グループ連携 防災・危機管理のNTTグループ連携ソリューション 分野展開 面的展開 NTTグループの防災 ・ 危機管理ソリューション 近年の大規模災害の多発に伴い,いかに災害・危機対応能力を高めて災 害から住民を守るかが社会的な課題となっています.NTTグループでは長 年の通信事業で培ったノウハウを活かした防災・危機管理ソリューション を提供することにより,ICTを通じた社会課題の解決に取り組んでいます. 本稿では,NTTグループの防災ソリューション戦略,およびその普及拡大 に向けた取り組みを紹介します. 防災分野の背景 東日本大震災から約 4 年が経過し, 災害 ・ 危機に負けない社会をつくるた め,日頃からの備えと,総合的な防災 力(リジリエンス)を高める取り組み を提供し,リジリエンスの向上に貢献 しています. NTTグループの防災 ・ 危機管理 ソリューション戦略 ■防災システムのあるべき姿 く す み よしかず こばやし りゅういち 久住 嘉和 小林 隆一 こ う の ま ゆ ご と う た つ や か わ た ひろあき /後藤 達也 /河田 博昭 み 河野 真裕美 NTT研究企画部門 これらのICTが果たす役割をまとめ たものが図 1 になります. 図のように, 災害対策の各フェーズの中で,情報を 効率的に収集,集約,発信し,情報に 基づいたアクションをICTによってサ ポートすることができます.災害は, 災害時の危機管理や防災 ・ 減災への 常に起こるものではないため,風化に まで広く行われています. その一方で, 対応においては, 発災前, 発災時, 復旧 ・ よって過小に評価されたり,これまで 日本各地では毎年さまざまな自然災害 復興期のフェーズを通じて,住民の救 に経験のないことが発生する場合もあ の被害が発生しています.特に伊豆大 護 ・ 救援,ライフラインや救援物資 ・ ります.各フェーズの対応を迅速,か 島をはじめ,広島市,京都府福知山市 物流の確保等の観点で適切な対応をす つ円滑に行い,その教訓を次につなげ 等で発生した台風や大雨による災害は ることによって,被害の最小化や迅速 ていくために,ICTが支えることに 記憶に新しいことです.さらに,首都 な復旧,復興につながっていくと考え よって,防災 ・ 減災を正のサイクルに 直下型や南海トラフ巨大地震等,将来 られます.その中でICTの担う役割は, 循環させて,リジリエントな社会を構 発生し得る災害への備えについても数 災害を最小限にとどめるために,これ 築することができると考えています. 多く議論が行われています. までの知見,ノウハウ,情報の蓄積と これは情報の観点から見た災害対応の このような背景のもと,2020年に その活用によって,起こり得る災害の あるべき姿であり, その実現に向けて, 向け,世界各国からの多数の観光客が 影響度を予測し(検知 ・ 予知) ,避難 NTTグループとして,さまざまな取 増加する傾向であることから,日本全 すべき人に必要な情報を適切なタイミ り組みを行っています. 体としてさらなる安心 ・ 安全への意識 ングで伝え(通知) ,災害対策組織の NTTグループでは,情報通信を担 が高まるとともに,災害に備えるため 構築,実行の支援を図り,外部 ・ 内部 う企業として防災 ・ 減災という社会的 の防災 ・ 危機管理のソリューションへ で相互に情報連携を図りながら,統制 な課題にこたえるため,グループ全体 の期待が高まっています. された指揮命令のもと,適切な災害対 で戦略的に取り組みを行っています. 応をすることであると考えています. 図 1 の災害対策サイクルの各フェーズ において欠かすことのできないライフ また,災害後の被災者や被災企業,被 において,グループ全体ですでに50を ラインである情報通信を担う企業とし 災地域の支援をサポートすることや, 超える防災 ・ 危機管理ソリューション て,発災前の準備段階から発災時,復 復旧 ・ 復興に向けたコミュニティの活 を提供しています.その一方で,各 旧 ・ 復興期に至るまで幅広くICTを活 動等を重複や漏れもなく行うことも可 フェーズの連携を図り,防災 ・ 危機管 用した防災 ・ 危機管理ソリューション 能であると考えています (復旧 ・ 復興) . 理のトータルソリューションとして構 が政府,自治体レベルから民間レベル NTTグループは,災害 ・ 危機対応 44 NTT技術ジャーナル 2015.3 特 集 築していくことも,重要な課題と認識 しています.NTTグループが培って きた強固な電気通信ネットワークに, 起こり得る災害の影響度を予測 情報の収集,分析,予測,配信といっ ・避難すべき人に必要な情報を適切な タイミングで通知 ・災害対応組織を組織し,外部,内部 組織間で相互に情報連携 た機能を付加し,それらを情報連携基 盤上で組み合わせることによって, 発災前 訓練, 研修 (平常時) NTTグループならではのトータルソ リューションを,ワンストップでシー Action Plan ムレスに提供し,政府,自治体,企業, Check Do Action コミュニティの防災 ・ 危機管理力の向 上のために選ばれるパートナーになる 復旧期 復興期 ことを目指しています. ■分野拡大と面的拡大 私たちは,防災のような有事の分野 と,医療 ・ 福祉,環境,エネルギーや, インシデント発生 Plan 初動期 応急対応期 Check 被災者の生活や,被災企業, 被災地域等の 経済活動を,重複,手戻り,漏れなく復興 電子行政,観光等の平時の分野との連 Do 統制された指揮命令のもと,適切 な災害対応を実施 図 1 防災システムのあるべき姿 携を広げることにより,さまざまな社 会的課題の解決を図ることができると 考えています. さらに災害への対応は, 日本国内はもとより,フィリピンでの 台風による災害や,インドネシアの津 将来は, 防災のような有事の分野と観光や医療・環境等の平時の分野との連携 (分野の広がり)に加え,提供エリアを市町村・都道府県・国・グローバル( 面 的な広がり)に展開する 波や火山噴火に伴う災害等,地球規模 で解決すべきグローバルな課題である 医療・環境等 (平時) との認識も高まっています.