2.4 非臨床試験の概括評価 Page 2 CTD 2.4 非臨床試験の概括評価 目次 略号一覧 ...........................................................................................................................................3 2.4.1 緒言.......................................................................................................................................4 2.4.2 非臨床試験の方法及び GLP 適合状況.....................................................................................4 2.4.3 薬理試験................................................................................................................................4 2.4.3.1 薬効を裏付ける試験 .......................................................................................................4 2.4.3.2 副次的薬理試験 ..............................................................................................................5 2.4.3.3 安全性薬理試験 ..............................................................................................................5 2.4.3.4 薬力学的薬物相互作用試験 ............................................................................................5 2.4.4 薬物動態試験 ........................................................................................................................5 2.4.5 毒性試験................................................................................................................................5 2.4.6 類縁物質................................................................................................................................5 2.4.7 安全性の総合評価 .................................................................................................................6 2.4.8 結論.......................................................................................................................................6 Page 3 CTD 2.4 非臨床試験の概括評価 略号一覧 略号 省略していない表現 HCM 高カルシウム血症 ED50 50%有効用量 SCID 重症複合免疫不全 PTHrP 副甲状腺ホルモン関連ペプチド RANKL Receptor activator of NF-κB ligand NOD Nonobese diabetic Page 4 CTD 2.4 非臨床試験の概括評価 2.4.1 緒言 ゾレドロン酸はイミダゾール環を側鎖に持つビスホスホン酸であり,骨吸収抑制剤に分類され る。ゾレドロン酸は現在開発されているビスホスホン酸の中で最も強い骨吸収抑制作用を有する 薬剤の一つである。 ゾレドロン酸の悪性腫瘍による高カルシウム血症(HCM)に対する効力を裏付ける薬理試験,作 用機序及び一般薬理試験の成績は 2002 年 10 月に提出した申請資料に記載しており審査されてい る。 2.4.2 非臨床試験の方法及び GLP 適合状況 薬理試験については,HCM 申請時に提出した資料から乳癌及び骨髄腫細胞誘発溶骨性病変モデ ルの結果を再掲するとともに,前立腺癌細胞誘発骨病変モデルに対する効果を検討した。 2.4.3 2.4.3.1 薬理試験 薬効を裏付ける試験 (1)乳癌由来腫瘍細胞誘発骨病変に対する作用(HCM 申請時添付資料) ゾレドロン酸は Walker256 癌肉腫のマウス脛骨内移植モデルにおいて,1.4µg/kg 以上(2 日に 1 回 10 日間皮下投与)で,骨密度の低下を完全に抑制し,ED50 値は 0.7µg/kg であった。