GMAをもっと上手く使うための工夫

第60回 日本透析医学会学術集会・総会
ランチョンセミナー44
GMAをもっと上手く使うための工夫
∼腎臓内科と消化器内科の立場から∼
Date 2015.6.28.
12:15-13:15
Venue パシフィコ横浜 会議センター3F 311+312(第7会場)
司会挨拶
近年、炎症性腸疾患(IBD)の患者数は右肩上がりで増加の一途をたどっている。
平成 25年度の特定疾患医療受給者証交付件数は、潰瘍性大腸炎
(UC)
では15万5千
人を超え、クローン病
(CD)
の3万8千人超と合わせると20万人に届きそうな勢いで
ある。その患者数は、もはや専門医のみで対応できる数をはるかに上回っており、
IBD を専門としない消化器内科医のみならず、一般内科医も IBD 患者を診療せざる
を得ない時代となっている。そして、顆粒球吸着療法(GMA)を施行するにあたって
は、血液浄化療法に習熟している腎臓内科医や臨床工学技士の協力も欠かせない。
このような 状況をふまえ、今回は腎臓内科、消化器内科のお二人の先生に、それぞ
れのお立場から IBD に対する GMA 治療の考え方や施行の際のコツについて解説
いただく。明日からの日常診療の一助となれば幸いである。
津田 裕士 先生 順天堂大学医学部附属 順天堂東京江東高齢者医療センター
透析技術を活かした IBD の治療
演者:嶋津
啓二 先生 大阪府済生会中津病院 腎臓内科
炎症性腸疾患におけるGMAの有効性とその位置付け
演者:那須野
正尚 先生 札幌厚生病院 IBDセンター
共催:第60回 日本透析医学会学術集会・総会
講 演
1
透析技術を活かしたIBDの治療
血液浄化療法(アフェレシス療法)は難治性疾患の「最後の砦」といったイメージを持つ人も
多いが、炎症性腸疾患(I B D)における顆粒球吸着療法(G M A)は「最後の砦」ではなく、
適切な時期に薬物療法とうまく組み合わせることで、効果を発揮する有用な治療選択肢で
ある。近年、IBD患者数は増加の一途をたどっている。GMAは安全な治療法であるが、体
外循環療法の一つであることから、腎臓・透析領域の積極的な協力が求められる。腎臓内
科的視点から、透析施設でのGMA治療のコツについて解説する。
演 者 嶋津
啓二 先生 大阪府済生会中津病院 腎臓内科
IBD 治療における問題点
GMA 施行時の抗凝固剤による
アレルギー反応
潰瘍性大腸炎(UC)治療では、軽症、中等症で5-アミノサ
当院では抗凝固剤としてヘパリンとナファモスタットメシル酸塩
リチル酸製剤(5-ASA 製剤)で寛解導入に至らない症例や、
(NM)を用いている。ヘパリンは安価で取り扱いが簡便だが
重症例にはステロイドが用いられる。ステロイドは非常に有効
出血傾向の問題があり、NMは半減期は短いが高価であり、
性の高い薬剤であるが、依存性・抵抗性による難治化や、日
アレルギー反応の出現が問題とされている。
和見感染の懸念など、様々な副作用の問題が付きまとう。
当院で平成12∼23年度にGMAを施行したUC 症例250例(ヘ
一方、クローン病(CD)治療では、生物学的製剤が登場した
パリン使用136例、NM 使用114例)において、GMA治療中の
ことにより難治性の CD 症例の予後が格段に向上したのは事実
出血と抗凝固剤によるアレルギー症状の出現について検討を行
だが、寛解導入後の効果減弱など二次無効例が顕在化してい
った。その結果、緊急止血処置を必要とする出血は両群とも認
る。また、寛解維持のために10年、20年という長期にわた
められず、出血に関してはヘパリン使用でもほとんど問題はない
り生物学的製剤を使い続けることによる負の影響の可能性を考
と考えられたが、アレルギー症状については、ヘパリン群で
えると、現在、生物学的製剤が頻用されていることには懸念が
。
136例中1例、NM 群で114例中25例に症状が出現した(図1)
NMでは発疹や顔面紅潮、呼吸困難のほか、3例にショック
残る。
これらの問題点を加味すると、副作用が少なく依存性や抵
抗性を示すこともない治療法であるGMAは非常に有効な治療
症状がみられ、細心の注意が必要であると考えられた。なお、
いずれのアレルギー症状もヘパリンへの切り替えで消失した。
選択肢と言える。
図1
透析用コンソールでのGMAの施行
IBD 専門医にとってGMAは、場所の確保や回路の組み立て、
刺の手間などが施行のハードルとなることも考えられるが、
その点、透析施設では問題なく施行可能である。我々の施設
UC症例に対するGMA治療中の出血と
抗凝固剤によるアレルギー症状の発現状況
