化学G1 3回目 2014.4.21 人、金属に会う 梶本興亜 金属の名前を挙げてみよう 合金とは何か 1 君の財布の中は金属の展示場 純アルミ Al(100) 黄銅 Cu(60-70) + Zn(40-30) 青銅 Cu(95)+Sn(1-2)+Zn(4-3) 白銅 Cu(75) + Ni(25) ニッケル黄銅 Cu(72)+Zn(20)+Ni(8) 何故、金銀を使わないのか? 金属 クラーク数 % 何故、鉄を使わないのか? 鉄のビーズ 銅のモリ 銅 Cu 0.01 亜鉛 Zn 0.004 スズ Sn 0.004 鉄 Fe 4.70 金 Au 5×10-7 銀 Ag 1×10-5 鉛 Pb 0.0015 アルミニウム Al 7.56 BC3300年の墓から出土した金属 2 金属の標準電極電位 K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb (H) Cu Hg Ag Pt Au K++e=K Ca2++2e=Ca Na++e=Na Mg2++2e=Mg Al3++3e=Al Zn2++2e=Zn Fe2++2e=Fe Ni2++2e=Ni Sn2++2e=Sn Pb2++2e=Pb 2H++2e=H2 Cu2++2e=Cu Hg2++2e=Hg Ag++e=Ag Pt2++2e=Pt Au3++3e=Au (イオン化傾向) -2.925 eV -2.87 -2.714 -2.659 -1.662 -0.763 -0.440 -0.228 -0.138 -0.129 0.0 0.337 0.789 0.799 1.19 1.50 Ia、IIa族元素 酸化され易い 現在の地球は酸化的雰囲気 酸化され難い 貴金属 和同開珎はどれに近いか? 青銅 Cu(93)+Sn(5)+Pb(2) 青銅は本来は青くないが、空気中 に長年おくと次第に硫酸塩・炭酸 塩を生じ青緑色となるので、青銅 と呼ばれる。 Al 100 純アルミ Cu + Zn 60-70 40-30 黄銅 Cu+Sn+Zn Cu + Ni Cu + Ni 95 1-2 4-3 青銅 75 25 白銅 75 25 白銅 Cu+Zn+Ni 72 20 8 ニッケル黄銅 3 銅の合金の利点 Al 100 純アルミ 銅合金 Cu + Zn 60-70 40-30 黄銅 Cu+Sn+Zn Cu + Ni Cu + Ni 95 1-2 4-3 青銅 75 25 白銅 75 25 白銅 引張強さkg/mm2 純銅 25 青銅(リン青銅)50 黄銅(6:4) 白銅(洋白) Cu+Zn+Ni 72 20 8 ニッケル黄銅 伸び 用途 35-15 屋根板 45-30 弾性、耐食性・耐摩耗性大 鋳造性良 40-15 一般板金 20-5 洋食器、装飾品、計測器 43 50 小実験-貨幣電池 1円玉-Al 10円硬貨-Cu 極 +極 LED キッチンペーパー+食塩水 4 金属 スズ 銅 青銅 鉄 融点/℃ Sn 232 Cu 1083 Cu+Sn 850 Fe 1535 人はいつ頃金属と出会ったか 135億年前 46億年前 40億年前 6500万年前 400万年前 宇宙誕生 地球誕生 生命誕生 霊長類誕生 猿人誕生 50万年前 火・石器の使用 20万年前 ホモ・サピエンス誕生 1万年前 間氷期に入る BC5000年 BC4000年 BC2700年 金銀銅の鍛造 青銅器の導入 青銅器時代 鉄器の導入 BC1500年 鉄器時代へ BC400年 エーゲ文明 武器 装飾品 土器の使用 農耕文化開始 メソポタミア文明 エジプト文明 ヒッタイト文明 装飾品・祭器 銅・錫の精錬 隕鉄の使用 武器 鉄の精錬 鋼の利用 ギリシャ文明 5 ギリシャ時代に既に知られていた元素 -単体として単離されていた 炭素 C 硫黄 S 鉄 Fe 銅 Cu 亜鉛 Zn 銀 Ag スズ Sn 金 Au 水銀 Hg 鉛 Pb 図は、Elements periodic table (http://www.webelements.com/)より引用しました。 