安全保障法制整備に関するQ&A 平成26年7月 自 由 民 主 党 Q1 なぜ今、憲法解釈を見直し、集団的自衛権の行使を容認する必要があるのです か?集団的自衛権の行使によらなくても、個別的自衛権や既存の法制度の下での 対応が可能ではないですか? A1 国民の命と平和な暮らしを守ることは、政府の最も重要な責務です。わが国を 取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、もはやどの国も一国のみでは 自国の平和と安全を守ることはできず、国際社会と協力して地域や世界の平和を 確保していくことが不可欠です。 国民の生命を守りつつ、世界の平和と安定のために積極的に取り組んでいくた めには、あらゆる事態に対して切れ目のない対応を可能とする国内法制を速やか に整備し、これにより、争いを未然に防ぐ力、つまり抑止力を高めていく必要が あります。 これまでの憲法解釈の下で行使できる個別的自衛権や、既存の法制度の下では、 例えば、日本近海の公海上で活動している米国の艦船が仮に他国から武力攻撃を 受け、自衛権を行使して対処する場合、日本は何もできないという制約があり ました。 このようなことから、今回の閣議決定が行われました。これにより憲法上許容 されると判断されたものは、あくまで「新三要件」を満たす限定的な集団的自衛 権であり、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使を認めるもので はありません。 Q2 憲法解釈の見直しは立憲主義に反するのではないですか? A2 立憲主義に則って政治を行っていく、当然のことです。憲法解釈については、 最高裁判所に解釈を最終的に確定する権能がありますが、行政府が憲法第65条 (「行政権は、内閣に属する」)の下、行政権を執行するために憲法を適正に解釈 します。 今回の閣議決定は、憲法の規範性を何ら変更するものではなく、これまでの政 府見解の「基本的な論理」の枠内における合理的な当てはめの結果です。立憲主 義に反するものではありません。 なお、読売新聞社説(7月2日掲載)でも、「今回の解釈変更は、内閣が持つ 公権的解釈権に基づく。国会は今後、関連法案審議や、自衛権発動時の承認とい う形で関与する。司法も違憲立法審査権を有する。いずれも憲法の三権分立に沿 った対応であり、 『立憲主義に反する』との批判は理解し難い」――と指摘されて います。 Q3 今回の「解釈改憲」で憲法の規範性が損なわれる、との批判がありますが。 A3 今回のいわゆる自衛の措置としての「武力の行使」の「新三要件」は、わが国 を取り巻く安全保障環境の大きな変化を踏まえ、昭和47年の政府見解の基本的 な論理の枠内で合理的に導いた、当てはめの帰結です。 解釈の再整理という意味で一部変更ではありますが、憲法解釈としての論理的 整合性、法的安定性を維持しています。憲法の規範性を何ら変更するものではな く、合理的な解釈の限界を超える、いわゆる「解釈改憲」ではありません。 集団的自衛権の行使容認の検討にあたり、現行憲法の下で認められる自衛権の 行使は、必要最小限度の範囲内にとどまるという従来の基本的立場を変えるもの ではありません。 また、今回の閣議決定により、直ちに自衛隊が活動を実施できるわけではあり ません。今後、法律の改正が必要となります。政府において必要な法案の準備が でき次第、国会で審議を行うことになります。 Q4 憲法改正によるべきであり、なぜ閣議決定で解釈の見直しを行ったのですか? A4 憲法改正の是非は、国民的な議論の深まりの中で判断されるべきものです。 他方、わが国を取り巻く安全保障環境は大きく変化しており、国民の生命と平和 な暮らしを守り抜くための法整備が急務となっています。 先述の通り、今回の検討によって、昭和47年の政府見解の「基本的な論理」 の枠内で合理的に当てはめの帰結を導ける以上、憲法改正を行わなければできな いものではないと考えます。従って、憲法の範囲内で必要な法整備を行うことが 政府の責務です。 Q5 日本国憲法が掲げる「平和主義」は変わるのですか?「専守防衛」の方針は 変更になるのですか? A5 いずれも変わりません。現行憲法の下で認められる自衛権の行使は、必要最小 限度の範囲内にとどまるという従来の基本的立場を変えるものではありません。 武力行使を目的として、かつてのイラク戦争や湾岸戦争での戦闘に参加するよう なことは、これからも決してありません。 あくまでもわが国の存立を全うし、国民を守るため、すなわちわが国を防衛 するためのやむを得ない自衛の措置として初めて武力の行使が許容されるもので あり、「専守防衛」(憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢)は不変です。 これまでも、わが国は時代の変化に対応しながら、憲法が掲げる平和主義の 理念の下で最善を尽くし、外交・安全保障政策の見直しを行ってきました。