座長挨拶 松本 主之 先生 岩手医科大学内科学講座 消化器内科消化管分野 東京国際フォーラム 外観(東京駅方面) 東京タワー 東京スカイツリー 東京駅 The 100th General Meeting of the Japanese Society of Gastroenterology 第100回日本消化器病学会総会 ランチョンセミナー 33 IBDにおける GMAの役割を再考する −当科における使用経験− 日時 2014年4月26日(土) 12:10∼13:00 会場 PROGRAM 講演 1 東京国際フォーラム ホールB5-2(第6会場) 講演 2 演者: 演者: 横浜市立大学附属 市民総合医療センター 炎症性腸疾患センター 福岡大学筑紫病院消化器内科 国崎 玲子 先生 抗サイトカイン療法時代における 顆粒球吸着療法(GMA) の 位置付けを問う 抗 TNF-α抗体の炎症性腸疾 患( I B D)治療 への臨床応 用 は、従 来 の 治 療 に 革 命を も たらしたと言っても過言では ない。再燃・寛解を繰り返す ために、長い間、難治性慢性 疾患とされてきた I B D で、抗 TNF-α抗体を用いた 抗 サイ トカイン療法により、速やか な寛 解 導入、長 期 寛 解 維 持 が 可能になっただけでなく、 潰瘍性大腸炎(UC)において は、粘膜治癒も含めた完全寛 解 を も目 指 せる 時 代 に なっ た。そ れ に 伴 い、保 存 的 治 療を選択する症例が増加して い る現 在、顆 粒 球 吸 着 療 法 (GMA)の 役 割も変化しつつ ある。今回は、未だその作用 機序が全て明らかになってい な いが、多 彩 な 効 果 を 示 す G M Aの今後の役割と可能性 についてお二人の専門家にお 話しいただく。先生方のI B D 診 療 の 一 助とな れ ば 幸 いで ある。 平井 郁仁 先生 クローン病における GMAの有効性と可能性 −当科における使用経験から− 共催: 第100回日本消化器病学会総会 講 演 1 抗サイトカイン療法時代における 顆粒球吸着療法 (GMA) の 国崎 玲子 先生 位置付けを問う 横浜市立大学附属 市民総合医療センター 炎症性腸疾患センター 炎症性腸疾患(IBD)治療は、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤、ステロイド、チオプリン製剤、カルシ ニューリン阻害薬、抗 TNF-α抗体製剤、そして血球成分除去療法 (CAP) を組み合わせた治療ストラテジー により、今や臨床的寛解のみならず、いかに迅速に、粘膜治癒も含めた完全寛解(deep remission)を 目指すかという時代になった。そのような中、我が国で開発されたCAPは、白血球を物理的に吸着除去 するということだけでは説明しきれない効果を示し、また、高い安全性を有しており、IBD 治療の重要な 治療選択肢のひとつと考える。 イドナイーブ例においては、GMAによりステロイド回避が 未知の可能性を持つGMA 血球成分除去療法(CAP)の一つである顆粒球吸着療法 (GMA)は、酢酸セルロース製ビーズが充填されたカラムに 血液を通過させることで、活性化された顆粒球や単球をビー 可能となる例もある。 図1 GMA症例 ステロイドナイーブ・高齢・メサラジン不耐 80歳発症 UC (左側結腸炎型、中等症) メサラジンアレルギー あり内服不可 注腸療法は上手く行えず → GMAにて速やかに寛解導入 ズに吸着させ除去する方法である。量的に活性化白血球を 除去することによるものだけでなく、吸着されずにカラムを 通過した白血球に質的な変化をもたらすことにより、炎症反 GMA 応の抑制、抗炎症作用の誘導、活性化白血球のアポトーシ ス誘導による再生機構の活性化などの作用を示すことが分 かってきているが、その作用機序は、まだ全ては解明され ておらず、未知の可能性を秘めた治療法といえる。 ステロイド減量・回避も可能に 06/3 されていない。また、ブラッドアクセスが確保できれば治療 可能であり、1 回の治療時間は約60分で血液流速 30mL / 分と少いことから、クリニックでも安全に施行可能である。 