第111号(平成26年3月)(pdf:17940KB

(1)
第111号
平成26年 3月 25日発行
可児市教育委員会
可児市教育研究所
可児市下恵土 5166−1
TEL(0574)63−4841
e-mail :[email protected]
可児市教育長
篭橋
義朗
平成 26 年度のカレンダーが教育長室の壁に掛
しかし、伝えたいということは個人では完結し
けてあります。これは可児市教育研究所が運営し
ません。伝えられる相手、他者がいなければ成り
ている適応指導教室「スマイリングルーム」の子
立ちません。最近では「自尊意識」の育成が必要
どもたちが作ってくれたものです。昨年の夏休み
に市内の小中学生が選んだ「可児市の自慢」をス
であるといわれていますが、それだけでは十分で
マイリングルームの子どもたちがアイデアを出
欠かせません。双方向での協力、協調が必要です。
し、イラストを描き、パソコンで編集をして作っ
てくれたものです。「鳩吹山」や「文化創造セン
伝える側は自身の思いをどのような言葉で、どの
ター・アーラ」「花フェスタ記念公園」などの写
が受け取ってくれるのかを考えなければなりま
真にコメントを加えたカレンダーです。先日この
カレンダーを市長や教育委員に持ってきてくれ
ました。このカレンダーを作るにあたって、子ど
もたちはそれぞれの考えを話し合いながら体裁
を考え、イラストを何通りも描き、コメントも何
度も書き直したことでしょう。それを協力してひ
はないと思います。自己の確立には他者の存在が
ような表情で、どのような態度で表現すれば相手
せん。伝えられる側も同じように表情や態度で相
し
手が伝えやすいように考えなければなりません。
双方向の作業です。場面が変わればその逆になり
ます。その多様な組み合わせと繰り返しが仲間で
あり、クラスであり、学校であるのではないでし
とつのものにまとめた結果です。そしてこのこと
の大事なことはそれを他人に「見てもらう」とい
ょうか。そしてそれは私たち大人の社会でも課題
う目的、動機があったということです。作品が受
ではなく共生してこそ豊かで温かみのある地域
け入れられるように相手の気持ちを思い、相手の
立場になって作ったということが、想像力と創造
社会が築けるのだと思います。
力を使ったとても良い経験になったと思います。
となっているのではないでしょうか。孤立するの
そのようなスキルを子どもの時に習得するこ
とが大事です。そのスキルを習得するためにはコ
自分のことを伝えた
ミュニケーションワークショップを体験して擬
い、理解してもらいた
似的に訓練することを意図的、計画的に設定する
い、つながりたい、と
誰しもが思います。
必要があると思っています。スマイリングルーム
の子どもたちは今年度から継続的にヒマワリの
一人では生きていくこ
とができないという人間
が「社会的動物」といわ
れる所以です。
栽培やコミュニケーションワークショップを経
験しています。その影響なのかどうかははっきり
(1)
しませんが確実に仲間意識が芽生え、心の壁が低
くなっているような気がします。
(2)
可児市教育研究所だより
< Educe9研究指定校報告>
わかる、できるを実感する授業をめざして
可児市立広陵中学校
1
はじめに
3
本校では、平成24、25年度の Educe9 の
今年度の実践から
(1) 単元構造図の作成
研究指定を受け、帷子小学校とともに研究を進
単元構造図を作成することにより、単元全体
めてきた。特に「学校の9」では、1小1中と
で付けたい力を明確にするとともに、1時間毎
