「こどもの居場所としてのカフェについて」(PDF:956KB)

「子どもの居場所」としてのカフェについて
こどもカフェの3年間を振り返って・・・
植草学園短期大学
田村光子
こどもカフェの3年間からみえた
子どもの課題・子どもの居場所の役割とは・・・?
① 都市に子どもの居場所がない!!
⇒ ドイツ・ミュンヘンにおいても同様
② 子どもは毎日“忙しい”!!
⇒ 現代の子どもたちの「大人化」された生活
③ 子どもたちは多様な“大人”とのかかわりを求めている
⇒ かつてあった“あたりまえのかかわり”が希薄化
④ 身近なコミュニティにおける“カウンセリング”機能
⇒ 子ども自身が複雑な社会の中で生活している
都市の暮らしに子どもの「居場所」がない!!
● 子どもたちは“群れ”になる場所を求めている
⇒ 当然の発達過程(小学校3~4年生 ギャングエイジetc・・・)
⇒ 「“群れ”になって遊びたい!!」 「いろんな人と出会いたい!!」
(※ 「こども会議」における意見)
● 公園だってあるじゃない・・・なぜできないの??
⇒ 学校や普段の生活での友だち関係のみでは、“群れ”になりきれない
⇒ “群れ”になるためには、異年齢や男女でも関係性をもてるような空間(遊び)の準備や、
大人の声掛けなどを必要としている。
● 子どもらしい“遊び”空間は不足している
⇒ 子どもらしい“身体性”を表現できる空間が少ない
⇒ 子どもの生活の「大人化」・・・大人感覚の三間 「時間・空間・仲間(関係)」
「こどもカフェのいいところ」への意見
(「こども会議」において ・ ( )は賛同数)
・友達とあつまって、たのしく遊べるところ(6)
・たくさん遊ぶことができて楽しい(5)
・友達をたくさん作れるから(4)
・違う学校の子とかと友達になれる(4)
・家にいると「勉強しなさい」とママに言われるから(4)
・土日は家にいるからつまらない、でも、こどもカフェがある
からとても楽しい(3)
“遊び”を通して出会う
ゲームでも“群れ”になる
・いろんな人と仲良くできるし、いろいろな遊びができて
いいところです(3)
「こどもカフェがなくなったら困る」への意見でも・・・
・ 友だちと遊ぶとき人を集めるのが大変。ここならすぐ集まってくれる(3)
・ 遊び場所がなくなるとできなくなる遊びがある(2)
※ 子どもたちは
男女・異年齢が寄り添う
「みんなと」「いろんな人と」
がキーワード!!
※ 子どもらしい“身体性”が発揮される空間
こどもたちの声 Voice of “Children’s cafe”
● こどもカフェのいいところ
いろんな
遊びを
したい
みんなで
遊びたい
いろんな
友だちと
出会いたい
たくさん遊ぶことができて楽しい
友だちをたくさんつくることができる
● なくなったら困る!!
違う学校の子とも友だちになることができる
家にいると「勉強しなさい」とママに言われる
友だちがあんまり作れなくなる・・・
大学生とも遊べなくなってしまう
いま、子どもたちは・・・
子どもたちの孤独感を
やわらげたり・・・
子どもたち自身の、出会いたい・
遊びたい・という思いを高める・・・
子どもの気持ちや思いの
隙間を支えてくれる・・・
そんな居場所を求めている
お母さんやお父さんは仕事が忙しいし、
一緒に遊んでくれない
カフェでしか出会えない・遊べない子もいるのに・・・
ちょっとした
避難の場所
・
ほっとできる
居場所
ここでしかできない遊びができなくなっちゃう・・・
夏は涼しい遊び場がなくなっちゃうのは困る
子どもカフェがなくなったら人をあつめるのが大変!!
ここならすぐ集まってくれる
5
子どもたちの生活が“忙しい”!!
