図4】のような問題の場合、まず、文章内容及び題意を解釈した後、3つの条件の中 【図4】 の最初の条件に基づき、文章から必要な情報を収集・整理することが必要になる。さらに、 次の条件に基づき、文章の内容と比較・関連付けながら、自分の意見を書くことで課題を解 決することができる。この一連の思考の流れが、B問題解決時の思考展開である。 このように、B問題解決時の思考展開に即した学習活動を取り入れることは、児童にとっ て次のような意義があると考えた。 B問題を解決している際の思考の働き方を基に設定した学習活動に取り組むことで、B問 題解決のために必要な思考や判断の仕方、解決方法の選択の仕方が身に付くようになる。 この思考展開に位置付けられる要素やその順序性については、B問題の内容により、そ れぞれ異なると捉えている。 2 実践研究 (1) B問題解決時の思考展開に即した指導計画の在り方 B問題解決時の思考展開に基づく学習が効果的に行われるように、5つの要素の中から、 課題解決のために重要な要素を、単元及び1単位時間のそれぞれの段階に位置付けることに した。この指導計画により、次のことが期待されると考えた。 2-9 ○ ○ 各時間や段階でのねらいが明確になり、活動が焦点化される。 活動が焦点化されたことにより、5つの要素に係る力が効果的に育成される。 検証授業Ⅰでは、【図5】のように指導計画に5つの要素を位置付けて実践を行った。 【図5】 検証授業Ⅰ ○ 単 元 名 ○ 重点的要素 ○ 第4時の目標 第6学年「わたしの意見を書こう」 全7時間 「収集・整理」(書く事柄を整理し、文章を組み立てる力) 「取材や調査で集めた材料を整理しながら、構成を考えることができる」 【図5】B問題解決時の思考展開に即した指導計画例「検証授業Ⅰ」 本単元は「書くこと」の領域であるため、「書くこと」の指導事項と関連させながら、各 時間に5つの要素を位置付けて、B問題解決時の思考展開に即した単元指導を計画した。 第4時では、まず、自分の意見文の主旨を確認する場面に「解釈」、理由や根拠となる材 料を選び出す場面に「比較・関連付け」を位置付けた。そして、それらを文章に整理して、 2 - 10 構成シートにまとめる場面は「収集・整理」、さらに、構成シートの最後にある結論には「意 見・理由付け」を位置付けた。 さらに、検証授業Ⅱでも【図6】 【図6】のような指導計画の基に実践を行った。 【図6】 検証授業Ⅱ ○ 単 元 名 ○ 重点的要素 ○ 第7時の目標 第6学年「海のいのち」 全9時間 「解釈」(登場人物の相互関係や心情、場面についての描写を捉える力) 「前時までの学習課題のまとめや人物関係図から、作者の伝えたいこと がよく伝わる表現に着目し、物語の主題について考えることができる」 【図6】B問題解決時の思考展開に即した指導計画例「検証授業Ⅱ」 2 - 11 本単元は、「読むこと」の領域であり、物語文の読み取りと、心に残ったことをまとめる 力の育成が大きなねらいである。前半は、重要語句等を選択し、まとめることが中心になる ので、主に「比較・関連付け」「収集・整理」を位置付けた。そして、まとめたものを手が かりに主題を考える場面では「解釈」、心に残ったことをまとめる場面では「意見・理由付 け」を位置付けた。 本時は、第7時にあたり、登場人物の生き方や考え方、相互関係を振り返り、物語の主題 について考える学習活動である。初めの個人思考を「解釈」、グループでの話合いを「表現」、 全体での話合いを「比較・関連付け」、再度個人で考えを整理する場面を「解釈」として位 置付けた。 このように、5つの要素を単元及び1単位時間のそれぞれの段階に位置付けることで、各 段階の活動の焦点化と、それによる5つの要素に係る力の育成が図られるようにした。 【写真1】構成シート作成の一場面「収集・整理」 【写真1】構成シート作成の一場面「収集・整理」(検証授業Ⅰ) 【写真2】グループでの話合いの様子「表現」 【写真2】グループでの話合いの様子「表現」(検証授業Ⅱ) (2) 言語活動を生かした活用型授業の在り方 ア B問題解決時の思考展開に即した言語活動 思考力・判断力・表現力を育成するために不可欠な取組の1つが言語活動である。そこ で、学習の内容と照らし合わせて最適な言語活動を選定するとともに、5つの要素を位置 付けて、B問題解決時の思考展開に基づいて実践するようにした。言語活動を計画するに あたって、以下の点をポイントとして考えた。 ○ ○ 必要とされる力(5つの要素)を明確にし、その育成に適切な言語活動を設定する。 