高齢者の脳機能の調査 熊野 宏昭 早稲田大学人間科学学術院、健康福祉科学科 教授 専門 略歴 行動医学(不安障害、うつ病、摂食障害、糖尿病、発達障害、認知症等の精神病理・病態生理・脳科学研究) 、認知 行動療法やマインドフルネス瞑想の脳科学研究、生態学的経時的評価法の医療場面への適用 1985 年 3 月 1985 年 6 月 1987 年 1 月 1987 年 6 月 1994 年 6 月 1995 年 3 月 1995 年 10 月 2000 年 4 月 2009 年 4 月 東京大学医学部 卒業 東京大学医学部附属病院 医員(研修医) 東京大学医学部附属病院分院 医員(研修医) 東京大学医学部附属病院分院心療内科 医員 足立医療生活協同組合綾瀬駅前診療所 院長 東京大学博士(医学)取得 東北大学大学院医学系研究科人間行動学分野 助手 東京大学大学院医学系研究科ストレス防御心身医学分野 助教授・准教授 早稲田大学人間科学学術院 教授 1)研究背景 認知症の予防には軽度認知障害の段階で海馬を保護することの有用 性が報告されているが、一方うつ病では抗うつ薬の作用機序として、 海馬の神経新生が果たす役割の大きさが指摘されている。海馬の役割 に対して、EPA/DHA 等の摂取が海馬の神経新生を促進するという報 告、計算などをしながらの運動が軽度認知障害を改善するという報 告、柴田によるマウスの夕方運動が海馬のモノアミン量を増やすとい う結果は大変有望である。 認知機能検査 COGNISTAT(Neurobehavioral Cognitive Status Examination)の 2 下位尺度「構成」、「記憶」が、早期アルツハイマ ー病診断支援のために開発された指標である MRI での海馬傍回の萎 縮の程度等と負の相関を示した(石束 , 2008) 。また、うつ病群と健 常群の間での有意差は、 「注意」 、 「記憶」 、 「類似」に認められた(佐 藤 , 2012)。 以上より、柴田らがマウスでも検討する「記憶」と「注意」を COGNISTAT で測定するとともに、光トポグラフィー(NIRS)によ って前頭前野の脳血流を測定することで、認知症とうつ病の両病態に 関わる海馬や前頭前野の機能異常の程度を評価可能と考えられる。 2)研究目的 そこで、本研究では、高齢者の脳機能異常に関わる病態の内、罹患 数が最も多く生活に対する障碍も大変に大きい認知症とうつ病に関し て、EPA/DHA 等を含む機能性食品や運動との関わりを検討する。 3)研究計画 1∼3 年目:早稲田大学所沢キャンパスを中心とした所沢市をフィールドとして、 口らの研究グループと同一の参 加者 200 名を目標にした調査研究を実施する。COGNISTAT による認知機能(見当識、注意、語り、理解、復唱、呼 称、構成、記憶、計算、類似、判断) 、NIRS による脳血流変化(言語性記憶、作業記憶、注意機能などを反映する言 語流暢性課題や、注意機能を多面的に測定できる両耳分離聴課題による賦活部位) 、M.I.N.I. によるうつ病症状の程度 と、様々な運動習慣や EPA/DHA 等を含む機能性食品の摂取量との関連を多変量解析により明らかにする。 4,5 年目: 口らのヒトへの介入試験に合流し、上記と同じ認知機能と脳血流変化への介入効果を明らかにする。 19
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