当日配布資料(9.43MB)

常温常圧下でメタン, ベンゼンを
水酸化する金属酵素模倣型触媒
名古屋工業大学 大学院工学研究科
未来材料創成工学専攻
教授 増田 秀樹
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金属酵素とは?(1)
生体で起こる化学反応に対して
触媒として機能する蛋白質
水酸化触媒
チロシナーゼ
ヘモグロビン(酸素の運搬)
(メラニン色素合成)
消化酵素
・炭水化物分解酵素
・蛋白質分解酵素
・脂肪分解酵素
創薬
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
細胞
(2O2- + 2H+ → H2O2 + O2)
創薬
カタラーゼ
(2H2O2 → 2H2O + O2)
燃料電池
カソード
シトクローム酸化酵素
(O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O)
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金属酵素とは?(2)
ブドウ糖
エネルギー
化成品他
食糧生産
メタン資化菌
CO2
エネルギー
光合成OEC
(H2O → O2 +
4H+
+
4e-)
エネルギー
化成品
ニトロゲナーゼ
(N2 + 6H+ + 6e- → 2NH3)
メタンモノオキシゲナーゼ
(CH4 + 1/2O2 → CH3OH)
エネルギー
ヒドロゲナーゼ
(2H+ + 2e- ⇄ H2)
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金属酵素の弱点
(蛋白質の変性)
■生理的条件下でのみ機能発現
・一般に常温常圧下で機能するため高温・高圧で失活
・一般に酸性・アルカリ性で失活
■工業的スケールの実現が困難
・大量採取が困難
近代工業化学の課題
■環境への負荷が多大(一般に高温,高圧下)
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生物摸倣型金属錯体触媒
●反応条件操作
●常温常圧下
●大量生産
●低環境負荷実現
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生物無機化学の可能性
近代工業化学 vs. 生 物
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本日ご紹介する私たちの技術
OH
①ベンゼンの水酸化技術
高難度基質への
酸素添加触媒の開発
+ H2O2
(ベンゼンからフェノールの
一段階合成)
②メタンの水酸化技術
混合原子価銅錯体による
メタンのメタノールへの変換
CH4
CH3OH
+ O2 or H2O2
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①ベンゼンの水酸化技術
フェノールとは?
OH
用途
■プラスチック、医薬品、染料等
の各種化成品の原料
■消毒剤
世界需要(2012年)
900万トン/年 1.5兆円
今後も需要拡大の見込み
有機合成化学工業の中で
非常に重要な位置を占める。
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①ベンゼンの水酸化技術
フェノールの製造方法
クメン法
OOH
H3C
CH(CH 3)2
C
OH
CH 3
O2
250℃
30気圧
Na2CO3
H2SO4
爆発性の
過酸化物
収率~5%
クメン法の欠点
■高温高圧下での反応→高環境負荷
■爆発性の過酸化物中間体の利用
■三段階合成で収率が低い(~5%)
■不要な副生成物アセトンの多量生成
■フェノールの過剰酸化反応が起きる
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①ベンゼンの水酸化技術
自然界の金属酵素
チロシナーゼ(Tyr)に注目!
メラニン色素合成経路の酵素
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①ベンゼンの水酸化技術
私たちが開発した触媒の特徴と優位性
新技術!!
二核系銅(II)-酸素錯体触媒
チロシナーゼ (Tyr)
本技術の優位性
基質
生物活性部位
類似の配位環境
●常温常圧下の反応
●一段階での反応
●過剰酸化反応が
起きない
大きな反応空間
基質
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①ベンゼンの水酸化技術
開発した触媒を用いた
ベンゼンのフェノールへの水酸化反応
ベンゼンの C-H結合 = 112.9 kcal / mol
ベンゼンの水酸化
OH
錯体
ベンゼン
触媒
2-Me体
2-Pr体
H2O2
OH
X
OH
フェノール
反応時間[min]
フェノール
(TON)
30
30
14.5
12.0
反応条件
錯体: 2.00 μmol
酸化剤 : H2O2 (6.00 mmol)
基質 : ベンゼン (6.00 mmol)
Ar 雰囲気下, 温度:15℃
溶媒:アセトン溶媒
反応時間 30 min
TON(ターンオーバー数)
…ある反応において触媒が失活するまでに基質を生成物に変換できる数
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①ベンゼンの水酸化技術
開発した触媒を用いた
種々の基質との酸化反応
O
S
CH3
Me
S
CH2OH
CHO
Me
(TON1890)
(3000eq)
チオアニソール
OH
(3000eq)
トルエン
(36)
O
N
(160)
(4.6)
(155)
(1000eq)
シクロへキセン
N
Cu
N
N
O
H
O
O
H
OH
N
N
O
(3000eq)
Cu
シクロヘキサン
N
(14.3)
N
(8.3)
(2.7)
OH
(3000eq)
クメン
(3000eq)
ベンゼン
OH
(15.6)
(15.6)
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②メタンの水酸化技術
メタノールとは?
