Clinical Case Study A 77-Year-Old Man with a

Clinical Case Study
A 77-Year-Old Man with a Prolonged Activated Partial Thromboplastin Time
Martin Ehrenschwender1,2,*,†, Juergen Koessler1,†, Kirsten Brunner1 and Udo Steigerwald1
+ Author Affiliations
1
Institut für Klinische Biochemie und Pathobiochemie mit Zentrallabor, Universitätsklinikum Würzburg, Würzburg,
Germany;
2
current affiliation: Institute for Medical Microbiology and Hygiene, University of Regensburg, Regensburg, Germany.
* Address correspondence to this author at: Institute for Medical Microbiology and Hygiene, University of Regensburg,
Franz-Josef-Strauss-Allee 11, 93053 Regensburg, Germany. Fax +49-941-9446402; e-mail
[email protected].
臨床症例研究
77 歳男性の延長した活性化部分トロンボプラスチン時間
症例
77 歳の男性が呼吸困難と下肢の浮腫悪化を理由に、他の病院に入院した。患者は 4 週間前からの食欲喪失と
インフルエンザ様症状を訴えた。患者はメトプロロール、ラミプリル、スピロノラクトン、トラセミド、メト
フォルミン、ジゴキシンを含む、様々な心疾患用の薬を飲んでいた。慢性心房細動には、ダビガトラン
(75mg を 1 日 2 回)を 12 ヶ月処方されていた。ダビガトランは心房細動のある患者の脳卒中予防の為に US
Food and Drug Administration が近年、直接的なトロンビン阻害剤として承認したものである。
入院 5 日前、患者は右臀部の新しい血種、あざができやすいこと、右目の結膜出血に気づき、自分個人の判断
でダビガトランの服用を停止した。入院時の通常血液検査では、延長した活性化部分トロンボプラスチン
(aPTT)69s(標準域 25-35s)と、わずかに延長したプロトロンビン時間(PT)が見られた。初めこれらの検
査結果と斑状出血は、それまでの抗凝固剤使用に原因があると考えられた。
患者のその他の症状はうっ血性心不全の悪化によるものと感じられ、それらの症状は利尿剤治療の最適化によ
って改善された。しかしながら患者に新しい血種ができた。aPTT が入院から 2 日を経っても依然として延長
したままであった為(最後のダビガトラン使用から 7 日経過)、血液凝固因子を定量した。血液凝固因子 VIII
1
活性は検出限界以下 (<5 IU/dL、標準域 70-150 IU/dL)であり、凝固因子 XII の活性はわずかに低下していた
(53 IU/dL、標準域 70-150 IU/dL)。よって患者は更なる検査のため、我々のクリニックに紹介されてきた。
疑問点
1.
aPTT の延長が見られるとき、どの識別診断を考慮すべきか?
2.
か?
直接的トロンビン阻害剤のような新しい抗凝固剤は、どの程度通常の凝固テストに影響を及ぼすの
3.
aPTT 延長の原因を評価するためには、どの方法を用いるべきか?