また、GMAによりステロイドの減量・回避が可能となる 5 8 12 08/4 5-ASA (2000mg/日) ステロネマ注腸 排便回数 13 10 Hb(g/dL) 13.2 12.3 11.6 12.1 13.2 Alb (g/dL) 3.5 3.5 3.4 3.7 3.7 4.5 0.2 0.0 0.2 0.0 CRP(mg/dL) 14.2 顕血便 + ++ + - - - 多関節痛 + +++ ++ + - - 出典:横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター GMAの最大の利点は安全性であり、免疫を抑制する治療 法ではないため、これまでに重篤な有害事象の発現は報告 臨床経過 症例 1 図2 症例 1 GMA前後の内視鏡所見 GMA前 ステロネマ 注腸療法中 ことも大きなメリットである。症例1は、 ステロイドナイーブ、 メサラジン不耐の80 歳発症、潰瘍性大腸炎 (UC) 症例。ステ ロネマ注腸を処方するも、高齢でうまく使用できず、中等度 GMA後 以上の活動性が持続していたが(図1) 、GMA施行により速 やかに寛解導入に成功し、その後10 年以上、無治療で寛解 が維持されている(図2) 。GMAはステロイド依存 UCにお けるステロイド減量効果が多く報告されており、またステロ 2 10 年 以 上 無 治 療 で 寛 解 維 持 出典:横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター 上乗せ効果や ブリッジ療法としての役割も 図3 大腸粘膜 CMV 陽性患者 31 例の臨床経過 CMV-DNA陽性 GMAは1回の治療のみで効果を求めるのではなく、複数 回治療を重ねることにより、効果が高まる治療法である。そ 抗ウィルス剤 より早くGMAの効果が期待できる。しかし、広範囲粘膜脱 症合併例に対しての治療報告はあるが、添付文書上は感染 GMA IMT 寛解 症には禁忌とされている。しかし、感染症合併例でGMAが N=33 寛解 N=9 N=7 IMT N=6 結腸切除 N=5 寛解 N=5 結腸切除 N=2 寛解 N=31 寛解 N=4 結腸切除 N=3 施行可能となれば、さらに応用の幅が広がるため、感染症 強力免疫抑制療法 N=4 N=11 落型などの高度重症例では、集中治療でも有効性は低いと N=33 結腸切除 N=27 して、治療早期より、週 2回の集中治療を行うことにより、 される。また、感染症合併例に対しては、現在一部の感染 CMV-DNA陰性 N=31 N=2 合併例への適応について、今後検討が必要である。 Yoshino T, Nakase H, et al. Digestion. 2011;84:3-9 また、他の治療選択肢同様、治験等で安全性が確立され ているわけではないが、GMAの特性上、小児や高齢者、担 症例2は、2011年に中等症のUCを発症後、前医にてプレ 癌症例、易感染例、妊婦、腸管外合併症症例などが GMA ドニゾロン(PSL)5~40mg/日を2 年以上投与されており、 の適応となり得る可能性がある。また抗サイトカイン療法を 減量したところで再燃し当科に紹介となった。CMV抗原血 行っている症例への上乗せ効果や、チオプリン製剤の効果 症(アンチゲネミア)は陰性であった。内視鏡所見でCMV感 発現までのブリッジ療法としても有効性が期待でき、今後 染が疑われ、ガンシクロビルを投与したところ、速やかに解 の検討が必要である。 熱し、CRPも低下したが、低栄養、下痢、関節痛が遷延した。 GMAを施行したところ、当初PSLの離脱症状と考えていた 活動期UCの約3割に CMV再活性化の可能性 強い関節痛の症状もGMA後に消失し、PSLを全量中止可 能となった。その後、関節痛もなく再燃せずに経過している (図4) 。 サイトメガロウイルス(CMV)はステロイド投与により再 活性化されると言われているが、ステロイド投与をしていな 図4 症例 2 くとも、CMVが再活性化していると思われるUCを少なか 臨床経過 らず経験する。CMVは炎症を餌にして増殖し、さらに再活 入院 退院 性化したCMVはマクロファージを炎症表現型に変化させる 14/3 4 ことが報告されている。