■信頼区間と両側検定の関係 区間推定とは、母集団の平均値や分散値(真の値)を、ある幅を持って推定することであり、全数調 査でない限り、母集団全体の(真の)平均値や分散値は不明で推定せざるを得ないので、標本のデータ から推定して、母集団の平均値や分散値の存在する推定値は、この値からこの値までの間に存在するの ではないか」という推定を行うことである。 信頼区間とは、母集団の平均値や分散値などが存在する考えられる区間(範囲)のことである。検定 の有意水準(危険率)をαとしたとき、帰無仮説 H0 における母集団の平均値や分散値などの値が信頼 率 1-αで存在すると考えられる推定区間のことである。 ここで、次の①と②は同値である。 ① 両側検定における検定統計量が帰無仮説 H0 の棄却域にはなく、採択域にあること。 即ち、有意水準αで、両側検定が有意とならないこと。 ② 帰無仮説 H0 の値が信頼率 1-αの信頼区間に含まれること、 Z検定 推定 解説図 N(0,12) 1-α 同値 α/2 α/2 μ0 信頼区間 信頼下限 信頼上限 以下に、各検定方式おいて、上記のことを具体的に解説する。 目次 ●Z 検定 1 両側検定と信頼区間の関係 ●Z 検定 2 両側検定と信頼区間の関係 ●F 検定 両側検定と信頼区間の関係 ●t 検定 0 両側検定と信頼区間の関係 ●t 検定 2 両側検定と信頼区間の関係 -1- ●Z 検定 1 両側検定と信頼区間の関係 →目次へ 母分散が既知の場合の母平均の検定手順(1 つの母集団) ★検定の仮説 帰無仮説 H0:μ=μ0,対立仮説 H1:μ≠μ0 有意水準α ★両側検定の棄却域と採択域 検定統計量 u0 x 0 / n x 0 棄却域 R : u0 採択域 u ( / 2) / n u ( / 2) x 0 / n u ( / 2) ・・・・・ 式(1) ★推定の手順 *母平均μの点推定 ̂ x *母平均μの区間推定 信頼上限 信頼下限 ˆU x u ( / 2) ˆ L x u ( / 2) n n ★信頼区間 信頼率 1-αの母平均μの信頼区間は、 x u ( / 2) n x u ( / 2) n この信頼区間が帰無仮説の値μ0 を信頼区間の内部に含んでいるとき、次の式(2)が成り立つ。 x u ( / 2) n 0 x u ( / 2) ・・・・・ 式(2) n この式(2)を変形すると, u ( / 2) u ( / 2) x 0 x u ( / 2) n x 0 / n n u ( / 2) ・・・・・ 式(3) ここで、式(3)は両側検定の採択域の式(1)と同一である。 以上より、 式(2)は、①「帰無仮説の値μ0 が信頼率 1-αの信頼区間に含まれること」を意味する。 式(1)(3)は、②「検定統計量 u0 が帰無仮説 H0 の採択域にあること」 即ち、 「有意水準αの両側検定で有意にならないこと」を意味する。 ①と②は、同値であることが分かる. -2- ★解説図 Z検定 推定 解説図 式(2) 式(1)(3) N(0,12) 1-α 同値 α/2 α/2 μ0 信頼区間 信頼下限 信頼上限 信頼率 1-αの信頼区間に比較値μ0 が含 まれていれば、帰無仮説 H0 が採択される。 検定統計量 u0 が帰無仮説 H0 の採択域 にある。 有意水準αの両側検定では有意にならない。 母平均μは比較値μ0 と異なるとは言えない。 -3- ●Z 検定 2 両側検定と信頼区間の関係 →目次へ 母分散が既知の場合の母平均の差の検定手順(2 標本) ★検定の仮説 帰無仮説 H0:μ1=μ2,対立仮説 H1:μ1≠μ2 有意水準α ★両側検定の棄却域と採択域 棄却的域 x1 x2 u0 検定統計量 12 22 n1 n2 | x1 x2 | R :| u0 | 12 n1 22 n2 u ( / 2) 両側検定の採択域 u ( / 2) x1 x2 1 2 n1 2 u ( / 2) 2 ・・・・・ 式(1) n2 ★推定の手順 *母平均の差μ1-μ2 の点推定 ˆ1 ˆ 2 x1 x2 *母平均の差μ1-μ2 の区間推定(信頼率 1-α) 信頼上限 ( 1 2 )U ( x1 x2 ) u ( / 2) 信頼下限 ( 1 2 ) L ( x1 x2 ) u ( / 2) 12 22 22 n1 12 n1 n2 n2 ★信頼区間 