入院時、aPTT テストの再検査結果は 71.4s (標準域、23-36s)であり、凝血因子 VIII 活性はクロモゲン・アッ
セイ(<10 IU/dL、標準域 50-75 IU/dL)と凝固テスト (<1 IU/dL、標準域 70-150 IU/dL)において大幅に低下し
ていた。PT、フィブリノーゲン、フォンヴィレブランド因子、血小板数、血小板機能を含むその他の凝固要因
の値はそれぞれの標準域以内であった。
考察
aPTT 延長を追及する第一ステップは、人為的要因の除外である。疑わしい結果は新しいサンプルで確認すべ
きである。静脈穿刺技術、サンプルの入った試験管(クエン酸ナトリウムといった抗凝血剤を適切に含むもの)
の正確なファイリングといった分析前の問題や、コンタミネーション(例えば中心静脈カテーテルからのヘパ
リン)の回避は重要である。脂血性、黄疸性、または溶血したサンプル、又はヘマトクリット値が高いもの
(血漿クエン酸濃度を上昇させる)は凝固テストを阻害する可能性がある(1)。
更に、患者の病歴も重要である。未分画ヘパリン、フォンダパリヌクス、又は治療量の低分子量ヘパリンは中
程度の aPTT 延長を引き起こすことがある。ワーファリンといったビタミンK拮抗物質の過度な摂取の後、
aPTT 延長が顕著な PT 延長に付随して起こる。より新しい抗凝固剤(例えば直接的トロンビン阻害剤であるダ
ビガトリン)の aPTT を延長させる影響については証明されている(2)。我々の症例では、ダビガトリンは入
院 5 日前に中止されており、血漿中の半減期はわずか 14 時間であることから、ダビガトリンは原因として考
えにくいであろう(3)。
もしこれら初期の検討事項が aPTT 延長の妥当な理由になりえない場合、更なる分析が必要となる。基本的に、
aPTT は凝固因子 XII、XI、X、IX、VIII、V、II、I の活性、同時に高分子量キニノーゲンとプレカリクレインに影
響される。PT とトロンビン時間(TT)を測定することで、必要な検査数を効果的に減らすことが出来るのである。
PT と TT が正常値の場合、凝固因子 X、V、II、I の主な欠乏、そしてヘパリンによるコンタミネーションも考
2
え難い。しかしながら凝固因子 VIII の活性増加(例えば急性期反応において)は、部分的にその他の凝固因子
欠乏を隠してしまい、わずかな aPTT 延長に留まってしまう。重要なことは、凝固因子 VIII と IX の欠乏、また
は凝固因子 XI の重度な欠乏は、出血のリスクを高める。一方で凝固因子 XII の急激な減少や稀な高分子キニノ
ーゲンやプレカリクレインの欠乏は、過度な出血を引き起こすものではない(4)。また患者の臨床症状、問
診は、狙いを定めた血液検査の為には必須である。
合成異常や機能異常を伴う遺伝子異常は、血友病 A(凝固因子 VIII)、血友病 B (凝固因子 IX)、血友病 C(凝固
因子 XI)に見られるような、遺伝性の凝固因子活性低下の原因である。後天的凝固因子欠乏は、根本的な疾患
(例えば肝硬変)や高い回転率を伴う出血に起因するかもしれない。このような症例の場合、PT も通常影響
を受ける。凝固因子 VIII 低下は、担体タンパク質であるフォンヴィレブランド因子による保護阻害に関係する
ことから、フォンヴィレブランド因子抗原を定量的に測定すること、そしてフォンヴィレブランド因子リスト
セチンコファクターを検査することが望ましい。フォンヴィレブランド病は先天的、また後天的に起こりうる。
後天的なものは腫瘍随伴症候群として起こる場合と、人工弁へのせん断応力といったような機械的損傷症例で
の高分子多量体の分解(多量体分析で検出可能)によって起こる場合がある。出血歴のある若い患者では、わ
ずかな延長、または境界域の aPTT であっても中程度の血友病、又はフォンヴィレブランド病と関係する可能
性がある。
aPTT 延長は、凝固テストを阻害する不明確な抗リン酸抗体の存在を示唆することもある。更に、通常凝固因
子 VIII を標的にする特異的な阻害剤の存在が、凝血因子の分解を招くこともある。
aPTT 延長の精密検査アルゴリズムが、図 1 に示されている。
症例追跡
我々の患者では、TT 値が正常であることからヘパリンによるコンタミネーションは除外された。ループス抗
凝固因子は、最新のガイドラインで推奨されているように、2 種類の分析(ループス特異的 aPTT と diluted
Russell Viper Venom Time)結果によって除外された(6)。PT が標準値だったことから、凝固因子 VIII、IX、XI、
XII 活性のみ測定された。凝固因子 VIII 活性は <1 IU/dL であり、この低活性が患者の出血の原因であると考えら
