学校給食と災害時における応急給食の施設機能について -福生市 災害時対応施設整備基本計画- 1.学校給食と災害時における応急給食の現状 大規模災害時に学校施設が果たすべき役割は、第一に子どもたちや教職員の安全確保で あることは言うまでもないが、同時に学校施設は、地域住民の応急的な避難所としての役 割も担っている。実際に、防災拠点となる公共施設の約 6 割は文教施設(校舎・体育館) であり*1、学校施設は、安全性(耐震化)とともに、避難所として必要な機能を備えるこ とが求められている。 災害時における役割も踏まえた学校施設の整備については、 「学校等の防災体制の充実に ついて*2」、「学校施設の防災機能の向上のために*3」、「東日本大震災の被害を踏まえた学 校施設の整備について-緊急提言*4」など、これまで、様々な提案・指摘がされているが、 今回は、その期待される避難所機能の中でも、特に「食事の提供(応急給食の施設機能)」 に焦点を当てて考えたい。 真冬の避難所で提供される“冷たい食事”が如何に辛いものであるか、実際に現場にい ないと、なかなか分からない。阪神・淡路大震災では、ライフラインが復旧した後も、学 校給食施設があるにも関わらず、その活用は容易には実現しなかった。被災地支援活動に 関わった公務員のボランティア団体は、「『食』は全ての活動の源であり、温かい食事の提 供が必要」*5として、避難所給食について「学校の給食設備と職員を活用した食事の提供」 を提案している。しかし、平常時の学校給食施設と、災害時の応急給食施設の両立には、 様々なハードルがあるようで、実態としては、なかなか進んでいない。 そうした中、福生市は、大規模な自然災害等への備えとして、災害時対応施設の建設を 決定、この施設では、災害時における基本的な機能として、避難所及び炊き出し施設(応 急給食施設)の整備を行うとともに、平常時には、中学校を含む学校給食を実施するため の施設として活用、見学ホール(食育施設)も整備されることになっている。2014 年 6 月 には「福生市災害時対応施設整備基本計画」を策定、公表した。福生市は、横田基地が行 政面積の 32%を占めており、かなり特殊な事情がある。しかし、具体的な施設整備内容につ いては、今後、自治体における「災害時における応急給食」について検討する際の参考に なると思われる。1 月 28 日に、福生・生活者ネットワークの仲介で、災害時対応施設整備 基本計画について説明を受けた。その内容も合わせ、以下、報告する。 *1 総務省消防庁「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」(2014 年 2 月)によると、防災拠点となる公共施設等の施設別割合(2014 年度末)では「文教施 設(校舎・体育館)」約 6 割(都道府県 50.6%、市町村 60.3%) * 2 * 3 * 4 文部科学省「学校等の防災体制の充実に関する調査研究協力者会議」第一次報告(1995 年 11 月)、第二次報告(1996 年 9 月) 国立教育政策研究所 文教施設研究センター「避難所となる学校施設の防災機能に関 する調査研究」研究会(2007 年 8 月) 文部科学省「東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備に関する検討会」(座長: 長澤悟・東洋大学理工学部教授) * 5 自治労「避難所給食」の充実と運営の強化に向けた提案 2.避難所における「食事の提供」について 既述のように、災害時における役割も踏まえた学校施設整備については、これまで様々 な提案・調査報告が公表されてきたが、その中で、災害時の「食事の提供」に関する指摘 を整理する。 ◇ 学校等の防災体制の充実について 文部科学省の「学校等の防災体制の充実に関する調査研究協力者会議」 (座長:高倉翔・ 明海大学教授)は、阪神・淡路大震災における経験を生かし、幼稚園、小・中・高等学 校等における防災体制の在り方と今後の課題を明らかにするとともに、大震災等災害時 における学校等の防災体制の充実方策について調査研究を行い、2回にわたって報告書 を公表(第一:1995 年 11 月、第二次:1996 年 9 月) 「災害時における学校等の役割に対応した学校施設等の整備」の中では、「給食施設に ついて、耐震性強化やガス供給方式の併用化等防災機能の整備を図るほか、水泳プール について、耐震性強化や浄水機能の整備を図る必要がある」としている。 ◇ 学校施設の防災機能の向上のために 国立教育政策研究所・文教施設研究センターの「避難所となる学校施設の防災機能に 関する調査研究」研究会が、阪神・淡路大震災(1995 年)や新潟県中越地震(2004 年) を踏まえ、学校施設に必要な防災機能について調査研究、報告書を公表した(2007 年 8 月)。報告書では、学校施設の安全対策(耐震性確保、天井材の落下防止・設備や家具の 転倒防止等) 、災害時に避難所として必要な機能確保のための対策(トイレ、電気、水道 等)、避難所として使用される場合の学校施設の利用計画や避難所を円滑に運営するため のマニュアル作成など、防災機能向上のための基本的考え方や具体的方策のほか、実施 事例や関連する国の財政支援制度などが提示されている。 「避難所として施設に必要な諸機能の確保」の中では、ライフラインの耐震性確保や 復旧までの具体的対策の検討の他、特に「給湯や調理等に使用する都市ガスの代替とし て、プロパンガスの利用を想定する場合は、プロパンガス及び必要器具の調達方法など について事前に十分な検討が必要となる。」と指摘している。 また、学校施設の新築や改築等、学校施設全体を設計・計画する場合、学校施設とし ての機能性考慮を優先しつつ、「避難所としての利用などを考慮した設計・計画とするこ とが望ましい」とし、避難所として使用するスペース等の設定にも言及している(避難 住民の居住スペース、既存施設(トイレ等)の災害時における使用可否の検討、運営や 救援物資の配給のためのスペースなど)。 ◇ 東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備について 東日本大震災では、津波等により、従来想定していなかった新たな課題が発生したた め、文部科学省は 2011 年 6 月「東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備に関する 検討会」 (座長:長澤 悟・東洋大学理工学部教授)を設置、学校施設の津波対策や耐震 対策、防災機能の確保など、今後の学校施設の整備方策が検討され、2011 年 7 月に「緊 急提言」が取りまとめられた。 「学校施設の機能の確保」の中では、生活確保期(発災数日後~数週間)において、 炊き出し等のためのガス設備や畳スペースの確保対策が必要とし、 「平時に給湯や調理等 に使用している都市ガスの代替として、プロパンガスの利用を想定する場合には、プロ パンガスを都市ガスの調理器具に使えるよう、ガスを交換する装置を仮設するための接 続口を整備する必要がある」と指摘している。また、東日本大震災では、ガスが復旧す るまでの緊急的対応として、カセットコンロが有効であったと紹介。 さらに、文部科学省は「学校施設の防災機能向上に活用できる財政支援制度」につい て、 「学校施設整備に関する防災対策事業一覧」 、 「学校施設の防災機能向上に活用できる 財政支援制度」、 「公立学校施設整備に関する防災対策事業活用事例集」を公表している。 「事例集」は、これまでに各省庁の防災対策事業を活用して学校施設の防災機能を向上 させた 18 の事例がまとめられているが、「食事の提供」に関するものは、埼玉県所沢市 の学校給食施設改築事業(小学校の単独調理場の改築工事の際、避難場所としての用途 を考え、災害に強い LP ガスのパルクタンクを採用)。 学校施設整備に関する防災対策事業一覧/埼玉県所沢市の学校給食施設改築事業 ◇ 「避難所給食」の充実と運営の強化に向けた提案 自治労東京都本部は、阪神淡路大震災、中越地震等におけるボランティア活動の経験を 通じ、特に学校避難所における災害給食のあり方などについて以下のように提案。 《避難所生活に対応するメニュー(テーマは、美味しく・楽しく・元気になれる)》 避難所給食は、自校方式の学校が持つ給食設備や給食調理員などの資源を活用するこ とが重要である。そして、1 ヵ月から 2 ヵ月に及ぶ避難所生活に対応するメニュー、年 齢やアレルギー、宗教などの個別需要に応えられるメニューを準備しておくことが求め られている。 (中略) 「食べることは生きること」「生きることは食べること」、 「食」は全ての活動の源で ある。発災当初は備蓄されている乾パンやアルファ米等の非常食の提供になろうが、出 来るだけ早く避難者個別のニーズを探り、その場で栄養計画を立て、出来たての温かい 食事を提供する必要がある。また、被災者と作り手が顔の見える関係の中で、相手を想 い心を込めて調理するのが避難所給食のあるべき姿だと考える。この「心」の問題、 「心 に配慮する」といった視点が欠如しているのも現在の避難所の大きな問題点である。 《都市ガスからプロパンガスへの切り替え方式の提案》 大災害時に都市ガスの供給がストップすることを想定すると、この課題は避難所給食 だけでなく通常の学校給食においても重要だと思われる。すでに名古屋市においては、 ノズルチップ交換方式(回転釜のバーナーに組み込まれている都市ガス用ノズルチップ を LPG 用ノズルチップに部品交換する)を取り入れ、この「プロパンガス切替え装置つ き回転釜」の設置学校は 47 校になっている。しかし切り替えには、ガス事業者が行っ ても約1時間を要するという難点がある。 これに対して、世田谷区が導入している「緊急用予混合方式」(プロパンガスと空気 をあらかじめ混合し、都市ガスの設備のまま使用でき、また停電になっても使用可能な もの)は、きわめて優れているものである。昨年から名古屋と同じ方式から切り替え始 め、すでに 10 校整備されている。今後は、すべての自治体がこの方式を取り入れるこ とを提案したい。 3.福生市 災害時対応施設整備基本計画 福生ネットの仲介で、1 月 28 日、福生市第一学校給食センター(福生市牛浜)を訪 問、教育委員会事務局参事(兼)学校給食課長の鳥越裕之さんから、災害時対応施設整備 基本計画について話を伺った。 *参加者:阿南(福生ネット)、三原(福生ネット)、黒澤(福生ネット)、伊藤(まち ぽっと)、市川(自治労東京都本部) 、石川(東京市民調査会) (1) 福生市の概要 福生市の大きな特徴は「基地のあるまち」、沖縄県以外では、最大の米空軍基地である「横 田基地」は、行政面積の 32%を占めている。 ▸ 位置:都心から西へ約 40km、武蔵野台地の西端に位置する。JR福生駅を中心に市 全域に市街地が広がり、東は立川市・昭島市・武蔵村山市、西は多摩川を隔ててあき る野市、南は八王子市、北は羽村市・瑞穂町に隣接。 ▸ 人口等:58,553 人(日本人:55,841/外国人:2,712 人)(2015.01.01) ▸ 世帯数:29,353 (日本人世帯:27,225/外国人世帯:1,581/混合世帯:547) (2015.01.01) ▸ 高齢化率:23.6%(2015.01.01) ▸ 財政規模:2014 年度の一般会計予算は 220 億 9,000 万円、特別会計(国民健康保険、 介護保険、後期高齢者医療、下水道事業)の総額は 135 億 2,082 万 8 千円。 2013 年度の一般会計決算額は、歳入 231 億 2,298 万 8 千円、歳出 220 億 994 万 9 千 円、特別会計は、全体で歳入 132 億 9,485 万円、歳出 128 億 6,050 万 7 千円。 ※基地関係補助金・交付金が、一般会計歳入決算額の約 1 割(資料) ▸ 横田基地:福生市・立川市・昭島市・武蔵村山市・羽村市・瑞穂町の 5 市 1 町にまた がり、沖縄県以外では、最大の米空軍基地。極東における主要基地であり輸送中継基 地としての機能を有している。福生市では、行政面積の 32%を占めている。 (2) 福生市災害時対応施設整備基本計画の概要 2013 年度に地域防災計画を修正、新たな施策として、災害時対応施設の整備が位置付け られた。 地域防災計画(2013 年度修正)より 第 3 章 災害に備えたシステムづくり 第1節 防災活動組織の整備 4 防災中枢機能等の充実 地域防災拠点の整備として、福東地域に、避難所(帰宅困難者の一時滞在 を含む。)、災害備蓄倉庫、災害時炊き出し施設などの総合的な機能を併せ持 つ災害時対応施設を整備する。 また、福生市の学校給食は、現在小学校(7 校)を対象に実施、中学校(3 校)については、 「弁当併用ランチルーム方式」で対応しているが、従来から、中学校給食実施への要望が ある。