小テストNo.1

生化学Ⅰ 第 1 回小テスト
2014.10.30
問題 1.<進化の過程>地球上の進化の過程について述べた下の文章に関連した質問 i~iv
に答えなさい。
45 億年前に地球が誕生した後,およそ 10 億年の間に地球上に生命が誕生したと考えら
れている。地球上で生命が誕生したプロセスは「化学進化;Abiogenesis」と呼ばれ,その途
中に発生した 4 つの重要なイベントが生命誕生に重要であったと考えられている。
まず,誕生したばかりの地球に存在した水素,二酸化炭素,アンモニアなどの化合物か
らより複雑な化合物が合成されたのが生命誕生の第 1 歩と考えられている。①地球上のどこ
でこの第 1 のステップが起きたかは現在諸説があるが,当時の地球上の環境が大いに有機
化合物誕生に貢献したと考えられる。次に,これら有機化合物の構造内に化学反応に参加
できる「官能基」が誕生した。官能基が誕生し,様々な化学反応が生じたので有機化合物
は②さらに複雑な化合物を「重合反応」で形成する様になったのである。より複雑な有機化
合物が重合により生まれると今度は地球上の限られた量の有機化合物を奪い合う争奪戦が
始まった。この競争の中で,③「相補性」という重要な能力を持った化合物が他の有機化合
物よりも素早く,確実に自分のコピーを残せるようになり,地球上の有機化合物が淘汰さ
れていった。そして現在に存在する生き物が誕生する前の最後の重大イベントとして,環
境から切り離れた「仕切り」を作ることができる④細胞が誕生した。
i. 下線部①に関連して,講義では有機化合物が生まれた様子として学説を3,4つほど紹
介したが,紹介した学説の中から1つを選び,a.「その学説で提唱されている有機化合
物誕生のプロセス」,そして b.「どうしてその学説は有力なのか,その証拠や根拠」を
簡単に説明しなさい。
ii. 下線部②について,「ペプチド結合」をベースとした重合反応に関与する官能基2種類
の名前と構造を答えなさい。また,「ペプチド結合」の形成により形が作られる,生物
の中に存在するある生理活性分子の名前(総称)を答えなさい。
iii. 下線部③について,「相補性」を使って自分をコピーする分子は他の有機化合物分子よ
りもどの点において自分を複製するときに有利となるか,簡単に説明しなさい。
iv.下線部④について,生物にとって細胞を作り,自己と外界を区切ることのメリットを簡
単に説明しなさい。
問題2.「自発的に進む反応や過程」に関する以下の質問に答えなさい。
i. 下の文章の空欄①∼④に適当な「語句」または文中の記号を用いた「式」を記入し,文
章を完成させなさい。また下線部⑤,⑥については「発熱」,
「吸熱」の中から正しい語
句を選択して答えなさい。
左右にスムーズに移動する可動壁を持った体積 VA の箱の中に一定の量の気体を閉
じ込め,この箱に少量の熱量 q を与えて暖めると,気体は膨張して可動壁が静かに動
き,新しい体積 VB となる。このような「自発的変化」において,変化前(A 状態)
<裏に続く>
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と変化後(B 状態)では,個々の分子がもつ運動エネルギーと,分子同士が及ぼす位
置エネルギーの総和からなる
①
(語句)
(記号 U)に変化が生じる(ΔU=UB-UA)。
また,可動壁は一定の外の圧力 P に対して動いているので,もう1種類のエネルギー
である仕事, ② (式)が生じる。ΔU と ② の和で表される変化量ΔH
(ΔH=
③
(式))はエンタルピー変化と呼ばれる。化学反応でも反応前後で
エンタルピーの変化はしばしば生じる。化学反応のΔH は ④ (語句)として体感
することができ,ΔH>0のとき,反応 A→B は⑤(発熱,吸熱)反応,ΔH<0のと
き,反応 A→B は⑥(発熱,吸熱)反応である。
ii. 2つのガラスフラスコをバルブでつなぎ,片方のフラスコには少量のガスを閉じ込め,
もう片方のフラスコは真空にした装置を用意した。この装置の周りを発泡スチロールで
くるみ,熱の出入りを遮断した後にコックをゆっくり開くとどのような自発的変化が観
測されるか,答えなさい。また,この変化を説明する「エントロピー変化ΔS」について,
簡単に説明しなさい。
iii. ギブス自由エネルギー変化ΔG は i.のΔH と ii.のΔS を含めて「反応の自発性」を評価す
る一つの指標である。温度 T におけるΔG をΔH,T,ΔS で表した式を答え,反応が自発
的であるためにΔG が満たすべき条件を示しなさい。
iv. <難>ある化学反応 A ⇄ B が温度 T で平衡状態に有り,そのときの A,B の濃度はそ
れぞれ[A]eq , [B]eq であった。このことより,反応の「標準状態における自由エネルギー
