論理学 第 3 回 証明 萩野 達也 慶應義塾大学 環境情報学部 LOGIC03 (1/17) これまで 命題 論理結合子 真理値表 トートロジー 標準形 論理和標準形 論理積標準形 論理結合子の制限 LOGIC03 (2/17) 推論 真理値表を用いた命題の正しさの定義 基本的な命題 (命題変数) の真偽値から,命題の真偽を計算する 推論 すでに正しいと分かっている命題から,別の正しい命題を導く 推論規則を繰り返し用いて,前提となる命題から,命題導く 「前提 B1 , . . . , Bn から A が推論される」 推論規則 (inference rule) 正しい命題から正しい命題を導く規則 例 A と A ⊃ B から B を導く モーダスポネンス (modus ponens) 三段論法 (syllogium) とも呼ばれる 「人間は死すべきもの」であり「ソクラテスは人間である」,ゆえに「ソクラテ スは死すべきもの」である. LOGIC03 (3/17) 公理と定理 公理 (axiom) 正しいと考える前提 「異なった 2 点を通る直線はただ一つ存在する」 「平行線は交わらない」 定理 (theorem) 公理から推論規則を使って得られた命題 定理を導く推論の過程を証明 (proof) という 「3 角形の内角の和は 180 度である」 LOGIC03 (4/17) 形式論理体系 扱っている論理学を形式的に扱う体系 論理式の構文や操作に関する体系 公理と推論規則からなる 古典命題論理 (classical propositional logic) の形式体系 ヒルベルト (Hilbert) の体系 公理中心で推論規則はモーダスポネンスだけ ゲンツェン (Gentzen) の自然演繹 (natural deduction) の体系 日常の推論に近いもの NK 体系 ゲンツェンの sequent 計算の体系 形式的な表現にすぐれている LK 体系 LOGIC03 (5/17) LK の式 LK 体系では次の式 (sequent) を用いる A1 , . . . , Am → B1 , . . . , Bn 直観的意味「A1 から Am を仮定すると B1 から Bn のどれかが導かれる」 m や n は 0 でもかまわない → B1 , . . . , Bn 仮定は必要ない 直観的意味「B1 から Bn のどれかが導かれる」 A1 , . . . , Am → 導くものがない 直観的意味「A1 から Am を仮定すると矛盾する」 → 仮定は必要がないのに,導くものがない 直観的意味「矛盾している」 LOGIC03 (6/17) LK の公理と推論規則 LK 体系の公理: 始式 (initial sequent) A→A 構造に関する推論規則 (weakening 左) Γ→∆ A, Γ → ∆ (weakening 右) Γ→∆ Γ → ∆, A (contraction 左) A, A, Γ → ∆ A, Γ → ∆ (contraction 右) Γ → ∆, A, A Γ → ∆, A (exchange 左) (cut) Γ, A, B, Π → ∆ Γ, B, A, Π → ∆ (exchange 右) Γ → ∆, A, B, Σ Γ → ∆, B, A, Σ Γ → ∆, A A, Π → Σ Γ, Π → ∆, Σ (Γ, ∆, Π, Σ は論理式の列) LOGIC03 (7/17) 推論規則 (2) 論理結合子に関する推論規則 (∧ 左 1) (∧ 右) (∨ 右 1) A, Γ → ∆ A ∧ B, Γ → ∆ Γ → ∆, A Γ → ∆, B Γ → ∆, A ∧ B Γ → ∆, A Γ → ∆, A ∨ B (∧ 左 2) (∨ 左) B, Γ → ∆ A ∧ B, Γ → ∆ A, Γ → ∆ B, Γ → ∆ A ∨ B, Γ → ∆ (∨ 右 2) Γ → ∆, B Γ → ∆, A ∨ B (⊃ 左) Γ → ∆, A B, Π → Σ A ⊃ B, Γ, Π → ∆, Σ (⊃ 右) A, Γ → ∆, B Γ → ∆, A ⊃ B (¬ 左) Γ → ∆, A ¬A, Γ → ∆ (¬ 右) A, Γ → ∆ Γ → ∆, ¬A 命題定数に対する始式 →⊤ ⊥→ LOGIC03 (8/17) LK の証明図 LK の証明図 (proof figure) 始式から出発し,推論規則を次々に適用していく過程を記述したもの 証明図の一番下にある式を,その証明図の終式 (end sequent) という. 例: 証明図 A→A → A, ¬A → A, A ∨ ¬A → A ∨ ¬A, A → A ∨ ¬A, A ∨ ¬A → A ∨ ¬A 終式: → A ∨ ¬A S を終式とする証明図が存在する時,S は LK で証明可能である (provable) という. LOGIC03 (9/17) 推論の拡張 式の左端右端以外への推論規則の適用 exchange 規則を使うことで,適用させたい式を左端あるいは右 端に移動させることができる どの位置の論理式に対しても,contraction, weakning, 論理結合 に関する推論規則を適用することができる S1 , S2 , . . . , Sn から LK の推論規則を使って S を推論することができ るとき, S1 S2 ··· Sn S 上記推論は LK で導かれるという. LOGIC03 (10/17) 式の構文的な意味 定理: 次の 3 つは同値である. 1. 式 A1 , . . . , Am → B1 , . . . , Bn が LK で証明可能である. 2. 式 A1 ∧ · · · ∧ Am → B1 ∨ · · · ∨ Bn が LK で証明可能である. 3. 論理式 A1 ∧ · · · ∧ Am ⊃ B1 ∨ · · · ∨ Bn が LK で証明可能である. LOGIC03 (11/17) 練習問題 (1) ¬(A ∧ ¬B) → A ⊃ B の証明図を書きなさい. LOGIC03 (12/17) 練習問題 (2) A ⊃ B, A ⊃ ¬B → ¬A の証明図を書きなさい. LOGIC03 (13/17) 練習問題 (3) A ⊃ B → ¬(A ∧ ¬B) の証明図を書きなさい. LOGIC03 (14/17) 練習問題 (4) A → ¬¬A の証明図を書きなさい. LOGIC03 (15/17) 練習問題 (5) ¬¬A → A の証明図を書きなさい. LOGIC03 (16/17) まとめ 推論 公理 定理 LK 体系 始式 LK 推論規則 証明 証明図 LOGIC03 (17/17)
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