平和 国家としての日本の歩みはこれからも決して変わらず、その歩みをさらに力強い ものとするための決断こそが、今回の閣議決定です。 Q6 集団的自衛権の行使を認めれば、日本は再び戦争ができる国になるのですか? また、他国の戦争に巻き込まれることになるのではないですか? A6 現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定で何ら変わることなく、 海外派兵は一般に許されないという従来からの原則も全く変わりません。自衛隊 が武力の行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加する ようなことはこれからも決してありません。 日本国憲法が許すのは、あくまでわが国の存立を全うし、国民を守るための 自衛の措置です。他国を防衛することがすなわちわが国を防衛することとなると いうことは想定されるとしても、外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は 今後とも行いません。 昭和35年(1960年)の日米安全保障条約改定の際、 「戦争に巻き込まれる」 という批判が随分ありました。しかし、50年後の今、この改正によってむしろ 日本の抑止力が高まり、アメリカのプレゼンスによってアジア太平洋地域の平和 が一層確固たるものになっています。 抑止力が高まることにより、戦争に巻き込まれる可能性はより低くなります。 従って、今回の閣議決定により日本が戦争に巻き込まれるおそれは一層なくなっ ていきます。日本が再び戦争をする国になるというようなことも、断じてあり得 ません。 Q7 外交と抑止力の関係について教えてください。 A7 いかなる紛争も力ではなく、国際法に基づき外交的に解決すべきです。紛争の 平和的解決のために外交努力を尽くすことが前提であり、その上での万が一の備 えが大事で、この備えこそが万が一を起こさないようにする大きな力、すなわち 抑止力になります。 平和を守るためには、平和外交努力と一定の抑止力を持つことが必要だという ことは世界の常識です。しかし、わが国では戦後、振り子が極端に反対に振れて、 「抑止力そのものが有害である。抑止力があるから戦争になる」という議論が蔓 延していました。 そのような中で、 「一定の抑止力が必要だ」という人達が自衛隊をつくり、日米 安全保障条約の締結、そして改定を実現しました。これにも、 「自衛隊があるから 戦争になる。日米安保条約があるから戦争に巻き込まれる」と言って不安を煽る 方がいました。歴史の審判に耐え得たのは、前者の人達です。 平和外交努力をしっかりと続けていくとともに万全の備えをすることが、日本 に戦争を仕掛けようとする企みをくじく、大きな力となるのです。 Q8 徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのですか? A8 全くの誤解です。例えば憲法18条に「何人も…その意に反する苦役に服させ られない」と定められており、徴兵制が憲法上認められない根拠になっています。 わが党が平成24年に発表した新憲法草案でも、この点は継承されています。 また、軍隊は高度な専門性が求められており、多くの国は現在の自衛隊と同じ ように「志願制」に移行しつつあります。憲法上も安全保障政策上も、徴兵制が 採用されるようなことは全くありません。 Q9 議論が拙速であり国会で十分な審議を行うべき、との批判がありますが。 A9 そもそもこの問題は、7年前(平成19年5月)の第一次安倍政権下において、 有識者による「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」を立 ち上げ、具体的検討を行いました。 自民党では、それよりも前から検討が行われ、野党時代を経て政権に復帰した 昨年2月、第二次安倍政権下において再び安保法制懇を開催し(計7回)、本年 5月15日、安倍総理に報告書が提出されました。 その後、わが党は「安全保障法制整備推進本部」(本部長:石破茂幹事長)を 設置し、賛成派・反対派の双方から有識者を招き、全ての党所属国会議員に参加 を呼び掛けた上で、熱心な議論を行いました(計14回開催)。 そして、自民党・公明党の与党で設置した「安全保障法制整備に関する与党 協議会」 (座長:高村正彦自民党副総裁、座長代理:北側一雄公明党副代表)にお ける計11回の濃密な協議の積み重ねの結果として、今回の閣議決定に至りまし た。また、国会においても、与野党参加の上で、予算委員会などにおいて集中審 議を行っております。 なお、今回の閣議決定に基づく自衛隊の活動を可能とするためには、国内法の 整備が必要です。今後、政府において自衛隊法をはじめ安全保障法制の改正案が 準備され、国会提出後には与野党による慎重な審議が行われます。国会審議を 通じて、国民を巻き込んだ広範な議論が行われるものと考えます。 