【発信】国立大学法人 富山大学総務部広報課 News Release (TEL) 076-445-6028 (FAX) 076-445-6063 平成 28 年 4 月 13 日 報道機関各位 平成 26 年度富山県認知症高齢者実態調査追加分析について ~20 年後に高齢者の 4 人に 1 人が認知症、糖尿病対策や認知症健診等の保健医療体制の構築を~ 富山大学地域連携推進機構地域医療・保健支援部門では、地域連携事業の一環として、富山県厚 生部高齢福祉課の協力を得て、富山大学臨床・疫学研究等に関する倫理審査委員会の承認のもと 平成 26 年度に富山県が実施した富山県認知症高齢者実態調査の追加分析を行いました。その結果、 今後の認知症対策を考えるうえで、いくつかの重要な知見が明らかとなりましたので公表します。 ① 20 年後の 2035 年には、65 歳以上高齢者の 4 人に 1 人が認知症となる可能性 図1 富山県の認知症将来推計 ● 平成 26 年度富山県認知症高齢者実態調査で は、富山県の 65 歳以上高齢者における認知症の 有病率は 15.7%(高齢者の 6 人に 1 人)であり、 約 5 万人の方が認知症と推定されます。 ● 今回、認知症の将来予測を行ったところ、 2025 年(10 年後)には 6.7 万人 (有病率 20.1% (高 齢者の 5 人に 1 人) )、2035 年(20 年後)には 8.7 万人(有病率 27.4%(高齢者の 4 人に 1 人) )に 増加する可能性があることがわかりました。 ● 富山県の人口は、2035 年には 90 万人を割り 込むことが予想されていることから、県民の 10 人に 1 人が認知症という計算になります。 ● 認知症の発生予防を含めた、少子高齢社会に おける認知症に対する地域の保健医療体制の構 築が急務であるといえます。 1 ② 糖尿病があると、認知症になるリスクは約 2 倍 ● 認知症の発生予防のためには、リスクとなる 図2 糖尿病と認知症の関係 生活習慣や疾患を明らかにすることが重要です。 ● そこで、調査で「認知症あり」と判断された 140 名と、 「認知症なし」と判断された 1077 名の 合計 1217 名について、生活習慣や既往歴を比較 しました。 ● その結果、糖尿病と認知症との関連性は、年 齢や性別等を調整した後のオッズ比で 2.09 でし た。つまり、糖尿病があると認知症になるリスク は約 2 倍になります。 ● 糖尿病があると、脳内にβアミロイドが蓄積 しやすく、それが糖尿病におけるアルツハイマー 型認知症発生の背景と考えられています。 ● 認知症予防には、糖尿病の予防が重要である といえます。 ③ 質問票調査で認知症が疑われる高齢者の約 7 割が、認知症での受診歴がない 図3 HDS-R 得点と認知症受診歴の関係 ● 認知症予防では、発生予防と同時に、早期 発見と早期対応による進行予防が重要です。 ● そこで、認知症の有無を判断するための質 問票(改訂長谷川式簡易認知評価スケール (HDS-R))の得点と、認知症受診歴の有無と の関係を、1192 名を対象に評価しました。 ● その結果、HDS-R 得点が低いほど受診歴は 増加しましたが、HDS-R 得点で認知症が疑われ る 20 点以下の高齢者 163 名のうち、認知症で の受診歴がない人は 117 名(71.8%)でした。 地域には未診断・未治療の認知症の方が多数い る可能性があります。 ● 早期発見、早期対応のためには、一般の方 「認知症健診」 や医療従事者の認知症の啓発や、 等による早期発見・早期対応のための施策が必 要であるといえます。 2 ④ 認知症高齢者の行動心理症状が多いほど、在宅介護者は精神的不調をきたしやすい ● 医療の中心が、施設医療から在宅医療へと変 図4 行動心理症状の数と精神的不調 化している中で、認知症高齢者を在宅で介護する 人の健康維持が重要となっています。 ● そこで、在宅介護者 102 名を対象に、介護者 の心身の不調の関連要因を評価しました。 ● その結果、身体的不調は介護者の年齢が高い ほど不調でしたが、精神的不調は、認知症高齢者 の徘徊や無気力などの行動心理症状が多いほど 不調が多いことが分かりました。 ● 在宅介護者支援の充実が求められます。 ⑤ 地域(2 次医療圏)別の認知症推定有病者数と有病率 図5 地域別認知症推定有病者数と有病率 ● 認知症対策においては、地域特性にもとづ く対策が求められます。 ● そこで、地域別の認知症有病者数と有病率、 の 2 次医療圏(富山、高岡、新川、砺波の各医 療圏)別の地域差を評価しました。 ● その結果、有病率は、富山と高岡で低く、 新川、砺波で高い傾向でした。有病者数は、人 口差を反映して、富山、高岡、砺波、新川の順 に少なくなりました。 ● 認知症リスクとなる疾患や医療従事者数に おいても地域差を認めており、地域間格差を予 防するような対策が必要であると言えます。 今回の追加分析結果については、県内関係機関に追加分析報告書として配布します。また、認 知症パンフレットの作成や地域での講演、施策立案への協力等を介して、地域の皆様に結果の還 元を図っていきたいと考えております。 【本件に関する問い合わせ先】 富山大学地域連携推進機構 ◆取材対応可能日 地域医療・保健支援部門長 関根 道和 4 月 13 日(水) 、14 日(木) 930-0194 富山市杉谷 2630 TEL 076-434-7270 FAX 076-434-5022 E-mail: [email protected] 3
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