認知症対応型通所介護・介護予防認知症対応型通所介護 デイサービスにおける、スリーA プログラム実践への取り組み 愛知県岡崎市 (有)デイサービス青空 ○兵藤 晃一 Ⅰ 初めに 1.デイサービスあおぞらについて デイサービスあおぞらは、介護保険法が誕生した 4 年後の 2004 年 3 月に岡崎市日名町で開所し ました。開設時(※1)の岡崎市には単独型の認知症対応型通所介護施設はなく、単独型としては 初めての施設でした。 2008 年 10 月には日名町の社会性が強い地域とは全く違う自然環境の中で認知症ケアを行いた いという思いから同市保母町に同型の認知症対応型通所介護施設デイサービスあおぞら・保母を 開設しました。 ※1 現在(H26 年 9 月)市内に認知症対応型通所介護は計 9 施設 (内単独型 2 施設、併設型 7 施設) 2.岡崎市の年齢別人口について 現在の年少人口(0~14 歳)は 57501 人で、前年より 297 人減少し、全人口に占める割合は 15.16% となっています。生産年齢人口(15~64 歳)は 244865 人で、前年より 2128 人減少し、全人口に占め る割合は 64.56%となっています。老人人口(65 歳以上)は 76898 人で、前年より 3440 人増加し、全人 口に占める割合は 20.28%となっています。年少人口及び生産年齢人口は 6 年連続で減少し、老年 人口は増加を続けています。 3.スリーA との出会いとスタート 施設開設時から様々な認知症ケアに取り組んできましたが、どのケア方法も実際に効果を感じる ことが薄く、正直、中途半端な施設でした。自分達の認知症ケアに対する思いと利用者様への効果 が形として具体的に見えてくるような認知症ケアを探し続けたところ「認知症予防 スリーA」を知り、 増田先生とお逢いする事ができました。実際に「折り梅」へ体験見学をし、その後研修会にも職員が 参加し、その内容を忠実に全職員に社内研修で伝えたのち、少しでも増田先生に近づけるようにと の思いと、何よりも利用者様の生活レベル、認知機能を引き戻すと職員一丸となってスタートしまし た。 Ⅱ 評価 1.評価方法 当施設では、HDS-R(長谷川式認知症スケールテスト)を評価方法として使用しました。MMS テス トではなく、HDS-R を使用した理由としてはスリーA 実施以前から導入しており、スリーA 実施前後の 変化及びテスト実施者のスキル等から HDS-R が適していると判断したからです。 実施方法及び実施環境は全てテスト実施者本人(利用者様)と看護師(当施設勤務者)による個 別質問形式。場所は施設内相談室。1 回目、2 回目ともに同一看護師による同一方法によるテスト 実施です。尚、一回目テスト実施後の約半年後に 2 回目テスト実施をしました。 2.対象者 スリーA 方式導入前から、当施設を利用されている方 (内訳) 男 女: 男性 4 名 女性 6 名 合計 10 名 年 齢: 54 歳~99 歳 介護度: 要介護 1~要介護5 ※この対象者以外の方にも同様にスリーA 方式を取り入れたが、評価対象としてはこの 10 名とした。 3. 評価結果 図1 参加者 H25年6月頃 1回目 H26年1月頃 2回目 差 備考 A 5 5 +-0 途中ショートステイ利用回数増 B 22 23 +1 C 13 22 +9 途中当施設利用回数増 D 12 18 +6 独居生活 E 9 10 +1 途中当施設利用回数増 F 13 12 -1 途中ショートステイ利用開始 G 20 22 +2 H 14 21 +7 若年性 I 18 15 -3 途中ショートステイ利用開始 J 15 12 -3 途中ショートステイ利用開始 図2 長谷川式スケールテスト実施結果 25 20 15 10 5 0 1回目 A介度1 B介度2 C介度 介度3 D介度3 E介度3 F介度3 G介度3 H介度 介度3 I介度4 J介度5 5 22 13 12 9 13 20 14 18 15 2回目 5 23 22 18 10 12 22 21 15 12 対象者の 60%が上昇、最高 最高では 9 点上昇した方もみえました。点数に変化のなかった のなかった 10%及び 低下した 30%の方に共通するのはスリー するのはスリーA 実施途中でショートステイ利用を開始 開始したり、利用回数 が増えているということです。 図3 区分 1回目平均 2回目平均 正常(28点以上) 前認知症(24~27点) 軽度認知症(20~23点) 中等度認知症(15~19点) 重度認知症(14点以下) 全体 21 16.5 11 14.1 22.5 13.5 14.6 16 上昇平均 人数 +1.5 -3 +3.6 +1.9 該当者なし 該当者なし 2名 2名 6名 10名 軽度認知症段階では+1.5 点、 、重度認知症段階では+3.6 点と大幅に上昇しておりスリー しておりスリーA を実施す ることにより重度認知症段階でも でも個人差はあるものの、引き戻し効果が出ることがわか ることがわかりました。