慣性モーメントの計算
<例1>細い一様な棒 (教科書 p.71 例 1,G. p.97 例 7.1, 7.2)
質量を M,長さをℓとする。これの一端から a のところを通って棒に垂直な軸の周りのモ
ーメントを求める。棒に沿って x 軸をとって,棒を細分化した長さ dx の微小部分について
考える。質量 M,長さℓなので線密度(単位長さ当たりの質量)は M/ℓとなり,微小部分の
質量は(M/ℓ) dx である。回転軸からの距離は x であるので,
I=∫
−a
−a
M 2
x dx

M
(  − a )3 − ( −a)3
3
M 2
2
= (  − 3a + 3a )
3
=
{
}
である。特別な場合として,棒の中心(a=ℓ/2)の周りのモーメントは

2
a = ⇒ I = M である。
2
12
<例2>質量 M,辺の長さ a,b の長方形の板 (教科書 p.71 例 2,G. p.98, 99 例 7.3, 7.4)
重心を原点に,長さ a の片に平行に x 軸,b の辺に平行に y 軸,これらに垂直に z 軸をと
る。板を y 軸に平行な多くの微細な棒に分け,その1つの棒の質量を dm とすれば,x 軸に
ついての慣性モーメントは,それぞれの棒の x 軸についての慣性モーメントを足し合わせた
ものとなる。
1
dI x = b 2 dm ,
12
b2
1
∴ I x = M 同様に, dI y = a 2 dm ,
12
12
a2
∴ Iy = M
12
[定理2]より
a2 + b2
である。
Iz = I x + I y = M
12
<例3>質量 M,半径 a の一様な薄い円板 (教科書 p.71 例 2,G. p.102 例 7.7)
円板の中心 O を通り,面内に x 軸,と y 軸,これらに垂直に z 軸をとる。O から距離 r
と r+dr の間にあるリング状の部分を考える。そのリングの面積は 2πrdr であり,円板の面
密度(単位面積当たりの質量)は M/πa2 であるので,そのリングの質量は 2πr (M/πa2)dr で
ある。よって,z 軸の周りの慣性モーメントは,
dI z = r 2 ⋅ 2πr
# M %
dr
$ π a2 &
a
# M
I z = ∫0 r2 ⋅ 2π r$ 2 %& dr
πa
a
2M
M
= 2 ∫ r 3 dr = a 2
0
a
2
と求められる。x 軸,と y 軸の周りの慣性モーメントは円なので等しく[定理2]より
Ix = Iy =
Iz M 2
= a となる。
2 4
<例4>質量 M,半径 a の一様な球
1つの直径の周りの慣性モーメントを求める。その直径を z 軸とし,球を z 軸に垂直な厚
さ dz の薄い円板に分け,その円板の慣性モーメントを求めてそれらを合計すればよい。中
心 O から座標 z のところにある円板の半径は a 2 − z2 であり,その体積は π (a2 − z2 )dz である。
一方,球の密度(単位体積当たりの質量)は M/(4πa3/3)であるので,その円板の質量は
M
⋅ π (a 2 − z 2 )dz となり,<例3>の円板の慣性モーメントの計算より,
4πr 3 3
2
1
M
a2 − z2 ⋅
π ( a 2 − z 2 ) dz
3
2
4π a 3
2
1 a M
Iz = ∫
π
a 2 − z 2 ) dz
(
3
2 −a 4π a 3
2
1 3M a
= ⋅ 3 ∫ ( a 2 − z 2 ) dz
z = a cosθ
2 4a −a
2
3M 0
= 3 ∫ ( a 2 sin 2 θ ) (−asin θ dθ )
π
8a
3Ma 2 0
=
−sin 5 θ dθ
∫
π
8
0
$1
' 2
3
= Ma 2 & cosθ (3sin 4 θ + 4sin 2 θ + 8)) = Ma 2
%15
(π 5
8
dI z =
(
)
のように球の慣性モーメントが求められる。
<例5>質量 M,半径 a の薄い球殻(中空の球,表面にのみ質量が分布)
1つの直径(z 軸)の周りの慣性モーメントを求める。球殻上の点 P を通る z 軸に垂直な
微小幅の薄いリングを考え,そのリングの慣性モーメントを求めてそれらを合計すればよい。
OP と z 軸のなす角をθとし,リングの幅が中心 O につくる微小角を dθとする。そのリング
の半径は asin θ ,その円周は 2πa sinθ であり,そのリングの幅は a ⋅ dθ であるから,そのリン
グの面積は 2πa sinθ a⋅ dθ である。一方,球殻の面密度(単位面積当たりの質量)は M/4πa2
であるので,そのリングの質量は M 4πa 2 ⋅ 2πa 2 sin θ dθ である。よって,z 軸の周りの慣性モ
ーメントは,
M
⋅ 2π a 2 sin θ dθ
2
4π a
π
M
2
I z = ∫ ( asin θ )
⋅ 2π a 2 sin θ dθ
2
0
4π a
2
π
Ma
=
sin 3 θ dθ
∫
0
2
π
' 2
Ma 2 $ 1
3
2
=
cos3
θ
−
cos
θ
&%
)( = Ma
2 12
4
3
0
dI z = ( asin θ )
と求められる。
2