福知らは1)、活動期 UCの 3 割が CMV陽性で、それらの症例にも問題なくGMAにより加療 可能だったことを報告している。すなわち、活動期UCでは、 我々が思っている以上にCMVが再活性化している可能性が 4000 5-ASA (mg) 1.25 PSL(mg) ガンシクロビル ある。さらに、以前は成人のほとんどが CMVに既感染であ るとされてきたが、現代の20 代の日本人では、CMV未感染 が半数以上を占めるとする指摘もあり、ステロイド投与中に 初感染を起こすと重篤化する可能性を指摘する意見もある。 CMV陽性のUCに対する GMAの高い寛解導入率 吉野らは、単球やマクロファージがリザーバーとなって、 GMA 排便回数 5 6 4 4 10.5 Hb(g/dL) 8.4 7.9 7.2 Alb(g/dL) 2.9 2.4 2.4 CRP (mg/dL) 5.66 5.89 2.28 関節痛 +++ +++ +++ +++ 体温 39.5 38.8 37.0 36.8 1 11.2 11.1 11.2 2.8 3.3 3.8 0.69 0.1 0.1 ++ + - 36.5 36.7 36.7 出典:横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター CMVを局所に運んでいるという仮説から、GMAが CMV陽 性 UCに有効なのではないかとして、抗ウイルス療法後の治 療としてGMAと免疫抑制療法(I MT)を比較した結果を報 症例3は、30歳代男性でB型肝炎既感染のUC症例である。 5-ASAとPSLの大量静注療法でも、1カ月以上発熱が続き 告している(図3) 。それによると、寛解導入率はGMA群で 当科に転院。経過から5-ASAアレルギーを疑い中止したと 54.5%に対し、IMT 群で 44.4%で、さらに、GMA群におい ころ解熱。さらに前医の内視鏡時の生検で、円形潰瘍から て CMV再活性化が認められたのは 0%であったのに対し、 CMV封入体が確認され、CMV感染の併発が強く疑われた IMT 群では 55.6%であったことから、CMV陽性UC 症例に ため、ガンシクロビルを併用し、PSLを減量。2 週後の内視 対して、抗ウイルス療法後のGMAは有用としている。 鏡所見で潰瘍部の上皮化を確認し、退院となった。 3 しかし、退院後に長期入院を理由に職場を解雇され、さ 活動も重なったことで UC が再燃。ロイケリンとPSL 30mg 保存的治療を継続する症例の増加に伴い GMAの施行数は増加 /日を併用するも無効で、内視鏡で活動性の炎症を確認し UCに対する免疫抑制療法の進歩により、本邦における た。再就職を1ヵ月後にひかえ、何とかそれまでに寛解導入 UCの手術回避率はここ数年で飛躍的に向上した。それは同 して欲しいとのことであった。再就職先の研修などの関係 時に保存的治療を継続する症例が圧倒的に増加したという で、平日に大学病院に通うことは難しく、行える治療には限 ことである。しかし、UC の 3 割に CMV感染が合併する可 界があり、CMV感染のリスクを十分説明した上で、PSLを 能性があり、免疫抑制療法で逆に悪化や難治化する症例も 50mg/日に増量したが無効であった。CMV 感染の既往が あるということを念頭におき、再燃のたびに最適な寛解導 あり、B型肝炎既感染であることから、これ以上の免疫調節 入治療を選択する必要がある。ステロイド抵抗性のUCに、 らに子供の嘔吐下痢症に感染、同時期に PSL中止と就職 薬は使用困難と判断。治療方針を切り替え、GMAを施行し GMAは第一選択として利用し得る安全で重要な治療選択肢 た(図5) 。GMA3回終了後より、急激に排便回数が減少し、 であると考える。抗サイトカイン療法が複数登場する中で、 その他の臨床検査値も速やかに改善した。 我々の施設ではCAP施行数は増加しているが、大学病院だ 図5 症例 3 14/1 3 20 PSL (mg) 25 イムラン (mg) けでは対応しきれないため、透析病院やクリニックとの病病 再燃前後の臨床経過 CS 30 連携、病診連携の体制整備を進めている。 再就職 4 1)Fukuchi T, et al. J Crohns Colitis. 