複素数について

複素平面と複素数の極表示
参考
• 記号 i で表せるものを,
i2 = −1
が成立するような虚数単位とする. 複素数 z が実数 x, y を用いて z = x + yi と表
されているとき, z に対して実座標平面の点 (x, y) を対応させることで複素数全体
と実座標平面を自然に同一視することができる. このように同一視を行った座標平
面を複素平面という. 複素平面において x-軸を実軸, y-軸を虚軸という.
√
• 複素平面上の点 z = x + yi に対して, 原点と z の間の平面上での長さ x2 + y 2 を
z の絶対値といい, |z| で表す. また, 原点から z に向かう半直線と実軸の非負の部
分のなす角1 θ を 0 ≤ θ < 2π の範囲で選んだときの値を z の偏角といい, arg z で
表す.
• 絶対値と偏角を用いると, 複素数 z は
z = |z|(cos(arg z) + i sin(arg z))
と表すことができる. このような表示を z の極表示という. (上記を
z = |z| · ei arg z
とも表せる. 後者の厳密な意味を理解するために, まず無限級数のことを勉強しな
ければならない.) 任意の複素数 z, w に対して,
|zw| = |z| · |w|,
arg(zw) = arg z + arg w
であることに注意.
• 上記によって, ド・モアブルの公式
(cos θ + i sin θ)n = cos nθ + i sin nθ
が従う.
• z = x + yi のとき, 複素数 x − yi を z の共役複素数といい, z¯ で表す. (¯
z ) = z, さら
2
に z z¯ = |z| であることに注意.
1
一般角で考えると, 2π の整数倍だけ不定性がある.
練習問題
[1] 次の複素数を a + bi (a, b ∈ R) の形に表せ.
(1) (3 − 2i)(3 + 2i)
(2) (1 + i)5 + 4(1 + i)
(3)
1
1 + 3i
[2] 複素数 (1 + i)6 の実部と虚部を求めよ. [ a と b が実数であり, z = a + bi とな
るとき a を z の実部といい, b を z の虚部という. ]
[3] 複素数 z に関する次の方程式の解を求め, 複素平面に図示せよ.
(1) z 2 = i
(2) z 2 = 15 − 8i
(3) z 3 = −1 − i
[4] 複素数 z に関する次の方程式の解を求め, 複素平面に図示せよ.
(1) z 2 − 6z + 13 = 0
(2) z 2 − iz − 4 + 2i = 0
[5] 実数の助変数 (パラメータ) α に対して, z =
1
+ αi とする. 次に答えよ.
2
(1) arg(1/z) = π/3 となるような α の値を求めよ.
(2) 1/z と複素数
1 の距離が, α によらない定数であることを証明せよ. (ヒント:
1 − 1 を計算すればよい.)
z
[6] a, b, c, d を複素数とする. 次を証明せよ.
(1) (¯
a − c¯)(b − c) − (a − c)(¯b − c¯) = 0 は, a, b, c が同一直線上にあることの必要か
つ十分な条件である.
/
a−c a−d
(2) a, b, c, d が同一円周上にあるならば,
が実数である.
b−c b−d
解答
1
1 − 3i
1 − 3i
1
3
=
=
=
−
i.
1 + 3i
(1 + 3i)(1 − 3i)
10
10 10
√
√
[2] 1 + i の絶対値は 2 であり, 偏角は π/4 となる. 従って |(1 + i)6 | = ( 2)6 = 8 と
arg((1 + i)6 ) = 6 · π/4 = 3π/2 であることがすぐに分かる. よって (1 + i)6 の実部
は 8 cos(3π/2) = 0 であり, 虚部は 8 sin(3π/2) = −8 となる.
[1] (1) 13
(2) 0
(3)
1
1
1
1
[3] (1) z 2 = i の解は z1 = √ + √ i, z2 = − √ − √ i. 極表示から考えればよい.
