物理1

テニスボールの運動
茨城県立日立第一高等学校
青木
渉(2年)
指導教員
関山
大志
【はじめに】
ソフトテニス部の練習をテニスができない人にも手伝ってもらうため,テニスボールを遠く,
そして速く飛ばせる装置が欲しいと考えた。
【仮説】
使うゴムが太ければ太いほど,速く,遠くに飛び,飛ばし出す高さが高ければ高いほど,遠
くに飛ぶ。
【研究内容】
予備実験として,自転車のタイヤのチューブを木材に付け(A),チューブの弾性力でボール
を飛ばす。予備実験をして改良したもの(B)も作った。(B)には荷造り用のゴムを用いた。
毎回同じところから飛ばすため,印をつけて,高さ 1.00mから飛ばす。A,Bともに 5 回ず
つ飛ばす。飛ばす方向は地面と平行に飛ばした。
図A 自転車のタイヤのチューブ
図B
荷造り用のゴム
【結果】
実験装置Aは3.50
1.50
2.00
2.60
1.80(m)となった。
実験装置Bは8.80
1.60
3.20
5.20
3.10(m)となった。
【まとめ】
テニスをできない人でも,練習を手伝えるようにできた。ゴムの強さが強いほど飛ぶ。
引く長さが長いほど飛ぶ。
【今後の課題】
実験装置自体は,AとBでゴムと板の長さ横幅の二つの要因が違ってしまった。対照実
験を行うために,ゴム以外の条件を変えないで実験を行いたい。
物理1-①
紙管で作る家の提案
〜ハニカム構造〜
茨城県立日立第一高等学校
松井
貴宏(2年)
指導教員
関山
大志
【はじめに】
発展途上国の為の安価な住宅や避難所の簡易的な壁,仮設住宅の設置のため,円筒形の紙
管を使用した,紙でできた建築があることを知った。しかし,円筒形であるため紙管と紙管
のつなぎ目に問題があると考え,多角形のなかで強度に優れ,少ない材料で作ることのでき
る,ハニカム構造である六角形の紙管を組み合わせたパネルによる建築を提案する。
【研究内容】
実験1として円形,六角形,四角形の紙管のモデルを作成し,形状による圧縮強度の違いを実
験により計測した。
一回目
二回目
三回目
平均(kg)
四角形
1.9
2.1
2.0
2.0
六角形
2.8
2.4
3.1
2.8
円形
3.3
2.7
2.9
3.0
図1.形状による圧縮強度の実験結果
図2.実験1の様子
実験2として円筒形,六角形,四角形の紙管のモデルを作成し,ダイヤルゲージを用いて形状
による曲げ強度の違いを実験により計測した。
図3.実験2の様子
実験1・2より円形,六角形の順に強度がある事が分かった。六角形は円形とほぼ同様な強度
を持つため,壁のようなパネルを作る場合六角形のものを使用すると隙間の無い強度のある紙の
家を建築する事ができるだろう。
【今後の展望】
紙管の並べ方により強度が変化するので,どの組み合わせ方が最も強度があるのかを調べて実
用化できるようにする。
物理1-②
ピンポン球を遠くに飛ばす技術~ジャイロ効果とマグヌス効果~
茨城県立日立第一高等学校
國本 圭佑(2年)
指導教員 関山 大志
【はじめに】
エアガンには BB 弾にバックスピンをかけることにより,威力(運動エネルギー)を上げずと
も遠くに飛ばすことができる「ホップアップシステム(以下,HPと記す)」というメカニズム
が利用されている。これには「マグヌス効果」という一様流中に置かれた回転する円柱または球
に,一様流に対して垂直方向の力(揚力)がはたらく現象が応用されている。
ホップアップシステムと同じ働きをする加工を塩ビチューブに施し,無加工と比べどのような
違いが出てくるか調べていくことにした。
【仮説】
無加工のものより,
HPの筒のほうが球
を遠くに飛ばすこと
ができる。
【実験】
図1.装置の模式図
①装置を作成
(ⅰ)無加工
(ⅱ)ホップアップシステムに似せた加工を施したもの
の2本の筒を用意し,条件を揃えて計測する。また,風の影響を受けない室内で行う。
②発射装置からそれぞれ 10 発ずつ発射し,飛距離を計測する。
【結果とまとめ】
図2.実験の結果 (単位:m)
1回
2目
3回
4回
5回
6回
7回
8回
9回
10 回