★平成12∼23年度に当院でGMAを施行した全UC症例NM群
(n=114)
とヘパリン群
(n=136)
①治療中に緊急止血処置を必要とした件数 NM群 0件 ヘパリン群 0件
② GMA 施行中の抗凝固剤によるアレルギー症状の出現頻度
NM群
ヘパリン群
n =114
n=136
=136
22%
では、GMA 専用の機 器であるアダモニターではなく、透 析
1
0.7%
25
用のコンソールを使用してGMAを施行している。血液流量は
通常30mL/分で、血液回路が117mL、アダカラムの血液充
填量が130mLであるため、治療中の血液体 外 流出量は約
250mLである。 刺針は19または20ゲージを用い、肘静脈に
直接
刺を行うV-V 方式でバスキュラーアクセスを確保するが、
透析用のコンソールで行う場合には、後述するシングルニード
ル法でも施行可能である。
2
135
89
■ 出現あり
■ 出現なし
発疹
7例 顔面紅潮 6例 呼吸苦 5例 ショック 3例
その他 4例
頭痛 1例
大阪府済生会中津病院
NMの添付文書によると、透析使用時のアレルギー症状の
同じ1時間とし、シングルニードル法で処理量が減るからといって、
出現頻度は0.16%であるのに対し、当院のUC での出現頻度
患者に負担をかけないよう、時間の延長は行わないこととした。
は22%であり、UC患者では NMによるアレルギー症状が出
図4にシングルニードル法の回路図を示す。脱血時にポンプが
現しやすい可能性がある。抗凝固剤の違いによるGMAの治
作動し、静脈圧ラインで設定されている圧に達するとポンプが
、明らかな動
療効果には有意差がみられないことから(図2)
。
停止し、クランプが開放されて、返血が行われる(図5)
脈性の出血性病変がない限りは、ヘパリンを第1選択とすべ
図4 シングルニードル法の回路図
きと考える。
脱血時
図2 抗凝固剤の違いによるGMA治療効果の差
静脈圧ライン
ヘパリンとNM
治療効果に違いはあるのか?
寛解:CAI Score ≦ 4
液面調節
ライン
アダカラム
ヘパリン
*
p=0.447
(%)
100
80
患者
寛解導入率
60
*
p=0.648
血液ポンプ
三方活栓
気泡検知器 クランプ
40
20
閉じる
0
2週
4週
6週
8週
10 週
返血時
■NM(n=27) ■ヘパリン(n=11)
*検定方法:Chi-squared test
静脈圧ライン
大阪府済生会中津病院
れることを嫌がる患者が少なくないことから、透析で行われる
患者
前述のように、GMAのバスキュラーアクセスは、通常、両腕
の肘静脈で脱血・返血するV-V 方式で行うが、両腕を固定さ
アダカラム
シングルニードル法によるGMA治療
液面調節
ライン
ヘパリン
ポンプ
停止
血液ポンプ
三方活栓
気泡検知器 クランプ
シングルニードル法で GMA が施行可能であるか検討を行った。
シングルニードル法では、脱血時の血液流量40mL/分、静脈
圧の下限を30mmHg、上限を180mmHgとし、平均25∼30mL
。治療時間はV-V方式の時と
/分の血液流量を確保する(図3)
図3 シングルニードル法によるGMA治療条件
開放
大阪府済生会中津病院
図5 シングルニードル法によるGMAの施行風景
血液流量
■ 40ml/分(脱血時)
■ 平均25∼30mL/分
三方活栓
圧設定
■ 下限圧:30mmHg
■ 上限圧:180mmHg
治療時間
■ 1時間(カラムを血液が
満たしてからの時間)
大阪府済生会中津病院
大阪府済生会中津病院
3
シングルニードル法による患者満足度と
臨床効果
図8
GMA集中治療後の内視鏡スコアと粘膜治癒率
(通常法 vs シングルニードル法)
(%)
100
2
シングルニードル法で GMAを施行した患者20例に満足度を
*2
p=0.69
調査したところ、シングルニードル法の方が良いと答えたのは
15例で、その理由としては、やはり針を刺される回数は少ない
しては、効率が悪い気がする、治りが悪い気がするという意見
であった。どちらでも構わないと答えたのは3例であった。
p=1.00
*1
1
粘膜治癒率
った。一方で、通常法が良いと答えた人は2例で、その理由と
内視鏡スコア
方が良い、片腕を自由にできるのはありがたいという意見であ
80
60
40
そこで通常法とシングルニードル法の臨床効果について検討
を行った。同時期に週2回の GMA集中治療を施行したUC 症
20
例30例のうち、シングルニードル法15例と、通常法15例で臨床
効果を比較した。図6に両群の患者背景を示す。その結果、