MRMT-1 ラ ット乳癌細胞のラット脛骨内移植モデルにおいて,6.8µg/kg 以上(2~3 日に 1 回 20 日間皮下投与) で,骨密度及び骨塩量を有意に増加し,20µg/kg で骨破壊を有意に阻止した。MDA-MB-231/B02 ヒト乳癌細胞のヌードマウス骨転移モデルにおいて,102µg/kg (1 日 1 回 21 日間皮下投与)で,溶 骨性病変を完全に抑制した。 (2)骨髄腫由来腫瘍細胞誘発骨病変に対する作用(HCM 申請時添付資料) ゾレドロン酸は 5T2MM 骨髄腫細胞のマウス骨転移モデルにおいて,81.7µg/kg(週 2 回 4 週間又 は 12 週間皮下投与)で,溶骨性病変の有意な減少,海綿骨量低下の阻止,破骨細胞面増加の抑制, 並びに骨密度低下の阻止の各作用を示した。SCID-hu 骨髄腫モデルにおいて,68µg/kg(週 1 回 11 ~31 週間皮下投与)で,破骨細胞数を有意に低下させた。 (3)前立腺由来腫瘍細胞誘発骨病変に対する作用 ゾレドロン酸は PC-3MM2 細胞のヌードマウス脛骨内移植モデルにおいて,17µg/kg 以上(移植後 7 日目から 1 日 2 回 5 週間皮下投与)で,溶骨性病変を抑制した。PC-3 細胞の SCID マウス脛骨内 移植モデルにおいて,5µg/マウス(移植日から週 2 回 5 週間)で溶骨性病変を抑制した。LuCaP 23.1 Page 5 CTD 2.4 非臨床試験の概括評価 細胞の SCID マウス脛骨移植造骨性病変に対して,5µg/マウス(移植日から週 2 回 130 日間の皮下 投与)で,組織形態計測において骨梁間隙の減少及び骨梁幅の増加が認められ,組織学的検査で腫 瘍量が溶媒群と比べて有意に小さくなった。 (4)腫瘍誘発疼痛に対する作用(HCM 申請時添付資料) ゾレドロン酸は,ラット乳癌細胞の脛骨内移植疼痛モデルにおいて,20µg/kg(2~3 日に 1 回 19 日間皮下投与)で,有意な鎮痛効果を示した。 (5)作用機序(HCM 申請時添付資料) ゾレドロン酸は破骨細胞においてファルネシル二リン酸合成酵素を阻害して,メバロン酸経路 の下流生成物であるゲラニルゲラニル二リン酸の産生を抑制することにより,骨吸収の機能阻害 やアポトーシス誘導作用を示す。 2.4.3.2 副次的薬理試験 該当する試験はない。 2.4.3.3 安全性薬理試験 本申請は適応拡大であるため該当する試験はない。 2.4.3.4 薬力学的薬物相互作用試験 該当する試験はない。 2.4.4 薬物動態試験 本申請は適応拡大であるため該当する試験はない。 2.4.5 毒性試験 本申請は適応拡大であるため該当する試験はない。 2.4.6 類縁物質 本申請は適応拡大であるため該当する試験はない。 Page 6 CTD 2.4 非臨床試験の概括評価 2.4.7 安全性の総合評価 ゾレドロン酸の安全性の評価については,高カルシウム血症申請資料に記載しており審査され ている。 2.4.8 結論 ゾレドロン酸は破骨細胞においてファルネシル二リン酸合成酵素を阻害して,メバロン酸経路 の下流生成物であるゲラニルゲラニル二リン酸の産生を抑制することにより,骨吸収の機能阻害 やアポトーシス誘導作用を示す。この機序からゾレドロン酸は,活性化した破骨細胞によって引 き起こされる過剰な骨吸収を示す疾患に対して有効であることが期待される。 【骨病変に対する抑制作用】 腫瘍細胞からは種々のサイトカインなどが産生されるが,特に骨転移が高頻度にみられる乳癌, 前立腺癌及び肺癌由来の細胞では PTHrP の産生が,骨髄腫の細胞では RANKL の産生が認められ る 1~4)。PTHrP 及び RANKL は,強力な破骨細胞の形成・活性化因子であり,腫瘍細胞が骨に転移 した場合には破骨細胞数の増加,活性の亢進が引き起こされ骨吸収が亢進する。実際,乳癌及び 骨髄腫を移植した動物モデルにおいて,破骨細胞数の増加,骨密度の低下並びに溶骨性病変の形 成が確認された。また,前立腺癌細胞(LuCaP23.1 細胞を除く)においても,乳癌及び骨髄腫と同様 の溶骨性病変が認められた。ゾレドロン酸は,乳癌,骨髄腫及び前立腺癌いずれの腫瘍細胞によ る溶骨性病変に対しても有意な抑制を示した。以上のことから,骨転移した腫瘍細胞による溶骨 性病変の形成は,各腫瘍細胞から産生される破骨細胞活性化因子(PTHrP,RANKL)による破骨細 胞の活性化を介した骨吸収の亢進によるもので,ゾレドロン酸は腫瘍細胞の種類に関わらず有効 であることが示唆された。 なお,前立腺癌の骨転移については主に造骨性病変がみられることから,造骨性病変における 破骨細胞の役割とゾレドロン酸の作用について以下に考察する。造骨性病変を形成する前立腺癌 細胞においても PTHrP 及び RANKL の発現が確認されており 2),病変部位での破骨細胞の増加・ 活性化並びに骨吸収の亢進が関与すると推察される。造骨性病変を形成するヒト化ラットモデル を用いて造骨性病変に対する破骨細胞の役割が詳細に検討されている 5) 。ヒト成人骨片を NOD/SCID マウスに移植し,2 週間後にヒト前立腺癌細胞 LNCaP 細胞を静脈より移入すると,腫 瘍細胞は約 2 週間で移植骨片に定着し,その後造骨性病変を形成した。