ポインティングの定理 科 v1.4 May.2014 1. ポインティングの定理 年 番 氏名: り,流入電力=蓄積電力+損失というエネルギー保存則が成り立って 電磁波による伝送電力についてまとめる。次のベクトル公式 いることが分かる。 ⃗ × H) ⃗ =H ⃗ • (∇ × E) ⃗ −E ⃗ • (∇ × H) ⃗ ∇ • (E (1) において,右辺の () 内は次式に示すファラデーの法則とアンペア-マ nˆ クスウェルの法則より ⃗ ⃗ ⃗ = − ∂B , ⃗ = J⃗ + ∂ D ∇×E ∇×H (2) ∂t ∂t であるから,式 (1) 右辺第 1 項は ( ) ⃗ ∂B ⃗ ⃗ ⃗ H • (∇ × E) = H • − (3) ∂t 式 (1) 右辺第 2 項は ( ) ⃗ ∂D ⃗ ⃗ ⃗ ⃗ E • (∇ × H) = E • J + (4) ∂t となる。式 (3) (1) の右辺は ( ) と式 (4) ( の差をとることにより式 ) ⃗ ⃗ ∂ B ∂ D ⃗ • − ⃗ • J⃗ + H −E (5) ∂t ∂t に変形できる。式 (5) を展開すると ⃗ ⃗ ⃗ • ∂H − E ⃗ • J⃗ − ε0 E ⃗ • ∂E −µ0 H (6) ∂t ∂t ⃗ とその時間微分 ∂ A/∂t ⃗ となるが,式 (6) は任意ベクトル A との内積 We r r E • J = σ E2 S r r r S = E×H 図1 (7) ⃗ =E ⃗ ×H ⃗ は,体積 V 内の電気エネル する) に流入する電力 S ギー We と磁気エネルギー Wm の時間変化の増分とジュール損 1 ∂ 1 ∂ ⃗ • J⃗ − µ 0 H 2 − ε0 E 2 − E 2 ∂t 2 ∂t (8) を使うと 3. 付録: 式 (7) の導出 以下は式 (7) の導出である。不要なら読み飛ばしてもよい。 ⃗ ∂ ⃗ • ∂ A = (Ax x A ˆ + Ay yˆ + Az zˆ) • (Ax x ˆ + Ay yˆ + Az zˆ) ∂t ∂t ∂ ∂ ∂ = Ax Ax + Ay Ay + Az Az ∂t ∂t ∂t のように変形できる。以上まとめると式 (1) のベクトル公式は ( ) 1 1 ⃗ • J⃗ ε0 E 2 + µ0 H 2 − E 2 2 (9) のように変形できる。これをポインティングの定理*2 と呼ぶ。 ここで 2. ポインティングの定理の物理的意味 ここで式 (9) をさらに変形してその物理的な意味を考察する。 ( ) ⃗ × H) ⃗ = ∂ 1 ε0 E 2 + 1 µ0 H 2 + E ⃗ • J⃗ −∇ • (E (10) ∂t 2 2 ここで図 1 のような任意の領域 V で式 (10) を両辺積分すると ∫ ⃗ × H) ⃗ dv ∇ • (E v ∂ = ∂t ∫ ( V ) 1 1 ε0 E 2 + µ0 H 2 dv + 2 2 ⃗ × H) ⃗ dv = ∇ • (E を使うと I − ∂ = ∂t ∫ ( であるから ∂Ax 1 ∂A2x = ∂t 2 ∂t となる。Ay , Az についても同様の関係が得られるので 2 2 2 ⃗ ⃗ • ∂ A = 1 ∂Ax + 1 ∂Ay + 1 ∂Az A ∂t 2 ∂t 2 ∂t 2 ∂t Ax ⃗ • J⃗ dv E (11) より V ⃗ × H) ⃗ • d⃗s (E ⃗ ⃗ • ∂ A = 1 ∂ (A2x + A2y + A2z ) A ∂t 2 ∂t 1 ∂ = (Ax x ˆ + Ay yˆ + Az zˆ) • (Ax x ˆ + Ay yˆ + Az zˆ) 2 ∂t 1 ∂ ⃗2 1 ∂ 2 = |A| = A 2 ∂t 2 ∂t が得られる。(導出終わり) 4. 付録: 式 (14) の単位系について ⃗=E ⃗ ×H ⃗ の単位は E [V/m], H [A/m] より S 2 →[VA/m ] →[W/m2 ] (12) S ⃗ × H) ⃗ • d⃗s (E S ∂A2x ∂A2x ∂Ax ∂Ax = = 2Ax ∂t ∂Ax ∂t ∂t ∫ ここで左辺にガウスの発散定理 ∫ I V 体積 V の閉面 S(面に垂直な外向きの単位ベクトルを n ˆと ⃗ • J⃗ = σE 2 の和に等しい。 失E ⃗ ⃗ • ∂ A = 1 ∂ A2 A ∂t 2 ∂t − nˆ nˆ の関係式*1 ⃗ × H) ⃗ =−∂ ∇ • (E ∂t V Wm ) ∫ 1 1 ⃗ • J⃗ dv ε0 E 2 + µ0 H 2 dv + E (13) 2 2 V V ⃗=E ⃗ ×H ⃗ とおき,式 (13) 右辺第 1 さらに,式 (13) 左辺の () 内を S 2 項目の () 内を We = ε0 E /2, Wm = µ0 H 2 /2 とおいて,第 2 項に 3 ⃗ の関係を使えば J⃗ = σ E I ∫ * ∫ ∂ ⃗ S • (−ˆ n)ds = (We + Wm ) dv + σE 2 dv (14) ∂t V S V と書くこともできる。左辺第 1 項は体積 V を囲む閉面 S に流入する ルと呼ぶ。一方,右辺第 1 項は電気エネルギー We と磁気エネルギー We = ε0 E 2 /2 の単位は ε0 [F/m], E 2 [V2 /m2 ] より →[C/V·m][V2 /m2 ] →[CV/m3 ] →[A·s·V/m3 ] →[W·s/m3 ] Wm の時間変化の増分を示し,右辺第 2 項はジュール損失を示す。即 ⃗=E ⃗ ×H ⃗ は, ち式 (14) は「体積 V を有する閉面 S に流入する電力 S 体積 V 内の電気エネルギー We と磁気エネルギー Wm の時間変化の ⃗ • J⃗ = σE 2 の和に等しい」ことを意味してお 増分とジュール損失 E Wm = µ0 H 2 /2 の単位は µ0 [H/m], H 2 [A2 /m2 ] より →[V][A/s]−1 [A2 /m2 ] *5 →[V·s·A/m3 ] →[W·s/m3 ] 電力*4 を示しこれをポインティング電力またはポインティングベクト ⃗ • J⃗ = σE 2 の単位は E [V/m], J [A/m2 ] より E →[VA/m3 ] →[W/m3 ] *1 この関係式の導出は付録:で。 *2 バーミンガム大教授 Poynting, John Henry (1852-1914) が 1884 年に発 表した定理。マクスウェルの方程式の発表 (1864) から 20 年後のこと。 *3 *4 ⃗ • J⃗ = E ⃗ • σE ⃗ = σ|E| ⃗ 2 = σE 2 E n ˆ は閉面 S に対して外向きに垂直な単位ベクトルとして定義しているため, −ˆ n は流入を意味する。 *5 1 V = Ldi/dt より L の次元は [V][A/s]−1
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