2013; 7: 803-11 50 50 0.2 0.1 ロイケリン (100mg/g) GMA 排便回数 3 Hb(g/dL) 11.7 2 2 13.4 2 10 14.2 14.1 15 10 14.3 5 2 15.4 Alb(g/dL) 3.4 4.0 4.1 4.2 3.8 3.8 CRP(mg/dL) 0.27 0.95 0.54 1.07 0.18 0.03 腹痛 - + + ++ + - 顕血便 - - - + + - 出典:横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター 4 講 演 2 クローン病における GMAの有効性と可能性 平井 郁仁 先生 —当科における使用経験から— 福岡大学筑紫病院 消化器内科 クローン病 (CD) の治療は、以前は栄養療法が中心であったが、現在では抗TNF-α抗体が中心的な存在 となっている。その中で、CD治療指針での顆粒球吸着療法(GMA)は、中等症から重症のCDの寛解導入 療法として位置付けられており、栄養療法および既存の薬物療法が無効または適用できない、大腸病変に 起因する明らかな臨床症状が残る症例が適応とされている。言わば GMAはUCでは治療の主役ともなり 得るが、CDでは名脇役といった治療法である。今回は当科における臨床経験から、CDに対するGMA併 用の有効性についてご紹介する。 中等症以上のクローン病に 高い臨床効果 クローン病 (CD) に対する顆粒球吸着療法 (GMA) の効果に ついては、2003年に当科の松井1)らが、症例数は7 例と少な いものの、臨床効果が 70%と、高い有効性を報告したのが 最初であり、その後、福田2)らによる21 症例での多施設共 同試験にて、52%という臨床効果が得られ承認に至ってい る。その他、海外でもレトロスペクティブな報告が複数あり、 図1 当科におけるCD に対するGMAの適応 現時点での当科での考え方 (原則として大腸に主病変を有する)CD患者で、 1. 抗 TNF-α抗体の効果減弱例 2. I F Xもしくはステロイドなど他治療への不耐例 3. 他治療での効果不十分例 4. 合併症併存例、免疫能低下例、高齢者 60 ~ 85%と高い有効性が示されている。しかし、米国では 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 2013 年 に Sands 3)らが、shamカラムを用いた比較試験で、 GMA群とsham 群で有効率に差がなかったという結果を報 第に十分な効果が得られなくなる2 次無効例は少なからず 告したことから、米国でのGMAの承認は苦戦を強いられて 存在する。当科でのIFX投与を行った324例のデータでは、 いる。ただし、この報告のサブ解析で、活動性が高い症例 維持投与を行った230例中33.5%が 2 次無効例となることが では、GMAが有効であったことが示されており、中等症以 示された(図2) 。これらの2次無効例に対してどのように治 上のCDをGMA併用の対象としている本邦の現状は理にか なったものと言える。 図2 インフリキシマブ 2 次無効の頻度 I FX 使用324例 30%以上の症例が 抗TNF-α抗体の2次無効例 77 例 経過観察不能・死亡 12 例 エピソディック投与のみ 5 例 自己中断 我々の施設では、大腸に主病変を有するCDの症例で、抗 TNF-α抗体の効果減弱例や、インフリキシマブ (IFX) やステ 維 持 投 与 移 行 例 2 3 0 例( 7 1 . 0 % ) ロイドなど他治療への不耐例、完全静脈栄養療法(TPN)を 含めたその他の治療での効果不十分例をGMA併用の適応症 例として考えている。また、合併症併存、免疫能低下、高 IFX 継続可能 134例(41.4%) 齢などのリスクがある症例で、大腸に病変があれば、GMA 80% は臨床的寛解維持 の施行を検討している (図1) 。 実際、抗 TNF-α抗体では、治療を続けていくうちに次 2次無効 77 例 23.8% / 全体 33.5% / 維持 不耐 19 例 5.9% / 全体 8.3% / 維持 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 5 療していくかについては非常に難しく悩むところであるが、 ら、GMA後には173±91.5まで有意に低下した(p=0.0012、 GMAはこのような症例に対しても有用と考える。 