Sr同位体比を用いた流出経路の推測 「山地に降った雨はどのような経路を通って流出していくのか?」 M1 鷹木 香菜 背景 山地に降った雨の一部は土層より更に深い基岩面以下に浸透します。この基岩地下水は渓 流水の水質や流域の水収支、物質循環に対して大きな影響を与えることが知られており、基 岩地下水の動きを把握するために、様々なトレーサーを用いた研究が行われてきました。しか し流域の地下水の流れを直接的に観測することが困難であることや、不確定要素が多いなど 様々な課題が存在します。そこで、Sr同位体比をトレーサーとして研究を行っています。 Sr同位体比86Sr/87Srって? 自然界には、4種の安定同位体(84Sr・86Sr・87Sr・88Sr)が存在します。このうち、84Sr・86Sr・88Sr の割合はどの物質でも一定ですが、87Srは87Rbのβ壊変(半減期489億年)によっても生じる 為、物質によって異なる割合をもっています。 水に含まれるSrの大部分は岩石や土壌から溶け出したものなので、水のSr同位体比は触れ た岩石や土壌の同位体比を反映しています。さらに、風化の進行した岩石ほど高いSr同位体 比を持つことが知られており、この性質により、その水の起源を推測することができます。 研究方法 渓流水、基岩地下水、土壌水、湧水などを流域の様々な地点で採取し、そのSr 同位体比の違いから流出経路の推測をしています。 現在、今まで採水されていなかった斜面浸出水に注目し、調査を進めています。 桐生におけるSr同位体比の変化 0.714 0.7135 0.713 □基岩地下水 ■渓流水 0.7125 ■土壌水・井戸水 0.712 ■斜面浸出水 0.7115 サンプリング地点 R1 RS T HS T RB 1 R We B 2 to ut BS 1 BS 2 MC KS T BS 3 sa bo po nd in s ide rid ge AS G1 T G1 7 5 -2 50 MS T 0.711 ↑渓流水(濃い青)のSr同位体比が、土壌水、井戸水、斜面浸出 水の値に引かれて徐々に上昇していることが分かります。 このことから、一度地面に浸透した降雨は、流下過程で湧出し、 渓流水に混じっていることが推測されます。 Sr同位体分析装置 (地球研)
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