ギリシャ時代以前に知られていた金属の性質 金属 融点 密度 硬度 引張強さ 伸び 電導度 ℃ g cm-1 モース 1083 8.92 3 22 38? 亜鉛 Z 419 7.14 2.5 13 30 スズ Sn 232 7.31 1.8 2 鉄 Fe 1535 7.87 4.5 金 Au 1063 19.3 銀 Ag 961 鉛 Pb 水銀 Hg 銅 Cu kg/mm2 % クラーク数 Cu=100 100 % 0.01 29 0.004 35-40 15.3 0.004 25 6 17.3 4.70 2.5 10 45 74.9 5×10-7 10.5 2.7 18 55 106.1 1×10-5 327 11.3 1.5 9 50 8.4 0.0015 -38 13.6 1.8 2×10-5 6 金属鉱石 磁鉄鉱 Fe3O4 自然銀 Ag 自然金 Au 自然銅 Cu 錫石 SnO2 方鉛鉱 PbS 辰砂 HgS 閃亜鉛鉱 (Zn/Fe)S 写真は、産総研地質調査総合センター地質標本館(http://www.gsj.jp/Muse/hyohon/hyohon.htm)より引用しました。 銅の歴史 B.C. 5000年 エジプト、銅器の埋葬品 B.C. 4000年 メソポタミア北部で銅の器具 B.C. 3000年 キプロス(Cyprus)島で生産àcuprumàCu B.C. 3500-3000年 メソポタミアのシュメール人が青銅 を使い始める。(エジプトには錫が産出せ ず青銅器の出現が遅れた) B.C. 1600年 中国(殷)で青銅の工芸品 B.C. 300年 日本(弥生時代)に青銅が伝わる 700年頃 日本でも銅が産出。和同開珎の鋳造と流通。 753年 聖武天皇、東大寺大仏開眼。500トンの銅。 巨大な熔解炉。 江戸時代 日本は世界一の銅の産出国 銅の精錬と同時に銀を産出する南蛮吹き という方法が住友財閥の基礎となった。 自然銅 Cu 輝銅鉱 Cu2S 錫石 SnO2 7 銅の精錬 選鉱:手選鉱法、比重選鉱法、泡に鉱石に付着させる浮遊選鉱法 加熱溶解:硫化銅を含んだ「カワ(マット)」と鉄や珪酸を含ん だ「カラミ(スラグ)」に分離 銅自溶炉:硫化物が燃焼する酸化熱を利用、燃料不要。 溶鉱炉:燃料にコークス 反射炉法:重油またはガスを燃料にする 転炉:熔けたマットに空気を吹きこむ。燃料不要。純度98-99%の 銅藍 CuS 粗銅を得る。 2Cu2S + 3O2 à 2Cu2O + 2SO2 2Cu2O + Cu2S à 6Cu +SO2 電気分解工程:粗銅を陽極につなぎ電解槽中の硫酸銅水溶液に 輝銅鉱 Cu2S 浸す。 陰極に銅として析出する「電気銅」は99.96%の純度。 更に酸素を除く: タフピッチ銅:天然ガスを用いて酸化銅を還元 無酸素銅:電気銅を真空中か還元ガス雰囲気で溶解 黄銅鉱 CuFeS2 金属の還元に要するエネルギー D fG0 / kJ mol-1 0 -500 CuS Cu2S ZnS ZnO -54 CuO -86 -130 -201 Cu2O -146 -318 SnO2 -520 NiSO4 -760 Fe2O3 Fe3O4 -1000 -1500 FeS2 Cr2O3 -1140 Al2O3 -1582 Ag2S -167 PbS -41 -99 -742 -1015 8 鉄の精錬と歴史 B.C. 3000年 隕鉄の利用、エジプトの遺跡 B.C. 1500年 鉄の精錬、アナトリア半島のヒッタイト人 酸化鉄の低温還元(800℃)。半溶鉄を叩いて 鋳造する。 5世紀頃 日本でも製鉄始まる。たたら製鉄(砂鉄)。 中世以降のヨーロッパ:木炭高炉-森林の消失 18世紀 コークス高炉à銑鉄 19世紀 転炉(空気/酸素を吹き込み、燃料不要) 吹き込み時間を変えて炭素量を調整 電気炉(鉄スクラップの時に用いる) 平炉(炭素の多い鋳鉄と、少ない錬鉄を 組み合わせて炭素量を調整) 磁鉄鉱 Fe3O4 赤鉄鉱 Fe2O3 2Fe2O3 + 3C à 4Fe + 3CO2 酸化鉄の還元 黄鉄鉱 FeS2 褐鉄鉱 Fe3+O(OH) 炭素との合金-鋼 鉄:炭素含有量0.0218[mass%]以下 鋼:炭素含有量0.0218-2.14[mass%]-炭素鋼 炭素量が多くなると、引っ張り強さ・硬さが増すが、伸び・絞りが減少し、 切削性が低下する。