第 4 講 星の営み

2014 年度後期 小出良幸
自然の科学
第4講
星の営み
http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/nature/
▼ 多数あるものから、ひとつを知る
1 自分たちの歴史を探る方法
・自分たち自身の中を詳しく調べる
・自分たち以外の類似のものから調べる
例 自分の誕生の様子
2 外の情報
3 整理する
Email:
[email protected]
温度:3K
成分:H 70~75 wt%、
He 23~28 wt%、その他
の重い元素 2~3 wt%
2 分子雲
分子が少し多いとこ
ろ
3 分子雲コア
分子が多く集まる
回転している
4 原始星
分子雲コアができる
と収縮が始まる
可視光はガスが周り
にあるため漏れず、赤外
線がもれる
5 古典的 T タウリ期星(CTTS)
星として輝きはじめる
双極分子流
6 弱輝線 T タウリ期星(WTTS)
核融合が安定しはじめる
CTTS と WTTS をあわせて林フェーズと呼ぶ
分子雲コア
原始星
原始惑星ディスク
分子雲
分子状のH
電離
CTTS
活動的ディスク
低密度雲
HII領
WTTS
原子状のH
不活発ディスク
密度の増加
似たものを順番に並べてみる
微惑星
星間媒質
赤色巨星の
質量放出
原子状のH
高温プラズマ領域
もしそこに何らかの論理が見つかれば、この順番には意味があるかもしれない
原始惑星
惑星系
恒星風
プラズマ粒子
主系列星
重元素合成
重元素濃度の増加
▼ 星を分類する
1 星の分類
・よく見て並べる:色から温度へ
・詳しく見てみる
ブラウンホーファー線の発見
ブラウンホーファー;1787.3.6-1826.6.7 ドイ
ツの物理学者
輝線スペクトルの発見→スペクトル分析
恒星のスペクトル型
ー
RーN
ー
OーBーAーF ーGーKーM
S
100億年
星
林
フ
ェ
イ
ズ
10 3年
10 5年
70億年
100
H, He
10-4
0.08
0.1
H, He
H → He
He
▼ 星の死:太陽
は明るくなって
燃え尽きて死ん
でいく
C + O の白色矮星
He → C, O
1
H, He
H → He
He
He → C, O
C, O
C, O → Ne, Mg,
7
炭素爆発型超新星
8
10
中性子星
He
▼ 第 1 回レポ
ート
テーマ あなた
は自然をどのように定義しますか。
レポートはメール(携帯の E-mail でも可)の
提出でもかまいません。紙でのレポートは、各回
の講義の最後に小出に出してください。なおレポ
ートには、氏名、学生番号、テーマを忘れないよ
うにしてください。
締切り 11 月 4 日 24 時(締切り厳守)
40
C, O
10 7年
C, O → Ne, Mg,
Ne, Mg, Si
質
10,000
5,000
Mg, Si → Fe
Fe
量
小
1,000
有効温度(K)
▼ 星の誕生:太陽は、暗いところで生まれ、一
瞬明るく輝く
1 宇宙空間
ほぼ真空:ごく少しの物質
臨界密度:10-30~10-29 個/cm3
ブラックホール
100
恒星の質量(太陽単位)
0.45
H → He
白色
矮星
40,000
褐色矮星
He の白色矮星
H → He
He → C, O
10-2
1000
0.01
H, He
H, He
現在の太陽
100
路
赤色巨星
10
化
経
惑星
状星
雲
光度(L◎)
量
大
1
進
110億年
列
▼ 星の安定期:太陽は一定の明るさで長期間燃
え続ける
1 星のエネルギ
ー
・水素の核融合
・炭素と窒素によ
る反応
2 太陽の寿命計
算
の
原
始
星
超巨星
104
系
褐色矮星
閉鎖系
星
106
主
白色矮星
中性子星
恒星の年齢(億年)
2 HR 図
横軸:スペクトル型(表面温度、色指数、色温度、
有効温度)
縦軸:絶対等級(真の明るさ、光度)
主系列星:星の 92%がこの領域に入る
102
巨星
Feまでの元素合成
重元素濃度の増加
I型超新星爆発
ブラック
ホール
0.1
Oh! beatuful and fine girl, kiss me right now! Smack!
