■Z 検定 ●Z 検定とは Z 検定は、正規分布(Z 分布とも言う)を用いる統計学的検定法で、標本の平均と母集団の平均とが 統計学的にみて有意に異なるかどうかを検定する方法である。 2 標本の母分散が既知の場合や、大標本のデータで標本の分散と母分散が等しいと仮定できる場合は、 正規分布を用いた平均の差の検定ができる。母分散が既知というと工場の品質管理データのように以前 からの蓄積があったり、過去の大規模調査の結果を利用できたりという場面が考えられる。 Z 検定を用いるにはいくつかの条件に適合しなければならない。 ・最も重要なのは、Z 検定は母集団の平均と標準偏差(母数)を用いるものであるから、これらがわ かっていなければならない、ということである。 ・標本は母集団から抽出された単純ランダム標本でなければならない。 ・母集団は正規分布に従うことがわかっていなければならない。ただし母集団が正規分布に従うかど うか判然としない場合でも、 用いる標本のサイズが十分大きければ (一般に 30 から 40 以上ならば) よい。 ●正規分布とは ★正規分布 計量値の分布としてもっとも重要で,一般的なものが正規分布である. 正規分布は左右対称のひと山のベル型,富士山型の分布を示す. 正規分布の確率密度関数f(x)は以下のようになり,定数μとσによって分布の形が定まる. 1 f ( x) e 2 ( x )2 2 2 正規分布の平均(期待値)と分散は,以下のようになり,平均μ,分散σ2 (標準偏差σ) の確率分布であ り、正規分布は,平均μと分散σ2 で分布の形が定まるので,一般に N (μ,σ2)と表現される. ★標準正規分布 確率変数 x が N (μ,σ2) に従うとき,x を u x と変換すると,確率変数 u は N (0,12)に従う. この変換を“標準化(規準化)”といい,μを原点 0 とおき,σ単位で目盛をふる操作をしていることに なる. 一般式で表わされる正規分布はμとσの組合せによって分布が無数にあるが,標準化を行うことによ ってすべての正規分布は,μ,σに無関係な標準正規分布に変換される. N(0,12)を“標準正規分布”といい,N (0,12)の正規分布表を用いることで,正規分布に従う確率変 数が,ある値以上または以下の値をとる確率を求めることができる. 標準正規分布表へ -1- ●母分散が既知の場合の母平均の差の検定手順 検定の対象となる母集団が2つあって、それぞれの母分散がともに既知である場合に、母平均の差を 検定する方法である。 この方法は、母分散σ12 とσ22 が既知の 2 つの正規母集団 N (μ1,σ12) および N (μ2,σ22) から、 それぞれランダムに得られた大きさが n1 のサンプルのデータ(x11,x12,・・・,x1i,・・・,x2n1)と大き さが n2 のサンプルのデータ(x21,x22,・・・,x2i,・・・,x2n2)の平均値を x1 , x2 とするとき、次の統計 量が標準正規分布 N (0,12) に従うことを利用する。 u ( x1 x2 ) ( 1 2 ) 12 n1 22 n2 ★検定の手順 手順1 仮説の設定 帰無仮説 H0:μ1=μ2 対立仮説 (a) H1:μ1≠μ2(両側検定) (b) H1:μ1>μ2(右片側検定) (c) H1:μ1<μ2(左片側検定) 手順2 有意水準αの設定 α=0.05 または α=0.01 → α=0.05 とするのが一般的である。 手順3 検定統計量の計算 u0 x1 x2 12 n1 22 n2 手順4 棄却域の設定 帰無仮説 H0:μ1=μ2 の棄却域 R は次の通りである。 表 H0:μ1=μ2 の検定(σ2 既知) 検定方式 対立仮説 H1 棄却域 R 解説図 両側検定 μ1≠μ2 | u0|≧u(α/2) 図1 右片側検定 μ1>μ2 u0≧u(α) 図2 左片側検定 μ1<μ2 u0≦-u(α) 図3 備 u 0:検定統計量 手順5 有意性の判定 検定統計量 u0 が棄却域 R に入れば、有意水準αで有意である。 検定統計量 u0 が棄却域 R に入らなければ、有意水準αで有意ではない。 -2- 考 ●Z 検定 棄却域の解説図 ★両側検定 図1 H0:μ1=μ2,H1:μ1≠μ2(両側検定)における H0 の棄却域 *両側 Z 検定結果の判定 検定統計量 u0 が棄却域に入れば、検定結果は有意水準αで有意であると判定し、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却して、対立仮説 H1:μ1≠μ2 を採択する。 