この応急給食施設を活用し、平常時に市内の小中学校に給食を提供することとなっ た。さらに、実際に給食を作っている現場を見学できる施設や防災・食育等について学習 できる研修施設の整備を行い、食育学習拠点としての活用を目指す。 ①建設の目的 総合的な防災施設(①避難所機能、②拠点機能、③備蓄機能、④応急給食機能)、及び、 平常時に施設の効率的な活用を図るため、食育施設(⑤学校給食機能、⑥食育学習機能) も備える複合型施設として整備。 《災害時の想定規模》 ① 災害:立川断層帯地震、マグニチュード 7.4、市内最大震度 7、冬の夕方、風速 8m/秒 ② 応急給食(炊き出し)想定対象者数:①の条件下での市内避難生活者数 15,000 人 ③ 応急給食の内容と備蓄:15,000 人を対象に、災害発生後 4 日目以降、最低 3 日間 実施、初動時はおにぎり 2 個(米 100g)+汁物を一人 1 日 1 回。そのために、米 4,500kg、汁物(長期保存可能な乾燥味噌汁と具材)45,000 食分を備蓄。 ④ 受入避難生活者数:310 人(福東地域の避難者数や減災目標等から想定) 《平常時の想定規模》 ① 想定食数:4,000 食(最大で 4,500 食) (市内全小中学校全校での給食実施が前提) ② 提供方法:福生市学校給食の基本理念と基本方針を遵守 ② 敷地概要 ∙ 敷地面積:10,780 ㎡、用途地域:準工業地帯、建蔽率:60%以下、容積率:200% 以下(予定) 。 ③ 防災機能 ∙ 敷地内にまとまった形のオープンスペースを確保、物資の集積・仕分け、仮設テ ントの設営などを想定。 ∙ 建物に隣接して防災広場を設置、災害時の炊出し、平常時の防災イベントで活用 ∙ 諸室の転用方法 災害時の転用形態 転用 平常時の活用形態 事務室 防 防災対策室 ⇔ 防 災 研修室・倉庫 災 避難生活者の受入施設備蓄庫 ⇔ 施設 防災・食育研修室備蓄庫 給食施設 施 応急給食施設 ⇔ 食 育 応急給食施設を活用し 設 ホール(2 階) 施設 避難生活者の受入施設 ⇔ た学校給食施設 食育展示見学ホール ∙ その他 - 応急給水設備(給水本管が遮断された後の継続的利用の想定) - 非常排水設備(下水道が利用できない場合の想定) - 非常電源設備(電気が利用できない場合の想定) - 空調換気設備 応急給食設備 1) 災害発生後、最低 3 日分の応急給食の提供が行える施設(15,000 食×3 日分の「お にぎり」と「汁物」) 2) 災害時用の食材を備蓄(3 日分:米 4,500 ㎏/汁物 45,000 食分*) *長期保存性と調理効率を考え、粉末状(フリーズドライ)味噌汁と具材(乾燥野菜)を パッケージ、一斗缶で保存する方法で検討。 3) 非常時における応急給食に必要な転用調理器具を設置 ① 「ガス式連続炊飯システム」(平常時:都市ガス+電気/災害時:/LP ガス+ マイクロコージェネによる電気または手動) ② 「固定式ガス回転釜」(平常時:都市ガス/災害時:LP ガス) ③ 「移動式ガス回転釜」(平常時:都市ガス/災害時:LP ガス) ④ 「おにぎり成型機」(平常時:電気/災害時:マイクロコージェネによる電気) 災害時に煮炊き調理室に転用ができる防災室( 数物室) 災害時に、換気設備が稼動しない等の理由で固定式の回転釜が使用できない状況 でも、移動式ガス回転釜等で「汁物」の調理ができる(外壁に面しているので、シ ャッターを開放すれば換気設備無しでも調理をすること が可能)。 その他、連続炊飯器の災害時熱源供給のための移動式ガ ス発生装置(LP ガスを都市ガスに変換)の設置スペースな ども想定。また、平常時は調理場で加工しない数物の仕分 室として利用。 ④ 移動式ガス発生装置 食育機能 食育展示見学ホール 見学者が「食」に関して興味を持ち、「食生活」や「食文化」を大切にする気持ちを 育むことができる食育の発信地。避難所機能と見学機能を兼ね、何時でも有効に活用 できる施設とする。 学校給食の提供 ∙ バイキング設備:施設見学者が、実際に見 た給食をその場で食べられるように想定 ∙ 地産地消推進:泥付き野菜を衛生的に処理するためピーラー室を荷受室横に配置、 検収室や下処理室に泥を持ち込まず、衛生的に地場産野菜を活用。 ※福生市は農地がわずかで、市内産の農産物の 利用は現実的に不可能なため、地元を「西多摩 1/28 ヒアリング後に給食を試食 農協(羽村市・福生市・瑞穂町) 」まで拡大。ま (炊き込みご飯・スープ・イカソテー・蜜柑・牛乳) た、市内の大多摩ハムやキッコーゴ醤油(あきる野市)も使用。 ∙ 厨房機器(回転釜、炊飯機、揚物機、焼物蒸し物機、保管機、洗浄機)の熱源:熱源別 の組合せ(オール電化、ガス主体)で「イニシャル・ランニングのトータルコス ト」 「熱源特性・安全性」 「作業性」 「災害時の対応考慮」等を比較検討、ベスト ミックス(蒸気・ガス・電気の組合せ)が最適とな った。 ∙ 使用食器:現状では PEN 樹脂(ポリエチレンナフタレート)を 使用、今後は、材質は強化磁器、献立ごとに各専用 の食器に盛り付けるよう、6 種類の食器を想定。 ∙ トレー・箸:どちらも現状どおり(トレー:FRP(繊 維強化プラスチック)製/箸:京華木箸)。 ∙ 食缶:樹脂製の角形二重保温食缶を想定。 強化磁器 盛り付け例 食物アレルギー対応 ① 学校給食における食物アレルギー対応については、中学校給食での食物アレルギ ー対応も考慮し、100 食規模(最大 120 食)のアレルギー専用の調理室・専用の 一人用保温保冷食缶を整備、食物アレルギー専門栄養士・調理員による除去食(レ ベル3対応) 、代替食(レベル4対応)を実施。 ② 食物アレルギー対応品目は、最大7大品目(卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生) を前提とし、7大品目を一切使用しない食物アレルギー献立*とすることにより、 アレルゲン食材の混入等のリスク軽減、人員・設備 の合理化を図る。 *これで約 80%のニーズに対応可能と試算、20%につ いては、保護者と密接に連携し対応する予定。 ③ アレルゲンの誤混入を防ぐため、一般食と食物アレ ルギー対応食を食材入荷から配送、食器類の洗浄及 び保管まで完全に分離した厨房配置とする。 ④ 直営では食物アレルギー専用の人材確保が困難とな る為、調理・配送業務については原則外部委託を想 定。 ⑤ アレルギー対応食の一人用保温保冷食缶、 教室に運ばれてから自分で食器に移す (ヒアリング時説明) 環境への配慮 ∙ 都市ガスを1次側エネルギーとしたマイクロコージェネ(発電及び排熱利用(給湯)を 同時に行うシステム)を採用。効率の高い運用(1次エネルギーの 70~90%を有効 利用)で、省エネ化・CO2 発生量の大幅削減・電力負荷の平準化による運用コストの 低減を図る。 ∙ 太陽光パネルを設置、施設電力として利用。電力状況確認モニターで電力を可視化。 ※太陽光パネルをメイン電力として検討したが、災害時の蓄電などに課題が残り、マイク ロコージェネを採用することになった。 ∙ トップライト(天窓)やハイサイドライト(高窓)を設置して自然採光を多く取入れ、 照明負荷低減を検討。 ∙ 雨水の一部を貯留し便器洗浄水、配送車洗浄水、外部植栽散水用として利用。 ⑥ スケジュール・工事費 ∙ 2014 年度(8~翌 3 月)に基本設計、2015 年度(6~12 月)に実施設計、2016 年度 (4~翌 2 月)に建設、2017 年度に供用開始 ※基本計画では 2017 年 4 月から供用開始の予定だったが、事業が遅れており、現時点で は 9 月からの予定。 ∙ 工事費(単位:億) :建築工事 9.5、電気設備工事 2.5、機械設備工事 5.5、厨房機器 工事 5、厨房備品 1、付属棟工事 0.6、外構工事 0.7、厨芥施設工事 0.2、太陽光発電 工事 1、計 26 億円(基本計画書) ※その他、総額は 30 億を超える事業 (3) 防衛省所管の補助「民生安定施設の整備事業」 この事業は、総額が 30 億を超えるが、建設用地については、防衛省が所管する土地の無 償使用許可と、建設費等についても同省の補助金(防衛施設周辺整備法*第 8 条に規定する 民生安定施設の整備事業)の活用について目処が立っている(補助率 75%)。同補助金の活 用は、北海道白老町、福岡県行橋市の事例があるが、これほど明確に「災害時対応施設」 を打ち出した事業は、福生市が初めてとの説明があった。 *防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律…障害防止工事の助成(第 3 条)、住宅の 防音工事の助成(第 4 条)、移転の補償等(第 5 条)、緑地帯の整備等(第 6 条)、買い入 れた土地の無償使用(第 7 条)、民生安定施設の助成(第 8 条)、特定防衛施設周辺整備 調整交付金(第 9 条)、その他、損失の補償等について規定。 防衛施設周辺整備法第 8 条に規定する民生安定施設の整備事業 第8条の規定に基づく民生安定施設の助成として実施するまちづくり支援事業は、主と して航空機騒音問題への対応策の一つとして実施するものであり、主に自衛隊等の航空機 の離陸、着陸等の頻繁な実施により生ずる音響によって周辺地域の住民の生活や事業活動 が著しく阻害されている場合において、地方公共団体が、住民の需要及び防衛施設の存在、 自然環境、歴史、文化等の地域の特性を踏まえつつ、その障害の緩和に資する施設の整備 を通じて防衛施設の存在を前提としたまちづくりを行う場合に、国がその費用の一部を補 助し、防衛施設の存在に対する住民の理解を深めることで、防衛施設とその周辺地域との 調和を図ることが趣旨とされている。 対象となる自治体は、原則として、法第9条第1項に基づき特定防衛施設関連市町村に 指定された地方公共団体に限られ。また、過去においてまちづくり支援事業による補助を 受けたことがあるものを除く(1 自治体 1 回のみ)。 ◇ 福岡県行橋市 防災食育センター 災害発生時の食糧供給等の防災に関する事業と、平常時の学校給食等の食育に関す る事業を実施する施設として、201 年 2 月に完成、事業費は約 21 億 9 千万円(うち 防衛省補助約 12 億 4 千万円)。 災害発生時の被災者に対する食糧の供給や食糧(米)、水等の物資の備蓄、防災に 関す講習会等を実施する。防災対応設備として、停電時に自家発電設備により稼働す る炊飯施設と電気釜を設置、飲料水(約 60t)、米(約 3t)、防火用水・生活用水(約 40t)の備蓄が可能であり、自家発電設備(約 270kw)と太陽光発電設備(約 30kw) も装備。 平常時は行橋市立小中学校 17 校に対する約 7,000 食の学校給食等の食育に関する 事業を実施、食物アレルギー対応特別調理室を備えている。 ◇ 北海道白老町 食育・防災センター 災害時の食糧配給の拠点として整備、平常時は食育や学校給食の提供、また、災害 に備えた防災活動拠点として利用。災害時には、避難施設に食糧を配給するとともに、 食糧対策班の連絡調整、待機の場ともなる。 総事業費は約 12 億 8 千万円、このうち補助対象経費の 75%9 億 1 千万円が防衛省 の補助事業(まちづくり支援事業)により交付される見込み。 入札不調などでスケジュールが遅れ、2015 年 2 月に完成予定、供用開始は同4月 の予定。 4.課題 福生市の事例は、「民生安定施設の整備事業」という特殊な事情があり、財源に関しては 参考にならないが、しかし、予測できない「災害」への備えとして、応急給食の内容は、 重要に検討事項である。学校施設は、教育の観点からか、安易に開放できないハードルが あり、そのためにも、いざという時の効果的な活用について、予めルール化しておく必要 がある。また、平常時の学校給食施設と、災害時の応急給食施設の両立は、急にできるも のでないことは言うまでもなく、大規模な計画は、改修時や建替え時のタイミングに合わ せるしかないが、部分的な設備整備にも、災害時にも対応する視点をどれだけ持てるのか、 問われるところである。今回、いくつかの自治体の構想や計画を調べる中で、策定過程で は検討していたにもかかわらず、財政的な限界から、実現に至らなかった事例も見受けら れた。 福生市は、基本計画の中で、応急給食のための設備について、かなり具体的に、比較検 討についても記載しており、参考になる(全文、市のホームページに掲載)。 災害時に対応する機能を、平常時にも活用する技術的工夫は、これからも進むことは予 測できる。過去の経験に学びながら、長期的な視点で考えたい。 (本文は、東京市民調査会の石川さんによるものである)
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