、内視鏡スコア・粘膜治癒率(図8)のい
寛解導入率(図7)
ずれにおいても両群間に差はなく、シングルニードル法を用いた
図6 GMA 集中治療開始時の患者背景
n=15
通常法
n=15
0
n=15
シングル 通常法
ニードル法
粘膜治癒 = 内視鏡スコア 0 又は 1
大阪府済生会中津病院
透析施設の協力により
増え続けるIBD患者に対応
臨床効果の検討:同時期にGMA集中治療を施行した
潰瘍性大腸炎症例のシングルニードル法15例と
通常法15例の比較検討
IBDは若年者に多い疾患であることから、患者の社会生活
を中断することなく治療を行うことは非常に重要である。その
対象
ために当院では、可能な限り外来で5-ASA 製剤とGMA治療
通常法
(n=15)
n=15
シングル
ニードル法
*1検定方法:t-test *2検定方法:Fisher s exact test
GMAと通常法の治療効果に違いは見られなかった。
シングルニードル法
0
P-value
(n=15)
による寛 解 導入を目指している。しかしながら、当院では
GMA ルームは4床のみであり、また、夜間透析を受け付けてお
年齢(歳)
41.6±19.0
46.9±17.1
0.442 *1
性別(男/女)
8/7
7/8
0.715 *2
らず、夕方5時には外来が終了してしまうことから、学生や会社
罹患期間(月)
102.7±143.7
36.3±58.4
0.132 *1
員の患者全てに対応することは不可能なのが実状である。
CAI スコア
8.2±1.51
8.8±1.68
0.329 *1
内視鏡スコア
2.2±0.4
2.2±0.4
1.000 *1
*1 検定方法:t-test *2 検定方法:Chi-squared test
大阪府済生会中津病院
そこで現在、大阪市内の透析施設と連携し、夜間透析の時
間帯にGMAの施行に協力いただくことで、社会生活を続けな
がら治療を行えるようにしている。こうした連携により、平成27
年6月現在、156例のIBD 症例がステロイドを使わず、週2回以
上の GMA治療、5-ASA 製剤などの経口薬のみで寛解に至っ
図7 GMA集中治療による寛解導入率
(通常法 vs シングルニードル法)
ている。近年のIBD患者数の増加傾向からも、透析施設の協
力は今後さらに欠かせないものになると考えられる。
(%)
100
p=0.670
*
80
*
p=0.129
寛解導入率
60
*
p=0.194
40
20
0
2
4
6
(週)
■通常法(n=15) ■シングルニードル法(n=15)
*検定方法:Fisher s exact test
4
大阪府済生会中津病院
講 演
2
炎症性腸疾患における
GMAの有効性とその位置付け
炎症性腸疾患(IBD)は寛解と再燃を繰り返す疾患である。そのため、速やかな寛解導入と
その後の寛解維持が治療目標となる。安全性、確実性、即効性が求められる寛解導入治療で、
顆粒球吸着療法(GMA)は、その副作用発現率の低さから重要な治療選択肢として位置付け
られている。消化器内科的視点から、潰瘍性大腸炎(UC)
・クローン病(CD)治療における
GMAの有効性とその位置付け、及びさらなる可能性について解説する。
演 者 那須野
正尚 先生 札幌厚生病院 IBDセンター
ステロイド治療に対する懸念
潰瘍性大腸炎に対するGMA集中治療の効果
UCは、5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA 製剤)で治療を開
GMAのUCに対する使用成績調査では、GMA治療1クール
始し、十分な効果が得られない場合にはステロイドを追加し、
終了後の寛解導入率は51.1%、2クール終了後は77.8%と報告
それでもなお効果不十分、またはステロイド減量中に再燃する
されている。このデータからも分かるように、GMAは効果発現
ような場合は、GMAを始めとした血球成分除去療法(CAP)や、
までに時間を要し、週1回法では治療開始1カ月後に効果が
チオプリン製剤、抗 TNFα抗体製剤、カルシニューリン阻害
現れ始めるというのが臨床での印象であった。その後、GMA
薬を用いた免疫調節系の治療を行い、最終的には手術を検討
の施行間隔を短くし施行頻度を上げることで、より早期に寛解
するというのが基本的な治療アルゴリズムである。
導入が可能となり、寛解導入率も高くなることが報告され、
ここでまず問題となるのは、やはりステロイド治療の長期経
GMAの保険での週1回の縛りが外れた。
過である。ステロイドの有効性は非常に高いが、1年後にステ
当院で2010年 4月からGMA 集中治療を行ったUC 症例の