● こどもカフェを利用している子どもたちの年齢 ・・・ 小学校3,4年生が中心=“塾”への移行期
● 高学年になると“習い事”“塾”などで忙しい姿
(高洲地区の姿なのか?・・・現代的な子どもの姿)
● 「子どもルーム」を利用している子どもたちも多い
・・・ 実際、子どもたちは“忙しい”と感じている
2006年時点で、小学校高学年の36.5%が塾通い
また低学年でも20%以上
東京都の特別区では、小学校高学年は50%以上が塾通い
“忙しい”と感じている現代の子どもたち
(ベネッセ教育総合研究所 2008年・2013年 放課後時間調査)
時間のすごし方(時間をむだに使っていると感じる) (2013年)
※「とてもあてはまる」+「わりとあてはまる」の合計
小学生の5割以上が“忙しい”
70%以上が“もっとゆっくり過ごしたい”
(中学生、高校生は、割合が高まる)
一方で、時間を無駄に過ごしていると感じている
子どもたちが50%以上である。
生活に対する意識 (2013年)
※「とても感じる」+「わりと感じる」の合計
※ 子どもたちの主観的福祉の低さがある
“忙しくない”時の子どもたちは?
Ⅽ市の子どもたちの生活時間についての調査
(こども環境学会 2011年 「こどもの生活時間調査票」(社会生活基本調査等と同様の手法で調査)により調査)
● 平日の活動時間の大半をしめるのは学校生活
● 学校外時間については有効に活用できず、一人で過ごす時間や一人で過ごす時間や人との
関わりの少なさが目立つ。携帯やゲーム、ネット等、機器を介して過ごす時間も長くなっている。
● 休日については、過ごし方に特徴があり、「睡眠時間が極端に長くなるケースがあること」
「人との関わり時間は短く一人で居る時間が長い子どもが多いこと」が指摘される
こどもカフェにおけるインタビュー調査
「土日に過ごす場所の迷いがなくなった」「子どものペースで自分たちでやりたいことをできる」
「前はサッカーをしていたけどつまらなかった。いまはこどもカフェにくるようになった」
「日曜日はつまらない感じだった。日曜日の居場所になった」
「日曜日はいつもお買い物、家でのんびりだった。やることがない・つまらないなと感じていた」
「公園はやることがなくて、カフェは楽しい」
こども会議における意見(土日は家族と生活したいと思うか?思わないか?)
・お父さんとお母さんが仕事や遊んでくれないから
・お父さんは仕事、お母さんは疲れやすくって1年生になってからは日曜日に遊んだことがない
・日曜日に親がいないとき一人で過ごすことになってしまう
・家にはないカードゲームや遊具ができなくなる。親と遊べないから休日は思いっきり遊びたい
・親がいる時もあるけど遊んでくれないから
“忙しい”⇔“テレビ・ゲームの世界”におしこめられる子どもの姿
いまどきの子どもたち ・・・ 忙しい放課後の姿
自由時間の活動・・・テレビ・ゲームの世界へおしこめられる
親のホンネ
放課後を子ども一人で過ごさせるなんて危険!!テレビばっかりでは
習い事や塾へ・・・でも本当に子育てはお金はかかる・・・
子どものホンネ
毎日忙しい・・・充実している vs ストレスも感じている・・・
勉強でない刺激がほしい・・・人との出会い・思いっきり遊びたい!!
