ソーラーボート用 DC モータの PI 制御 ○岡崎 1 1 2 朋広 ,泉 勝弘 , 有明工業高等専門学校 教育研究技術支援センター 2 有明工業高等専門学校 電気工学科 1. はじめに 本校では,学生チームが毎年福岡県柳川市で開催されるソーラーボート大会に挑戦している.ボートの駆動には DC モータを使用しているが,年に一回の大会で上手くボートを操縦するには,モータの出力調整にある程度の慣れが必要 である.この DC モータを PI 制御することによって,ボートの操縦に不慣れな初心者でも,負担の少ない操船が可能と なり,練習時間の大小に関係なく安定して良好な成績が期待できる. また電気工学科では,制御の基礎を学ぶ工学実験として,シミュレータ機器を使った応答波形の解析やソフトウェア によるモータ制御系の解析などを行っている.しかし,基礎的な制御であるモータ制御についての理解度が低いという 問題がある.その原因としては,1)制御工学で用いる式等が難解である,2)シミュレーションでは制御対象となる モータがないため,現実の制御の様子を体感して理解しにくい,3)伝達関数や応答波形による抽象的なデータに関心 や興味が湧きにくい,などが挙げられる. そこで,本研究では理解度が低い原因2)と3)を改善するために,ソーラーボート用 DC モータとスクリューを用 いた推力実験装置を設計・試作し,ソーラーボート用 DC モータの PI 制御を試みた.従来は市販のコントローラを直接 手動で制御していたが, コントローラを含めたモータを制御対象として, マイコンによるフィードバック制御を行った. 現実の制御の実例を体感することで,関心や興味を持って理解することができるのではないかと考える. 2. 実験装置の概要 実験装置は過去にスクリューの推力を測定するた めに試作したものを使用し,駆動部と制御盤に分か れている.駆動部(図1)は組み立て式プール内に 設置するもので,DC モータと軸,スクリューを設 置している.軸は3個のベアリングユニットで固定 し,モータとの接続はユニバーサルジョイントを使 用した.制御盤(図2)の前面パネルには出力調整 用ツマミ,回転数(ディジタル),モータ電圧・電流 図1 駆動部 図2 制御盤 (ディジタル/アナログ),バッテリ電圧電流(ディジタル/アナログ)の表示器を配置した.回転数の計測は軸に取り 付けた歯車の凹凸を近接センサで検知し,そのパルスを[rpm]に変換し表示している. 3.制御システムの設計と実装 モータコントローラにステップ入力を与えた時の スクリューの回転数の応答波形を解析し,むだ時間 +一次遅れで近似して伝達関数を求め,制御系のモ デル化を行った.モデルを離散化し,C 言語でプロ グラムを作成した.マイコンには浮動小数点演算機 能がついた STM 社製 ARM Cortex-M4 を使用した. PI 制御系のブロック図を図3に示す. 図3 PI 制御系のブロック図 4. おわりに 組み立て式プールなどは常設に向かない大がかりな実験装置となるため,現在のところ工学実験で使用することはな いが,ソーラーボート同好会の学生を対象に実験を実施する予定である.今後は,さらに効率の良いブラシレスモータ に置き換えた実験もできるよう改良していく予定である. 謝辞 本研究は JSPS 科研費・奨励研究(23918006)の助成を受けたものである.
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