Q10 自民党の選挙公約等における集団的自衛権に関する記述を教えてください。 A10 わが党は、一昨年の衆議院選挙及び昨年の参議院選挙における公約や総合政 策集に、集団的自衛権の行使を可能とし、関連する法整備を行うことを掲げて きました。 (1)平成24年衆議院選挙 〈政権公約2012〉 日本の平和と地域の安定を守るため、集団的自衛権の行使を可能とし、 「国家安全保障基本法」を制定します。 〈J―ファイル2012〉 政府において、わが国の安全を守る必要最小限度の自衛権行使(集団 的自衛権を含む)を明確化し、その上で「国家安全保障基本法」を制定 します。 また、その法律において、内政上の施策に関する安全保障上の必要な 配慮など国・地方公共団体・国民の責務をはじめ、自衛隊の保有と文民 統制、国際社会の平和と安定のための施策、防衛産業の保持育成と武器 輸出などを規定して、安全保障政策を総合的に推進します。 (2)平成25年参議院選挙 〈参議院選挙公約2013〉 「国家安全保障会議」の設置、 「国家安全保障基本法」 「国際平和協力 一般法」の制定など、日本の平和と地域の安定を守る法整備を進めると ともに、統合的な運用と防衛力整備を主とした防衛省改革を実行します。 〈J―ファイル2013〉 政府において、わが国の安全を守る必要最小限度の自衛権行使(集団 的自衛権を含む)を明確化し、その上で「国家安全保障基本法」を制定 します。 また、その法律において、内政上の施策に関する安全保障上の必要な 配慮など国・地方公共団体・国民の責務をはじめ、自衛隊の保有と文民 統制、国際社会の平和と安定のための施策、防衛産業の保持育成と武器 輸出などを規定して、安全保障政策を総合的に推進します。 Q11 国際法と日本国憲法における「武力の行使」の違いは何ですか? A11 国連憲章は第51条で加盟国の「武力の行使」を原則として禁止する一方、 集団安全保障、個別的又は集団的自衛権による「武力の行使」については例外 的に許容しています。 一方、今般の閣議決定において、「新三要件」を満たす場合には、わが国の 存立を全うし、国民を守るため、すなわち、わが国を防衛するためのやむを得 ない自衛の措置として、初めて「武力の行使」が許容されるとされました。 この「武力の行使」は、国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がありま すが、国際法上集団的自衛権の行使が認められる場合の全てについてその行使 を認めるものではありません。 全面的に集団的自衛権の行使を認めるといった解釈は、現行憲法の下で採用 することは困難であり、憲法改正が必要になると考えられます。 Q12 個別的自衛権と集団的自衛権の違いは何ですか? A12 個別的自衛権とは、一般に、「自国に対する武力攻撃を、実力をもって阻止 することが正当化される権利」を言います。これに対して、集団的自衛権とは、 一般に、「自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃 されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権 利」です。このように、個別的自衛権と集団的自衛権は、わが国に対する武力 攻撃が発生しているか否かによって明確に区別されています。 日本政府は従来から、個別的自衛権、集団的自衛権いずれの自衛権も、国際 法上、わが国が主権国家である以上当然有しているとの立場を明らかにしてま いりました。 また、わが国が武力攻撃を受けた際、必要最小限度の範囲で実力を行使する こと、そのための必要最小限度の実力を保持することまで憲法は禁じていない、 との解釈を採っております。 ただし、集団的自衛権の「行使」については、昭和47年の政府見解等にお いて、必要最小限度の範囲を超えるものであり憲法上許されない、としていま した。 Q13 集団安全保障とは何ですか? A13 集団安全保障とは、「国際法上、武力の行使を一般的に禁止する一方、紛争 を平和的に解決すべきことを定め、これに反して平和に対する脅威、平和の破 壊または侵略行為が発生したような場合に、国際社会が一致協力してこのよう な行為を行った者に対して適切な措置をとることにより平和を回復しようと する概念」を指します。 国連憲章には具体的措置が定められており、当然、集団的自衛権とは異なる ものです。集団的自衛権の行使を前提とするものでもありません。 イラクによるクウェート侵攻の際、国連安保理の決議に基づき多国籍軍が 編成され、イラクに対する武力制裁を行った事例は、まさに集団安全保障に該 当します。なお、集団安全保障により武力制裁が行われるのは、経済制裁など の武力の行使を伴わない措置では不十分であると認められた時です。 集団安全保障について日本政府は、日本国憲法に反しない範囲内で国連憲章 上の責務を果たしつつ、憲法第9条が禁ずる武力の行使又は武力による威嚇に あたる行為については行うことが許されない、としています。 