質
II型超新星爆
Fe以上の重元素合成
自然の科学
2014 年度後期 小出良幸
第4講
星の営み
http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/nature/
Email:
[email protected]
▼ 中野主一
なかの しゅいち 1947 年 9 月 11 日 兵庫県洲本市在住。
日本の天文計算家。一時期、アメリカで活動していたこともある。天体の位置計算、とくに太陽系小天
体(彗星・小惑星)の軌道計算を行い、過去に観測された記録との同定を行うことでは、第一人者として
知られる。天文計算を家庭向けコンピュータ(パソコン)で行うことの草分け的存在であり、1970 年代の
終わり頃のパソコンの最初期のものから、コンピュータの技術進歩に従いその計算プログラムの改良も進
めた。
1986 年から 4 年間、アメリカ・マサチューセッツ州・ケンブリッジにあるスミソニアン天体物理観測所
(SAO)内の、国際天文学連合(IAU)小惑星センター(MPC)に、研究員として勤務。小惑星センターの軌道計
算プログラムを書いた。
小惑星センター在職中、日本のアマチュア天文家が、電子メールを使って、彼を通してスミソニアン天
体物理観測所にある国際天文学連合天文電報中央局(CBAT)に彗星・小惑星・超新星などの観測記録を報告
できるシステムを構築した。アマチュア天文家でも、同じ回線を使って天文電報中央局や小惑星センター
の発表する最新情報を見ることもできた。このことは、日本のアマチュア天文家の活動が他国に比べ活発
になる一因となった。2003 年 3 月まで、日本のアマチュア天文家は中野を通して観測記録を報告すること
を、小惑星センターは推奨していた。
(現在は、直接、天文電報中央局に送ることもある)
東亜天文学会に所属しており、計算課より彗星の観測記録・天体暦である"Nakano Note"を発行してい
る。
▼ 多数あるものから、ひとつを知る
1 自分たちの歴史を探る方法
私たちの太陽の特徴や太陽の歴史は、どのようにして探ることができるか。
一般論として、自分たちを中心に考えると、
・自分たち自身の中を詳しく調べる
・自分たち以外の類似のものから調べる
2 つのアプローチがあり得る。
例
自分の誕生の様子
自分が誕生したときの様子を知るには、自分自身の記憶はほとんどないはずである。しかし、体を調べ
れば、いくつくらいかはわかるし、記憶をたどれば、ある程度誕生の頃に近い様子は推定できる。
しかし、より多くの情報を得るには、自分より前から生きている人に、自分の誕生の様子を聞くことが、
非常に有効な方法である。
2
外の情報
今回は、外の情報から探る方法を紹介する。
宇宙を、もし、宇宙の外から眺めることができれば、宇宙は多数の輝く小さな点でできていることが見
えてくるはずである。その輝く点は、銀河である。つまり、多数の銀河があるということである。
また銀河を外から見ると、多数の輝く小さな点でできていることが見えてくるはずである。このような
階層があり、なおかつ構成要素が多数あると、私たちは、多数の実例をもっていることになる。
宇宙には、多数の星がある。その多数の実例を利用することが、自分自身の生い立ちを、つまり太陽の
生い立ちを、外から調べる方法へとなるはずである。
3
整理する
たくさんあるなら、とりあえず整理する。整理するには、まず、区分して、似たものを順番に並べてみ
る。区分や順番に意味が見出せれば、それは何らかの意味を持っているかもしれない。
似たものを順番に並べてみる
もしそこに何らかの論理が見つかれば、この順番には意味があるかもしれない
太陽系、あるいは太陽の起源を探るには、太陽と似た星を多数調べてみる。そこにはいくつかの種類の
星があるはずである。似たようなタイプの星の中にもいろいろな段階の星が見つかるはずだ。それらのい
ろいろな段階の星を、ある星の一生だと仮定して、並べてみる。すると、そこには、まったく違うもので
あるが、一見星の一生を示すような順番とみえるものができる。もし、その関係を、何らかの法則、原理、