連続性・発展性のある言語活動にする。 このポイントを基に、必要とされる力を5つの要素で表し、それらを位置付けた言語活 動を単元を通して実践する。さらに、各時間の言語活動に連続性と発展性をもたせ、段階 を追って課題を解決していくようにする。このことにより次のことが期待される。 ○ 5つの要素を基に必要とされる力を明確にし、その育成に適切な言語活動を行うこ とで、5つの要素に係る力を育成できる。 ○ 連続性・発展性のある言語活動により、課題の自力解決が促進される。 検証授業Ⅱでは、【図7】に示すように、単元を通した言語活動としてパンフレット作 【図7】 成を取り入れ、パンフレット内の各項目に5つの要素を位置付けながら、それらに係る力 が育成されように実践した。 2 - 12 【図7】B問題解決時の思考展開に即した言語活動の工夫 <パンフレットの外側> 第2時 比較・関連付け 場面分けをし、場面ごとの 見出しをパンフレットに書く。 必要とされる力の明確化 5つの要素に係る力の育成 <パンフレットの内側> 第 7時 「 主題 」 解 釈 連続性・発展性のある言語活動 第2時「見出し」 比較・関連付け 第1時 パンフレットを作成しなが ら学習を進めていくことを知 る。 第3~6時「人物関係図」 収集・整理/解釈 第3時~第6時 収集・整理/解釈 登場人物と主人公との関係 をパンフレットの人物関係図 にまとめる。 第7時 解釈 人物関係図を基に、登場人物 の思いや生き方、相互関係を振り 返り、物語の主題を考える。 自力解決の促進 <パンフレットの外側> 第8時 意見・理由付け 主題を受けて、物語が自分 に最も強く語りかけてきたこ とをパンフレットに書く。 第8時「推薦文」 意見・理由付け 第9時 表現 パンフレットを通して、物 語から受けた自分の思いを伝 え合う。 パンフレットの作成は、項目ごとに5つの要素に基づいて必要とされる力を明確にし、 それを育成するための言語活動を位置付ける。第2時では「見出し」で場面分けをし、第 3~6時では「人物関係図」で、登場人物の相互関係や生き方を学習課題としてまとめる。 そして、そのまとめを受けて、第7時で「物語の主題」を書き、さらには第8時で「推薦 2 - 13 文」を書くことで、発展的につながる構成になっている。 その中でも、人物関係図では、物語を読み取っていく手段としての言語活動であり、重 要語句を収集・整理して書き込んだり、それを手がかりに解釈したことをまとめたりして、 5つの要素に係る力を育成していく。人物関係図の作成の仕方は以下の通りである。 ① 主人公(太一)を中心に置き、関係人物を周りに配置する。 ② 主人公の成長に影響を与えた登場人物の生き方や考え方等について、教科書にサイ ドラインを引き、それを重要語句として、人物関係図に書き込む。 →必要とされる力(要素) ③ 収集・整理 書き込んだ重要語句を手がかりに、登場人物の生き方や考え方に関わる視点で学習 課題をまとめたものを、主人公と関係人物との間に書く。 →必要とされる力(要素) 収集・整理 解釈 人物関係図も、前時に学んだことを重要な手がかりとしてまとめていくため、各時間が 【図8】のように連続性のある構成になっている。 【図8】 【図8】人物関係図における各時間の連続性 第7時「主題」のまとめ 第4時のまとめ 重要語句の 書き込み 収集・整理 第3時のまとめ 収集・整理 比較・関連付け 解釈 解釈 第5時のまとめ 第6時のまとめ 実際の授業では、初めは人物関係図の作成に戸惑う姿が見られたものの、徐々に重要語 句を書き込みながら整理できるようになっていった。一方で、重要語句のみならず、解釈 した登場人物の心情や生き方を、自分の言葉で新たに書き加えて、読みを深めていく児童 は少なかったという点が課題として残った。 連続性という視点においては、児童が、前時までの学びを手がかりとしながら学習課題 のまとめをすることで、登場人物の生き方や考え方を、物語を通して一貫したものとして 捉えることができるようにした。 また、発展性という視点においては、登場人物の生き方や考え方について各項目を通し て段階的に読み深め、さらに、最終的な「推薦文」では、物語が語りかけてきたことをま とめることで最も深い読み取りができるようにした。人物関係図を中心とするパンフレッ トは、その特性上、登場人物の生き方や考え方を表す言葉や、各時間の学習課題のまとめ 2 - 14 が、つながりをもって確認できるので、物語を読み取っていく上で有効な手段であると考 える。 