いう実態を踏まえ、9年間を見通した児童生徒
の指導内容の焦点化を図った。教師が予め授業
の育成を目標に、以下のような3つの共通実践
をイメージすることで、生徒の学習意欲を喚起
事項を決定し、取り組んできた。
させる場、生徒に思いや考えをもたせる場、生
【広陵中学校区の共通実践事項】
徒が輝く場を設定することができた。
○「聴く・話す・書く」の段階表を基にした系
(2) Q-U や NRT の結果を活用した授業づくり
統的な指導
今年度は 、学校教育力向上事業の一環として、
○「学び合い、深め合う場 」「書く場」の位置
づけ
3度の Q-U 研修会を行った。都留文科大学の
品田先生より Q-U や NRT の結果から見た学級
○「Q-U の結果を授業づくりに生かす」
この3点に重点を置きながら、さらに広陵中
経営、授業づくりについてアドバイスをいただ
いた。担任による学級経営についての考察と、
学校独自の研究を加えた形で実践を重ねた。
教科担任による授業づくり、そして Q-U 研修
【平成25年度
会の時のアドバイスをその後の教科指導に生か
広陵中学校研究主題】
すように努めた。
自ら求め、ともに学び合い、
(3) 生徒の自己評価
学びを深め合う生徒の育成
教科毎で自己反省を
∼一人一人が「わかる、できるを実感する
行う時間を確保した。
授業づくり」を通して∼
授業後、その反省用紙
を回収し、点検するこ
2
昨年度の実践と生徒の様子
昨年度、仲間との交流から学力の向上をめざ
とで、教師が個や全体
のつまずきを把握することに努め、個別の手だ
すために、授業の中で交流場面をできるかぎり
てや次時の授業のあり方について考えた。
位置づけ、本時の課題を解決するために最も適
4
おわりに
した学習形態について考えた。教師から生徒へ
自分の考えや思いを仲間の前で堂々と語る姿
の一方的な授業から、生徒同士で思いや考えを
も増え、以前と比べると仲間との学び合いが生
交流し、深め合う授業をめざした。当初、小集
徒の中に定着してきた。しかし 、「教え合い」
団の中でも自分の思いや考えを伝えることに戸
に頼るあまり、自分の力だけでやりきる力が弱
惑っていた生徒も、徐々にではあるが、語るこ
くなっている点も見られる。学んだことの定着
とができるようになった。しかし、仲間と考え
を図るために、家庭学習をより充実させる必要
が同じだと、発言することを止めてしまったり、
もある。生徒の委員会も動かしながら 、「わか
リーダーが交流場面で班員の意見をうまくまと
る、できるを実感する授業」を引き続きめざし
められなかったりするなど、課題を残した。
ていきたい。
(3)
可児市教育研究所だより
<海外派遣研修報告>
イギリス研修から学んだこと
可児市立春里小学校
A
1.はじめに
平 成 2 5年 度
山本
学
学習環境デザインの重視
教育課 題 研修 指導 者 海外 派
遣研修に参加させていただきました。
研修課題は、『学校経営の改善』です。研修
先は、イギリスの行政機関(3ヶ所)・初等学校
(3校)・中等学校(4校)・大学(1校)でした。
上の写真は、
『ラーニングレガシー』と呼ばれ
る作文の掲示板です。
2.イギリスの学校制度について
具体的には、該当学年の作文の中で、内容・
イギリスの学校制度は、初等学校6年(5∼
表現技法及び段落構成が最高値にある児童の作
11歳)、中等学校7年(11∼18歳)を基本
品と着目する観点を掲示したものです。ここに
とし、義務教育は5∼16歳までの11年間で
は、2つの秘密があります。
す。日本より、義務教育の期間が2年長いこと