れた。凝固因子 XII 活性のわずかな低下(53 IU/dL、標準域 70-150 IU/dL)は二次的なものであると考えられた。
患者の病歴は、重度の血友病 A のような先天性疾患を示すものではなかった。フォンヴィレブランド因子抗原
とフォンヴィレブランド因子リストセチンコファクターは正常値だったため、フォンヴィレブランド病は除外
された。よって、際立って低下した凝血因子 VIII 活性は、後天的な凝固因子 VIII 阻害によって引き起こされた
可能性が高い。この仮定は aPTT を用いた血漿ミキシング検査によって確認された。少量の患者の血漿を正常
な血漿に加えた(凝固因子活性を約 100 IU/dL 含む。それによって凝固因子欠乏の可能性を相殺する)ことで、
重度のそして非直線的な aPTT 延長を引き起こした(図 2 参照)。この現象は 37℃で 2 時間のインキュべート
後顕著になり、progressive inhibitor[進行性阻害物質]と呼ばれる特徴を示す(7)。
3
凝固因子 VIII 阻害物質は Bethesda 分析、又は Nijmegen modification によって定量でき、定量結果は治療方法決
定のためには必須である。このプロセスにおいて、凝固因子 VIII 活性は、凝固因子 VIII を含む血漿と連続的に
希釈した患者血清の混合液で測定される(8)。この測定で我々の患者は、223 Bethesda units (BU)/ml 力価
であった。
通常、重症の出血がある場合、もし阻害力価が非常に低い場合、凝固因子 VIII 濃縮物質が使われる。阻害力価
が高い患者 (> 5 BU/mL)では、バイパス物質、又は遺伝子組み換え型活性化凝固因子 VII が望ましい(9)。
後天的凝固因子 VIII 疎外物質は、年間 100 万あたりおよそ 1.5 症例の割合で報告されている。そして男女とも
高齢の患者で最も多く見られる(9)。病態生理学的に自己抗体、又は同種抗体の凝固因子 VIII への結合はそ
の凝固活性を妨ぎ、生死に関わる合併症を引き起こす可能性がある。後天性自己抗体の Bethesda 測定法によ
る定量は、凝固因子阻害物質がしばしば非直線系で II 型動力学の非飽和複雑形を描くにも関らず、分析方法が
直線的I型動力学に基づいていることから、疎外物質の効力を過小評価する傾向にある(8)。
覚えておくべきポイント
•
人工的要因を除外した後、aPTT 延長の評価は凝固因子の測定とループス抗凝固剤阻害、又はヘパリン
によるコンタミネーションを除外して行う。
•
aPTT 延長と出血性素質のある患者では、後天性凝固因子阻害剤を考慮しなければならない。
•
aPTT を用いた血漿ミキシング検査は、阻害物質の存在を証明する第一の証拠となる。
•
後天性凝固因子 VIII 阻害物質は、Bethesda 測定法や Nijmegen modification 定量で比較的低い阻害物質濃
度であっても、重症の生死に関る出血を引き起こす可能性がある。
•
ダビガトランのような直接トロンビン阻害物質やその他の新規の抗凝固剤は、aPTT 延長の原因物質と
なりうることを考慮しなくてはならない。
罹患患者のうち約 50%は、以前は健康であった(9)。その他の半数は自己免疫疾患、悪性疾患、又は妊娠が
報告されている。まれではあるが、抗生物質(ペニシリン、スルファ剤、クロラムフェニコール)や抗けいれ
ん薬といった薬剤も原因となる。薬剤誘発凝固因子 VIII 自己抗体は、しばしば過敏性反応後に発生し、多くの
場合薬剤の使用中止と共に低下する(10)。
我々の患者はプレドニゾロン(初回量 1.5mg/kg 体重)とシクロフォスファミド 1 回量(500mg/m2 体表面積)
での治療を受けた。この治療下において、阻害力価は徐々に低下していった。その間、患者は完全緩解し、プ
レドニゾロンは徐々に現在の 5mg/day へと減少していった。関連疾患の調査からは目立った結果は得られな
かった。
4
まとめとして、この症例は aPTT 延長のための精密検査が労力を要することを示した。臨床的意味に加え、
aPTT 延長の徹底した評価はその他の aPTT に基づいた凝固テスト(例:C 又は S タンパク活性、活性化 C タン
パク耐性、ループス阻害剤)の解釈において重要な影響を与えうるのである。
謝辞
We thank Karin Sauer, Mareike Hueller, and Gudrun Balling for critically reading the manuscript. We are also indebted to
Ulrich Walter for generous support and discussion.