信頼率 1-αの母平均μ1-μ2 の信頼区間 ( x1 x2 ) u ( / 2) 12 n1 22 n2 1 2 ( x1 x2 ) u ( / 2) 12 n1 22 n2 ・・・・・ 式(2) この式(2)を変形すると, u ( / 2) 12 n1 22 n2 ( x1 x2 ) ( 1 2 ) u ( / 2) 12 n1 22 n2 ここで、母平均μ1-μ2 が帰無仮説の採択域にあるときは、μ1-μ2=0 であるから、 u ( / 2) 12 n1 22 n2 x1 x2 u ( / 2) 12 n1 22 n2 この式を変形して、 u ( / 2) x1 x2 12 n1 22 u ( / 2) ・・・・・ 式(3) n2 ここで、式(3)は両側検定の採択域の式(1)と同一である。 -4- 以上より、 式(2)は、①「帰無仮説の値μ1-μ2 が信頼率 1-αの信頼区間に含まれること」を意味する。 式(1)(3)は、②「検定統計量 u0 が帰無仮説 H0 の採択域にあること」 即ち、 「有意水準αの両側検定で有意にならないこと」を意味する。 上記の①と②は、同値であることが分かる. ★解説図 式(2) 同値 信頼率 1-αの信頼区間に 0 が含まれて いれば、帰無仮説 H0 が採択される。 式(1)(3) 検定統計量 u0 が帰無仮説 H0 の採択域 にある。 有意水準αの両側検定では有意にならない。 二つの母平均μ1,μ2 の差があるとは言えない。 -5- ●F 検定 両側検定と信頼区間の関係 ★検定の仮説 帰無仮説 H0:σ12=σ22 対立仮説 H1:σ12≠σ22 有意水準α →目次へ (両側検定) (等分散の検定) ★両側検定の棄却域と採択域 検定統計量 V1 V2 F0 V2 V1 or 棄却域 V1 F (1 ,2 ; / 2) V2 V Vl<V2 のとき F0 1 F (1 ,2 ;1 / 2) V2 Vl≧V2 のとき F0 両側検定の採択域 F (1 ,2 ;1 / 2) V1 F (1 ,2 ; / 2) V2 ・・・・・ 式(1) ★推定の手順 *母分散の比 1 / 2 の点推定 2 2 ˆ12 V1 ˆ 2 2 V2 *母分散の比 1 / 2 の区間推定(信頼率 1-α) 2 信頼上限 信頼下限 2 V 2 2 ( 1 / 2 )U F (2 ,1 ; / 2)・ 1 V2 V V 1 2 2 ( 1 / 2 ) L ・ 1 F (2 ,1 ;1 / 2)・ 1 F (1 ,2 ; / 2) V2 V2 ★信頼区間 信頼率 1-αの母分散比 1 / 2 の信頼区間 2 2 V V ・ 1 1 2 F (2 ,1 ; / 2)・ 1 F (1 ,2 ; / 2) V2 2 V2 2 1 ・・・・・ 式(2) この式(2)を変形すると, V 2 1 2 F (2 ,1 ; / 2) F (1 ,2 ; / 2) V1 2 2 1 ここで、母分散比 1 / 2 は帰無仮説の採択域にあるときは、 1 / 2 1.0 であるから、 2 1 F (1 ,2 ; / 2) 2 2 V2 F (2 ,1 ; / 2) V1 この式を変形すると, F (1 ,2 ; / 2) V1 1 F (1 ,2 ;1 / 2) V2 F (2 ,1 ; / 2) -6- 2 F (1 ,2 ;1 / 2) V1 F (1 ,2 ; / 2) V2 ・・・・・ 式(3) ここで、式(3)は両側検定の採択域の式(1)と同一である。 以上より、 式(2)は、①「帰無仮説の母分散の比 1 / 2 が信頼率 1-αの信頼区間に含まれること」を意味す る。 式(1)(3)は、②「検定統計量 t0 が帰無仮説 H0 の採択域にあること」 即ち、 「有意水準αの両側検定で有意にならないこと」を意味する。 上記の①と②は、同値であることが分かる。 2 2 ★解説図 式(2) 式(1)(3) 同値 信頼率 1-αの信頼区間に 1 が含まれて いれば、帰無仮説 H0 が採択される。 検定統計量 F0 が帰無仮説 H0 の採択域 にある。 有意水準αの両側検定では有意にならない。 二つの母分散σ12,σ22 が異なるとは言えない。 -7- ●t 検定 0 両側検定と信頼区間の関係 →目次へ 1 標本の母平均と基準値との差の検定(母分散σ2 未知) ★検定の仮説 帰無仮説 H0:μ=μ0 有意水準α 対立仮説 H1:μ≠μ0(両側検定) ★両側検定の棄却域と採択域 検定統計量 t0 x 0 V /n 棄却的域 R: t0 t ( , ) 自由度 φ=n-1 t ( , ) 両側検定の採択域 ★推定手順 *母平均μの点推定 点推定 ̂ x x 0 V /n t ( , ) ・・・・・ 式(1) xi n *母平均μの区間推定(信頼率 1-α) 信頼上限 信頼上限 V n V L x t ( , ) n U x t ( , ) ただし,φ=n-1 ★信頼区間 信頼率 1-αの母平均μの信頼区間 x t ( , ) V V x t ( , ) n n この信頼区間が帰無仮説の値μ0 を信頼区間の内部に含んでいるとき、次の式(2)が成り立つ。 x t ( , ) V V 0 x t ( , ) n n ・・・・・ 式(2) この式(2)を変形すると, t ( , ) x 0 V /n t ( , ) ・・・・・ 式(3) ここで、式(3)は両側検定の採択域の式(1)と同一である。 以上より、 式(2)は、①「帰無仮説の値μ0 が信頼率 1-αの信頼区間に含まれること」を意味する。 式(1)(3)は、②「検定統計量 t0 が帰無仮説 H0 の採択域にあること」 即ち、 「有意水準αの両側検定で有意にならないこと」を意味する。 ①と②は、同値であることが分かる. -8- ★解説図 式(2) 式(1)(3) 同値 信頼率 1-αの信頼区間に比較値μ0 が含 まれていれば、帰無仮説 H0 が採択される。 検定統計量 t0 が帰無仮説 H0 の採択域 にある。 有意水準αの両側検定では有意にならない。 母平均μは比較値μ0 と異なるとは言えない。 -9- ●t 検定 2 両側検定と信頼区間の関係 →目次へ σ12 とσ22 は未知だが、σ12=σ22 と考えられる場合 ★検定の仮説 帰無仮説 H0:μ1=μ2 対立仮説 H1:μ1≠μ2 (両側検定) ★両側検定の棄却域と採択域 検定統計量 t0 x1 x2 1 1 V n1 n2 棄却的域 R: t0 t ( , ) φ1=n1-1 自由度 φ=φ1+φ2 両側検定の採択域 t ( , ) x1 x2 1 1 V n1 n2 φ2=n2-1 t ( , ) ・・・・・ 式(1) ★推定手順 *母平均の差μ1-μ2 の点推定 1 2 x1 x2 *母平均の差μ1-μ2 の区間推定(信頼率 1-α) 自由度 φ=φ1+φ2=n1+n2-2 信頼上限 1 1 ( 1 2 )U ( x1 x2 ) t ( , ) V n1 n2 信頼下限 1 1 ( 1 2 ) L ( x1 x2 ) t ( , ) V n1 n2 ★信頼区間 信頼率 1-αの母平均μ1-μ2 の信頼区間 1 1 1 1 x1 x2 t ( , ) V 1 2 x1 x2 t ( , ) V n1 n2 n1 n2 ・・・・・ 式(2) この式(2)を変形すると, 1 1 1 1 t ( , ) V x1 x2 ( 1 2 ) t ( , ) V n1 n2 n1 n2 ここで、母平均μ1-μ2 が帰無仮説の採択域にあるときは、μ1-μ2=0 であるから、 1 1 1 1 t ( , ) V x1 x2 t ( , ) V n1 n2 n1 n2 この式を変形して、 t ( , ) x1 x2 1 1 V n1 n2 t ( , ) ・・・・・ 式(3) ここで、式(3)は両側検定の採択域の式(1)と同一である。 - 10 - 以上より、 式(2)は、①「帰無仮説の値μ1-μ2 が信頼率 1-αの信頼区間に含まれること」を意味する。 式(1)(2)は、②「検定統計量 t0 が帰無仮説 H0 の採択域にあること」 即ち、 「有意水準αの両側検定で有意にならないこと」を意味する。 上記の①と②は、同値であることが分かる. ★解説図 式(1)(3) 式(2) φ=φ1+φ2 同値 信頼率 1-αの信頼区間に 0 が含まれて いれば、帰無仮説 H0 が採択される。 検定統計量 t0 が帰無仮説 H0 の採択域 にある。 有意水準αの両側検定では有意にならない。 二つの母平均μ1,μ2 が異なるとは言えない。 - 11 -
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