Q14 昭和47年の政府見解とは何ですか? A14 昭和47年(1972年)10月14日、参議院決算委員会に提出された 「集団的自衛権と憲法との関係に関する政府資料」を指し、以下の通りです。 「憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の 保持を禁止しているが、前文において『全世界の国民が……平和のうちに生存 する権利を有する』ことを確認し、また、第13条において『生命、自由及び 幸福追求に対する国民の権利については、……国政の上で、最大の尊重を必要 とする』旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が 平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国 の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとるこ とを禁じているとはとうてい解されない。 しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右 にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、そ れは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利 が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの 権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるか ら、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲に とどまるべきものである。(※) そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが 国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがっ て、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団 的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」 先述の通り、今回の与党協議では、わが国を取り巻く安全保障環境の大きな 変化を踏まえ、憲法解釈としての論理的整合性、法的安定性を維持しつつ(※ 印より前段の部分)、昭和47年の政府見解の基本的な論理の枠内で、当ては めの帰結を合理的に導く(※印より後段の「そうだとすれば、…」の部分)、 解釈の再整理を行いました。 Q15 昭和47年の政府見解の枠内で、なぜ結論が変わるのですか? A15 これまで、「武力の行使」が許容されるのは、わが国に対する武力攻撃が発 生した場合に限定されてきました。 しかし、パワーバランスの変化や急速な技術革新により、他国で発生した 事態でも、自国の安全保障に直接的な影響を及ぼすことがあり得る時代に移行 しました。 この変化を踏まえれば、他国に対する武力攻撃でも、その目的・規模・態様 等によっては、わが国の存立を脅かすことも現実に起こり得ます。 この現状を踏まえ、わが国に対する武力攻撃が発生していなくとも、「わが 国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存 立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白 な危険がある場合」であれば、従来の政府見解の「基本的な論理」に基づく自 衛のための措置として、「武力の行使」が憲法上許容されるとの整理に至りま した。 この整理によっても、憲法の基本的な考え方は、何ら変更されていません。 したがって、憲法の規範性を何ら変更するものではありません。 Q16 武力行使の「旧三要件」と「新三要件」の違いは何ですが?どのような場合 に集団的自衛権の行使が可能となるのですか? A16 従来、政府は、憲法第9条の下において認められる自衛権の発動としての 武力の行使は、以下の三要件に該当する場合に限られると解しており、これら の三要件に該当するか否かの判断は政府が行うとしてきました(「旧三要件」)。 (1)我が国に対する急迫不正の侵害があること (2)これを排除するために他の適当な手段がないこと (3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと これに対して、今回の閣議決定における自衛の措置としての「武力の行使」 の三要件は以下の通りです(「新三要件」)。 (1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係に ある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅か され、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白 な危険があること (2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な 手段がないこと (3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと 従って、「新三要件」を満たす場合に限り、国際法上は集団的自衛権が根拠 となる「武力の行使」も、その一部(限定)が、自衛のための措置として憲法 上許容されることになります。 「新三要件」に該当するか否かは、全ての情報を総合して客観的、合理的に 判断されます。 その上で、実際の「武力の行使」の要否は、高度に政治的な決断となります。 時の内閣が、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くために何が最善か、あらゆ る選択肢を比較しつつ、現実に発生した事態の個別具体的な状況に即して、 総合的に判断します。 Q17 「新三要件」が曖昧で、武力の行使に「歯止め」がかからないのではないで すか? A17 「新三要件」は、昭和47年の政府見解に基づく基本的な論理の枠内で導き 出されたものであり、憲法上の明確な「歯止め」となっています。 「新三要件」に該当するか否かは、全ての情報を総合して客観的、合理的に 判断されるものであり、恣意的に判断できるものではありません。 個別的自衛権と同様、国会承認も求めることになります。民主主義国家の わが国では、慎重にも慎重を期して判断が行われることになります。 Q18 いわゆる「8事例」「15事例」とは何ですか? A18 あらゆる事態に切れ目なく対処できる法整備を行い、隙のない備えを構えて いく観点から、今般、政府は、具体的な事例に即して検討を行うべく、事例集 を与党協議に提出しました。 政府の事例集は、(1)武力攻撃に至らない侵害への対処(いわゆる「グレ ーゾーン」への対処)、(2)国連PKOを含む国際協力等、(3)武力の行使 に当たり得る活動(「集団的自衛権の行使」等)の3類型で構成されています。 3類型の個々の事例の総計がいわゆる「15事例」であり、その中で(3) 武力の行使に当たり得る活動に限った事例がいわゆる「8事例」です。事例の 詳細は以下の通りです。 (1)武力攻撃に至らない侵害への対処 事例1 離島等における不法行為への対処 事例2 公海上で訓練などを実施中の自衛隊が遭遇した不法行為へ の対処 事例3 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護 【参考】 (領海内で潜没航行する外国の軍用潜水艦への対処) (2)国連PKOを含む国際協力等 事例4 侵略行為に対抗するための国際協力としての支援 事例5 駆け付け警護 事例6 任務遂行のための武器使用 事例7 領域国の同意に基づく邦人救出 (3)「武力の行使」に当たり得る活動 事例8 邦人輸送中の米輸送艦の防護 事例9 武力攻撃を受けている米艦の防護 事例10 強制的な停船検査 事例11 米国に向け我が国上空を横切る弾道ミサイル迎撃 事例12 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護 事例13 米本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戦を行う時の 米艦防護 事例14 国際的な機雷掃海活動への参加 事例15 民間船舶の国際共同護衛 Q19 「わが国に対する武力攻撃」や「グレーゾーン」とはどのような事態ですか? A19 わが国に対する武力攻撃とは、基本的には、わが国の領土、領海、領空に 対する組織的計画的な武力の行使を指します。 これに対して、純然たる平時でも有事でもない事態を、いわゆるグレーゾー ンと呼んでいます。法的な概念ではなく、武力攻撃に至らない侵害が発生して いる幅広い状態を端的に表現したものです。 わが国に対する武力攻撃(組織的計画的な武力の行使)か否か明確ではない 事態(例えば武装集団の不法上陸)では、自衛権の発動ではなく、警察機関が 第一義的な対応の責任を有しています。 しかし、警察機関が対処できない場合でも切れ目のない十分な対応が必要で あり、そのための自衛隊の対処のあり方について検討を行っています。 Q20 武力の行使の「新三要件」は、いわゆる「8事例」全てに適用されますか? 停戦合意前のシーレーンにおける機雷掃海、民間船舶の国際共同護衛等も可能 となるのですか? A20 いずれの事例も「新三要件」を満たす場合には、集団的自衛権の行使として の「武力の行使」が自衛の措置として憲法上許容される事例です。 