Wilcoxon 検 定 ) 。 各 症 例 の CDAI の 推 移 を 見 て みると、 GMA導入前の治療では治療効果が低く、GMA併用により 疾患活動性が低下するのが分かる。全体としてはGMA後の CDに対するGMA併用による 寛解率は50% 寛解率は 50%、有効率は 65%と、GMAの併用は有用であ ることが分かる。 (図3) 当科におけるCDに対するGMA併用の臨床成績を紹介す る。対象は2009 年1月から2014 年1月までで、GMAを施行 したCD 症例 20例。平均年齢は36歳、罹病期間は11.3 年と かなり長く、大腸型は少なく小腸大腸型が 16 例であった。 CD活動性指標(CDAI)が平均259±78.6と、活動性が高い 図3 短期治療効果 -GMAの寛解率、有効率- 寛解:CDAI<150 有効:ΔCDAI>25% 低下 CDAI 450 症例群であった。GMA導入前の治療薬を表1に示す。 中等症 表1 GMA導入前治療薬 全症例とも,GMA導入時併用薬使用(GMA単独例なし) n=20 治療薬 症 例 数( 重 複 あ り ) 5-ASA 17(85%) 抗 TNF-α抗体 13(65%) 完全静脈栄養療法 11(55%) アザチオプリン 8(40%) 栄養療法(≧ 900kcal) 6(30%) ステロイド 4(20%) 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 有効率 13/20 (65%) 220 軽症 150 寛解 治療前 GMA前 寛解率 10/20 (50%) GMA後 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 週2回の集中治療では 有効性が高くなる可能性も 有効例と無効例で各種因子に差があるかを比較すると、 性別、罹病期間、病型、腸管切除歴、小腸病変の有無、 GMA 前のCDAI、白血球数、好中球数、ヘモグロビン、血 上記薬剤が単独、もしくは併用にて治療が行われていた。 これらの対象において、GMAの導入(併用)理由、短期治療 小板、アルブミン、CRP のいずれの因子でも、有効例と無 効例で差は認められなかった。GMA導入前の治療法で有 成績、有効群と無効群の各種因子の比較、週1回法と週 2回 効例と無効例の差を見てみると、GMA導入前の治療が抗 法(保険適用外)の有効性の比較、そして安全性について検 TNF-α抗体であった群で、有効性が低いことが示されたが 討を行った。 (p=0.04 検定方法:Fisherʼs exact test) 、これはTNF-α抗 GMA導入理由は、抗 TNF-α抗体の効果減弱が最も多く、 体が選択された症例は、より重症な症例が多いということ その他ステロイド抵抗性、TPN効果不十分、5-アミノサリ から、重症度に関してバイアスがかかっている可能性が考 チル酸製剤(5-ASA)効果不十分であった(表2) 。全例での えられた。週1回法と週 2回法の比較では、有意差はないも GMA治療前後の CDAIの変化は、GMA前の 259±78.6 か のの週2回で有効率が高い傾向があることが分かった (表3) 。 表2 表3 GMA導入(併用)理由 導入理由 症 例 数( n = 2 0 ) 抗 TNF-α抗体効果減弱 13(65%) 週 1 回法と週 2 回法による有効率 有 効 例 ステロイド抵抗性 3(15%) 完全静脈栄養療法効果不十分 2(10%) 5-ASA 効果不十分 2(10%) 週1回法 n=12 週2回法 n=8 6 7 n=20 P値 0.158 有 効 率 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 6 50.0% 検定方法:Fisherʼs exact test 87.5% 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 また、副作用としては頭痛、倦怠感、鼻閉感など、軽度の ド40mg/日投与を開始すると、CRPはすぐに低下したもの ものが発現したものの、重篤なものは認められなかった。 