CH3OH
用途
■フェノール樹脂、接着剤、酢酸、
ホルマリン等の合成原料
■様々な化学反応の溶媒
世界需要(2012年)
6000万トン/年 2.4兆円
今後も需要拡大の見込み
有機合成化学工業の中で
非常に重要な位置を占める。
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②メタンの水酸化技術
メタノールの製造方法
天然ガス(メタン)の水蒸気改質法
CH4
Ni系触媒
H2O
800℃
25気圧
吸熱反応
CO + 3H2
CO2 + 4H2
Cu-Zn-Cr系触媒
300℃
250気圧
発熱反応
CH3OH + H2
CH3OH + H2O + H2
収率20%
水蒸気改質法の欠点
■高温高圧下での反応→高環境負荷
■二段階合成で収率が低い(~20%)
■高価な触媒使用
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②メタンの水酸化技術
自然界の金属酵素
メタンモノオキシゲナーゼ(pMMO)に注目!
CH4 + ½ O2
pMMO
常温常圧下
CH3OH
メタン資化菌
活性化状態CuIICuIII
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②メタンの水酸化技術
私たちが開発した触媒の特徴と優位性
新技術!!
混合原子価二核銅(II,III)錯体触媒
銅2価および銅3価をそれぞれ
安定化させる左右非対称な分子設計
本技術の優位性
●常温常圧下の反応
●一段階での反応
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②メタンの水酸化技術
高酸化活性Cu(II)Cu(III)錯体生成
電子スピン共鳴
e
吸収スペクトル
特徴的な原子価間
電荷移動吸収
酸化還元電位
m
e
E1/2II,III/II,II = 0.071 V vs. Fc/Fc+
ΔEpa,pc = 70.4 mV
CuIICuII/CuIICuIII
W. E. : GC
C. E. : Pt wire
Scan rate : 0.05 V/s
0.1 M TBAP in CH2Cl2
Complex 1: 1 mM
想定される用途
①ベンゼンの水酸化技術
■フェノールの省エネルギーな製造
■フェノールの水酸化
フェノールの用途:フェノール樹脂、その他高分子合成
②メタンの水酸化技術
■メタノールの省エネルギーな製造
メタノールの用途:燃料,合成繊維,医薬品,化成品他
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実用化に向けた課題
①ベンゼンの水酸化技術
■錯体触媒の安定性向上と最適反応条件探索、
TONの向上。
②メタンの水酸化技術
■錯体触媒の最適反応条件探索。
■錯体触媒を提供するので条件探索に
積極的かつ辛抱強い協力を!
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企業への期待
①ベンゼンの水酸化技術
■常温常圧下でのフェノールへの一段階反応であり、
コストおよび環境負荷の低減が期待できる。
■フェノール製造現場において本技術の導入をご検討
いただきたい。
■実用化に向けての課題解決について共同開発研究
も歓迎する。
②メタンの水酸化技術
■メタンからメタノールの反応は現在触媒反応の最適
条件を探索中であり、共同開発研究を希望したい。
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特許情報
①ベンゼンの水酸化技術
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発明の名称:二核系金属錯体を有効成分とする酸化触媒
出願番号 :特願2010-141240
出願人
:名古屋工業大学
発明者
:増田 秀樹、小澤 智宏、舩橋 靖博,猪股 智彦、後藤 真奈
②メタンの水酸化技術
• 発明の名称:混合原子価2核銅錯体およびそれを用いて
メタンをメタノールに変換する製造方法
• 出願番号 :特願2014-157249
• 出願人
:名古屋工業大学
• 発明者
:増田秀樹、小澤智宏,猪股智彦,落合達矢
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産学連携の経歴
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•
2002年-2013年 文科省「知的クラスター創成事業」
2003年-現在
T社と共同研究実施中
2012年-現在
A社と共同研究実施中
2013年-現在
文科省「ナノテクプラットフォーム事業」
…他数社と共同研究実施
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お問合せ先
名古屋工業大学 産学官連携センター
産学官連携コーディネータ 沖原理沙
TEL 052-735-5627
FAX 052-735-5542
e-mail [email protected]
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