が特徴の1つです。
1つめは、掲示板全面にビニルシートが貼っ
てあることです。理由は、児童が、自分自身の
そして、中等学校後半(17∼18歳)は、
作品を掲示板の上に乗せ、表現技法や構成を比
日本の高等学校にあたり、大学などの高等教育
較しながら作文を完成させる過程で、参考作品
機関を目指す者のために、シックスフォームと
を傷つけることなく身近で学習できるように配
いう課程が2年間設けられていることが特徴の
慮してあるからです。
2つめです。
3.イギリスの学校経営と学校評価について
2つめは、設置場所と設置時期にあります。
設置場所は、該当学年の学年掲示板。設置時期
イギリスの学校経営は、最高意思決定機関の
は、該当学年の終了する月です。この2つのこ
学校理事会と執行機関の校長が協力して学校を
とを実施することで、新学年を迎えた時点で、
運営しています。
この学年で求める姿(能力のレベル)が一目で
すべての学校は、教育水準局(OFSTED)によ
る監査を受け、次の4つの評価をされています。
分かり、1年間の見通しをもつことができます。
B
自己改善のための評価
児童による自己評価(www)の下に、教師が、
①
最優秀(outstanding)
②
良好(good)
評価を記述するだけでなく、さらに改善すれば
③
要改善(need for improving)
よりよい学習が展開できるように、思考方法や
④
不十分(inadequate)
表現 技法 に関 する アド バイ ス(ebi)を 短い 文章
学生の学習に関する評価は、平均点や項目別
で記載していることです。
達成人数ではなく、progress(ある時期を起点
として、個人個人の学習の伸び率)を重視して
いる点が、イギリスの大きな特徴です。
4.日本の学校に、すぐに取り入れられること
5.結びにかえて
イギリスの学校訪問をして、すぐに日本でも
最 後 に 貴重 な研 修の機 会 を与 えて く ださ っ
実施でき、子どもの力を伸ばす可能性を秘めた
た可児市教育委員会をはじめ関係機関の皆様に
取組が2つありました。
感謝申し上げます。
(4)
可児市教育研究所だより
平成25年度 小学校英語コミュニケーション研究事業
「かにっこ英語プログラム」のこれまでの歩みと今後について
目的
可児市では、平成25年度より、国際化時代に対応し、外国人に対して物怖じすることなくコミュニケ
ーションを図ろうとする子どもを育てるため、教育課程特例校(南帷子小学校)を設けて、小学校英語コ
ミュニケーション研究事業「かにっこ英語プログラム」を始めました。研究を進めるにあたり、子ども英
語教育の専門家、清水万里子氏を迎え、以下の4点の活動に取り組んでいます。
経過
(1)自学可能な学べる英語教材の開発「かにっこ英語かるた」の作成
【内容】
「かにっこ英語かるた」とは、児童が日常生活の中でよく使う表現やセリフをリサーチし、52フ
レーズを選択し、絵カード、文字カード、ネイティブによる音声録音による音声CDを合わせた可児
市独自のオリジナル教材です。子どもたちは、リズムよく遊び感覚で取り組み、いつのまにかフレー
ズを覚えていきます。
英語かるたのフレーズの一例
1.「プリントを うしろにまわす」
“Here you are.”
2.「え、まさか こんな点数」
“Oh, no!”
3.「どうしたの 何があったの」
“What's wrong?”
4.「口チャック 静かにしてね」
“Please be quiet.”
5.「ピカピカに きれいに掃除」
“Let's clean up.”