の、CDAI があまり下がらなかったため、早期に TPNを離 脱して食事を開始させること、入院期間を短縮することなど 大腸病変の潰瘍スコアも有意に改善 を目指して、GMAを施行した。 ステロイド40mg/日投与中の内視鏡所見では、かなり幅 の広い潰瘍があり、脆弱性が認められるが、その後GMAを GMA前後で下部消化管の内視鏡検査を行い、大腸病変 併用し、4回終了した後の内視鏡所見では、まだ再生上皮が の変化が観察可能であった15 例で、Fukuoka Indexの潰瘍 残ってはいるものの、潰瘍はほとんど治癒しているのが分か スコア(瘢痕1点、浅い潰瘍 2点、少し幅の広い潰瘍や浅い る (図5) 。 潰瘍が点在する場合 3 点、少し幅の広い重症潰瘍や深い潰 瘍 4点) を用いて潰瘍の変化を評価したところ、GMA前の潰 図5 65歳、男性、大腸型 CD 症例の内視鏡所見 瘍スコアは 3.8±0.4であったのに対し、GMA後では2.8±0.9 と、有意に低下していた (p=0.016、Wilcoxon 検定) 。 症例を1例呈示する。65 歳男性で、大腸型のCD症例であ る。2013年 3月から難治性の口内炎を認め、6月に黒色便を 認めた。前医にてCD が疑われ、下部内視鏡検査で多発性 潰瘍が認められた。カプセル内視鏡検査では、小腸にびら んが認められた。病理組織に特異的所見はなく、細菌培養 でも特に検出されなかった。大腸型のCDと診断され、TPN が行われた状態で、精査加療目的で当院へ紹介入院となっ た。すでに TPN が行われていたため、入院時には1日5 行 程度の下痢を認めるのみであった。一般検査所見では軽度 の貧血と低アルブミン血症、軽い炎症所見を認めた。 全体の治療経過を図4に示す。当科に転院後、ステロイ 図4 65 歳、男性、大腸型 CD 症例の臨床経過 5-ASA 3000mg ステロイド (mg) 40 35 30 25 20 15 10 アザチオプリン 25mg 完全静脈栄養療法 CDAI Hb CRP 15 5 300 ステロイド40mg投与中(GMA前) 治療前潰瘍スコア:4点 GMA併用4回終了後 治療後潰瘍スコア:1点 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 治療に難渋するCDで GMAは有用な治療選択肢 このような臨床的な経験からも、TPNやステロイドなどの 他の治療で、大腸粘膜病変の改善が乏しい場合は、GMAを 追加することで、非常に良い結果が得られると考えている。 10 200 また、内視鏡所見をGMA前後で比較した範囲ではあるが、 GMAには粘膜治癒を促進させる効果があるのではないかと 5 100 CS❷ CS❶ 6/20 入院 6/30 7/10 7/20 7/30 退院 出典:福岡大学筑紫病院消化器内科 考えられる。もちろん他の免疫調節薬なども投与している ので、単にGMAだけの効果とは限らず、さまざまな要素に よる相乗効果の結果であると思われるが、いずれにしても 寛解率 50%というのは決して軽視できない数字であること からも、CDに対する併用療法としてのGMAは、実臨床に おいて有用な治療選択肢になり得ると考えられる。 1)Matsui T, et al. Am J Gastroenterol. 2003; 98(2): 511-512 2)Fukuda Y, et al. J Gastroenterol. 2004; 39: 1158-1164 3)Sands BE, et al. Gut. 2013; 62(9): 1288-1294 7 東京国際フォーラム 地上広場 〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-41-12 富ヶ谷小川ビル TEL 0120-677-170(フリーダイヤル) FAX 03-3469-9352 URL http://www.jimro.co.jp AD201409KSCS 2014年9月作成
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