カヘキシア(悪液質)は脂肪組 織と骨格筋が顕著に萎縮するこ とで、体重減少と衰弱が生じる 消耗性の疾患である。ガン患者 の約半数がカヘキシアで苦しん でおり、QOL の低下、ガン治療 の選択肢の制限、生存率の低下 に繋がっている。カヘキシアの 重要な特徴の1つは健常人より もエネルギー消費量が多いこと であり、褐色脂肪による熱産生 亢進と関連していると報告され ている。しかし腫瘍がどのよう に褐色脂肪を活性化させるかは 明らかにされていない。そこで筆者らは LLC (Lewis lung carcinoma) cell を移植したマウスを癌性カヘキシア のモデルとして用いて、腫瘍から分泌される副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)が、脂肪組織の熱産生 に必要な遺伝子の発現促進を介したエネルギー消費に重要な役割を担っていることを示した。癌性カヘキシアの モデルマウスに PTHrP 中和抗体を投与すると、脂肪組織の褐色化、骨格筋量及び収縮力の低下が抑制された。 以上の結果より、PTHrP は脂肪組織におけるエネルギーの消耗を促進し、癌性カヘキシアの多くの側面に寄与 することが明らかとなった。したがって、PTHrP を中和・抑制することで、癌性カヘキシアを抑制し患者の生 存率向上が期待できる。
© Copyright 2024 ExpyDoc