【様子】
南帷子小学校では、
「英語かるた」の音声 CD を朝の始業前や給食の時間に全校放送で毎日流して
います。そして、学年に合わせて、
「英語かるた」の使用方法を考え、活用しています。子どもたちは、
とても楽しく「英語かるた」に取り組み、音声 CD を繰り返し聞くことで、フレーズを自然に覚え、
休み時間にフレーズをつぶやいている子どももいます。
(2)英語の音に慣れる音声付英語絵本の活用及びコミュニケーション能力育成のための授業の工夫
【内容】
音声付英語絵本や英語紙芝居を図書館に常備し、読み聞かせ等で活用します。朝の帯時間(週1日
10分程度)を活用し、定期的に英語絵本の読み聞かせを行ったり、授業の活動の中に英語絵本を
取り入れたりして、子ども達に絵本を通して、英語に触れる機会を増やします。
【様子】
読み聞かせでは、学年に合わせた絵本を使い、学年の目標に沿っ
て行っています。どの学年の子どもたちも、絵本をじっと見つめ、
担任の読みや CD の音声をじっくりと聞き、絵本のフレーズを一緒
に読んだり、英語で数を数えたりして、英語に親しんでいます。
2学期より、週に1度、朝の帯時間に担任が英語絵本の読み聞か
せを行っています。
(3)①英語サマースクールの実施
【内容】
夏休みに行うサマースクールや英語のみを使う英語デーを設け、子どもたちに英語に触れる機会を
可児市教育研究所だより
(5)
多く与え、様々な活動を通して、楽しみながら参加するものです。
【様子】
サマースクールは、夏休みに3日間行われ、5、6年生の希望者72名が参加しました。子どもた
ちを5グループに分け、
5名のALTが一人ずつグループを担当し、
英語によるコミュニケーションを中心にして活動を進めました。
1日目は、全員で英語のジェスチャーゲームなどを行ったり、
グループごとで旗を作ったりしながら、英語のコミュニケーショ
ンを図りました。
2日目は、それぞれのALTが出身国を紹介するコーナーを開
設し、子どもたちが5カ国のコーナーをまわる「ワールドツアー」
を行いました。子どもたちは、熱心にALTの説明を聞き、子ど
も達からも英語で質問をする場面もたくさんあり、少しずつ自ら英語でコミュニケーションを図ろう
とする姿が増えてきました。
3日目は、オーストラリアのプレンベール小学校との中継交流を行いました。英語での自己紹介や
日本の文化に関わるクイズを行いました。また、プレンベール小からは日本語での自己紹介や質問が
あり、互いに交流を行うことができました。
3日間を締めくくる終わりの会では、
「英語でコミュニケーション
を行うことの楽しさがわかった」
「違う国のことをたくさん知ること
ができてよかった」といった子どもたちの意見がでました。
②英語デーの実施
【内容】
オーストラリアのプレンベール小と中継を行い、英語を使った
交流を行います。
(4)文字認識を育成するためのアートを土台とした英語環境づくり
【内容】
アートを土台とした英語環境づくりとは、英語の文字認識を育成するため、学校の裏山(わんぱく
山)の自然素材を使ったアルファベット文字工作、英語かるたのイラスト、文字を使ったアート作品
を制作し、校内に掲示するものです。
【様子】
低・中学年は、どんぐり、木の枝、植物のツルなどで大文字アルフ
ァベット作品を作っています。5年生は、日本の伝統模様を背景にア
ルファベットをデザイン、6年生は、各アルファベットで始まる単語
を探してデザインをしています。
成果と課題
○英語絵本、英語かるたなど、子どもたちが親しみやすい教材を使うことで、子どもが英語に自然と親し
み、それが英語を学びたい、英語を使ってコミュニケーションを図りたいという意欲につながっていま
す。子どもが家庭で英語の歌を歌ったり、英語のフレーズを口ずさんだりしているという姿がみられま
した。また、サマースクールを終えて、もっと英語でコミュニケーションができるようになりたいと話
している子どもの姿から、このプログラムが英語を使ったコミュニケーション力を伸ばすための有効性
を実感しています。
●指導者のアドバイスを受け試行錯誤をしながらの研究となり、従来の研究と異なる点に教員がとまどい