それ に対し、中等度認知症段階は--3 点と大幅に下降しています。ただこの 2 名に共通 共通する点は途中段 階でショートステイの利用が開始 開始されていることであり、スリーA を定期的に行えなかったことや えなかったことや環境 の変化などの影響が考えられます えられます。 4.デイサービスあおぞらでのスリーA 今回、評価対象とした 10 名を含む当施設全体の平均介護度 3.8 長谷川式スケールテスト平均 9.7 点 と認知症状や状態、ADL や歩行状態も様々な利用者様が来所されています。簡単に言うと、本来 のスリーA 方式が実施できない現状があります。 そんな中、可能な限りスリーA 方式に近づけながらゲームを実施し、その中でも「優しさのシャワー」 の部分を徹底して守り続けました。利用者様の状態に関わらずスリーA 方式として徹底できるのは優 しさのシャワー、2 対 1(利用者:職員)の職員配置や言葉の掛け方、タイミング、雰囲気、全ての状 況に対応し来所時からお帰りになって頂くまで徹底しています。 評価点数以外にも、言葉が力強くなる、即答性が高くなるや介護者家族から「信号待ちで大きな 声を出さなくなった」等の変化も表れて報告を受けていますし、要介護から要支援に引き戻された方 もみえます。認知症レベルが重度化すればテスト実施すら不可能な方もみえます、しかしこのような ご利用者家族様からも「最近、表情が明らかに変わった」等と言われるようになりました。 Ⅲ 課題 ・認知症対応型通所介護と名前が付くだけで重度認知症のイメージが強く、スリーA についての説 明をしても「そんな事をやっても変わらない」と思われがちです。地道に説明を続けながらスリーA 方式の大切さや意味を伝えて行きたいと思っています。 ・利用者様に合ったステージ分けをしスリーA 方式を実施すれば、より一層の効果が期待できます が、現時点では認知症予防という概念が岡崎市では浸透が薄く、認知症対応型通所介護には、 認知症状が大きく進み BPSD などにより一般型通所介護での受入困難になった状態で紹介される ことが多いのです。 ・デイサービスとは別に、予防教室などを開催しスリーA を実施して行きたいと思っていますが、職員 の確保や経費調達が難しく実施できていないのが現状です。 Ⅳ感想 重度認知症の方が多い現状の中でいかにスリーA 方式を取り入れて実践するか。多くの試行錯誤 のすえ少しずつ形として出来上がってきました。最初は全く出来なかった動きが、出来るようになって きたり、表情や言葉にも力強さが表れたりと嬉しい変化が表れました。 このケアの主軸となっているのが「優しさのシャワー」です。この優しさのシャワーと緻密に計算され た認知症進行予防ゲームを重ねそれを続ける事によって、重度認知症と言われる利用者様にも変 化が表れることを実感した時に、職員一同で本当に嬉しい気持ちで一杯になります。 それと同時に、認知症ステージ別でのケアがいかに効果的で必要なのかとも考えさせられます。 当施設では軽度~重度認知症の利用者様が混在している為、どの方も参加し活動できるように、本 来のスリーA ゲームをアレンジし工夫する必要がありました。それは、もしかしたらスリーA 方式と名乗 ってはいけないのかもしれません。しかし、スリーA の真髄である「優しさのシャワー」を絶え間なく浴 びせ利用者様の認知機能を引き戻すんだ!という気持ちを忘れずに取り組むことで混在型の当施 設でも効果が表れました。 この結果を考えるとなおさら、それぞれの利用者様に適したステージで本来のスリーA で脳活性化 訓練を実施することができたら、その対象となる利用者様は更なる脳の引き戻しが可能なのではな いだろうか?と思うのです。 スリーA が認知症ケア(認知症予防)として有効的であることは間違いありません。しかし、その実 態が把握、理解されていないのも事実だと思います。まずは当施設のある岡崎市でもスリーA の素 晴らしさや、早期の認知症予防の重要さを少しでも広げ、それにより多くの方が認知症状から引き戻 され、認知症になっても楽しく幸せな生活を送れるよう活動して行きたいと思います。 ・スリーA グッパー体操 ・お互いの顔が必ず見えるようにします ・太鼓の合奏 ・外への歩行トレーニング ・個々の状態に合わせて距離を変更します ・表情にも変化が出てきます
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