ゆうき八百屋 ゆうき八百屋 産地訪問記 遠忠食品株式会社(中央区日本橋)その① ◆江戸前の 江戸前の佃煮開発物語◆ 佃煮開発物語◆ ◆漁師さんとの連携を大切に 「江戸前の材料を探すため、東京・千葉 の漁協や漁師を訪ね歩いたんですけどね。 まあ当然のごとく、ほとんどの漁師さんに門 前払いを食わされたんです。それでもね、 木更津の漁師さんがやってみようって言っ てくれたんです。今でもお付き合いは続い ています」。 あったかいごはんに海苔の佃煮をちょこっ とのせて。海苔と調味料のみのシンプルな 味付けだから、ごはんがすすみますよ~。 遠忠食品社長・宮島一晃さん。人形町に 直営店をオープンするなど次々と新しい ことにチャレンジしています。 ◆伝統の味を守り続けて ◆昔ながらの佃煮をつくろう 東京・日本橋の佃煮屋「遠忠食品」さ 添加物が全く入らない遠忠食品の佃煮 ん。その佃煮は、全て伝統的な調味料 には、それぞれの佃煮にそれぞれの物語 を使って作った昔ながらの味。余計なも があります。それは余計なものを何も足さ のをいっさい足さないシンプルな味付 ないという宮島さんの思いが作り出した物 語。素材の味を大切にして伝統的な調味 けは、ごはんや酒の肴にもぴったりです。 そんな遠忠食品さんの佃煮の秘密を知 るべく、南越谷の加工場に行ってきまし た。 「子どもの頃は日本橋に加工場があっ 左・市販の海苔佃煮、右・アサクサノリの佃 煮を同量の水で薄めたもの。海苔の量と色 にご注目ください。市販のものは海苔の量 がとても少なく、カラメル色素の茶色になり ます。水で溶いてみると一目瞭然。驚きま した。 料のみを使った、昔ながらの江戸前の材 料を使う佃煮は、日本橋の佃煮屋としての 矜持でもあります。しかし昨今の米離れも 相まって、私たちの食卓に佃煮が乗ること は以前ほどではなくなりました。 たので、そこで佃煮を作るのを見ながら その木更津の漁師さんたちも、面白いこと 育ちました。ある日、せっかくの佃煮な を考えていました。「今ではほとんどの人が 「少し淋しいですよね。でも、ほんものの んだから江戸前の材料で作りたいと 作らなくなった絶滅危惧種・アサクサノリを 佃煮の味を味わってもらいたいと思うんで 思ったんですよ。佃煮は日本の伝統食 復活させようしていたんですよ。アサクサノリ すよ。ごはんがどんどん進む、懐かしい味。 品ですから、混ざり物ない調味料で、ほ は浅草海苔と書かれることもあるんですが、 佃煮のこの味を、次の世代の子どもたちに んものを作りたいと」。遠忠食品の社長、 本来は「アサクサ種」という海苔の品種名。 伝えたいと思うんです。余計なものが何も 宮島一晃さんは語ります。しかしその後 その種を九州で見つけて、木更津で養殖 入っていない、きちんとした佃煮の味を」と の道のりは厳しいものでした。 を始めていたんです。養殖技術が確立する いう宮島さん。化学調味料で味をごまかさ までに試行錯誤を繰り返して、結局6年くら ない、直球勝負の佃煮です。あったかいご いかかったんですよ。やっとの思いで完成 はんやおにぎりで、伝統の味をぜひお楽し させたけど、今度は売るところがないって みください。 困ってた。じゃあ、うちで売るよってことで、 アサクサノリを全部引き取ったんですよ。そ れがアサクサノリの佃煮の始まりなんです」。 こうして絶滅危惧種だったアサクサノリの 佃煮が東京・日本橋で復活したのでした。 漁師さんたちの思いと情熱を受け止め、そ の取り組みを応援している宮島さん。単に 田作りの原料カタクチイワシを目視で選 別。この後金属探知機を通り、異物を確 実に排除します。イワシの中に混じって るアジや形の悪いイワシも選別されてま した。アジははじかれるのですね。 加工品メーカーと仕入先というだけではな い関係性ができているのですね。 市販の海苔佃煮。アミノ酸を始めいろんな ものが入っています。伝統的な味とはとて もいいがたい。これが佃煮の現状です。
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