したがっ ら,分野の広がりとエリアの広がりを 意識した取り組みも重要になってきて います(図 2 ) . 例えば,平時にはコミュニティの観 光をサポートするためのシステムとし て,エリア内のお薦めの観光スポット 分野の広がり て,これまでの防災分野だけの視点か 観光分野 (平時) 防災分野 (有事) 市町村 への展開 都道府県・国 への展開 グローバル への展開 面的な広がり 図 2 分野拡大と面的拡大 情報を配信したり,観光者が訪れた場 NTT技術ジャーナル 2015.3 45 防災・危機管理のNTTグループ連携ソリューション 所の情報を投稿するような観光支援 サービスが,有事になった場合には, さらなる普及拡大に向けた取り組み しています.2014年度は10月に開催さ れ,出展企業数約380,来場者数約 1 万 6 千人(延べ 5 万 4 千人)を超える そのコミュニティの被災情報の収集 NTTグループの災害対策 ・ 危機管 や,被災情報,避難情報の配信,安否 理ソリューションのさらなる普及拡大 注目度の高いイベントとなりました. の確認等が可能となります.分野をま に向けて,対外的な認知度向上は不可 NTTグループとして 8 回目の出展と たぐことによって平時 ・ 有事の連携が 欠であり,これまで記載した展開戦略 なる今回は, 7 社 8 ソリューションを 可能となるだけでなく,平時に使うこ に加え,広報戦略 ・ 活動にも力を入れ 展示し,発災前から発災時,復旧 ・ 復 とで,システムへのリテラシーの向上 ています.中でも雑誌 ・ HP等へのメ 興期までを一連の流れとして展示して 等も可能となり,有事の対応が早まり ディア掲載や展示会等への出展は広報 グループ連携をアピールするととも 相乗効果が期待されます. 戦略上の有効な手段の 1 つであると に,アプリケーションからインフラま 考えています. で幅広いレイヤをサポートしているこ 面的な広がりであるグローバルでの 防災 ・ 危機管理については,ASEAN その一例として,国内最大級の防 とを来場者に体感していただきまし 諸国を起点に現在は展開を進めてお 災 ・ 危機管理関連の展示会である「危 た.本特集では, 「危機管理産業展 り,日本国内で培った技術,情報,ノ 機管理産業展(RISCON) 」に2006年 2014」に出展した各社ソリューション ウハウ等を世界的な防災の標準とする より定期的にグループ共同出展を実施 について詳しく紹介します(図 3 ,4 ) . ため,国際連合国際防災戦略事務局 (UNISDR: United Nations Inter national Strategy for Disaster Reduction)と民間組織の連携である R!SE(Disaster Risk-Sensitive Investment:災害リスク投資)イニシ アティブに参加し,自社のノウハウの 国際展開による防災 ・ 危機管理ソ リューションのグローバル標準化にも 取り組んでいます. また,グループ各社が持つ情報,施 策の共有や連携する場を設け,ICTに よる防災ソリューションのあるべき 姿を具現化するための検討も行って います. 図 3 展示会模様 46 NTT技術ジャーナル 2015.3 特 集 内外の幅広い利用者に防災 ・ 危機管理 に対応する多数のソリューションを提 地震防災訓練アプリ( NTTドコモ) 供しています. 今後は,これらのソリューションを 普及拡大させるとともに,グローバル 発災前 訓練, 研修 (平常時) Action Plan Check Do 揺れモニ ( NTTファシリティーズ ) Action 復旧期 復興期 化や他の分野へ発展させ,より一層, 社会的課題の解決に貢献します. Plan 初動期 応急対応期 Check 被災者生活再建支援システム ( NTT東日本 ) Do タンジブル災害対策支援システム( NTTコムウェア) WebEOC( NTTラーニングシステムズ ) 危機管理情報マネジメント支援システム( NTTセキュア プラットフォーム研究所 ) 防災情報伝達制御システム( NTTアドバンステクノロジ) 衛星電話サービス・ワイドスター( NTTドコモ) 図 4 出展ソリューション 本展示会への出展によって,さまざ 面的な広がりである「グローバル化」 まな分野の来場者と直接意見交換を行 に向けた取り組みの一環として,併催 うことができ,新たなサービス化に向 される「防災産業展」にもグループ共 けた技術課題等に関する貴重なご意 同出展を行います.各国政府,各国際 見,ご要望をいただきました.このよ 機関,関連NPO,NGO等,世界各国 うなご意見をグループの防災戦略,研 から世界会議に参加される皆様に対 究開発, サービス開発に活かすことで, し,NTTの防災 ・ 危機管理ソリュー 利用者にとって有益なソリューション ションをご覧いただきます. が実現できると考えています. さらに,2015年 3 月には仙台にお 今後の展開 いて,国連が主催する「第 3 回国連防 NTTグループでは,長年の災害対 災世界会議」が開催されます.そこで 策 ・ 危機管理のノウハウを活かし,国 (後列左から) 小林 隆一/ 後藤 達也 (前列左から) 河田 博昭/ 久住 嘉和/ 河野 真裕美 NTTグループが今後も皆様から選ばれる バリューパートナーになるべく,ICTを通 じた災害対策,危機管理活動を進めていき ます. ◆問い合わせ先 NTT研究企画部門 プロデュース担当 E-mail riscon-ml lab.ntt.co.jp NTT技術ジャーナル 2015.3 47
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