経済原論IA 第10回 西村「ミクロ経済学入門」 第9章 完全競争市場と効率性 京都大学経済学部 依田高典 1 1. 消費のパレート最適性 AとBの初期保有量: w A (x1A , x 2A ), w B (x1B , x 2B ) 各財の総量: x1 x1A x1B , x 2 x 2A x 2B 市場価格:(p1,p2) 効用最大化点: E A (x1A , x 2A ), E B (x1B , x 2B ) 2 純粋交換モデル エッジワース・ボックス x1 0B x2 uB uA (x1B , x 2B ) A 1 A 2 w (x , x ) 0A x2 x1 3 2. 契約曲線 AとBの無差別曲線の接点の軌跡: 消費の効率性条件:MRSA= MRSB パレート最適性(効率性): 他の消費者の効用を減少させずに、ある消費者の効用を高 めるように財を再配分することが不可能 契約曲線上の点は、パレート最適 4 0B x1 x2 契約曲線 uB 0A uA E w l* x2 x1 5 3. 厚生経済学の第一定理 「任意の市場均衡はパレート最適である」 予算制約式(初期保有点wを通り、傾き-p1/p2) i i i i p1x1 p2 x 2 p1x1 p2 x 2 均衡点Eで、無差別曲線uAとuBは予算制約線l*に接する 市場均衡の条件: p1* A B MRS MRS * p2 市場均衡の条件は、消費の効率性の条件を満たす 6 4. 厚生経済学の第二定理 「財の総量を所与として得られる任意のパレート 効率的な配分は、適当に初期保有量を再配分 して得られる経済の市場均衡として達成される」 7 4. オファー曲線 価格比(p1/p2)の変化に対応した需要の軌跡 純粋交換モデルのAとBの交点Eは、第1財と第 2財の市場で同時に均衡が成立する一般均衡 解となり、一般均衡解は安定的である 8 0B x1 x2 オファー曲線 E オファー曲線 w l* x2 0A x1 9 5. 生産のパレート最適性 2生産物(y1,y2)と2生産要素(x1,x2)からなる企業IとIIの等生産 量曲線も、同様に、エッジワース・ボックスで分析可能 生産の効率性条件: RTS RTS A 市場均衡の条件: B w1* A B RTS RTS * 企業の利潤極大化条件は市場均衡の条件を満たす。市場均 w2 衡の条件は生産の効率性条件を満たすので、生産要素の 配分においても、競争均衡解はパレート最適となる 10 6. 社会的生産可能曲線(生産可能性フロン ティア) パレート効率的な生産要素の配分から得られ る財の生産量(y1,y2) (1)企業I,IIの生産関数が上に強く凸 → PPFは原点に強く凹 (2)企業I,IIの生産関数が1次同次で、 (a)契約曲線が各原点を結ぶ直線(対角線)と一致 → PPFは直線 (b)対角線と一致しない → PPFは原点に強く凹 11 y2 O 原点に凹なPPF y1 12 7. 生産可能曲線のパレート最適性 PPFの接戦の傾き:限界変形率MRT=-Δy2/ Δy1 生産の効率性条件: 生産関数を用いた場合: 費用関数を用いた場合: 市場均衡の条件: 生産関数を用いた場合: 費用関数を用いた場合: MP1II MP2II MRT I MP1 MP2I MRT MC I MC II p1 MP1II MP2II MRT I p2 MP1 MP2I MC I p1 MRT p2 MC II 企業の利潤極大化条件は市場均衡の条件を満たし、市場均 衡の条件を満たすと、生産の効率性条件を満たす。PPF上 の組み合わせが市場を介して実現。 13 y2 生産物の価値(相対価格)と限界変形率 の均等 p1y1+p2y2= p1y1*+p2y2 * O PPF y1 14 8. 消費と生産のパレート最適性 効率性条件(無差別曲線と生産可能曲線が接 する): MRS=MRT 市場均衡の条件(効用最大化条件=利潤最大 化条件): p1* * MRS MRT p2 15 y2 限界代替率と限界変形率の均等 無差別曲線 O PPF p1/p2 y1 16 9. 生産物と生産要素のパレート最適性 効率性条件(無差別曲線と生産関数が接す る):MRS=MP 市場均衡の条件(効用最大化条件=利潤最大 化条件): * w * MRS MP p2 17 10. 今までのまとめ 効率性条件 完全競争均衡 消費者A,B MRSA=MRSB =P1/P2 同じ財を生産す る企業I.II MPA=MPB wi/p RTSI=RTSII 異なる財を生産 する企業I,II MRT=MPII/MPI =w1/w2 =p1/p2 MRSA=MRSB= MRT =p1/p2 消費者と生産 18 11. 効用可能性フロンティア 効用可能曲線:契約線上の2消費者にとって 可能な効用の配分(uA,uB) 効用可能性フロンティア:生産可能曲線から得 られる効用可能曲線の包絡線。パレート効 率的な効用の組み合わせ。 シトフスキー・フロンティア:効用可能性フロン ティア(uA,uB)を財平面(y1,y2)に置き換えたも の。原点に対して凸。シトフスキー・フロン ティアは交差する。 19 12. カルドア基準・ヒックス基準 U=(uA,uB), V=(vA,vB) パレート優越的: uA≧ vA, uB≧ vB → U>PV カルドア基準(補償原理):Uと同じ効用可能性フロンティア上の U’に関してU’>PV → U>KV ヒックス基準:いかなるVもUをパレート優越できない → U>HV シトフスキーの二重基準: U>KVとU>HVが共に満たされること 20 uB,vB U>KV & U>HV U’ V O U uA,vA 21 13. シトフスキー・パラドックス U>KV & V>KU または V>HU & U>HVが成立すること 社会厚生関数W(uA,uB)による評価 → アローの不可能性定理 22
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