脚注
† M. Ehrenschwender and J. Koessler contributed equally to the work, and both should be considered as first authors.
3Nonstandard abbreviations:
aPTT, activated partial thromboplastin time; PT, prothrombin time; TT, thrombin time; BU, Bethesda units.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the author
disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: None declared.
Consultant or Advisory Role: U. Steigerwald, Bayer Healthcare.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: U. Steigerwald, Bayer Healthcare, Roche Diagnostics, and Siemens Diagnostics.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Other Remuneration: U. Steigerwald, CSL Behring, Bayer Healthcare, Biotest AG, and Roche Diagnostics.
Received for publication May 10, 2011.
5
Accepted for publication August 8, 2011.
© 2012 The American Association for Clinical Chemistry
参考文献
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6
図 1. aPTT 延長の評価のための診断アプローチ
詳細は本文参照。HMWK:高分子量キニノーゲン、PK:プレカリクレイン
7
図 2. 血漿ミキシング検査
患者の血漿を正常な血漿に違う割合で加えた。aPTT はミキシング直後、または 37℃で 2 時間のインキュべー
ト後に測定された。1:1 の希釈での aPTT 修正不全は、阻害物質の存在を示すものである。この症例では、凝固
因子 VIII 阻害物質の存在が 37℃で 2 時間インキュべート後にのみ明らかになり、患者血漿中に進行性の阻害
物質の存在を示す結果が得られた。
論説
Alice D. Ma*
+ Author Affiliations
8
Division of Hematology-Oncology, University of North Carolina, Chapel Hill, NC.
* Address correspondence to the author at: University of North Carolina, Division of Hematology-Oncology, 101
Manning Dr., CB 7305 3rd Floor POB, Chapel Hill, NC 27599. Fax 919-490-1567; e-mail [email protected].
これは出血を呈し、単独で延長した活性化部分トロンボプラスチン時間 (aPTT)の患者の典型的な症例であ
る。
覚えておくべき教訓
1.
ダビガトランの責任にしないこと。患者は抗凝固剤治療を 5 日前にやめているが、患者の延長した
aPTT 値は誤ってダビガトランが原因とされた。もしダビガトランの存在が考慮される場合、適切な評価の遅
れを避ける為にも、直接トロンビン阻害剤に非常に影響を受けるトロンビン時間 (TT)を検査すべきである。
2.
血漿混合試験をすること。それにより延長が凝固因子欠乏(この場合、正常血漿は患者の血漿を補充
し、aPTT 値は正常化する)によるものなにか、阻害物質(患者の血漿は正常血漿を「抗凝固」し、aPTT 値は
延長する)によるものなのかを決定する。
3.
混合インキュべーション検査をすること。後天性凝固因子 VIII 阻害物質は凝固因子 VIII に対し時間と温
度に依存した結合を呈する。よって直後に行われた混合検査は、凝固時間が大幅に改善するかもしれないが、
37℃で 2 時間のインキュべート後、aPTT 値は延長する。このインキュべート後の延長は後天性血友病を強く
示唆する。
4.