ロイドから離脱した上で、寛解維持が可能であった症例は半
治療成績の検討を行った。対象はUC 症例78例。疾患活動性
数以下との報告もある。ステロイド抵抗例やステロイド減量によ
評価指標であるCAI(Lichtiger index)スコアは、GMA施行
り症状が再燃する依存例などの難治性UC の存在や、ステロイ
前は全体で9.6ポイントであり、重症度は中等症程度の症例群
、ステロイ
ドの長期使用による様々な副作用の発現など(図1)
であった。ステロイドに関しては、ステロイドを1回でも使用
ド治療に対する懸念は大きい。そこで重要な治療選択肢とな
した症例が46例、ステロイド未使用例(ナイーブ例)は32例で
るのが、GMA 療法である。
あった。
GMA集中治療後の全体の寛解導入率は54%、寛解までの
図1 ステロイドの副作用(手術症例の検討)
術後UC患者 416例
総プレドニゾロン量
平均15200mg
副作用なし
38%
骨障害
34%
期間は15.0±11.5日であった。年齢別の寛解率では、60歳以上
。ステ
では寛解導入率は36%と低くなることが示された(図2)
潰瘍性大腸炎に対するGMA集中治療による
寛解導入率(年齢別)
図2
(%)
70
60
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服対策研究事業 『難治性炎症性腸管障害に関する調査研究』班 平成15 年度 外科プロジェクト研究 アンケート調査による多施設共同研究
寛解導入率
うつ状態
4% 高血圧
糖尿病 緑内障
3%
5%
5%
大 骨頭壊死
5%
白内障
6%
寛解:CAI ≦ 4
65%
54%
64%
52%
50%
50
40
36%
30
20
10
0
n=78
n=21
全体
≦30
n=20
n=11
n=12
31∼40 41∼50 51∼60
n=14
≧60 (歳)
札幌厚生病院 IBDセンター
5
ロイド反応性の違いによる寛解率は、ステロイド抵抗例では50%、
図5 ステロイドナイーブ例の寛解率に影響する患者背景
ステロイド依存例では53%、ステロイドナイーブ例では56%と各
群に大きな差は認められなかったが、ステロイドナイーブ例で
(%)
90
83%
はステロイド使用に伴う副作用も回避することができた。このよ
50歳以下の治療成績が
極めて良好
80
うな経験から、当院では5-ASA製剤で効果不十分な症例では、
ステロイドナイーブ例においてもGMAを積極的に施行している
70
63%
。
(図3)
60
寛解率
図3 潰瘍性大腸炎の治療アルゴリズム
50
40
あらゆる内科的治療に抵抗する場合は手術
30%
30
20
抗 TNFα抗体・カルシニューリン阻害薬
10
血球成分除去療法・チオプリン系免疫調節薬
0
0%
n=8
n=12
n=10
n=2
≦30
31∼50
51∼70
≧71
(歳)
札幌厚生病院 IBDセンター
「適切な」
ステロイド治療
イーブ例においては特に、50歳以下では寛解率が非常に高かっ
たのに対し、高齢者では著く低下していた(図5)
。
十分量の経口・局所 5-ASA 製剤
GMA集中治療により寛解導入に至った42例の長期予後を
札幌厚生病院 IBDセンター
検討した。治療追加を要した場合を再燃と定義すると、1年で
3割以上が再燃しており、その後はなだらかに寛解維持率が低
下していくことが分かった。さらに、年齢別では、高齢者がよ
GMAの好適症例の選択と
寛解維持のためのGMA治療
。
り早期に再燃していることが示された(図6)
寛解率に影響を与える患者背景因子の解析によると、有意差
は認められないものの、重症度が低く罹病期間が短い症例では
GMA集中治療の効果が高い傾向が見受けられたが、ステロ
図6 GMA集中治療による寛解導入後の累積寛解維持率
(%)
100
CAI≦4に至った42症例
イド治療歴の有無と反応性による差は認められなかった。ステロ
80
イド反応性ごとに解析を行うと、ステロイドナイーブ例で寛解群と
図4 ステロイド反応性と年齢による寛解率
(%)
80
p=0.010
*
p=0.159
*
30歳以下
60
31∼60歳
40
*
75%
p=0.754
70
60
寛解維持率
。ステロイドナ
非寛解群の年齢に有意差が認められた(図4)
20
60%
61歳以上
57%
0
50%
寛解率
50
0
1
2
42%
3
4
(年)
札幌厚生病院 IBDセンター
40
30
UC 治療ではこの再燃をいかに防ぐかが今後の課題である。
25%
現在、寛解導入後のUC 症例を対象に、寛解維持のために月
