社会インフラ維持管理を実現する要素技術(PDF:20.9KB)

特集論文
小林伸太郎*
中田雅文*
社会インフラ維持管理を実現する要素技術
Element Technologies to Achieve Social Infrastruture Maintenance
Shintaro Kobayashi, Masafumi Nakata
要 旨
日本では建設後50年以上経過した老朽化インフラが急増
けてのデータ整備と共有化が課題として挙げられている。
しており,限られた予算の中で,計画的かつ効率的に社会
国土交通省 道路局が定める総点検実施要領では,橋梁,
インフラの老朽化対策と維持更新を実施することが喫緊の
トンネル等の道路構造物の点検は,近接目視や打音検査に
課題となっている。
よる5年に1回の点検が前提となっている。全国の橋梁数
具体的には,笹子トンネル天井板落下事故を受けて国土
は約70万橋,トンネル数は1万本あり,これらの構造物の
交通省が2013年3月に策定した“社会資本の維持管理・更
点検を5年に1回実施するには多大な時間と人を要する。
新に関し当面講ずべき措置”では,道路(トンネル,橋梁
この課題を解決するために,新しい自動計測・認識技術
(きょうりょう),舗装,道路法面(のりめん)工・土工構造
を用いた解析によるスクリーニング(優先順位が高い箇所
物,道路附属物),河川,ダム,下水道,鉄道,公園,住
の選定)
を実施し,危険箇所を抽出した上で,近接目視・点
宅にいたる様々なインフラに対し,2015年からの本格的運
検で最終確認を行う点検運用が進められると考える。
用に向けた実施方針が出されている。インフラの老朽化へ
三菱電機は,社会インフラ維持管理に対し多方面にわた
の対策として,①インフラの現状把握と総点検,②インフ
る新技術開発を行っている。本稿では社会インフラのスクリ
ラ維持管理に向けた基準類の整備,③インフラの現状把握
ーニング
(危険箇所抽出)
,近接目視・点検,アセットマネジ
に対する新技術開発,④継続的な維持管理や長寿命化に向
メントを支援する計測技術とデータ処理技術について述べる。
点検運用(案)
MMS車両
高精度撮像技術
磁気イメージング
電波イメージング
レーザ計測
位置補正技術
スクリーニング
走行型自動計測
振動計測
電波変位計測
三次元点群解析
画像認識
定点型自動計測
解析処理
三次元モデリング・オブジェクト化
危険箇所抽出
マルチモーダル識別
打音計測
超音波イメージング
近接目視・近接点検
アセットマネジメント
劣化予測
三次元点群管理
三次元設備管理
異常診断アルゴリズム
劣化予測アルゴリズム
データ処理
三次元モデリング・オブジェクト化
台帳システム
ビッグデータ管理
計測技術
認識技術
データ処理技術
MMS:Mobile Mapping System
社会インフラ維持管理における点検運用(案)と要素技術
点検運用(案)は,①走行型自動計測及び定点型自動計測によってデータを収集,解析することで危険箇所を抽出する。②抽出した危険箇所
に対しては近接目視・点検で危険度を判断し,③積み重ねたデータを経年分析することでアセットマネジメントに展開する処理で構成される。
この点検運用を実現する要素技術を計測,認識,データ処理に分類し,各業務にマッピングした全体像を示す。
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神戸製作所
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