を感じることもありました。また、英語かるたは、実際に使用する中で、絵札についている番号、音声
CDの録音の仕方などに課題がみつかり、改善していく必要があります。
( 6 )
<外国語活動>
可児市教育研究所だより
外国語で伝え合う喜びを実感できる外国語活動の指導
∼学習到達目標を位置づけた指導計画と
リアルコミュニケーションを生み出す言語活動の工夫を通して∼
広見小学校
1.主題設定の理由
(1)実践から
平成23年度と平成24年度の実践における成果
(◎)と課題(▲)は以下の通りである。
平成23年度実践論文
◎「学級担任の役割」を位置づけた単元指導計
画を作成し,学習過程をブロック化したこと
で,単位時間の役割が明確になり,学級担任
が学習者モデルとなる授業が充実した。
▲ゲーム性の高い活動のおもしろさを楽しむこ
とで終わってしまう課題が残った。
平成 24 年度実践論文
◎十分な発話量を確保し,コミュニケーション
ストラテジーを効果的に活用する言語活動の
充実を図ったことで,うまく伝わらない状況
でも対話を続け,伝え合う楽しさを実感する
ことができた。
▲与えられた対話文と決められた外国語だけを
用いた対話活動では,より実践的な場面で意
思の疎通がすれ違い,コミュニケ―ションが
滞ってしまう課題が残った。
(2)本学級児童の実態から
hyper-QU学級集計表「ソーシャルスキル結果
のまとめ」から,本学級児童の特徴として,ルー
ルやマナーを守ろうとする意識は高いが,自分か
ら他者に関わろうとする態度に弱さが見られる
ことが分かった。
(3)研究主題の設定
「コミュニケーション能力の素地の育成」とは,語彙
の暗記量やパターン化された対話文の習得量を
増やすことではなく,その場の状況に応じた外国
語を用いて情報や思いを伝え合う喜びを実感さ
せることだと考える。そこで,複数の単元にわた
る学習目標を位置付けた指導計画を作成し,リア
ルコミュニケーションのある言語活動を通して,
外国語で伝え合う喜びを味わわせたいと考えた。
2.研究仮説
学習到達目標を明確にした指導計画を作成し,
相手の立場や状況に応じた外国語や
コミュニケーションストラテジー を 自 己 選 択 し ,
リアルコミュニケーションを生み出す言語活動を工
夫すれば,外国語で伝え合う喜びを実感すること
ができるであろう。
教諭
髙木
恵子
3.研究内容
研究内容(1) 学習到達目標を明確にした
指導計画の工夫
①「目指す児童の姿」の設定
② 教科書にない「言語活動」の設定
③ 必要な「英語表現」の設定
④ 効果的な「コミュニケーションストラテジー」 の設定
研究内容(2) リアルコミュニケーションを
生み出す言語活動の工夫
① 現実性のある場面設定
② 即時評価の位置づけ
③ 自己選択の場面を増やす工夫
研究内容(3) 学習環境の工夫
① 学習形態の工夫
②
学習教材の工夫
4.研究実践
研究内容(1) 学習到達目標を明確にした
指導計画の工夫
本論文では,「学習到達目標」を目指す児童
の姿,言語活動,英語表現,コミュニケーショ
ンストラテジーの4つの要素を具体化したもの
の総称として,指導計画に位置付けた。その際,
最終単元での目指す児童の姿に向けてLesson 4
からスモールステップとなる到達目標を設定し
た。また,活動と活動の関連性を考え,必要なら
ば教科書にない言語活動も加えて指導計画を作
成した。さらに,
複数の単元で繰り返し必要な英語表現に慣れ親
しませ,英語表現と一緒に用いると効果的である
コミュニケーションストラテジーを段階的に設定した。
これによって,授業者は授業のねらいに直結す
る活動を仕組むことができた。また,児童は授業
のねらいを具現する具体的な姿をイメージして
活動に取り組めるようになった。hyper-QU調査
で学級生活不満足群に属していたA男は,単元ご
とに達成感や自信が増し,
話し手の説明を聞き出
しながら聞く姿が見ら
れた。
可児市教育研究所だより
( 7 )
研究内容(2) リアルコミュニケーションを
生み出す言語活動の工夫