「子どもたちの多忙化と自由時間の減少:放課後の生活時間調査-ベネッセ教育総合研究所(2008)参照
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多様な “大人” とのかかわりを求めている
● “地域コミュニティ”の人間関係が希薄化
= あたりまえにあった“子ども同士”“子どもと大人”の関係性も変化している
⇒ “みんなでおやつを食べる機会” も 多様な配慮が必要となっている
⇒ 子育て世帯の親たちの生活変化 ・・・ “地域”との関係性へも影響している
● “携帯ゲーム”“スマホ” 大人と同じように商品化に巻き込まれた生活
⇒ 大人社会の産物 ・ 買い与えるのは大人 ・ 大人も同じ生活スタイル(スマートフォン)
⇒ 行き過ぎた情報交換機能 (すれちがい通信) に戸惑いながら、
友だちの“同意”や大人の“配慮”を必要としている子どもたち
● 子どもたちは “制度的かかわり“ が強い社会の中で暮らしている
⇒ 両親・祖父母(家族関係)
⇒ 学校(先生と生徒の関係)
⇒ 地域組織化された子ども福祉サービス(こどもルーム・スポーツクラブ・放課後子ども教室等)
⇒ 商品化された関係(塾・習い事等における先生・生徒関係)
・・・・ 世代的にも限定された関係性 ・ “保護的”“指導的”関係性
・・・・ “制度”的関係性 には限界がある
見えないところで、“排除”されてしまったり、“離脱”してしまう子どもがいる
※
かつてのような“近所のおっちゃん” “知り合いのお兄ちゃん・お姉ちゃん”のような役割を
現代は意図的につくりださなくてはならない (地域の希薄化・核家族化・少子化等の影響)
※
“制度的なかかわり”
から
“はみだしたかかわり”
が求められている
・・・・ そこには、安心・信頼できる関係性の保障が必要となる
“制度的な関係”の狭間における役割
● こどもカフェ・インタビュー調査
「こどもカフェにおける自分自身の変化」
家庭
塾
習い事
など
学校
(人間関係・周囲の環境への対応について)
「はじめての友だちでもなんとなく話して遊べるようになった」
「自分から近寄って、友だちになろうと言えるようになった」
「親以外の大人の人と話すことができるようになった」
「地域の大人ともしゃべれるようになった」
「顔見知りがふえて、気軽にあいさつできるようになった」
制度的な関係
の狭間
学童保育
スポーツクラブ
その他
福祉サービス
放課後こども
教室
等
※ 積極的なコミュニケーション力の醸成
(子ども自身が“外”の世界へ
自分を広げていく力を高める役割)
それだけではない・・・
“ケア”のある対話関係を
求める姿も見られる
“ケア”のある対話関係を求めている
子どもたちの声
身近なコミュニティの“カウンセリング”機能
「学校以外でもカウンセラー
みたいな人がほしい」
「お母さんと喧嘩した・・・
うるさいから嫌だ」
「昨日、友だちと一緒に
学校脱け出したんだ」
「サッカーはおもしろくない
からやめた」
「今日は誰もいないの
・・・一人だから来た」
「学校で無視されてる・・・」
集団に馴染みにくい
子どもの声を
受けとめる
● かつてよりも、子どもたちが置かれている状況が
“複雑化”“多様化”している中で、気持ちを身近にうけとめてくれる場が必要
● 子どもたちの「時間・空間・人間(関係)」における“緊張的状態”を緩和してくれる場が必要
・・・
現代的な子どもの成育環境や発達上の課題への配慮も必要 ( 子どもの貧困 ・ ネグレクト ・ いじめ ・ 発達の遅れ etc・・・)
子どもの“社会的な育ち”のために・・・
自律
周囲からのかかわり
を受け、周囲の規範
を自分の中に取り入
れながら、自分の感
情や行動を調整して
いくこと。
自立
依存や援助なく自分
のことを自分でできる
ようになること また
信頼している人から
離れて自由になって
いくこと。
共感力
模倣力 =社会的な育ちが重要
↑↑↑ 信頼できる大人の存在が必要
運動能力・操作性
認知能力
=知的発達・運動発達が重要
地域の中に、あたらしい“子どものへのまなざし”をもった
空間づくり・人の育成が必要
「子ども・若者が大人のパノプティコン的まなざしや管理から自由になり、遊ぶことができる
プライバシーを持ちながらも、大人による導きや保護の枠内にとどまることができるような
安全で開かれた公共空間を地域コミュニティの中につくることが必要」
(ギル・ヴァレンタイン,2009)
● 子どもたちの「時間・空間・人間(関係)」を広げる場所
・・・・・ 子どもたちの自律 ・ “社会的な育ち”を支える空間
● 子どもたちの「時間・空間・人間(関係)」を調整し、緊張を緩和してくれる場所
・・・・・ コミュニティの中で、子どもたちの不安やリスクを受けとめる空間
“信頼できる大人”との関わり ・ みんなで“群れ”になることや創造的な遊びが展開できる環境
“ケアと対話”のある空間 etc・・・ が必要とされている!!
あたらしい子どもへの視線・まなざしのある空間づくり・人の育成が必要
= 子どもと大人のパートナーシップのある地域へ