【図9】完成した人物関係図及び推薦文 イ 言語活動をより効果的にするための手立て 言語活動をより効果的に機能させるために、教具の工夫を行った。検証授業Ⅰの第4時 では、意見文の構成づくりにおいて、【図10】のように構成シートと付箋を活用した。 【図10】 意見文の理由を選択する際は、「比較・関連付け」を位置付けて、それぞれ付箋に書いた メモの中から理由を選択させ、構成シート上部に貼らせた。また、貼ったメモを、一文に 整理させることで「収集・整理」の力が身に付くようにした。このように、付箋を活用す ることで、実際の授業では、じっくり読み比べながら選択する姿が見られ、思考力・判断 力・表現力を育成する上で、非常に効果的であった。 【写真3】付箋を比較する様子 写真3】付箋を比較する様子 【写真4】付箋をもとに整理する様子 2 - 15 【図10】 付箋と構成シートの活用 自分の意見の裏付けとなる理由を、いくつかの付箋に書いておく。そし て、意見文に適切な理由を比較しながら選択し、構成シートに貼ることで、 比較・関連付ける力が身に付くようにする。 比較・関連付け 主旨につながりがあることや、文字数を 条件として結論を書くことで、理由を明ら かにして自分の意見を書く力が身に付くよ うにする。 意見・理由付け 付箋 選択した付箋を基に、意見文 の理由を自分の言葉で一文に整 理することで、いくつかの情報 を整理し、まとめる力が身に付 くようにする。 収集・整理 また、5つの要素を基に、それぞれに応じた言語活動や、それをより効果的にする手立 てを【表2】 【表2】のように整理した。 【表2】 【表2】言語活動を効果的にする手立ての例 5つの要素 解釈 比較・関連付け 収集・整理 主な言語活動 読書 感想文 意見文 ワークシート(ベン図、イメージマップ) 記録 付箋の活用 リーフレット ワークシート(チャート) 意見文 記録 感想文 説明会 KJ法 構成シート 報告会 人物関係図 付箋の活用 ワークシート(ボーン図) 推薦文 表現 人物関係図 感想文 パンフレット 意見・理由付け 言語活動を効果的にする手立て 討論 2 - 16 ICT機器 人物関係図 構成シート 意見カード 本の帯 パネルディスカッション ウ 主体的な言語活動を促進する手立て (ア) 発問の工夫 個人思考や全体での話合いの場面で、互いの意見の共通点や相違点に着目させたり、 意見の理由や、他の意見に対する解釈を尋ねたりする発問を行う。【表3】のように5 【表3】 つの要素を視点とした発問を行うことで、5つの要素に係る思考や判断を促し、児童自 身が思考・判断・表現の仕方を獲得できるようにした。 【表3】検証授業Ⅱにおける発問の実際 発 5つの要素 例 問 の 主に読み取りに関する発問 ○ 解釈 その他の発問 与吉じいさが太一を「村一番の漁師」 ○ と言った理由は何ですか。 ○ 人物関係図にまとめた重要 語句から、どんな心情が分か 父の時には「光る緑色」に見えたのが、 りますか。 なぜ「青い宝石」に見えたのですか。 ○ 父と与吉じいさの共通点はどんなとこ ○ ろですか。 比較・関連付け ○ 通していることは何ですか。 「村一番の漁師」と「本当の村一番の ○ 漁師」との違いは何ですか。 ○ ○ 他の班と違うところは何で すか。 父の生き方や考え方がよく現れている ○ 言葉は何ですか。 収集・整理 それぞれの班の意見で、共 重要語句を基に、学習問題 をどのようにまとめますか。 太 一の心 情が大 きく 変化し たとこ ろ は、どこですか。 ○ (イ) ○ すか。 意見・理由付け 表現 物語が強く語りかけてきたことは何で どの表現を基に、そのよう に考えたのですか。 ○ 太一の生き方をどう思いますか。 ○ 太 一の心 情を考 えな がら読 みまし ょ う。 ○ 相手に伝わるにはどのよう に工夫しますか。 ○ 友達の考えを聞いて、納得 したところはどこですか。 学び方の提示 5つの要素に係る活動を、次項の【表4】 【表4】に 【表4】 示すように、児童の学習に即した言葉でキーワ ード化し、また、【写真5】のように、黒板に 【写真5】 掲示することで可視化した。 さらに、1単位時間における見通す段階で、 課題を解決するためにはどの活動を行えばよい かを、児童に考えさせるようにした。それによ り、学習の見通しや解決の方法を確実にもてる ようにするとともに、B問題解決に必要な思考 展開がより主体的に行われるようにした。 この取組を日常的に継続していくことで、直 面する課題に対して、解決の方法を自ら判断し、 5つの要素に係る活動を基に思考を深めながら 課題を解決していく児童が育つと考えた。 