平成 26 年度 職員による政策研究 テーマ No12 空き家の予防対策「予防啓発キャンペーン」の提言 参加職員 10 名 長野県長野地方事務所:地域政策課 環境課 農政課 税務課 1.はじめに 商工観光課 建築課 長野県庁:建築住宅課 小川村役場:村づくり係 にまつわる「空き家の発生原因」に対し 近年、空き家問題は全国に広がり、様々 て「対策」を行うことである。 な対策が試みられている。当研究では「予 ○空き家の発生原因 発生原因については、聞き取り調査※2、 防」という観点で空き家対策を検討する。 ○空き家問題の実態 文献※3 及びメンバーの職務経験等から調 空き家の件数は 査し、25 個の発生原因を抽出した。多様 年々増加しており、 な発生原因が見られ、特定の対策のみで 様々な問題を引き起 解決を図るのは困難といえる。 こしている。例えば 発生原因の中分類 「防災や防犯機能の (類似する発生原因のまとまり) ①所有者の意識 ②家財撤去 低下」 「風景・景観の悪化」等があり、長 ③費用 ④中古住宅市場 ⑤戸建新築志向 ⑥税金 野県では「害獣の住処となる」等もある。 ⑦法律・制度 ⑧生活利便性 ⑨人口減少 2.空き家対策の現状 ○空き家の「解消対策」 ○空き家の予防対策 現在の空き家対策は、空き家を廃屋に 各原因に対し、KJ法※4 にならい 92 しないための「解消対策」が主流である。 個の対策を検討した。発生原因の多様性 行政機関では管理条例や空き家バンク から、対策も多様となった。全ての対策 等がある。しかし、放置後の空き家解消 を行えば予防は進むが、実際には実施主 は難しく、十分な対策は取られていない。 体(県、市町村、民間団体等)の実情に ○空き家の「予防対策」 合わせて、順次実施するものと思われる。 解消対策とは別の対策として、空き家 ○空き家予防の体系化「予防対策一覧表」 の発生自体を抑える「予防対策」がある。 発生原因と予防対策を体系的に整理し 具体的な実施事例はまだまだ少ないが、 「一覧表」を作成した。発生原因は「個 国土交通省や長野県の空き家研究等※1 で 人/個別的」な原因から「社会全体的」な 必要性が示されている。 原因へ推移するよう並べ、対策は発生原 3. 「予防対策」を考える 因毎に「初期」の対策から、成熟期の対 ○予防の定義 策へ推移するように並べた。 予防の目的は空き家の「発生」の抑制 予防対策の体系化の手法(一覧表) である。よって、空き家になる前の住宅 (空き家予備軍)を対象とし、その住宅 1 4.政策提案 空き家予防の「啓発」 ○予防啓発キャンペーンの取り組み ○予防意識の「啓発」 ①パンフレット作成 一覧表を基に、長野県の実情に即した 予防はそもそも認知 対策を検討する。現状、長野県では予防 度が低いため、 「空き 対策はほとんど普及していない。よって、 家の予防」の概念を周 当研究では、「個人/個別的」な発生原因 知するパンフレットを に対する、初期の対策として、 「所有者の 作成する。 意識問題」に対する空き家予防の「啓発」 ②情報発信 を具体策として検討する。 長野県の空き家の対 ○意識調査 策方針に「予防」を加 所有者の意識問題を詳細に把握するた える。また、作成した め、職員を対象にアンケート※5 を行った。 パンフレットを配布し、 結果、 「住んでいる時に家の終末を考えて 予防の概念を周知する。 いない」「安易に相続する/させる(結果 ③イベント開催 そのままになる) 」という二つの問題意識 キャンペーンの中で予防を が判明した。 訴えるイベントを開催 する。人気のある「終 活セミナー」等の親和 性のある他のイベント とタイアップし、予防 意識の普及を図る。 6.まとめ ○長期的な予防の取り組み 啓発を手始めに、社会全体として空き 5.空き家の予防啓発キャンペーン 家の予防と解消を行う仕組みを作ること。 具体的な「啓発」の取り組みとして「空 結果、空き家を生まない、放置しないこ き家の予防啓発キャンペーン」を検討する。 とが常態となることが最終目標である。 ○対象者 ○「啓発」後の対策 空き家予備軍の所有者及び相続予定者 個人の予防意識が高まった後は、具体 を啓発キャンペーンのターゲットとする。 的な行動に移れるよう、相談窓口の設置、 ○啓発する意識 中古住宅市場の活性化、処分するため補 ①居住中に家族で「相続し居住するか、 助金等の対策を行う。 売買・賃貸・解体により処分するか」を ○今後の課題 考えること。② 相続する場合は売買、賃 パンフレットの内容の具体化が喫緊の 貸、解体できる状態にしてから。という 課題である。予防対策と解消対策を平行 意識を持たせる。 多重的に行っていくことが重要となる。 ※1【報告書】空き家問題の解消に向けて(H26/4 更新 国土交通省中国地方整備局)【会議資料】長野県の観光地における廃屋対策の検討(H20 長野県観 光地景観対策研究会) ※2 千曲市役所企画課、宅地建物取引業協会長野支部、空き家管理会社へ実施した聞き取り調査 ※3・空き家急増の真実-放置・ 倒壊・限界マンション化を防げ(2012/6/1 著:米山秀隆 発:日本経済新聞出版社) ・田舎の家のたたみ方(2011/ 6 著:コンタロウ 他 発:メディアファクトリー)・ 地域再生-人口減少時代の地域まちづくり-(2013/8/25 著:鈴木浩山 他 発:株式会社日本評論社)等 ※4 川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)が考 案したカードを使用するデータ整理手法。 ※5 長野合同庁舎・小川村役場の職員へ実施した空き家に関する意識調査 回答者 230 名 2
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