腫瘍細胞を移植した骨片 と移植しなかった骨片における破骨細胞数を移植時から経時的に観察すると,移植しなかった骨 片では一定であったのに対して,移植した骨片では移植後 4 週で有意に増加したが,その後は減 Page 7 CTD 2.4 非臨床試験の概括評価 少して移植後 8 週には移植しなかった骨片と比べて有意に減少した。組織学的検査では,骨吸収 と骨形成の像が混在しており,骨吸収は腫瘍細胞の近傍及び腫瘍細胞の浸潤部位において亢進し ていた。一方,骨形成が進行した部位には破骨細胞はほとんど存在しなかった。したがって,こ の造骨性病変モデルにおける破骨細胞による骨吸収は,腫瘍細胞が骨に転移した部位での増殖, 浸潤に貢献していることが示唆された。実際,造骨性病変を形成する前立腺癌細胞 LuCaP 23.1 細 胞の移植モデルにおいて,ゾレドロン酸の骨吸収抑制により,組織形態計測における破骨細胞面 の減少,骨梁間隙の減少及び骨梁幅の増加が認められ,組織学的検査で腫瘍量が溶媒投与群と比 べて有意に小さくなった。この結果は,前述のヒト化ラットモデルの結果と一致しており,ゾレ ドロン酸は造骨性病変を形成する腫瘍細胞による骨転移部位における骨吸収の亢進を抑制するこ とが示唆された。 【腫瘍誘発疼痛に対する抑制作用】 ゾレドロン酸は,腫瘍誘発疼痛モデルに対して有意な鎮痛作用を示した。その機序は明確には なっていないが,破骨細胞形成の抑制因子であるオステオプロテゲリンを骨腫瘍疼痛誘発マウス に投与すると,骨破壊を抑制し,痛みの指標となる行動並びに脊髄における神経化学物質(Fos, substance P)の発現を抑制した 6) 。このことから,ゾレドロン酸の腫瘍誘発疼痛に対する抑制作用 機序も,同様に骨破壊の抑制によると推察される。 以上より,骨転移した腫瘍細胞及び骨髄腫細胞は,溶骨性病変及び造骨性病変のいずれを形成 するに関わらず破骨細胞を活性化して骨吸収を亢進させることが示唆された。溶骨性病変を形成 する腫瘍細胞は持続的に破骨細胞の形成・活性化を亢進し,造骨性病変を形成する腫瘍細胞は骨へ の転移部位で破骨細胞を活性化すると推察された。いずれの骨病変においても,ゾレドロン酸は 破骨細胞による骨吸収を抑制することが示された。また,腫瘍誘発疼痛に対する抑制作用が示さ れた。 参考文献 1) Guise TA, Yin JJ, Taylor SD et al. (1996) Evidence for a causal role of parathyroid hormone-related protein in the pathogenesis of human breast cancer-mediated osteolysis. J Clin Invest, 98: 1544-1549. 2) Corey E, Quinn JE, Bladou F et al. (2002) Establishment and characterization of osseous prostate cancer models: intra-tibial injection of human prostate cancer cells. Prostate, 52: 20-33. Page 8 CTD 2.4 非臨床試験の概括評価 3) Miki T, Yano S, Hanibuchi M et al. (2004) Parathyroid hormone-related protein (PTHrP) is responsible for production of bone metastasis, but not visceral metastasis, by human small cell lung cancer SBC-5 cells in natural killer cell-depleted SCID mice. Int J Cancer, 108: 511-515. 4) Farrugia AN, Atkins GJ, Bik To L et al. (2003) Receptor activator of nuclear factor-κB ligand expression by human myeloma cells mediates osteoclast formation in vitro and correlates with bone destruction in vivo. Cancer Res, 63: 5438-5445. 5) Yonou H, Ochiai A, Goya M et al. (2004) Intraosseous growth of human prostate cancer in implanted adult human bone: relationship of prostate cancer cells to osteoclasts in osteoblastic metastatic lesions. Prostate, 58: 406-413. 6) Honore P, Luger NM, Sabino MAC et al. (2000) Osteoprotegerin blocks bone cancer-induced skeletal destruction, skeletal pain and pain-related neurochemical reorganization of the spinal cord. Nature Med, 6: 521-528.
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