熱処理により性質が大きく変わる。 鋳鉄:炭素含有量2.14 %以上、融点低く 鋳造しやすいが 脆い。 α:フェライト γ:オーステナイト Fe3C:セメンタイト 相図は、放送大学テキスト「物性の科学・反応と物性」(梶本、岩村著)より引用しました。 9 鉄の合金-C以外 ステンレス鋼:10.5%以上のCrを含む合金、Niを含むことが多い。 Crが酸素と結合して不動態の酸化膜を作るので錆びない。 オーステナイト系(面心立方格子、900-1400℃):非磁性、 SUS316(Ni (10~14%)、Cr (16~18%)、Mo (2~3%)) SUS304 (Ni (8~10.5%)、Cr (18~20%) ) フェライト系(体心立方格子、 900℃以下):770℃以下では強磁性 SUS430(Cr (16~18%) ) マルテンサイト系(体心立方格子):磁性あり、オーステナイトを急冷 SUS420 (Cr (12~14%)…炭素量によって細かく分類される ) 高速度鋼(HSS):高温での硬度が高い。Cr、Mo、W、Vなどを添加。 超硬合金:炭化タングステン(WC)と結合剤のコバルト(Co) を混合して焼結したもの 高マンガン鋳鉄:耐摩耗性が大きく安価 クロムモリブデン鋳鉄:最大の耐摩耗性 金属元素 金属 半金属 111 Rg 112Uub 113Uut 114Uuq115Uup 116Uuh 113 Uuo レントゲ ニウム (272) (285) (278) (289) (288) (292) (294) 10 金属とは 電子と結合 共有結合 イオン結合 金属結合 - + - - + + + -- + - + + - + - 自由電子 金属の特徴 1.電気を通す(導電体) -電線 2.金属光沢を持つ -金・銀・クロムメッキ 3.硬い(高硬度) -刃物 4.引っ張り強さが大きい -ロープ、吊り橋 5.一般に重い -文鎮 6.不透明な固体(水銀は例外)- 7.伝熱性が大きい -はんだごて 8.弾性がある(バネなど) -ゼンマイ 11 電気の通し易さ-電気抵抗 金属 抵抗=抵抗率×長さ/面積 融点 抵抗率 クラーク数 非金属 抵抗率 クラーク数 ℃ 10-8Wm Cu 1083 1.673 0.01 亜鉛 Zn 419 5.92 0.004 Si 3-4 スズ Sn 232 11 0.004 Ge 46×106 鉄 Fe 1535 9.71 4.70 As 33.3 5×10-4 金 Au 1063 2.35 5×10-7 Sb 39 5×10-5 銀 Ag 961 1.59 1×10-5 石英 1×1021 鉛 Pb 327 20.6 0.0015 ナフタレン 1×1025 -38 98.4 2×10-5 TTF-TCNQ 2200(室温) 銅 水銀 Hg 10-8Wm % C(石墨) 1375 % 0.08 25.8 6.5×10-4 半 導 体 絶 縁 体 有機超伝導体 主要金属の生産と輸出入(2009) 鉄鉱 生産 中国 豪州 ブラジル 輸入 中国 日本 韓国 銅鉱 % 21.2 20.3 20.1 45.5 14.4 5.1 粗鋼生産 % 中国 日本 アメリカ 韓国 33.8 7.2 4.8 4.0 中国の生産1位 生産 チリ ペルー アメリカ 輸入 中国 日本 韓国 % 34.2 8.1 7.6 銅消費 % 中国 欧州 北南米 日本 40.6 20.8 14.1 5.2 33.2 25.4 8.8 粗鋼 粗銅 錫 鉛 亜鉛 アルミニウム マグネシウム 33.8 % 15.8(2位) 35.4 32.0 26.2 24.5 75.1 (2004) 12 小テスト 3 1.青銅とは何か、その利点は(3行程度) 2.精錬とはどんな操作か (3行程度) 3.金属は何故電気を通し易いのか (3行程度) 氏名と学籍番号を忘れずに記入すること。 13
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