変化ΔGo」を表す式を求めなさい。ただし,気体定数を R とする。
問題3.水に関する以下の質問に答えなさい。
i. 解答用紙に2個の水分子と,その水分子を結ぶ1つの水素結合を図示しなさい。水素結
合は「点線」で表示すること。なお,正解には水の構造的特徴を正しく描くこと,そし
て水素結合の基本的な性質が正しく表現されている必要があります。
ii. 「疎水効果」という力はどのようなものか,簡単に説明しなさい。
iii. 「水のイオン積」とは何か,式と簡単な文章で説明しなさい。また,pH7の水におけ
る水素イオン濃度([H+])の値を答えなさい。
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解答用紙
所属
学籍番号
氏名
問題1.35 点満点
i a. 「原始大気に雷が作用して有機化合物が形成された」説,
「海底活火山の噴火口付近(ブ
ラックスモーカー)で簡単な有機化合物が誕生した」説,
「海辺のほとりに粘土層があって
そこで有機化合物が誕生した」説,そして「宇宙飛来」説などを講義で紹介しました。
(5 点)
b.「原始大気・雷」説は Miller と Urey がモデル装置で実験を行い,比較的簡単にアミノ酸
が誕生することを証明した。
「噴火口」説は現在の真核生物の祖先とも言える「古細菌」が
この噴火口付近に生存していたこと,噴火口付近には硫化水素,水素など還元力を持った
分子に富むことなどが根拠。
「海辺のほとり」は粘土質の物質が表面で化学反応を触媒する
力があることから。「宇宙飛来」は星間物質に有機化合物が発見されたことが根拠です。
(5 点)
ii.<名前
アミノ
基>(2 点,右も同じ) <名前
(-NH3+,-NH2 も可) (3 点;右も同じ)
ii.生理活性分子の名前
カルボキシ(ル)
基>
(-COO-,­COOH も可;構造式が理想)
タンパク質(5 点)
iii. 相補性の根底にある分子同士の「親和力」(たとえば負電荷が正電荷を持つ物質を引
きつける,など)によって,新規に合成される分子(合成の"材料")を合成現場近くにと
どまり,反応しやすくなる効果が生まれる。そして,2 つの分子が互いの構造情報を保存
することで「協力」関係が有利に働く,などのメリットも。(5 点,下線がポイント)
iv. 合成反応の条件(pH など)を一定に保つことができる。また,合成の原材料を確保で
きること,複雑な多段階反応の中間生成物が拡散していかなくなるなどのメリットが考え
られる。(5 点,下線がポイント)
問題2.37 点満点
i.①(2 点x6)
②
内部エネルギー
③
④
反応熱
P(VB-VA)
⑤
ΔU+P(VB-VA)
⑥
吸熱
発熱
<裏に続く>
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問題2.(続)
ii.どうなるか
左右にほぼ同じ量のガスが分散する (5 点,「左右ほぼ同じ」がポイント)
変化を説明するΔS について
(5 点,下線がポイント)
各々の分子が特定のフラスコ内に留まる確率が同等(左右自由)とすると,すべての気体
分子が片側のフラスコに偏る事象よりもほぼ均等に気体が分散する事象の方が存在確率が
はるかに高いため。この状況を式にするために定義されたのが Boltzmann の「統計力学的
エントロピー」の定義式で,S=kblnW と定義される。kb はボルツマン定数,W はある「系」
が取り得る,エネルギーが同一の「微視的状態の数」を表す。
iii. (5 点)
(5 点)
ΔG 0
ΔG=ΔH-TΔS
iv. (5 点,部分点有り)
ΔGo=−𝑅𝑇𝑙𝑛
! !"
! !"
[!]
(平衡定数𝐾!" = [!}!" のため]
!"
問題3.28 点満点
i. 教科書図 2.2 より。立体的な表示は不要ですが,①
水分子が 104.5 度の角度で曲がっている分子であるこ
と,②非共有電子対が1分子に 2 対あること,そして
③水素結合はその非共有電子対と水素原子の間で形
成されていることを図で表していると満点です。
(10 点)
ii. 水が電荷や電荷の極性を全く持たない分子と接触したとき,その分子との接触表面積
を最低にするために分子の周りに水素結合の網を形成して安定化するために生じる分子相
互作用のこと。(6 点)
iii. 液体の水がわずかに電離する性質を式で表し,水のイオンか平衡から水のモル濃度
(55.5 M)が水素イオン濃度や水酸化物イオン濃度よりも大変大きく,ほぼ一定と近似で
きるために表記できる式で KW と表す。KW=[H+][OH-]=1x10-14 (M2)
(7 点)
iii. (5 点)
[H+]= 1x10-7 (M)
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