(ⅰ)
8.1
8.7
8.6
8.4
9.0
7.9
8.4
8.7
9.3
7.6
(ⅱ)
6.6
5.9
4.4
5.7
8.0
5.8
7.9
5.8
7.5
6.4
図2から,無加工のほうがより遠くまで飛ぶ結果となってしまった。また,球づまりは解消さ
れたが,測定時に発射される球が大きく右にそれてしまうことが多々あった。
【今後の展望】
ゴムの大きさを調節し,摩擦力が最大限に活かせるよう更に加工を進めていきたい。また,ス
トッパーを追加したため,空気が漏れてしまうデメリットが発生した。この漏れをいかに少なく
抑えられるかによって,結果も変わってくると考える。
物理1-③
ブラジルナッツ効果による現象とその対策
茨城県立日立第一高等学校
加藤
【目
若菜(2年)
指導教員
関山
大志
的】
七味唐辛子やコーンフレークなど異なる大きさの物体が混ざった容器に振動を加えると,体積
の大きな物体が浮かび上がってくる現象が起こる。この現象は「ブラジルナッツ効果」と呼ばれ
ている。今回の実験では,ブラジルナッツ効果の現象について調べ,日常生活での実用的な対策
を調べる。実験材料としては黒ゴマと塩を用いた。
【実
験】
図1.実験装置
物体
黒ゴマ
塩
体積
15
1
質量
0.43
1
密度
1.6
1
浮力
26.8
1
図2.塩を1としたときの黒ごまの相対比
事前準備として,実験で使用する自作振動装置が正常に作動するかオシロスコープを用い確認
し,実験材料の黒ゴマと塩をそれぞれ無作為に十粒ずつ取り出し,体積と質量の平均値を測定し塩
を基準とした比を作成する。
続いて,次のような実験をした。黒ゴマと塩をプラスチックのコップの中に塩が上にくるよう
に 30gずつ入れ,自作振動装置で 5 分間コップに振動を与える。振動前と振動後のコップ内のゴ
マと塩の分布状況を比較する。
【結
果】
図3.実験前(左)と実験後(右)
コップ内の塩とゴマの動きは写真からも見て取れるが,ブラジルナッツ効果という現象は『小
さな物体はすき間から大きな物体の間を通って下に落ちて行き,大きな物体はすき間を通って落
下していった小さな物体の上に来る』というような仕組みになっているのではと考えた。
【今後の課題】
今回は黒ゴマと塩の比率のみで実験を行ったが,今後の実験ではブラジルナッツ効果に影響す
るその他の要因を明確にする為,体積,質量,密度,浮力のそれぞれの比率を変えた物体などで
も実験を行い,ブラジルナッツ効果によって引き起こされると言われている液状化現象の改善策
を考案したい。
物理1-④
楽な立ち上がり方の分析
茨城県立緑岡高等学校
三谷優奈(2),梶山大毅(2),郡司滉大(2)
,藤田星羅(2),雨谷鉄也
1はじめに
私たちは立ち上がり方を変えることによる感じ方の違いに興味を持った。その中で,ど
のような立ち方が楽なのかを調べることにした。膝関節や股関節にかかる負担の度合いは
関節モーメントの大小として表すことができる。そこで,体の前傾角度を変えて関節モー
メントの値を測定する実験を行い,関節にかかる負担の大小を評価した。
2実験方法
エクセルに送信されたデータによりバランスボード上の最大荷重のかかる点を推測した。
今実験では,床反力作用点から鉛直上向きを床反力作用線とし,各関節までの距離をモー
メントアームとして最大関節モーメントを算出した。動画はハイスピード撮影で行い,重
心が一番下がったところを画像として取り出した。実験参加者は4か所にマーカーをつけ,
座位時の膝関節の角度を約90°とし、前傾角度は画像から求めた。
3 結果
前傾角度 膝関節(Nm) 股関節(Nm)
前傾(小)
76.2°
61.8
94.4
前傾(大)
30.6°
51.1
99.0
前傾(中)+手をつく 53.5°
46.8
98.7
股関節の負担はあまり変化がないが,大きく前傾するほう
が膝関節の負担が小さいことが分かり,手をつくとさらに負
担が小さくなることが分かった。
4 考察
結果より,体幹を大きく前傾する立ち上がり方は,膝関節に負担のかからない立ち上が