2 - 17 【写真5】学び方のカード 【表4】5つの要素に係る活動のキーワード化 5つの要素 3 5つの要素に係る活動(児童の言葉) 5つの要素 5つの要素に係る活動(児童の言葉) 解釈 読む 意見・理由付け 意見を書く 比較・関連付け 比べる 表現 学び合う 収集・整理 選ぶ まとめる 手立ての検証 (1) 児童の作品による検証 手立て ○ 評価法 達成規準 評価 B問題解決時 完成した意見文 構成が整っており、 74% の思考展開に即 (検証授業Ⅰ) 意 見 に対 する理由 や ※ 達成規準 した指導計画 具体例も明確であり、 に到達した (単元指導計画) 説得力がある。 児童の割合 (以下同じ) B問題解決時 パ ン フ レ ッ ト 重要語句を用いて、 75% の思考展開に即 の 学 習 課 題 の 登 場 人物 の相互関 係 した指導計画 まとめ や 心 情を 理解した ま (1単位時間の指導計画) (検証授業Ⅱ) とめを書いている。 ○ ○ ○ B問題解決時 パンフレット 物語が語りかけて の思考展開に即 の推薦文 きたことを、主題に関 した言語活動 (検証授業Ⅱ) わる視点を基に、理由 を明確にしながら書い て推薦している。 教具の工夫 考察 これま での作 文では 、 主 張 の一 貫性や 構成の 面 で 不 十分 な児童 が多か っ た が 、ず いぶん と改善 さ れ て きた 。指導 計画に 5 つ の 要素 を位置 付けた こ と で 各時 間の活 動が焦 点 化 さ れ、 意見文 や学習 課 題 の まと めの内 容の向 上 につながったと考える。 75% 75%の児童が、前時まで の学習を基に推薦文を書いて いたことから、連続性のある 言語活動が、自力解決の上で 効果的であったと考える。 構成シート 意見に対する理由 92% (検証授業Ⅰ) を、「説得力の度合」 と い う視 点で、そ れ ぞ れ を比 較しなが ら 適切に選択している。 意見文の題材を選択す る際に、付箋を活用した ことで、比較・関連付け の作業がスムーズにな り、児童がよく考えなが ら活動できたと考える。 (2) アンケートによる検証 手立て アンケートの項目 肯定的回答 ○ 発問の工夫 ・ 言葉や文章をよく見比べて、どれが大 88% 切かを考えることができた。 ・ 説明文や物語文を読んで、自分なりの 87% 考えや感想をもつことができた。 ○ 学び方の提示 ・ グループやみんなで話し合って、「な 88% るほど!」と、新しい学びを発見できた。 ・ 学び方(比べる、選ぶなど)を考 87% えながら、進んで勉強できた。 ※ 4段階回答で肯定的回答(よくできた、できた)の占める割合 2 - 18 考察 5つの要素に係る思考や判 断を促すような発問により、 児童の思考を活性化させるこ とにつながったと考える。 解決のための活動を、自分 たちで繰り返し考えることで、 学び方が身に付いたと意識で きるようになったと考える。 (3) 5つの要素から見る児童の意識の変容 ア アンケートの結果 比較・関連付け 解釈 80% 80% 62% 56% 60% 40% 51% 60% 60% 23% 20% 授業前 25% 21% 12% 0% 1% 授業後 0% 40% 26% 27% 21% 20% 3 2 1 4 収集・整理 60% 42% 26% 26% 授業前 授業後 1 35% 31% 31% 12% 20% 授業前 9% 2% 授業後 1% 0% 0% 4 3 2 1 4 表現 61% 60% 36% 20% 36% 28% 24% 10% 3 2 2 1 授業前 4% 1% 授業後 0% 4 3 <実施期間> 授業前…7月(検証授業Ⅰの前) 授業後…10月(検証授業Ⅱの後) 80% 40% 2 56% 40% 22% 24% 10% 8% 20% 3 意見・理由付け 66% 60% 40% 授業後 0% 4 80% 授業前 11% 3% 1% 4…よくできた 3…できた 2…あまりできない 1…できない 1 ※ <質問事項> ○解釈…作者の言いたいことを理解することができる。 ○比較・関連付け…2つのものを比べて、同じ点や違う点を見付けることができる。 ○収集・整理…学習問題を解決するために大切なところに線を引くことができる。 「○○字以内でまとめなさい」という問題でまとめることができる。 ○意見・理由付け…文章を読んで、自分なりの考えや感想をもつことができる。 ○表現…話合いを通して、「なるほど!」