1-5 ニュージーランド

世界電力小売りビジネス総覧
第 1 章 電力市場改革と小売りビジネス
1-5 ニュージーランド
世界最高の小売事業者変更率
ニュージーランドで電力小売りの全面自由化が始まったのは 1993 年であり、1 年後の 1994 年には
家庭向けの低圧部門も含めて全面的に自由化された。
ニュージーランドは、オーストラリアの各州と同様に需要家による小売事業者の変更率(Switching
rate)が高く、VaasaETT の調べでは、2012 年、2013 年共に世界で No1 にランキングされている(オ
ーストラリアの項参照)
。
ニュージーランドの変更率が高い理由としては、
同国政府の規制機関である Electricity Authority
が積極的に小売市場の活性化と変更率の向上を施策として打ち出していることが大きい。
Electricity
Authorityは、
2009年に1500 万ニュージーランドドルの補助金を拠出して
「Consumer Switching Fund」
を設立し、価格比較サイト「Consumer Powerswitch」を立ち上げた。同サイト上で需要家が現状のエ
e
ネルギー使用状況や世帯の人数、現在の電力会社などの情報を入力すると、変更候補の電力会社の情
報が一覧で提示され、消費者はボタン一つで簡単に電力会社やプランを変更できる(図 1)
。
Electricity Authority はまた、同サイトの初期立ち上げ費用だけでなく、年間 350 万ニュージー
m
pl
ランドドルの予算処置をし、より変更が活性化するような運営や改良の費用としている。消費者庁に
あたる Consumer Affairs (CA)も年間 150 万ニュージーランドドルを拠出しており、ニュージーラン
ド政府の力の入れようが分かる。
さらに、Electricity Authority は、変更率の状況を常に監視して、その結果を公表している。例
えば、最新の報告書「Electricity Market Performance 2014 year in Review」の中で、変更した世
帯数やその傾向を分析している。
図 2 はその一例で、2004 年から 2014 年にかけて、小売事業者を変更した家庭需要家の数は順調に
増えていることが分かる。なお、需要家が変更手続きに入った後に、現行の小売事業者がより高いイ
Sa
ンセンティブを提示することによって、変更をキャンセルした率も発表しており、2009 年に急増し、
その後 10%台で推移しており、より競争が活発化している様子が分かる。
図 1 価格比較サイト「Consumer Powerswitch」スタート画面(左)と推奨電力会社一覧画面(右)
(出所:Consumer Powerswitch)
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