り方だといえる。このことから,膝に患部のある人や筋力の少ない高齢者に適した楽な立
ち上がり方だと考えられる。
5 今後の課題
膝の角度を変えることによる負担の違いや,男女差や年齢差についてなどを分析して、
それぞれの楽な立ち上がり方を調べたい。
物理1-⑤
ミルククラウンを用いた流体解析
茨城県立日立第一高等学校
磯前
裕紀(2年)
指導教員
関山大志
【はじめに】
私たちの身近にあるミルククラウン現象を用いて液体同士を衝突させる実験によって流体を解
析しようと思った。ミルククラウンとは,牛乳などの粘性を持つ液体において平らな容器に上か
ら液体を一滴落とすと,それが王冠状の形を形成する現象である。
【実験内容】
準備物:飲むヨーグルト・ペトリ皿・三脚・電気スタンド・洗剤
スタンド・駒込ピペット・ハイスピードカメラ(60 枚/s)
〈実験 1〉落下速度の影響
落下距離を〔35,45,55,65,75 ㎝〕,液体の深さを 1.0 ㎝とする。
〈実験 2〉液体の深さの影響
液体の深さを〔0.5,1.0,1.5,2.0 ㎝〕,落下距離を 65 ㎝とする。
〈実験 3〉液体の粘度の影響
液体の総量に占める洗剤の割合を粘度とすると,粘度が〔0~10〕
図 1.実験装置の模式図
で等しい体積の液体を用い,落下距離を 55cmとする。それぞれの条件下で形成されたクラ
ウンの高さと直径を測定する。
クラ ウンの高さ(cm)
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
2.5
3
3.5
液面に到達した際の衝突速度ⅴ(m/s)
図 2.クラウンの高さと衝突速度の関係
4
クラウンの直径(cm)
【実験結果】
粘度
図 3.クラウンの直径と粘度の関係
〈落下速度〉増加に伴いクラウンの高さ(図 2)・直径はともに増加した。
〈液体の深さ〉増加に伴いクラウンの高さは減少,直径は変わらなかった。
〈液体の粘度〉増加に伴いクラウンの高さは減少,直径は粘度 0~5 の範囲
では増加し,粘度 6~10 の範囲では減少した(図 3)。
図 4.形成されたクラウン
【結論】
衝突速度と形成するミルククラウンの高さ,及び直径は増加関係にある。深さを増加させる
と衝突した際,下方へエネルギーが分散しクラウンの高さが減少する。粘度もミルククラウン
の形成状態に大きく影響している。
物理1-⑥
放射線の正体を解明しよう ~各放射線の解析を通して~
茨城県立竹園高等学校
黒石研仁(2 年) 吉田哲郎
本研究は、放射線を様々な視点でとらえ、その正体を考察するもので、放射線の中でも
代表的なものであるα線、β線、γ線を研究の対象としている。なお、使用線源はα線が
241Am,β線が 137Cs、γ線が 60Co
である。また、上記の放射線以外にも自然放射線と呼ば
れる自然界に存在する放射線についても追加実験として実験し、その正体を検証した。
検証の手順は、放射線がエネルギーを持つことから、その正体を高速の粒子か電磁波で
あると考えられるため、まず、予備実験で各放射線の透過力を調べ、それぞれが粒子か電
磁波かを分類した。その後、本実験で詳細な実験を行った。
具体的には、予備実験では、放射線の正体を調べる前に、大まかに各放射線の性質を研
究し各放射線を分類した。この実験では、ガイガーカウンターを使用し各放射線の物質中
での透過力について調べた。その結果は、α線、β線はそれぞれ紙切れとアルミニウム板
で遮蔽できたが、γ線は遮蔽できないというものだった。よって、α線,β線は物質によっ
て容易に遮蔽できるので粒子であることが分かる。一方,γ線は遮蔽できないので粒子で
はなく,電磁波の一種であると分かる。
その後の本実験では、α線はアルゴンガスを満たした比例計数管に,線源を挿入し,飛程を
計測した。その後,他の元素の理論上の飛程を阻止能の計算に代入して求め、その値と比較
することで,正体を解明した。結果は、α 線の飛程は 39.6081mm となり He 原子核と類似
している。ちなみに、He 原子核の飛程は 33.1747mm である。また、この実験における誤
