ごみ焼却排熱による光が丘パークタウウン地域熱供給システムに関する研究 指導教員 田中俊六教授 1.はじめに 8JCA1218 熊谷 淳 8JCA1234 酒井 啓光 3.地域暖房給湯アンケート調査 近年、産業の発展や生活水準の向上により、エネルギ (1)調査目的:システムに関する問題が一部で指摘されて ー消費量が急速に増大し、地球環境・エネルギー問題が いる中、実際に熱供給を受けている住民から、その使 発生しており、1997年の京都議定書に代表されるように、 い勝手から料金の問題まで意見を聞き、改善の可能性 今では国際的な注目を集めている。わが国においてもエ の検討や今後の適切な技術開発に役立てるために実施 ネルギー消費の削減が重要な課題であり、その手段の一 したものである。 つとして自然エネルギーや未利用エネルギーの活用が推 進されている。 その中でも、地域熱供給はエネルギーの有効的な活用 が図れるとして注目されており、地域ではあまり歓迎さ (2)調査方法:集合住宅12,000戸の中から西向き住宅や全 電化住宅なども考慮して合計391戸に配布し、回収は 郵送にて行った。 (3)質問内容:アンケートは以下の項目に分けて行った。 れない清掃工場のごみ焼却排熱を利用した地域冷暖房は *料金について 効果的な地域のエネルギー利用が図れ、省エネルギー等 *暖房システムについて の効果が期待されている。 *給湯システムについて 本研究は、蓄熱ヒートポンプ方式でごみ焼却排熱を利 *西向き住宅について 用した東京都練馬区の光が丘パークタウンで住宅に対し *全電化住宅について て行われている地域暖房給湯システムを対象とし、現状 *その他意見等 の問題点を把握する為に実施したアンケート調査の結果 (4)アンケート結果:アンケートでは約22%の回答を得た。 を元にシステム改良案を提案し、今後の改善に役立てる 回答では特に料金に対する意見が多く見られ、現在の ことを目的とする。 冬期の熱料金に対しては暖房で64%、給湯で61%が高 2.対象システムの概要 いので安くしてほしいと感じている。部屋の規模によ 当地区の清掃工場では、ごみ焼却排熱を使い発電を行 って基本料金タイプが変わってくるが、それを考慮し い、発電後の排熱を熱供給側のセンタープラントへ往き ても現状の熱料金に満足している人はいないに等しい。 45℃、返り20℃の低温水方式で供給している。センター 比較のために行った熱供給、都市ガス、電気、灯油 プラントでは12,000戸の各住棟のサブステーションへ20 の熱単価の計算では、1Mcalあたりの単価が熱供給の ~25℃の熱源水を送り、サブステーションのヒートポン 暖房で46.15円、給湯が16.71円、都市ガスが9.49円、電 プで暖房・給湯用として60℃の温水を供給している(都 気が26.78円、灯油が4.88円となった。個別方式では暖 営住宅は給湯のみ行っている。)。業務施設・学校等に 房機器を別に購入する必要があるものの、熱供給の暖 は暖房・給湯用として45℃の温水、冷房用として7℃の 房の値が極めて高い結果となった 冷水を供給している。 61% 18% 14% 0% 7% 給湯 14% 64% 11% 3% 8% 安くしてほ しい 安い 妥当 暖房 0% 高いが仕 方がない 50% 100% わからない 図3-1 料金に対する意見 図2-1 熱供給システム Study on the District-Heat-and-Cooling System by Garbage Incineration Waste Heat for Hikarigaoka Park Town 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 46.15 ピーク用ボイラ 6.5Gcal 16.71 9.49 4.88 ブラインターボ(冷専改修) 熱供給暖房 図3-2 水-水ターボ ヒートポンプ 26.78 冷却塔 (冷専改修) 熱供給給湯 都市ガス 電気 灯油 熱源水・冷水兼用槽 冷水槽 熱料金の比較(円/Mcal) 温水槽 他にも問題点としては、追い焚きシステムがないこと 清掃工場 W:25℃ W:45℃ や同時使用時の給湯量の不足、エネルギー使用の制約、 設備機器の老朽化など様々な意見があった。 W:12℃ S:5℃ 今回の調査では、利用者の様々な意見を知ることが出 来、現状では供給側の意見が反映されたシステムや制度 が目立ち、多くの不満の声が聞かれた。利用者のニーズ が多様化、高度化して地域、個人によりサービスの要求 が異なってきている現在、都市ガスや電気など他のエネ ギーとの共存を図り、同時に省エネルギーなどの社会 敵効果の理解を利用者に求め,設備機器の老朽化の対応、 給湯システムの改善や時間帯別割引制の導入の検討、温 水直接供給の検討など積極的に利用してもらう為の体制 W:25℃ S:12℃ 住棟暖房給湯 施設温水系統 施設冷水系統 図4-2 センタープラント改良案 この改良案では、冷水を送る際の断熱無しの地域配管 の熱取得が問題となるが、計算により熱取得は往きが0.0 90℃(平均値で0.188℃)で還りが0.252℃とわずかであり、 熱取得率も往きが2.6%,還りが3.6%で,これにより夏 期の冷水での供給が可能で、改良案の実行が可能である。 を整えていく必要がある。 5.35 5.3 4.システム改良案の提案 5.25 5.2 現状では住戸内システムや地域配管の変更は困難だが, 5.15 ヒートポンプ等の設備機器は改修時期に来ているので、 5.1 熱取得率3.6% 期・冬期の切り替え運転。夏期の供給温度は50~55℃に 下げて、給湯料金の割引を考慮することとした。 給湯用ヒートポンプ 貯湯槽 図4-3 温度上昇[℃] 270.556[㎡/h] センタープラント 収運転を行い、プラントへは冷水を送る。熱源水槽の夏 255.581[㎡/h] 合流点K0 相互バックアップ可能とする。給湯夜間電力による熱回 148.051[㎡/h] 合流点G4 提案に当たり、住棟用ヒートポンプは仕様を統一し、 51.449[㎡/h] 合流点K5 5 27.633[㎡/h] 合流点K7 可能な範囲でのシステム改良案を提案する。 0[㎡/h] 公社8号棟 5.05 熱取得計算結果(還り) 5.考察 住棟給湯 今回の研究では、アンケート調査を行い、地域暖房給 湯システムを使用している住民から意見を聞き入れると 共に、品川八潮団地との比較なども合わせて光が丘パー 給湯用ヒートポンプ クタウンのシステムの見直しを図り、現状で可能な範囲 HXプレート式 で,より有効的な改良案を検討・提案した。結果として、 断熱無しの地域配管で冷水を送った場合の熱取得はわず 暖房用ヒートポンプ 給水 かで、改良案の実行は可能であるとの答えが出た。 しかし、改良案は現時点の可能な範囲のもので、追い 焚きシステムや温水直接供給、料金制度の再検討など課 住棟暖房 地域配管(断熱無し) 往 還 図4-1 冬25℃ 冬12℃ 夏12℃ 夏5℃ 住棟サブステーション改良案 題は残っており、再度住民の意見を取り入れて検討して 行くことが必要である。 省エネルギーなどの効果に関しては、熱供給側として は経済性をある程度犠牲にしてでも対処すべきで、地域 一体となって取組める体制づくりが必要である。 2001年度卒業論文梗概集 東海大学工学部建築学科
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