場面や状況に応じた外国語を用いて伝え合お
うとする態度を育てるために,児童の「伝えたい」
という思いや柔軟な発想を最大限に発揮できる
1
2
3
魅力ある言語活動を充実させ,「慣れ親しみ」に
焦点を当てた活動から「伝え合う」活動に焦点を
当てた活動へと発展していく学習過程の見直し
を図ることにした。
①現実性のある場面設定
What’s this?を用いた活動では,すでに分かっ
ている物についてそれは何かを尋ね合うのは不
自然である。そこで,Lesson 7では,写真のよう
にイラストの一部が見えないように隠したり,イ
ラストの向きを変えたりした問題カードを作成
し,尋ね合う必然の
ある帯活動をチャン
ツ形式で行った。
②即時評価の位置付け
リアルコミュニケーションは,その場の状況に合
った外国語や非言語手段を自分で考えて伝え合
うやりとりを指す。そこで,相手の英語を聞いて
正 誤 を 判 断 し , 認 め 励 ま す 英 語 (perfect /
close)を選択し,ハイタッチやグータッチと一緒
に使っていく対話活動を
帯活動として毎時間,位
置付けた。
③自己選択の場面を増やす工夫
クイズパネルを使ってクイズを出題し合う活
動では,出題者は3枚の色画用紙を順番にめくり
ながら英語でヒントを出していく。
解答者のHint, please. という要求に対して,
O.K.と言って色画用紙をめくることから始め,相
手の理解に応じたヒントを考えながら英語を用
いるように徐々に質の高い活動へと移行させた。
検 証
終末となる第4時の中間評価では,一方通行に
なっていたヒントの出し方を修正する方法を確
認した。この中間評価を受けて,後半活動では,
話し手は相手の理解に応じた英語表現を用いて
クイズを出題できるようになり,聞き手は
Gesture, please. やSlowly, please. を用いて積極的
に理解しようとする姿が多く見られるようにな
った。
研究内容(3) 学習環境の工夫
①学習形態の工夫
ペアをローテーションで替えていく学習形態
をとることで,限られた時間で十分な発話量を確
保することができた。また,自分から関わること
への抵抗感が強い児童が多い本学級においては
機械的に対話する相手が入れ替わることで自分
で相手を探す時に感じる不安や緊張を取り除い
て対話活動を行うことができた。
②学習教材の工夫
重点項目を設けた「学習振り返りカード」を作成
し,授業者と児童の評価する視点のずれを防いだ。
また,児童がどんな気付きや理解をしているのか把
握するのに役立った。
5.成果と課題
○複数の単元を見通した指導計画を作成するこ
とで,必要な言語活動や英語表現などを精選で
き,目指す児童の姿を実現するための手立てを
具体的にすることができた。
▲リアルコミュニケーションのある言語活動は,
どの単元でも実践すべきである。そのために,
第5学年と第6学年の指導計画の連携を見直
す必要がある。
( 8 )
可児市教育研究所だより
平成 25年度可児市教育実践論文応募のまとめ
◇応募状況について
職 務 別
年 代 別
校
主
養 栄 事
A
校 教 幹 教 護 養 務 講 L 小
種
教
教 教 職
T
計
師
諭
長 頭
諭
諭 諭 員
等
地
区
可 小
児 中
市 計
0
0
0
性 別
領 域 別 (論文数)
教 科
20 30 40 50 小 男 女 小
代 代 代 代 計 性 性 計
特
道 別
徳 活
動
小
国 社 算 理 生 音 図 技 保 英 語 会 数 科 活 楽 美 家 体 語 計
外
学 生
総
国
級 徒
合
語
経 指
学
活
営 導
習
動
総
特
別
支
援
健
康
安
全
管
そ 小
計
理
の 経
他 計
(編)
営
26
26
14
5
6
1
26
12
14
26
5
3
3
0
2
1
1
0
1
0
16
2
1
6
2
11
9
9
5
2
2
0
9
5
4
9
0
0
3
2
0
0
0
1
0
3
9
0
0
0
0
0
9
35
19
7
8
1
35
17
18
35
5
3
6
2
2
1
1
1
1
3
25
2
1