差を考慮すると,誤差の範囲内に収まる粒子は He 原子核しか存在しない。よって、α線を
構成している粒子は He 原子核と証明できる。
β線は位置敏感型検出器と偏向電磁石を用いてエネルギーを計測し,運動量の計算式から
の逆算と偏向電磁石中での運動の様子からローレンツ力の関係を考慮して電荷を特定し,そ
の正体を検証した。この結果、電荷は-1 となった。よって、電荷が-1 になる粒子は電子で
あることから,β線の正体は電子であると証明することができる。
γ線は、シンチレーション検出器を使用し,エネルギー分布のスペクトルを計測する。そ
の後,検出器の特性を利用し正体を考察した。その結果、2 つのスペクトル 1163.935keV と
1332.81keV が検出された。今回の実験で用いたシンチレーション検出器は,計測部の周囲が
アルミニウムの板で保護されているので,予備実験から分かるように,α線,β線のような粒
子線が外部から入射しようとしても,途中で遮蔽されてしまい,検出されないはずである。
よって、γ線の正体は電磁波であると証明できる。
自然放射線は、少なくとも 22Na:498.7748(keV),137Cs:657.3105(keV),
60Co:1163.935(keV),40K:1443.096(keV)から放出されたγ線が含まれていることが判明し
た。よって,放射線は自然放射線として,身近に存在するものであることが分かる。
物理1-⑦
D-シャトルを用いた個人線量測定
神奈川大学附属高等学校
近江奈緒子(高校2年)
,木村菜摘(高校2年)
,中山知恵子
私たちは 2010 年度から「放射線」をテーマに様々な探究活動を行ってきた。専門家の講義を受
けながら、校内の空間線量率測定、高崎量子応用研究所での放射線照射実験、東京都市大学原子
力研究所での食品中のカリウム 40 の放射能測定を行った。これまでの活動を踏まえて、日常生活
において自分たちがどのくらいの自然放射線を受けているのかを実際に調べてみたいと考え、専
用の測定器を借用し、個人線量や空間線量率を測定した。
高 1 男子 2 名,高 2 男子 3 名、高 2 女子 5 名,教員 1 名(合計 11 名)が 2014 年 6 月 18 日~
7 月 1 日まで、(株)千代田テクノル D-シャトルを携帯し個人線量を測定すると同時に、堀場製作
所 Radi PA-1100 を用いて、校内や自宅の空間線量率を測定した。図1に、11 名の 1 日あたりの
平均積算線量を示した。A~D は戸建て(木造または軽量鉄骨)、E~K はマンション(鉄筋コン
クリート)に居住している。前者に比べて、後者の方が積算線量が若干多い傾向が見られる。ど
の測定者も 1 日あ
たりの自宅滞在時
間が約 12 時間、
学校滞在時間が約
10 時間であるこ
とから、この違い
は自宅での空間線
量率によるもので
はないかと推測し
た。図2は、D-シ
ャトルによる 1 時間あたりの平均積算
図2 住居素材別 1時間あたりの平均積算線量と空間線量率 線量と Radi による空間線量率をまとめ
D-シャトル
平均積算線量
〔μSv/h〕
Radi
空間線量率
〔μSv/h〕
間線量率が高いことが知られているが、 木造
0.050
0.037
その傾向を示す結果が得られた。また、 軽量鉄骨
0.053
0.035
学校滞在中のほとんどを校舎内で過ご
鉄筋コンクリート(マンション)
0.067
0.059
しているが、放課後 2~3 時間は部活動
鉄筋コンクリート(学校)
0.072
0.071
たものである。一般的に、鉄筋コンクリ
ートの建物内の方が木造家屋よりも空
などにより異なる場所に滞在している
ため、各活動場所での 1 時間あたりの平均積算線量を検討したが、屋外・屋内による顕著な差は
見られなかった。このことから、1 日あたりの積算線量は住居素材によって多少の差が生じると
考えられる。初めての試みだったこともあり、今回はデータ数が少なかった。今後、協力してく
れる生徒と借用する測定器を増やし、再度測定を行い確認をしていきたい。
物理1-⑧