レボフロキサシン水和物 クラビット®錠 250 mg、500 mg 2.2 緒言 第一三共株式会社 2.2 緒言 クラビット ® 2.2 緒言 レボフロキサシンは、キノロン系抗菌薬であり、その抗菌活性発現の作用機序とし て細菌の DNA ジャイレースおよびトポイソメラーゼ IV に作用し、DNA 複製を阻害 することが知られている。レボフロキサシンは、好気性および嫌気性のグラム陽性菌 群ならびにグラム陰性菌群に対し、広範囲な抗菌スペクトルを有し、呼吸器感染症を はじめとする各科領域感染症に対して、医療現場で広く使用されている。 抗菌薬の広汎な使用に伴い耐性菌が出現し、抗菌薬の選択肢が狭まりつつある中で、 レボフロキサシンは、ペニシリン耐性およびマクロライド耐性肺炎球菌をはじめとし て、インフルエンザ菌など呼吸器感染症の主要原因菌に強い抗菌力を有し、呼吸器感 染症の治療における有効な抗菌薬としての位置付けを 10 年以上にわたって維持して いる。日本における 2004 年の抗菌薬感受性調査では、レボフロキサシンに対する肺 炎球菌の感受性率は 99.2%であった。しかしながら、キノロン系抗菌薬の処方機会が 多い高齢者で、肺炎球菌のキノロン系抗菌薬への耐性菌が増加しているとの報告があ る。また、キノロン系抗菌薬に対する高度耐性は、標的酵素のひとつであるトポイソ メラーゼⅣのサブユニット A 遺伝子 parC の変異、もう一方の標的酵素である DNA ジャイレースのサブユニット A 遺伝子 gyrA の変異が重なることにより獲得すること も解明されてきた。今後、これらの変異が蓄積した高度耐性菌による感染症患者が増 加することが危惧されている。したがって、他の領域の感染症を含め、耐性化を抑制 することは今日的な課題となっている。 近年、試験管内および動物感染モデルにおける抗菌薬の Pharmacokinetics/Pharmacodynamics(PK/PD)に関する研究の進歩により、キノロン系抗菌薬の治療効果および 抗菌薬に対する耐性化は、その薬物動態と密接に関連していることが解明されてきた。 第一製薬株式会社(現 第一三共株式会社)は、この PK/PD 理論をもとに、レボフロ キサシンの国内および海外での用法・用量について検討した。その結果、海外で承認 されている 500 mg 1 日 1 回投与は、治療効果が期待できるとともに、国内での既承 認用法・用量に比べて、レボフロキサシンへの菌の耐性化抑制の観点から、より適正 な用法・用量であると考え、以下の適応菌種および適応症について用法・用量の変更 および 500 mg 錠と 250 mg 錠の剤型追加を目的とした製造販売承認申請を行うことと した。 【申請適応菌種】 本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラク セラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、 チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクタ ー属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、 ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオ ネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカ 1 2.2 緒言 クラビット ® ス属、アクネ菌、Q 熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミ ジア(クラミジア・トラコマティス) 【申請適応症】 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ 瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門 周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管 支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、 慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染 性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付 属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺 炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、Q 熱 【申請用法および用量】 通常、成人にはレボフロキサシン 1 回 500 mg を 1 日 1 回経口投与する。なお、疾 患、症状に応じて適宜減量する。 腸チフス、パラチフスについては、レボフロキサシン 1 回 500 mg を 1 日 1 回、14 日間経口投与する。 2
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