8事例に挙げられた自衛隊の活動が新たに可能となりますが、当然、その ためには法整備を行い、新たな法律上の根拠が必要となります。 また実際には、個別具体的な状況に即して、 「新三要件」に該当するか否か、 全ての情報を総合して客観的、合理的に判断されます。 Q21 自衛隊の活動範囲に地理的な制限はないのですか? A21 「新3要件」に照らし合わせれば、わが国がとり得る措置には自ずから限界 があります。 武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領域へ派遣する、いわゆる 「海外派兵」は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲 法上許されないとする従来からの見解は変わりません。 Q22 国連安保理決議に基づく集団安全保障措置として活動中の他国の軍隊に 対して、自衛隊がいわゆる後方支援を行う場合、「武力の行使との一体化」の 問題から自衛隊が活動を行わない場所としての「現に戦闘行為を行っている現 場」とは、どのように判断されるのですか? A22 「現に戦闘行為を行っている現場」とは、国際的な武力紛争の一環として 行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為が現に行われている現場です。 自衛隊員が支援活動を実施する地点で、人を殺傷し又は物を破壊する行為が 現に行われていれば、客観的に明らかであり、わが国として主体的に判断して 直ちに休止・中断することとしています。自衛隊員の安全確保からも当然の対 応です。 Q23 国連PKO活動中の自衛隊部隊に関し、いわゆる「駆け付け警護」(日本の NGO関係者や他国部隊のPKO要員等が武装集団に襲われ、自衛隊に救援を 要請してきた場合、駆け付けて警護を行うこと)や「任務遂行のための武器使 用」が可能になるのですか? また、外国でテロ集団により邦人等の生命が脅かされる事案が発生した場合、 領域国の同意があれば、自衛隊を派遣して救出することも可能になるのです か? A23 PKO参加五原則の下で派遣された国連PKO活動における「駆け付け警 護」や「任務遂行のための武器使用」、また「領域国の同意に基づく邦人救出」 等に伴う武器使用は、基本的には「武力の行使」に当たらない「武器の使用」 となります。警察比例に類似した厳格な比例原則が働きます。 「国家又は国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場し、自衛隊の活動 が「武力の行使」に当たることがないよう、受入れ同意が安定的に維持されて いるかや領域国政府の同意が及ぶ範囲等については、国家安全保障会議におけ る審議等に基づき、内閣として判断します。 Q24 「わが国と密接な関係にある他国」とはどの国ですか? A24 同盟国である米国は基本的にはこれに当たるであろうと考えられます。米国 以外は、現実には相当限定されますが、いずれにせよ、個別具体的な状況に即 して総合的に判断されます。 また、憲法上「武力の行使」が許容されるか否かは、「我が国と密接な関係 にある他国」に対する武力攻撃が発生したことによってのみ判断されるもので はなく、「新三要件」を満たすか否かによることとなります。 Q25 年内のガイドライン(日米防衛協力のための指針)の見直しに間に合うよう に法整備を行うのですか?また、日米安全保障条約は改正されるのですか? A25 昨年10月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)において、本年末までに ガイドラインの見直し作業を完了することで合意しました。この点は、4月の 日米首脳会談でも確認されており、今後、ガイドラインの見直しと政府の法整 備の検討は並行して行われることになります。 なお、日米安全保障条約の改正は検討されていません。これは、わが国の施 政下における武力行使、すなわちわが国については個別的自衛権の行使という 考え方に基づいて安保条約の履行が考えられています。 Q26 自民党の「党是」である憲法改正は、今般の法整備により後退するのですか? A26 わが党が憲法改正の実現に向けて取り組む方針に、微塵も変化はありません。 今般の法整備が成し遂げられたとしても、自衛隊が軍隊ではないことに何ら変 わりなく、現行憲法の平和主義は継承しつつ、憲法改正による国防軍の保持を 目指します。 また、自衛権に関する規定や緊急事態条項の欠如など、多くの面で現行憲法 には不備があり、憲法改正は喫緊の課題です。 一方で、憲法改正については国民的な議論が必要です。先般の国民投票改正 法案の成立により、議論は一層深まる方向にあり、わが党は今後も憲法改正の 実現に向け、全国運動を展開していまいります。
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