即ち、母平均 1 は母平均 2 と異なると言える。 一方、検定統計量 u0 が棄却域に入らなければ、有意水準αで有意ではないと判定し、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却できない。即ち、母平均 1 は母平均 2 と異なるとは言えない。 -3- ★右片側検定 図2 H0:μ1=μ2,H1:μ1>μ2(右片側検定)における H0 の棄却域 *右片側 Z 検定結果の判定 検定統計量 u0 が棄却域に入れば、検定結果は有意水準αで有意であると判定し、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却して、対立仮説 H1:μ1>μ2 を採択する。 即ち、母平均 1 は母平均 2 より大きいと言える。 一方、検定統計量 u0 が棄却域に入らなければ、有意水準αで有意ではないと判定し、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却できない。即ち、母平均 1 は母平均 2 と大きいとは言えない。 -4- ★左側検定 図3 H0:μ1=μ2,H1:μ1<μ2(左片側検定)における H0 の棄却域 *左片側 Z 検定結果の判定 検定統計量 u0 が棄却域に入れば、検定結果は有意水準αで有意であると判定し、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却して、対立仮説 H1:μ1<μ2 を採択する。 即ち、母平均 1 は母平均 2 より小さいと言える。 一方、検定統計量 u0 が棄却域に入らなければ、有意水準αで有意ではないと判定し、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却できない。即ち、母平均 1 は母平均 2 と小さいとは言えない。 -5- ● Z 検定結果の判断 Z 検定 有意性の判断図 0.45 0.4 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 領域④ 領域⑤ -3 -2 -1 φ=10 領域③ 領域② 領域① 0 1 2 右片側検定 棄却域 右片側検定採択域 左片側検定 棄却域 両側検定 棄却域 3 右片側検定採択域 - u(α) u(α) 両側検定採択域 u(α/2) -u(α/2) -6- 両側検定 棄却域 Z 検定の結果の有意性については、上の解説図に示すように、検定統計量 u0 が上図のどの領域に入る かにより、有意水準 α で、次のように判断する。 領域 ① ② ③ ④ ⑤ ○:有意である △:片側検定で有意 ×:有意ではない 検定統計量と棄却域との関係 両側検定 右片側検定 左片側検定 u0 ≧ u(α/2) ○ ○ × u(α) ≦ u0 < u(α/2) × ○ × -u(α) < u0 < u(α) × × × -u(α) ≧ u0 > -u(α/2) × × ○ u0 ≦ -u(α/2) ○ × ○ 検定結果 ○ △ × △ ○ ① 検定統計量 u0 ≧ 両側検定棄却境界 u(α/2) 有意水準 α で、両側検定結果は有意であり、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却し、対立仮説 H1:μ1 ≠μ2 を採択する。 母平均 μ1,μ2 は異なると言える。 有意水準 α で、右片側検定結果は有意であり、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却し、対立仮説 H1:μ1>μ2 を採択する。 母平均について、μ1>μ2 と言える。 ② 右片側検定棄却境界 u(α) ≦ 検定統計量 u0 < 両側検定棄却境界 u(α/2) 右片側検定では有意であるが、両側検定では有意ではない。 両側検定の方が判断基準として厳しいので、厳しい判断をすれば、二つデータの母平均には違い があるとは言えない。 場合によっては、さらにサンプルを取って、精度を上げた検定を実施して判断すると良い。 ③ 左片側検定棄却境界-u(α) <検定統計量 u0 < 右片側検定棄却境界 u(α) 両側検定でも、片側検定でも有意ではなく、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却できず、母平均 μ1,μ2 は異なるとは言えない。 ④ 左片側検定棄却境界-u(α) ≧ 検定統計量 u0 > 両側検定棄却境界 -u(α/2) 左片側検定では有意であるが、両側検定では有意ではない。 両側検定の方が判断基準として厳しいので、厳しい判断をすれば、二つデータの母平均には違い があるとは言えない。 場合によっては、さらにサンプルを取って、精度を上げた検定を実施して判断すると良い。 ⑤ 検定統計量 u0 ≦ 両側検定棄却境界 -u(α/2) 有意水準 α で、両側検定結果は有意であり、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却し、対立仮説 H1:μ1≠μ2 を採択する。 母平均 μ1,μ2 は異なると言える。 有意水準 α で、左片側検定結果は有意であり、 帰無仮説 H0:μ1=μ2 を棄却し、対立仮説 H1:μ1<μ2 を採択する。 母平均について、μ1<μ2 と言える。 -7- ● Z 検定分析ツール 概要と分析結果 *概要 ・大標本(標本数 100 以上)に適用できる標準正規分布を利用した検定である。 2 標本( 「変数 1」 、 「変数 2」 )の平均値の差がある仮説平均に等しいかどうかを検定する。 ・2 標本( 「変数 1」 、 「変数 2」 )の平均値に差があるかどうかの検定の場合は「仮説平均」を 0 と する。 ・2 標本の分散は既知を仮定しているので必ず入力すること。 2 標本の母分散が既知の場合や、大標本のデータで標本の分散と母分散が等しいと仮定できる場 合であり、母分散が既知とは、工場の品質管理データのように以前からの蓄積があったり、過去 の大規模調査の結果を利用できたりという場面が考えられる。 このような既知の母分散を利用できる場合は、 「変数 1 の分散(既知) 」、 「変数 2 の分散(既知) 」 に直接分散を入力します。 母分散が未知でも、標本数が十分に大きい場合には、標本データから計算した分散を入力しても よい。 ・帰無仮説は「2 標本の母集団の平均はある仮説平均に等しい」 又は「2 標本の母集団の平均は等しい」である。 ・2 標本の標本データ数は同数でなくてもよい。 入力画面 *分析結果 ・「Z」 :標本より観測された検定統計量 Z の値 ・「P(Z<=z)片側、両側」 :片側検定、両側検定の場合の統計量Zの標準正規分布から求まる有意確 率(P 値) 。この P 値が危険率αより小さい場合、検定結果は有意であり、帰無仮説は棄却され、 2標本の平均は仮説平均とは異なると判定する。 ・ 「Z 境界値 片側、両側」 :ユーザが定めた危険率αにより、標準正規分布から求まる棄却限界値。 検定統計量 Z の値がこの値より大きい場合、検定結果は有意であり、帰無仮説は棄却され、2標 本の平均は仮説平均とは異なると判定する。 出力画面 データ1 データ2 平均 8.052 8.037 既知の分散 0.0001 0.0004 観測数 10 10 仮説平均との差異 0 z 2.12132 P(Z<=z) 片側 0.016947 z 境界値 片側 1.644854 P(Z<=z) 両側 0.033895 z 境界値 両側 1.959964 -8- ●Z 検定 解析事例 → Excel Z 検定分析ツール 例題(u0>0) 参照 → Excel Z 検定分析ツール 例題(u0<0) 参照 ★Z 検定分析ツール解析結果に関する注意事項 *Z 検定分析ツールによる検定結果は、両側検定と片側検定の結果として計算される。 *両側検定の計算結果 → u0>0 の場合と u0<0 の場合で同じ計算結果である。 *片側検定(u0>0)の計算結果 → 右片側検定として計算される。 *片側検定(u0<0)の計算結果 → 左片側検定として計算される。 ・有意確率(P 値) → 検定統計量 u0 以下の確率を示す。 ・棄却境界値 u(α) → 左片側検定の棄却境界値 RL=-u(α)を示している。 -9-
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