論理によってで説明できるものがあれば、その順番は単に偶然ではなく、ある必然の可能性を示すことが
できる。
▼ 星を分類する
1 星の分類
・よく見て並べる:色から温度へ
分類の仕方は、まず、よく見ること。星が瞬くのは、地球の空気が揺れているためである。これから、
地球の大気を通して星を見ていることを、忘れないようにすること。
星を見たとき、色の違いあることに気づく。
青白、白、淡黄、オレンジ、赤、深赤
に大雑把に分けられる。
多数の星を色に合わせて並べてみると青白から深赤まで、ただらかに変化する。欠けた色もなく、緑色
もない。これは、星の構成成分の違いではなく、これは、星の表面温度に由来していることが判明してい
る。
黒体放射という理論から、温度を推定できる。
高温の星(10,000 K 以上)は青く、低温の星(2,500 K)は赤い
・詳しく見てみる
ブラウンホーファー線の発見
太陽の光を、プリズムを通してよく見ると、黒い線がみつかる。これをブラウンホーファー線という。
発見者の名にちなんでいる。
576 本の黒い線を発見した。
その後、これが、太陽の外側にある温度の低い成分によってできている吸収スペクトルと呼ばれるもの
であることがわかった。
ブラウンホーファー(Joseph von Frahofer)
;1787.3.6-1826.6.7 ドイツの物理学者
もともとは、レンズ磨きの徒弟で、光学機器の腕のよい職人であった。
1814 年(37 再)にから研究を始めた。
1823 年にはミュンヘン大学教授。3 年後に死亡。
恒星の大気の成分を知ることができる。離れていても、スペクトル分析すれば、その星にはどのような
成分が含まれているかがわかる。現在、25000 本あまりのブラウンホーファー線がみつかっている。
輝線スペクトルの発見→スペクトル分析
また、明るく輝く輝線スペクトルもあることが発見された。
燃やす(励起状態にする)と成分固有の光(スペクトル)を発する。
このように、光の成分を細かく調べていくことスペクトル分析という。スペクトルとは、光を波長の順
に分解して並べたものをいう。
恒星を特徴付ける成分を見つけることができる。
スペクトル型:輝線スペクトル(星に含まれる元素の特徴)で区別する。さらに 0~9 まで細分する。
恒星のスペクトル型
RーN
ー
ー
OーBーAーF ーGーKーM
S
Oh! beatuful and fine girl, kiss me right now! Smack!
(おー!美しく素晴らしい上でい、私に今すぐキスして、チュ!)
私たちの太陽のタイプ:G2 型、約 6,000 K
2 HR 図
1905 年に Hertsprung が考え、1913 年 Russell が図示したもの
横軸:スペクトル型(表面温度、色指数、色温度、有効温度)
縦軸:絶対等級(真の明るさ、光度)
主系列星:星の 92%がこの領域に入る
106
原
始
星
超巨星
104
110億年
102
惑星
状星
雲
光度(L◎)
質
量
大
赤色巨星
主
系
列
100億年
星
林
フ
ェ
イ
ズ
10 3年
10 5年
70億年
100
現在の太陽
10-4
10 7年
白色
矮星
10-2
40,000
質
10,000
5,000
量
小
1,000
有効温度(K)
星の誕生のストーリーが考えられた。
▼ 星の誕生:太陽は、暗いところで生まれ、一瞬明るく輝く
1 宇宙空間
ほぼ真空:ごく少しの物質
臨界密度:10-30~10-29 個/cm3
温度:3K
成分:H 70~75 wt%、He 23~28 wt%、その他の重い元素 2~3 wt%
分子雲コア
原始星
原始惑星ディスク
分子雲
CTTS
分子状のH
活動的ディスク
電離
低密度雲
HII領
WTTS
原子状のH
不活発ディスク
密度の増加
微惑星
星間媒質
原始惑星
赤色巨星の
質量放出
原子状のH
高温プラズマ領域
惑星系
恒星風
プラズマ粒子
主系列星
重元素合成
重元素濃度の増加
II型超新星爆
巨星
Fe以上の重元素合成
Feまでの元素合成
重元素濃度の増加
I型超新星爆発
ブラック
ホール