6
2
11
36
35
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
☆平成25年度 可児市教育実践論文優秀賞・優良賞受賞者一覧☆
<優秀賞>
№
学校名
氏 名
種別
領 域
研究テーマ
1
広見小
髙木 恵子 個人 外国語活動
外国語で伝え合う喜びを実感できる外国語活動の指導
∼学習到達目標を位置づけた指導計画とリアルコミュニケーションを生みだす言語活動の工夫を通して∼
2
旭 小
安藤 みほ 個人
生活科
自分自身のよさや成長に気づき、意欲を持って生活できる子の育成
∼気付きの質を高めるための言語活動の充実を通して∼
3
今北小
福井 信広 個人
社会科
「分かる!」「書ける!」「楽しい!」全員参加の授業をめざして
∼ユニバーサルデザインの視点を生かした社会科学習の在り方∼
4
広見小
竹井 秀文 個人
道徳
5
土田小
小栗 由唯
要支援児童を核とした学級経営
個人 学級経営
(新人賞)
∼A児の特性に応じた指導・援助の工夫と承認される活動の工夫を通して∼
豊かな人間関係を構築する児童を育む道徳教育
∼自己の生き方をつくりだす新しい道徳授業づくりを通して∼
<優良賞>
№
学校名
氏 名
種別
1
帷子小
河合 律子 個人
2
旭 小
井藤 宏文 個人 学級経営
学習意欲を高めることで、学校生活意欲プロフィールの向上を目指す
∼学習意欲の向上と学級生活度との相関関係に着目したPDCAサイクル∼
3
今北小
青山 岳史 個人
ゼロから始めるユニバーサルデザインの国語授業づくり
∼三次の活動を意識した説明文の授業づくりを通して∼
4
今北小
山下 啓子 個人 日本語指導 保護者の思いを大切にした指導のあり方を求めて
5
中部中
杉浦 栄美 個人
6
土田小
菅野 詠子 個人 学級経営
みんなが過ごしやすい学級をつくるための係活動のあり方
∼自分の仕事をしっかりとやる児童の育成∼
7
春里小
武山 有香 個人
支援の必要な子も楽しく活動できるマット運動
∼hyper Q-Uの結果を取り入れて考えるユニバーサルデザインの授業∼
領 域
図工
国語
外国語
体育
研究テーマ
感性を働かせ、美術作品のよさや美しさを進んで味わおうとする子の育成
∼高学年における「B観賞」の実践を通して∼
生き生きとコミュニケーションする生徒の育成 ∼言語活動の充実を通じて、言語活動の定着を図り、楽し
んでコミュニケーションするための能力の基礎を培う英語指導のあり方∼
◇平成25年度実践論文 審査講評より
○教育の今日的な課題に対して子どもたちにどう働きかけていくかという視点で、Q−UやNRTを活用した実
践が増えてきた。成果も上がってきている。仮説、まとめ方をさらに具体的に記述すると分かりやすい。
○多年度にわたり研究しており、これまでの取り組みの成果と課題が明確で内容も焦点化されていて何を明ら
かにしようとしているのかがよくわかる。
○学級経営、発達障がい、ユニバーサルデザインといった内容のテーマが多かった。反面、教科の深まりが薄
くなっているが、多くの論文が子どもの変容を数値で検証している。
○日頃の地道な実践が論文によく表れていた。実践された内容からは、どの先生も普段から誠実な取り組みを
されていることが伺われた。
○Q−U、NRTの結果を検証データとしての活用が昨年に比べて深まってきた。分析を行い、有効な手立てを
考え、実践を行い、さらに2回目のデータで検証という流れが論文としてとても説得力があった。
○論文を書くにあたって見通しを持ち、焦点がはっきりと絞られていて主張が明確であった。
○40代、50代の先生方の応募論文は質が高く読み応えがあった。
○ユニバーサルデザイン、Q−Uの活用など市の施策をベースにした意図的な取り組みが素晴らしい。
○実践は甲乙つけがたい。多くの論文がすぐれているが、入選しなかった方も書き方を工夫することでレベルア
ップを図ることができる。研究意識がある学校は伸びていく。書くことで問題も整理され、振り返ることで新たな
気づきも生まれる。論文を書くということで個々の教師力を伸ばすことにもなる。
27