院外心停止に対する induced hypothermia における全身管理の重要性 日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター 守谷 俊 1 21世紀の幕開けは IH の始まり? 担癌患者 1950 重症頭蓋内疾患 (SA Bernald et al: Crit Care Med. 2003;31:2041-2051) 頭部外傷 1958-・くも膜下出血・閉塞性脳血管障害 1976- 心停止蘇生後 (小児喘息・緊張性気胸) 1958外傷 (心損傷) 1999ARDS 1983肝性脳症 1999新生児仮死 1997心臓大血管手術時、術後頻拍症 1991脳炎 1999-、(細菌性髄膜炎 2000-) 心丌全 1998- 致死性丌整脈、肺炎、 敗血症、急性循環丌全、 血液凝固異常 2 Hypothermia によって導かれる protection (action?) とは 脳虚血部位への酸素供給改善作用 (Walter B:J Cere Blood Metab 2000; 142:1117-1121) 頭蓋内圧降下作用 (Clifton GL:N Engl J Med 2001; 344:556-563) 興奮性アミノ酸放出抑制作用 (Illievich UM:Anaesth Analg 1994; 78:905-911) 血管内皮細胞への好中球早期癒着の抑制 (Berger C:Stroke 2002; 33:519524) 急性心筋梗塞の発生率増加 (Frank SM:JAMA 1997, 277:1127-1134) 肺炎は小児に多く、敗血症性ショックになりやすい (Bohn DJ: Crit Care Med 1986; 14:529-534) 腸管運動の低下 (Bernard SA:Crit Care 1999; 3:167-172) 尿細管機能低下 (Wong KC:West J Med 1983; 138:227-232) インスリン分泌量低下 (Curry DL:Endocrinology 1970;87:750-753) 白血球数低下および機能低下作用 (Bohn DJ: Crit Care Med 1986; 14:529-534) 血小板数低下および機能低下作用 (Bernard SA:Crit Care 1999; 3:167-172) 3 20 世紀までは暗黒の時代? 20 世紀中はまさに心停止後の治療は 医師にとって「reluctant」な病態であった。 動物実験 → ヒト応用 → 副作用 or 効果なし (中止) NMDA receptor antagonist (MK801) Competitive NMDA receptor antagonist (CGS19755) Basic fibroblast growth factor (bFGF) Sodium channel blocker Amino-hydroxy-methyl-isoxalone propionic acid (AMPA) receptor antagonist Trilazad (21-aminosteroid) 4 IH において重要なことは? Induced hypothermia が奏功する条件とは何か? 来院後の有用な神経学的評価 → 電気生理学的評価 Induced hypothermia による合併症を防止するには どうしたら良いか? 安全な管理とは → どの時期に、どんな患者に? Induced hypothermia の限界は何か? 可能性はあるが、万能?ではない治療法によりどの程度 の最大限の効果が得られるか? → 全身管理 5 Induced hypothermia における温度の 時間推移 膀胱温度 ) 内頸静脈血液温度 ℃ 温 度 ( 38 37 肺動脈血液温度 鼓膜温度 36 35 34 33 32 0 2 4 6 8 10 12 時間 (hr) 14 16 18 20 22 6 ドルミカム・フェンタニル・エスラックス 7 Hypothermia induced polyuria induced polyuria Weinberg AD: Hypothermia. Ann Emerg Med 22:370-377, 1993 M. Aibiki, et al: Reversible hypophosphatemia during moderate hypothermia therapy for brain-injured patients. Crit Care Med 29:1726-1730. 2001 KH. Polderman, et al: Hypophosphatemia and hypomagnesemia induced by cooling in patients with severe head injury. J Neurosurg 94:697-705, 2001 8 腎各部位における電解質代謝と HIPU の対応 カリウム アスパラギン酸カリウム20mEq/L+生理食塩水100mL(血液検査、血液ガス) 近位尿細管 ヘンレ係蹄上行部 遠位尿細管 集合管 リン リン酸二カリウム20mEq/L+生理食塩水100mL(血液検査、血液ガス) 近位尿細管 遠位尿細管 マグネシウム 硫酸マグネシウム20mEq/L+生理食塩水100mL ヘンレ係蹄上行部 遠位尿細管 9 小児・成人の体温コントロール 34 ℃に至るまでの時間 34 ℃におけるブランケット温 (h) (℃) 4 30 3.5 3.1±0.5 3 2.5 24.1±2.1 25 20 1.8±0.4 2 17.8±1.9 15 1.5 10 1 5 0.5 0 小児 成人 0 小児 成人 10 復温終了時のブランケット温によるそ の後の体温変化予測 復温終了時(36℃)において 60 50 40 30 急上昇有り 急上昇なし 20 10 0 25℃以上 25℃未満 11 Hyperthermia after re-warming from induced hypothermia Post-rewarming hyperthermia Pyrexia after IH for cardiac arrest Post-hypothermia fever Post-rewarming “rebound hyperthermia” after IH Post-IH hyperthermia ① truly a “rebound” hyperthermia as a reaction to the IH ② simply post-arrest hyperthermia being unmasked after the completion of IH Finally, whether “treating” post-IH hyperthermia is beneficial remains unknown. Berg K: Resuscitation 84 (2013) 1167- の内容を一部改変 12 体温の急上昇を防止するための方策 (潜在的) 熱源の原因検索 ブランケットoffにしない 輸液を負荷する 鎮静薬を漸減する 鎮痛薬を継続する 解熱薬 (座薬) を使用する アセトアミノフェン静注を使用する 13 血糖管理の重要性 強化インスリン療法 (80-110 mg/dL) の有用性が 強調 Van den Berghe (2001): N Eng J Med 345:1359-1367 ・外科系集中治療患者の死亡率を41%減少 NICE SUGAR STUDY Investigators (2009) : N Engl J Med 360:1283-1297 ・強化インスリン治療群が有意に死亡率が高かった ・低血糖(40mg/dL以下)が6-7%の事象に発生 ・低血糖が交感神経系の易刺激性を高めたのでは? Griesdale DE (2009):CMAJ 180:821-827 ・強化インスリン療法を行っても低血糖発生の率は上がらな かったが、予後も改善しなかった。 ・血糖測定の回数、栄養経路などの違いがあるのでは? 14 Insulin 使用による効果 創傷治癒の促進作用 Insulin-like growth factor-1やgrowth hormone を介する筋組織蛋白合成促進作用 虚血部のintercellular adhesion molecule-1産 生抑制による抗炎症作用 心臓バイパス手術後、熱傷(小児)においても良好な 結果が報告されている。 15 中枢神経疾患におけるIITの管理 頭部外傷 ICU滞在期間の短縮 (Neurocrit Care 9:156-,2008) 感染率の低下、ICU 滞在期間の短縮、6か月後のGOS 改善 (International Journal of Nursing Studies 46:752,2009) 破裂脳動脈瘤 高次脳機能の改善 (Mayo Clic Proc 83:406-,2008) 神経所見の改善 (J Neurosurg 107:1080-,2007) 脳血管攣縮の低下 (Crit Care Med 33:1603-,2005) 脳外科周術期管理 ICU 滞在期間の短縮、6か月後のGOS改善 (Anesthesiology 110:611-,2009) PCAS 死亡率の増加 16 結語 PCAS に対する induced hypothermia 管理の 中で、血糖や体温の管理に目を向けるこ とが重要である。 17
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