準線形一階偏微分方程式 の一般解を求める方法: PDE(1)に対する特性

準線形一階偏微分方程式
a(x; y; u)ux (x; y) + b(x; y; u)uy (x; y) = c(x; y; u)
(1)
の一般解を求める方法:
PDE(1) に対する特性曲線の方程式
dx
a(x; y; u)
=
dy
=
b(x; y; u)
du
c(x; y; u)
の2つの独立な積分1 = 1 (x; y; u) と2 = 2(x; y; u) を求め, 任意関数 F ( ) による方程式
1(x; y; u) = F (2(x; y; u))
を作れば, この陰関数解 u = u(x; y) が, PDE(1) の一般解である.
証明は 2 段階になる.
(I)
第一段階として, PDE(1) は, 2 変数の関数 u(x; y) に対する PDE であるが, これより変数が一つ多い
3変数の関数(x; y; z ) についての PDE に問題を変形する.すなわち, 一般に, 3次元の x; y; z 空間のある
6
領域 Dでz (x; y; z ) = 0 ならば, 適当な範囲内で実定数 を与えるごとに, 方程式
(x; y; z ) = (2)
は, 陰関数的に z について, z = u(x; y; ) と解ける.(以下では,u(x; y; ) のことを単に u(x; y) と記すが, を与えるごとに対応した曲面を考えていることを銘記すべきである.)
この曲面が PDE(1) の解曲面となる必要十分条件は
a(x; y; z )x (x; y; z ) + b(x; y; z )y (x; y; z ) + c(x; y; z )z (x; y; z ) = 0
(3)
である.
証明
(A) 必要: 任意の定数 に対して領域 Dで (2) の陰関数解 u(x; y) が, PDE(1) を満たすならば, 関数(x; y; x)
は, PDE
a(x; y; z )x (x; y; z ) + b(x; y; z )y (x; y; z ) + c(x; y; z )z (x; y; z ) = 0
(4)
を満たさなければならないことをいう.
u(x; y) が, 領域 Dでの方程式 (2) の陰関数解であることから,
(x; y; u(x; y)) = である.従って,
j=
(x; y; z )j =
x (x; y; z )
y
j
) + (x; y; z )j =
z
u(x;y )
z
u(x;y
+ z (x; y; z ) z =u(x;y ) ux (x; y )
=
0
uy (x; y)
=
0
z
z
u(x;y )
である.第 1 の式に a(x; y; u(x; y)), 第 2 の式に b(x; y; u(x; y)) をかけ算して加えると
fa(x; y; z )
x; y; z )+b(x; y; z )y (x; y; z )
x(
gj =
z
f (x; y; z )[a(x; y; z )u (x; y)+b(x; y; z )u
u(x;y ) +
z
1
x
x; y)]
y(
gj =
z
u(x;y )
=0
である. u(x; y) が, PDE(1) を満たすというのだから, 上の式の第2項の [. . .] は, c(x; y; u(x; y)) で置き換
えられ
j
[a(x; y; z )x (x; y; z ) + b(x; y; z )y (x; y; z ) + c(x; y; z )z (x; y; z )] z =u(x;y ) = 0
でなければならない. この関係式は, 特定の に対する (2) の陰関数曲面 z = u(x; y; ) 上で成立するもので
あるがここで を適当に選べば, D内の任意の点 (x; y; z ) に対しても曲面 z = u(x; y; ) が (x; y; z ) を含むよ
うにできるので, 領域 D内のすべての点 (x,y,z) で PDE(4) が成立しなければならない.
(B) 十分: 関数(x; y; z ) と任意の定数 に対して, 方程式 (2) すなわち(x; y; z ) = の領域 Dにおける
陰関数解 z = u(x; y; ) は, 関数(x; y; z ) が PDE(4) を満たしていれば, PDE(1) の解となることをいう.方
程式 (2) を 変数 x, yそれぞれについて偏微分して,
j=(
(x; y; z )j = (
j
) + (x; y; z )j =
x (x; y; z )
z
u x;y )
y
z
u x;y
+ z (x; y; z ) z =u(x;y ) ux (x; y ) = 0
z
z
u(x;y )
uy (x; y) = 0
である.第 1 の式に a(x; y; u(x; y)), 第 2 の式に b(x; y; u(x; y)) をかけ算して加えると3次元空間の領域 D内
の点 (x; y; u(x; y)) において,
a(x; y; z )x (x; y; z ) + b(x; y; z )y (x; y; z ) + z (x; y; z )[a(x; y; z )ux(x; y) + b(x; y; z )uy (x; y; z )] = 0
である.ここで(x; y; z ) は, PDE(4の解であるから
z (x; y; z )[a(x; y; z )ux(x; y) + b(x; y; z )uy (x; y; z )
c(x; y; z )] = 0
6
でなければならない. 領域 Dでは, z (x; y; z ) = 0 であるから, PDE(1) が従う.
(II)
第二段階として, PDE(4) の一般解(x; y; z ) を考察する. 3変数の関数(x; y; z ) の従う PDE
a(x; y; z )x(x; y; z ) + b(x; y; z )y (x; y; z ) + c(x; y; z )z (x; y; z ) = 0
の解曲面は, 特性曲線の理論により 4 次元空間中の特性曲線
dx(s)
ds
= a(x; y; z );
dy(s)
ds
= b(x; y; z );
dz (s)
ds
= c(x; y; z );
d(s)
ds
=0
の作る曲面で与えられる.従って, PDE(4) の任意の解(x; y; z ) は, はじめの 3 つの ODE の与える3次元空
間中の曲線 (x(s),y(s),z(s)) に沿って一定値をとる関数 (つまり積分) = (x; y; z ) である.曲線の積分とは,
その曲線のラベルといっても良い.例えば, 一本の曲線上のすべての点に対して, その曲線が, yz 平面と交
わる点の y座標, もしくは z 座標を対応させる関数は, その曲線についての積分である.従って独立な積分
は2つある. 1 = 1 (x; y; z ) と2 = 2 (x; y; z ) と書こう.一般の積分は, 任意の2変数関数 wにより
(x; y; z ) = w(1(x; y; z ); 2(x; y; z ))
で与えられる.これが,PDE(4) の一般解である.そこで, (I) の考察により, 元々の準線形一階微分方程式
PDE(1) の一般解は,
w(1(x; y; z ); 2(x; y; z )) = 定数
の陰関数解 z = u(x; y) で与えられる. テクニカルには, 任意関数 F ( ) について
1 (x; y; z ) = F (2(x; y; z ))
の陰関数解 z = u(x; y) を求めればいいわけである.
2