白色矮星
中性子星
褐色矮星
閉鎖系
2
分子雲
分子が少し多いところ
密度:102~103 個/cm3 程度
温度:10~30 K
3
分子雲コア
分子が多く集まる
原因:磁場、超新星爆発、宇宙分子流などあるが不明
密度:104~105 個/cm3
温度:10 K 程度
質量:太陽系の数倍
サイズ:104 AU
回転している
4
原始星
分子雲コアができると収縮が始まる
密度・温度の上昇
可視光はガスが周りにあるため漏れず、赤外線がもれる
核融合がおきない
5
古典的 T タウリ期星(CTTS)
星として輝きはじめる
最初は明るく、高温である
温度:3,000~5,000 K
光度:太陽の 1,000 倍程度
双極分子流
6
弱輝線 T タウリ期星(WTTS)
核融合が安定しはじめる
3×106~3×107 年続く
CTTS と WTTS をあわせて林フェーズと呼ぶ
▼ 星の安定期:太陽は一定の明るさで長期間燃え続ける
1 星のエネルギー
星のエネルギーは、2 つの核融合のプロセスだと考えられている。
・水素の核融合
・炭素と窒素による反応
水素の核融合(p-p 反応と呼ばれる)
1
H + 1H = 2H + e+ + μ
1
H + 2H = 3He + γ
3
He + 3He = 4He + 2 1H
炭素と窒素による反応(C-N 反応と呼ばれる)
炭素と窒素は、触媒のように働き、
実質としては、水素がヘリウムに変わっていく作用である。
12
C + 1H = 13N + γ
13
N = 13C + e+ + μ
13
C + 1H = 14N + γ
14
N + 1H = 15O + γ
15
O = 15N + e+ + μ
15
N + 1H = 12C + 4He + γ
核融合のエネルギーで、
いずれの反応も
4×1H = 4He
の反応が起こる。
放出エネルギー:反応 1 個あたり 4.4×10-5 erg
これは、1 g 水素で考えると、6×1011 cal という量になる。これは、600 t の水を 0℃から 100℃まで
上昇させられるエネルギーである。600t の水とは、50 m プールの水の量である。
2
太陽の寿命計算
現在の地球に太陽エネルギーが 3.8×1033 erg/sec 降り注いでいる。この値と太陽の質量、成分から
太陽の寿命が計算できる。約 100 億年という値になる。これが、太陽の寿命としていわれているもので
ある。
▼
星の死:太陽は明るくなって燃え尽きて死んでいく
星の死も、多数の星の観測から、わかる。つまり、私たちの太陽の将来も、根拠を持って推定できるの
である。
恒星の年齢(億年)
0.1
1
10
100
1000
0.01
褐色矮星
H, He
0.08
0.1
H, He
0.45
H, He
H → He
He
C + O の白色矮星
He → C, O
1
恒星の質量(太陽単位)
He の白色矮星
H → He
H, He
H → He
炭素爆発型超新星
進
C, O
の
8
星
C, O → Ne, Mg,
7
路
化
経
He
He → C, O
H, He
10
中性子星
H → He
He
He → C, O
40
C, O
C, O → Ne, Mg,
Ne, Mg, Si
Mg, Si → Fe
Fe
ブラックホール
100
質量の大きい星ほど早く燃え尽きる。それは、放出エネルギーが大きいからである。
星の誕生
↓ <0.08◎→褐色矮星
主系列星
↓
赤色巨星
超巨星
超新星爆発
↓ 0.08~7◎→白色矮星
中性子星
↓ 8~40◎→中性子星
>40◎→ブラックホール
▼ 第 1 回レポート
テーマ あなたは自然をどのように定義しますか。
人の考えではなく、自分で考えて、自分自身の考えを述べること。レポートは資料や参考書を見ないよ
うに!!レポートはメール(携帯の E-mail でも可)の提出でもかまいません。紙でのレポートは、各回
の講義の最後に小出に出してください。なおレポートには、氏名、学生番号、テーマを忘れないようにし
てください。
締切り 11 月 4 日 24 時(締切り厳守)