20
2回の CAP 療法を1年間継続し、その有効性、安全性を検討
10
0
n=52 n=26
n=32 n=14
n=20 n=12
≦50 ≧51
≦50 ≧51
≦50 ≧51
全体
PSL既治療
PSLナイーブ
*検定方法:Fisher s exact test
6
する多施設無作為試験 CAPTAIN study(Cytapheresis for
(歳)
札幌厚生病院 IBDセンター
remission maintenance therapy of ulcerative colitis:
multicenter randomized controlled study)が進行中であり、
その結果の報告が待たれる。
重症度が低い症例、生物学的製剤未使用の
クローン病症例で著効するGMA 治療
図8 寛解導入率に影響する患者背景因子
寛解群
非寛解群
(n=10)
(n=29)
P-value
男性/女性
4/6
15 / 14
P=0.716 *1
平均年齢
27.1
30.3
P=0.355 *2
罹病期間(年)
6.0
10.5
P=0.080 *2
平均 CDAI 値
262.8
306.4
P=0.048 *2
次に、CD治療におけるGMAの位置付けについて考察する。
Fukuda1)らは、多施設共同試験の結果、既存治療抵抗性の
CD 症例に対するGMA 施行により、CDの疾患活動性の指標
であるCDAIやIOIBD、さらにIBDの疾患特異的 QOL 尺度
(IBDQ)が速やかに改善し、寛解導入率は29%、有効率は52%
であったことを報告している。これを受け、2009年に「栄養療法
及び既存の薬物療法が無効または適用できない、大腸の病変
小腸型
0
1
小腸大腸型
6
23
大腸型
4
5
P=0.303 *1
に起因する明らかな臨床症状が残る中等症から重症の活動期
クローン病患者に対する治療」として、CDに対する週1回の
GMA が保険適用となった。
IFX/ADA 治療歴
未使用例
6
5
抵抗例
4
24
P=0.017 *1
2002年から2012年の間に当院で GMA治療を施行した CD
症例39例の結果を示す。生物学的製剤未使用例11例と抵抗
*1 検定方法:Fisher s exact test *2 検定方法:t-test
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例28例に対し、週1回で GMAを施行すると、3 回終了時、10
回終了時と、徐々にCDAI スコアは改善し、最終的な GMA
生物学的製剤未使用で、かつ重症度が低い症例を抽出して解
。
による寛解率は25.6%、有効率は61.5%であった(図7)
析すると、寛解率は71%と非常に高くなることが分かった。CD
におけるGMA治療の有効性は、全体の寛解率で見ると決し
図7 GMAによる寛解率・有効率
て満足なものとは言えないが、この寛解率71%という結果は、
GMAは症例によってはCDでも非常に高い効果を得ることが
寛解:25.6%(CDAI<150)
有効:61.5%(⊿CDAI≧70)
できる治療法であり、効果が得られる症例の選択が非常に重
要であることを示唆している。
難治例でも約半数が何らかの
治療効果を得られるGMA治療
10
無効
非寛解
24
GMAのCDに対する使用成績調査(6年次報告)において、
GMA 治療により寛 解に至ったのは全体の15.1%と、決して
満足のいく結果ではない。しかしながら、寛解率と有効率を合
わせた奏 効率は全 体 の56.2%となる。当院の CDに対 する
寛解率
有効率
n=39
n=39
GMAの治療成績もこの奏効率で解析すると、重症度が高い
症例での奏効率は50%、生物学的製剤に対する抵抗例でも
札幌厚生病院 IBDセンター
奏効率は57%であった。したがって、GMAはCD 難治例でも
半数以上で症状の緩和がみられる有効な治療法であると言える。
寛解導入率に影響する患者背景因子解析では、重症度が
。また、
低い症例で寛解率が有意に高くなることが示された(図8)
1)Fukuda Y, et al. J Gastroenterol. 2004; 39(12):1158-1164
7
〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-41-12 富ヶ谷小川ビル
TEL 0120-677-170(フリーダイヤル)
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2015年11月作成