2
2
2
2
(2) z 2 = 15 − 8i なる未知複素数 z に関して, x = Re(z), y = Im(z) とする.
z 2 = x2 − y 2 + 2xyi によって x2 − y 2 = 15, 2xy = −8. 前者より x4 − x2 y 2 = 15x2 .
ここに後者から得た x2 y 2 = 16 を代入して x4 − 15x2 − 16 = 0. これは x2 に対して
二次方程式で, ただ一つの非負の解は x2 = 16 である. 従って x = ±4, y = ∓1, す
なわち元々の方程式の解が z1 = 4 − i, z2 = −4 + i となる.
(3) z 3 = −1 − i は三次方程式なので
, 三つの解がある
. −1 − i の偏角 5π/4 を
(
)
√
1
i
6
2π − 3π/4 の形に見れば, z1 = 2 √ − √
が解であることがすぐに分かる. 方
2√
2
√
1
3
1
3
3
程式 u = 1 の非自明な解 u1 = − +
i と u2 = − −
i を z1 に掛けてあと
2
2
2
2
二つの解
√
6
z2 = z1 u1 = 2
および
√
6
z3 = z1 u2 = 2
(
(
1
1
√ −√ i
2
2
)(
[
(√
) ]
√ )
√
√
3
1
3
3
1
1
6
√ + √
i = 2 − √ + √ +
i
− +
2
2
2 2 2 2
2 2 2 2
[
) ]
( √
√ )
√
)(
√
1
1
1
1
3
3
3
1
6
√ −√ i
i = 2 − √ − √ + − √ + √
i
− −
2
2
2
2
2 2 2 2
2 2 2 2
が得られる.
注釈 arg(z1 ) = 7π/4. arg(z2 ) = −π/4 + 2π/3 = 5π/12. arg(z3 ) = 5π/12 + 2π/3 =
√
13π/12. 例えば, z2 = 6 2(cos 5π/12 + i sin 5π/12) と書いてもいい. これから
√
√
√
√
√
√
5π
π
5π
1
3
1
6+ 2
3
6− 2
sin
= √ + √ =
と sin
= cos
=− √ + √ =
12
4
12
12
4
2 2 2 2
2 2 2 2
であることが分かる.
(1)
(2)
i
z1
z2
1
5π
1
12
−π/4
z1
π/4
1
z2
z2
(3)
z3
15 − 8i
−1 − i
z1
[4] 二次方程式の解の公式が複素数係数の場合でも適用できる. よって
(1) z 2 − 6z + 13 = 0 の解は z1 = 3 + 2i, z2 = 3 − 2i である.
√
(2) z 2 −iz−4+2i = 0 の時, z = 12 (i± 15 − 8i). [2](2) によって z1 = 12 (i+4−i) = 2,
z2 = 21 (i − 4 + i) = −2 + i.
2 6
sz1
6
sz2
-
3
−2
1
z
−2
s 1-
2
sz2
注意 実数係数の多項式の実数でない根が互いに共役な複素数となる. 実数でない
係数の場合にはそうではない.
1
− αi
1
1
π √
1
[5] (1)
= 1
))
=
tan
= 3 となるような α について,
= 12
が
tan(arg(
z
z
3
+ αi
+ α2
2
4
√
−α √
3
3 だから, α = −
.
1 =
2
2
√
1
+ α2
| − 12 + αi|
1 z − 1 |z − 1|
4
(2) 1 − = = 1
=√
= 1 なので, 1/z と 1 の
=
z
z |z|
| 2 + αi|
1
+ α2
4
距離は α によらずに 1 である.
[6] (1) ヒント: 複素数 z1 と z2 (例えば, z1 = a − c, z2 = b − c) に対応するベクトルが
平行であるのは, z1 : z2 が実数であることと同値である. 直線が原点を通らない場
合もあることに注意.
(2) ヒント: 円周角を用いればよい. 円が原点を中心としない場合もあることに注意.