凝固因子 VIII 活性と Bethesda 力価を調べること。延長した aPTT 単独を示し、出血のある患者は凝固因
子 VIII、IX、XI の活性を調べる必要があるが、凝固因子 VIII 阻害物質が最も一般的な後天性(非薬剤性)出血
疾患である。この患者では予想された凝固因子 VIII 活性の低下が見られ、阻害物質の強度を定量する Bethesda
測定が必要である。
5.
凝固因子 XII は無視してよい。低い凝固因子 XII 値は、凍結、解凍されたサンプルで見られ、凝固因子
XII 欠乏は出血疾患ではない。
この患者は凝固因子 VIII の後天性自己抗体を持っていた。これらは除去性抗体というよりも、機能遮断型抗体
である。よってバイパス物質による出血の治療と、免疫抑制剤による阻害物質除去が治療として必要となる。
脚注
9
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the author
disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: None declared.
Consultant or Advisory Role: A.D. Ma, Novo Nordisk, Bayer, and CSL Behring.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: A.D. Ma, Novo Nordisk.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Received for publication September 8, 2011.
Accepted for publication September 13, 2011.
© 2012 The American Association for Clinical Chemistry
論説
Chuanyi M. Lu1,*
+ Author Affiliations
1Department of Laboratory Medicine, University of California and Veterans Affairs Medical Center, San Francisco, CA.
* Address correspondence to the author at: Department of Laboratory Medicine (113A), VAMC, 4150 Clement St., San
Francisco, CA 94121. Fax 415-750-6948; e-mail [email protected].
後天性血友病 A(AHA)2 は稀であるが、凝固因子 VII 特異的阻害物質として知られる凝固因子 VIII に対する自
己抗体によって引き起こされる、命に関る出血性疾患である。およそ 50%の AHA 症例は原因不明であり、一
方でその他の症例は、しばしば自己免疫疾患、悪性腫瘍、妊娠、薬剤に関連している。患者が重度の出血リス
クにさらされる時間を最小限にするために、そして不必要で侵襲的な治療と的確な治療の開始の遅れを防ぐた
めにも、診断は速やかにされなければならない。
10
この Ehrenschwender らの臨床症例において、著者は高齢の患者での原因不明な出血を伴う、活性化部分トロ
ンボプラスチン時間 (aPTT)の単独延長の段階を追った検査の調査方法を説明した。この症例は AHA の患者
を特定し、治療する上での単独 aPTT 延長の自動的な検査の重要性に重きを置いている。AHA の患者の最大で
6%が出血を呈さないと報告されていることから、速やかに、そして徹底した検査が不可欠である。
この臨床症例中で一つ考察されなかった点は、血栓症の有無に関らず、ループス抗凝固因子 (LAC) を持つ
患者で AHA を発症することがあるということである。このような患者はしばしば抗凝固治療を受けている。
LAC も aPTT 延長を引き起こすことから、特に患者が出血を起こしている場合、aPTT 延長が単純に LAC 又は治
療に起因するものだとし、更なる検査を中止しないことが重要である。また、LAC は試験管上での凝固を用い
る分析を阻害することから、凝固因子 VIII 活性と凝固因子 VIII 阻害物質の強さを測定するためには、このケー
スでは複雑な染色体分析を用いるべきである。そしてこれは患者管理において重要なガイダンスとなる。
また、凝固因子分析は因子活性の程度を定量するようにデザインされているが、その分析自体は LAC やそれぞ
れの阻害因子物質(「非並行性」は阻害物質の存在を示す)を含む阻害物質を検出することもできる。よって
この症例で示されたように、凝固因子分析は単独 aPTT 延長の検査上の調査において不可欠である。
(訳者:加藤
久美子)
脚注
2Nonstandard abbreviations:
AHA, acquired hemophilia A; LAC, lupus anticoagulant.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Received for publication March 7, 2012.
Accepted for publication March 9, 2012.
© 2012 The American Association for Clinical Chemistry
11