Gard Alert:密閉区画への立入訓練 こちらは、英文記事「Gard Alert: Enclosed space entry training」(2014 年 12 月 18 日付)の和訳です。 2015 年 1 月 1 日以降、改正 SOLAS 条約第 III 章第 19 規則により、密閉区画への立入と救助の演習を 2 か月ごとに実施することが義務化されます。 船内の密閉された区画(以下、密閉区画)での事故は、以前から深刻な負傷や死亡の原因となっていま した。危険な密閉区画への立入前に正確な手順を踏むことが船内作業の安全を確保する上で極めて重要 であるにもかかわらず、同様の事例は後を絶ちません。 多くの事故分析結果によると、こうした問題は、指導・指示の不足が原因ではなく、所定の手順を踏む ことを怠ったことが根本原因となって生じているのです。IMO は、 「発生した事故の状況を調査した結果、 多くの場合、船内事故の原因は、指導・指示の不足というよりは予防措置を講じる必要性についての認 識不足または軽視のようだ」という見解を示しています。 2015 年 1 月 1 日以降、密閉区画への立入と救助の責任を担うすべての船員に対して、定期的な演習への 参加が義務付けられます。その目的は、事故の発生を完全に防ぐとともに、密閉区画への立入手順が、 単に ISM コード監査人の要求を満たすことではなく、実際に安全性を向上させることであることを関係 者に十分に理解させることです。 助言 2015 年 1 月 1 日以降、密閉区画への立入と救助演習を、該当するすべての船舶において 2 か月ごとに導 入するようにしてください。 • • 演習内容には、個人向け保護具、通信装置、通信手順、密閉区画内の空気測定機器のチェックと使用 方法の確認を含めてください。また、各演習において、応急処置や蘇生技術に加えて、救助装置の効 率的な使用に重点的に取り組むことも重要です。 演習では、空気のチェックから応急処置・蘇生技術の管理まで、密閉区画立入の全工程に関する現実 的なシミュレーションを実施し、密閉区画用の保護具と安全装置を使用するようにしてください。同 © Gard AS Page 1 of 3 • 様に、意識不明者を密閉区画から救助する方法についても現実的なシミュレーションを実施するよう にしてください。 演習の日付と詳細内容を船舶のログブックに記録しておくことが重要です。演習から得られた教訓は 共有し、必要に応じて手順の改定を行うようにしてください。規定の時刻に完全な形での演習が実施 できなかった場合は、ログブックにその理由と実際に実施した演習や訓練の範囲を記入するようにし てください。 また、以下についても推奨いたします。 • • • 密閉区画への立入手順が、国際安全管理コード(ISM コード)第 7 章の主要な船上業務に含まれてい ることを確認すること。 現行手順の見直しを行い、船内の密閉区画への立入に関する IMO の改定勧告(Resolution A.1050(27)) が確実に反映されるようにすること。 密閉区画への立入と救助の責任を担う負うすべての者を対象に適切な訓練を実施し、密閉区画立入に 伴う危険性を認識・評価し、コントロールできるようにすること。 Gard 発行の安全ミーティングのための Case Studies Gard は、安全ミーティングで活用いただけるように、リスク評価プロセス、事故原因となった過失の特 定を中心に取り上げた Case Studies を定期的に発行しています。SOLAS の新要件が 2015 年 1 月 1 日か ら発効することを踏まえて、Gard では、Case Study「密閉区画への立入(Entry into enclosed spaces)」 を発行しましたので、訓練の中で是非ご活用ください。各事例の比較、分析、オフィサーとクルー間の ディスカッションにお役立てください。 密閉区画で繰り返される事故 密閉区画とは、アクセスと退出が制限されていて、通気が確保されておらず、長時間作業に適した設計 が施されてない業務エリアのことです。 密閉区画に関連する大きな問題点は、酸素が不足していることと有毒ガス・蒸気が存在していることで す。1 密閉区画内の空気中の酸素が欠乏する原因はいくつかあります。一つは、密閉区画内の鋼鉄建造物 の錆びつきに伴って酸素が消費されること。また、酸素を吸収する物品や、酸素を汚染する有毒ガスを 発生させる貨物なども原因の一つです。 2 薫蒸中の貨物も有毒ガスの発生源となり得ます。3 木材チップ、木材ペレット、パルプなどの一見無害に見える貨物が事故の原因となることもよくありま す。Gard では、すでに 1999 年の時点で、軟材を積載したカーゴホールド内に立ち入った船員が死亡し た事故を取り上げた「Warning – Enclosed spaces – Do not enter!(警告 - 密閉区画 - 立入禁止!)(英 文のみ)」という記事を発行しています。2014 年 10 月にも、木材チップを積載した船舶の密閉区画で 同様の事故が発生したとの報告を受けています。 1 Gard の Loss Prevention Circular No.05-14 「No. 05-14: The dangers of working at heights below deck(甲板下での高所作 業の危険性) (英文のみ) 」をご参照ください。 2 固形ばら積み貨物の多くは、貨物スペースや酸素の収容領域の不足を招く原因となります。こうした貨物には、野菜の ほとんど、林産物、鉄系材料、金属硫化物コンセントレート、石炭など含まれます。IMSBC コードの第 4.2 項に従って、 荷送人から提供する貨物情報には、貨物の可燃性、有毒性、腐食性のほか、該当する場合には酸素欠乏性向についての情 報などを包含しなければなりません。 3 Gard の Loss Prevention Circular No.13-11「輸送中貨物の薫蒸が船員に及ぼす危険」をご参照ください。 © Gard AS Page 2 of 3 こうした密閉区画の事故によって複数の死亡者が発生しており、密閉区画内で作業をしていた者や適切 な訓練や装備もなく救助活動に携わった者が犠牲者となっています。4 将来追加される要件 2016 年 1 月 1 日以降、ポータブル式空気検査機器を船上に携行することを求める新しい強制要件が、新 設の SOLAS 条約第 XI 章第 7 規則の発効に伴って義務化される見込みです。ポータブル式空気検査機器は 個人向けの保護具・安全装置として使用されるものではなく、船舶装置の一部として使用されるもので す。ポータブル式空気検査機器は、密閉区画が安全に立ち入ることができるかどうかを外部から検査す るために使用するものであり、少なくとも、酸素、可燃性ガス、可燃性蒸気、一酸化炭素、硫化水素を 対象とするものである必要があります。 ポータブル式空気検査機器をすべての船舶に可能な限り早期に搭載されることを推奨いたします。ポー タブル式機器の選定に関するガイダンスについては、MSC.1/Circ.1477 をご覧ください。 4 2005 年の Gard News 記事「A fatal tanker accident(タンカーの死亡事故) (英文のみ) 」をご参照ください。 本情報は一般的な情報提供のみを目的としています。発行時において提供する情報の正確性および品質の保証には細心の注意を払ってい ますが、Gard は本情報に依拠することによって生じるいかなる種類の損失または損害に対して一切の責任を負いません。 本情報は日本のメンバー、クライアントおよびその他の利害関係者に対するサービスの一環として、ガードジャパン株式会社により英文 から和文に翻訳されております。翻訳の正確性については十分な注意をしておりますが、翻訳された和文は参考上のものであり、すべて の点において原文である英文の完全な翻訳であることを証するものではありません。したがって、ガードジャパン株式会社は、原文との 内容の不一致については、一切責任を負いません。翻訳文についてご不明な点などありましたらガードジャパン株式会社までご連絡くだ さい。 © Gard AS Page 3 of 3
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