と新しい学びを発見することができる。 ※収集・整理は、2つの項目の平均をグラフ化 イ 考察 ○ どの要素においても、児童の意識面における向上が見られた。特に4と回答した児童 の増加が顕著である。その理由について、検証授業Ⅱを通して、以下の点で満足感や達 成感を感じた児童が多かったからではないかと考える。 ・ 解釈においては、パンフレット作成の言語活動を通して、従来の学習よりも主題に ついてより深く考えることができた。 ・ 比較・関連付けでは、各班の意見を比べながら重要語句を見付けることが概ねできた。 ・ 収集・整理では、重要語句を人物関係図にまとめることが概ねできた。 ・ 意見・理由付けでは、理由を意識しながら推薦文を書くことが概ねできた。 ・ 表現では、グループでの話合いで、自分達の考えを伝え合うことができた。 ○ 学習の達成状況よりも満足度が高めの結果にはなっているが、児童が自分たちに5つ の要素に係る力が身に付いたと実感できるようになったことは、今後の学びの中で、こ れらの力を生かしていこうとするきっかけを与えたという点で、大きな成果だと考える。 2 - 19 (4) 全国学力・学習状況調査から見る変容 ア 全国学力・学習状況調査の結果 検証のために11月に平成24年度の全国学力・学習状況調査問題を実施し、4月実施 の結果と比較を行った。その結果、平均正答率が向上し、無解答率も大きく減少した。 平均正答率の全国平均との比較 無解答率 4月24日実施 平均正答率が全国平均を下回る。 全体を通して14.6% 平成25年度の問題 (そのうち記述問題は18.8%) 11月20日実施 平均正答率が全国平均をわずかに 全体を通して3% 平成24年度の過去問題 上回る。 (そのうち記述問題は12%) イ 考察 ○ 調査結果の全国比との差を縮めることができた。特に、書く事柄を整理し文章を構成 する問題がよくできていた。また、記号問題は無解答がなく、記述問題も無解答率が減 少した。検証授業において、構成シートや人物関係図を使って、事柄を収集・整理し、 それを基に考えを書かせる学習活動の成果が出たと考える。 ● 事実を基に自分の考えを書く問題では、無解答は少なかったものの、情報を比較・関 連付けることが不十分で、問題文の条件を満たしていないものが一部に見られた。資料 を読み比べて、要点を押さえる言語活動をさらに工夫していく必要がある。 Ⅷ 成果と課題 1 成果 ○ B問題解決時の思考展開に基づき、単元と1単位時間の指導計画に5つの要素を位置付け たことで、児童が自力で意見文を書いたりパンフレットを整理したりすることができた。ま た、活動の焦点化を通して、5つの要素に係る力の育成につなげることができた。 ○ B問題解決時の思考展開に基づき、段階ごとに必要とされる力を明確にし、連続性をもた せた言語活動を実践することで、それぞれの段階で、各課題の自力解決が図られ、5つの要 素に係る力の育成につなげることができた。 ○ 発問の工夫や、学び方の提示を通して、児童が比較・関連付けなどの5つの要素に係る思 考展開を意識できるようになり、学習の見通しをもちながら、どのような方法で解決してい けばよいかを考えるようになった。 2 課題 ● 今回は「書くこと」「読むこと」に焦点をあて、検証を進めてきた。今後は、他の領域や、 「読むこと」の説明的な文章の場合においても、思考力・判断力・表現力を育成していくた めの、B問題解決時の思考展開に即した授業の在り方を検証していく必要がある。 ● 言語活動では、重要語句を記入するだけのものではなく、意見や解釈したことを自分の言 葉で表現させることを通して、さらに5つの要素に係る力が育成されるような手立てを工夫 していく必要がある。 参考・引用文献等 「小学校学習指導要領解説 国語編」 (平成 22 年 8 月 文部科学省) 「全国学力・学習状況調査の4年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ」 (平成 24 年 3 月 国立教育政策研究所 教育課程研究センター) 「教科調査官が語るこれからの授業」 (水戸部修治 他 平成 24 年 8 月 図書文化) 「授業における『思考力・判断力・表現力』」(水戸部修治 他 平成 24 年 7 月 東洋館出版社) 「関大初等部式思考力育成法」 (関西大学初等部 著 平成 24 年 2 月 さくら社) ≪研究実践校≫ 都城市立沖水小学校 2 - 20
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